罪を犯したエルフをファミリアに誘うのは間違ってるだろうか(凍結)(メインタイトル関係なし)   作:伊つき

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第13話

新たな団員としてルシアを迎えた【レン・ファミリア】。

主神であるレンは二人に増えた団員達がダンジョンへと稼ぎに出てる間、買い出しへと出掛けていた。

 

「えっとあとは…」

 

今は日が沈んで直ぐ、オラリオの夜へと入った頃。

主神でありながらファミリア内の夕食を担当するレンは次の食材を求めて北のメインストリートをぶらつく。

あとは肉豆腐に必要な豆腐だけ。

レンが作るのは基本極東料理、肉豆腐という料理もその一種だ。

 

「それにしても主神が料理担当ってのはどうなんだ?」

 

歩みを進めながらレンはボヤく。

ファミリアを作った主神なのだからドーンと構えていればいいと思っていたが、何故か仕事が多い。

主に炊事というのがまたおかしい。

 

「……まぁあいつがポンコツだから仕方ないな」

 

敢えて名には出さないポンコツと呼ばれるエルフの少女。

ファミリアを作った当初に一人だけいた団員はレンが絶句するほどに酷い料理を作った。

それだけでなく炊事全般が優れてないときた。

唯一できるのは机を拭いたり、食器を洗ったり、酒場の店員(ウェイトレス)としての最低基本能力。

それを経て今はレンが炊事を担当することになった。

正直めんどくさい。

 

「はぁ。これはルシアに期待だな。炊事ができるなら絶対押し付けてやる」

 

独り言に出してまで決意するレン。

ルシアは千里眼を持つが、話し声まで聞き取れる訳では無いので問題は無い。

 

「さてと、確かここら辺に豆腐を売ってる店が――」

 

極東限定の食材というわけではないがあまり広まっていない食材である豆腐。

オラリオで販売している店を探すのには苦労し、レンが知っているそこへやっとのことで辿り着いたその時。

店から丁度出てきた女性と衝突してしまう。

 

「――きゃっ!?」

「うおっ、ビックリした……って俺の服が!」

 

ぶつかった弾みに付いたと思わしき白いクリーム。

それがレンの服にまんべんなく付いた。

女性の方はぶつかった衝撃に混乱した後、レンの声に驚き、彼の服を見て顔を真っ青にする。

 

「あ、あわわわわ!?ごめんなさい!ごめんなさい!」

 

必死に頭を何度も下げる女性。

特徴的に尖った耳が綺麗な金髪が揺れることで見え隠れしている。

そのことからエルフだと窺える女性にレンは苦笑いして対応する。

 

「ま、まあやってしまったものは仕方ない。顔を上げろ」

「そ、そんな訳には…。本当にごめんなさい…弁償します…」

「弁償ねぇ…」

 

目の前にいるのがファミリアの主神だと気付いていないのか、エルフは彼の命令を無視して耳を垂らす。

ショボくれたエルフを見てレンは困った表情をしながら視線を動かす。

何か、頑固なエルフに効くものはないかと。

そして、彼女の手にある円錐型の食べられる容器(コーン)を見つける。

 

「そうか、そんなに言うなら弁償しよう」

「はい…分かりま――え?」

 

弁償()()、ではなく弁償()()

確かに聞こえた言葉にエルフは目を丸くする。

だが、レンはそれを無視して豆腐を売る店内に入っていった。

 

「え?え?……ちょ!?あの…!」

「ほらよ」

 

エルフが何かを言うより先に円錐型の容器(コーン)に入った練乳ソフトを手渡される。

これには目を白黒させてレンを見上げた。

 

「えっと…これは…?」

「見ての通りだ。あれ?さっきのこれじゃかったか?うーん…外れか、仕方ない買い直す」

「あ、あの!」

 

戸惑い気味に声を上げるエルフ。

その声にレンも振り向く。

 

「その…弁償するのは私の方なんですけど…」

「俺の服だろ?分かってるよ。でも俺もあんたの練乳ソフト無駄にした訳だし、弁償すべきだと思ってな」

「そんな…」

 

恐縮だとでもいうようにエルフの少女は尻込みしてしまう。

しょぼくれる彼女にレンはいい加減我慢出来なくなって顔を顰め始めて頭を掻き始めた。

 

「ああ、もう。本当のことを言うとお前が金を持ってなさそうだから買い直してやっただけだ。それと、服のことはいい」

「え?えっと…」

 

淡々と言い放たれる言葉にエルフの少女は困惑しながら焦った。

懐に自信がないことを見破られたからだ。

何故なのか、それを表に出してしまう。

 

「お前、冒険者か?」

 

唐突に問われる質問。

エルフの少女はただ戸惑うだけ。

 

「冒険者かって聞いてんだよ。おい、聞こえないのか?」

「あ、は、はい!一応…冒険者です」

「まあ武器持ってるしそうだよな」

 

納得するレン。

エルフの少女にさらに問う。

 

「最近冒険者になったばかりか?」

「いえ…こう見えても第3級冒険者です」

「第3級。レベル2か」

 

レベルを聞いてレンは彼女の装備を一瞥する。

小さな胸板の防具の他は何もない。

上級冒険者にしては装備が貧相過ぎた。

 

「上級冒険者でその装備じゃ余程金がないんじゃないのか?」

「あ…」

 

言われて気付いた。

つまりここまで誘導されたわけだ。

ついさっき出会った男が彼女に金銭的な余裕がないことを看破したのは装備を見てのこと。

ついでにレベル2に見合ってないことまで聞き出されてしまったのだ。

これにはエルフの少女もしてやられ、完敗だ。

 

「すみません…。その通りです。正直他人に弁償するお金も…余裕もあまりなくて…」

「そうか。ならいいさ。金を持ってないやつから巻き上げようとは思わない」

「はい…。ありがとうございます」

 

他人に事情を察せられて気を使われることに羞恥を覚えながら頭を深々と下げる。

そして、恥ずかしさのあまり早く立ち去ろうと思った。

 

「服のことは、すみません…。では失礼ながら私はこれで、いいですか…?」

「おう。溶けないうちにそれ食えよ?」

 

一瞬優しい微笑みを浮かべてレンは練乳ソフトを指さす。

気付いた時には溶けかけていたそれをエルフの少女は慌てて舐めながら再度頭を下げて踵を返した。

これでまたただの他人に戻った二人。

だが、急にレンが素っ頓狂な声を出した。

 

「ゲッ」

「……?」

 

つい先程知った男の声に振り返るエルフの少女。

その先には微妙な表情で頬を掻いているレンがいた。

 

「ん?」

「あ…」

 

レンの方も振り返った彼女に気付く。

反射的に目を逸らしたエルフの少女だが、次の瞬間声を掛けられた。

 

「……なぁ、お前今日うちで飯食わないか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

食卓に用意される温かい肉豆腐。

沸き立つ湯気と匂いは食欲を唆る。

そして、それを何故かレンと道中出会ったエルフの少女で囲んでいた。

 

「あの…なんで私…」

 

何故夕食に誘われたのか、彼女は問う。

それに対し次々と料理を運んでくるレンは苦笑ってみせた。

 

「いやぁ、実は今日三人分も要らないこと忘れててな。材料買い過ぎたんだ」

「そうですか…。他に二人も同居してるんですか?」

 

エルフの少女――名をミレニィアと呼ぶ彼女は三人住むには部屋が足りない木造住宅内を遠慮がちに見渡す。

 

「あぁ。眷属が二人居る」

 

しれっと答えるレン。

ミレニィアも納得したように小さく頷いたが、一拍置いてとんでもないことに気付いてしまった。

 

「え…!?も、もしかして神様なのですか」

「……まあな」

 

肯定してしまうレンにミレニィアは顔を青くしていく。

この後の展開はレンにも軽く想像でき、はぁと溜息をついた。

 

「と、とんだご無礼を!申し訳ありません!」

「別に謝ることなんてなにもしていない。そんなことより冷めるから早く食べろ」

「許してくださるのですか…」

 

レンの言葉を無視して頭を徐々に上げるミレニィア。

自然と上目遣いで見てくる彼女にレンは再度溜息をつく。

 

「お前のやったことぐらいで怒らん。それとも俺がそんなちっぽけな神に見えるか?」

「い、いえ…。その…失礼な行いの上にこんなに温かいご飯まで頂いて恐縮です…」

「まだ頂いてないだろ、早く食え」

 

レンに促されいただきます、と丁寧に食を進め始めるミレニィア。

レンが一連のしつこい謝罪などに怒りつつあることにやっと気付いたのだ。

一方レンはミレニィアの違和感にもう勘づいていた。

 

「どうだ?俺の飯は」

「は、はい!凄く、美味しいです…本当に…」

「そうか…」

 

心の底から食事に感動し、身に染みらせている。

その瞳には僅かだが涙が溢れ出そうなところを踏ん張っているのを窺える。

 

「なあ、妙に謝り癖がある気がするがお前大丈夫か?」

 

違和感を指摘するレン。

最もレンは自身の経験上ミレニィアの事情は大体察しが付いている。

だが敢えて彼女に尋ねた。

 

「それは……」

 

口詰まってしまうミレニィア。

肉豆腐を口に運ぶ箸の動きも止まってしまう。

 

「それは?」

「なんでも、ありません。私は大丈夫です…。レン様が心配することなど何も…」

 

問い返すとミレニィアは俯き呟く。

彼女の暗い表情にレンは目を細めた。

 

「ほう」

「……」

 

掘り返すことはなくレンはミレニィアの反応を伺う。

目線を逸らすミレニィアだがオラリオに住まう誰もが知ってる常識から重いを口を開く。

 

「ごめんなさい、神様に嘘は通じないですよね…」

「いや、無理に話さなくていい。多分マトモな食事も久々なんだろう、今日は沢山食え」

「はい。ありがとうございます」

「あぁ、なにせもう一人分あるからな。逆に食ってもらわないと困る」

 

ミレニィアの事情は敢えて聞かず、レンはフッと微笑みながら台所を指さす。

そこにはいくらでも食べろと言わんばかりの余った肉豆腐や炊いた白米があり、ミレニィアも自然と笑顔になった。

 

 

 

オラリオもすっかり夜の世界へとなった時。

夜道を歩く二人組の男女がいた。

一緒に同じ飯を食べたレンとミレニィアだ。

 

「あの、今日は本当にありがとうございました。肉豆腐っていうのは初めて知ったんですけどとても美味しいかったです!」

 

それだけは嘘のない本当の言葉で語り笑う。

レンもつられて口元を緩める。

 

「まあ昔の経験上自炊は必須だったからな。美味いかどうかは知らんが多少やれる」

「美味しかったですよ。また食べてみたいくらいです…」

「あぁ。いつでも食いに来い」

 

レンはそっとミレニィアの頭を撫でてやる。

ミレニィア自身もそれにはほんのり顔を赤らめて拒否はしない。

それどころか嬉しそうに無意識に笑っている。

その様子は他者から見ればまさに()子のようだった。

 

「あ…でもレン様のお家はファミリアの本拠(ホーム)です。他ファミリアの私はあまり行けませんね…」

「まあうちの本拠(ホーム)は仮みたいなもんだから大丈夫だと思うけどな。近々引越しもするし、そのための荷運びであそこの家には対してものを置いてない」

「本当ですか!?良かった…」

 

また嬉しそうにするミレニィア。

レンは知らないが察しは付いている。

この笑顔が本当に久しいもので本物であることを。

ミレニィアの自宅にも近付いて来た頃、レンはある疑問を尋ねた。

 

「ところでファミリアは何処に所属してるんだ?」

「【ソーマ・ファミリア】です」

「ソーマね…」

 

これも何かの縁だと思ってレンは彼女の所属ファミリアを覚えておくとする。

同時にミレニィアはレンと向き合う。

 

「私の家はこの辺りなのでもう大丈夫です。見送りありがとうございました、レン様」

「構わん。どうせ俺も暇だったし、お前を夜中に放り出す訳にもいかないからな」

 

挨拶を済ませ、ミレニィアの家へと繋がる一本道を後ろにする。

 

「レン様の料理、本当に美味しかったです。また…良ければ食べてみたいと思って…ます」

「安心しろ、きっと食える。まぁ俺の料理は基本極東料理だけどな」

「極東出身なのですね…なんだかレン様のことを知れて嬉しいです」

「そうかい」

 

レンと別れ際の話を終えたミレニィアは一瞬寂しそうな表情にもなり、彼と出会えて喜ぶ表情もある。

そして、また頭を深々と下げる。

 

「では、もう…行きます」

「あぁ。おやすみ」

「はい。おやすみなさい、レン様」

 

これを最後にミレニィアは一本道に消えていく。

別れを済ませたレンは帰るか、と踵を返していった。

 

「んー、んんー!?」

「へへ。静かにしやがれ!」

「さぁ。お楽しみの時間だぜぇ?ミレニィアちゃーん」

 

その頃、ミレニィアが謎の男達に捕まっているとは知らずに。




どうも。初めまして
口下手なのでコメントとか書くつもりなかったんですが、今回書く事にしました。
さっそくですが自分で読み返していて気付いたことが一つ。
主人公、得体の知れない俺TUEEEEとか信用出来なさすぎじゃない?と
得体の知れないのも俺TUEEEEなのも理由はあるんですが明かされるのはもっと後です。それまで信用出来ない主人公なわけですが……是非耐えてほしい
あともう一つ、原作キャラがあまり出ないのも一因な気もする。
オリキャラばっかですみません。よく良く考えたら前半は基本オリキャラばっかですわ。
これについても後半出来るだけたくさん出すので耐えてほしい
色々書きましたが今後とも宜しくお願いします



短編⑥
title︰疾風と天使

迷宮(ダンジョン)24階層、19階層から『大樹の迷宮』と呼ばれる層域は発光する苔が青い光を放っていた。
木肌でできた壁や天井に巨大な樹の内部を彷彿とさせる床。
それらを焦がす爆炎、炎弾が舞う

「【ヘル・バレット】!」

ルシアが火球を放つ。
飛来していた蜻蛉(とんぼ)型モンスターガン・リベルラは羽から全身へと燃え移り、消し炭となって地に堕ちる。
ガン・リベルラに目もくれずルシアさらに詠唱を紡ぐ。

「【龍の呪い、果実の呪い。呪詛(カース)となりて顕現せよ。最悪を重ね、吐き出せ――我が真名(まな)を解放せん】」

噛むこともなく高速で紡がれる詠唱。
一瞬で完成したそれにモンスター達は本能で警戒する。

「【ヘル・フレイム】」

バグベアー、リザードマン、デットリー・ホーネットを火炎放射で炙った。
そして、仕留め損ねてもれたホブ・コブリンを疾風が両断した。

「ありがとうございます」
「問題ありません。それよりルシア、貴女は前線に出過ぎだ。もっと下がってください」
「あら。すみません」

同僚(ファミリア)のリューに制止され、謝るルシア。
そんな彼女達の周囲には既に炭と化した怪物(モンスター)の残骸と魔石が一面に広がっていた。
適度に魔石を回収したリュー達は24階層で折り返すことにする。

「程よく稼ぎも得たので一旦帰りましょう」
「そうですね…」
「?どうかしましたかルシア」
「いえ。少し地上で気になることがありまして」
「千里眼ですか」
「はい」

リューに頷きを返すルシア。
何やらレンが出会った少女が気になるらしい。

「エルフの少女、ですか。私と貴女といい彼はエルフと何か縁があるようだ」

冗談めかして少し笑みを漏らすリュー。
そんなリューにルシアも微笑みを返した。

「かもしれませんね」

こうして二人は地上へと向かう。
24階層までLv.5とLv.4のたった二人という少数パーティーだったが、彼女等の人気から通り掛かる者は慄いたという。
【疾風】と【天使】、彼女達の戦闘風景を見た冒険者はそう呟いた。
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