罪を犯したエルフをファミリアに誘うのは間違ってるだろうか(凍結)(メインタイトル関係なし)   作:伊つき

18 / 46
第18話

「師匠…ということは時雨さんはレン様のお弟子ということですか?」

「いや、違う」

「はい!そうです、その通りです!」

 

唯一冷静に返したルシアの言葉に両者が別の反応を示すので若干困惑する。

あの彼女でさえも苦笑いだった。

 

「お師匠様は素直じゃないので認めませんが、時雨は間違いなく弟子です!」

「なんでこいつはこんな頑ななんだ…」

 

絶対、と言い張る自称弟子。

レンはまるで昔からそうしてきたかのような自然な動きで眉間を抑えて溜息をつく。

 

「弟子…では、何を教わってきたのですか?」

 

今度はリューが尋ねる。

それに時雨は元気よく応えた。

 

「もちろん殺し――!」

「俺は何も教えてない!教えてないぞ!?こいつがなんか変なこと言ってるだけだ。なっ!?時雨、なっ!?」

「んんー」

 

口を塞がれながらも首を横に振る時雨。

チッ、と舌打ちがなる。

そんな中…

 

『間違いなく殺しって言った…』

 

この場にいた誰もが同じことを思っていた。

おそらくその殺しの対象は怪物(モンスター)ではなく、人だろう。

それを察したからか、特にミレニィアがサーッと血を引く。

 

「レ、レン様は人を殺したことがあるのですか…?」

 

恐ろしくもあるその質問に過ちを犯して人殺しとなったリューも反応する。

 

「はい。お師匠様は極東で伝説となった暗殺者です!」

 

代わりに答えられたその返答にリュー達全員が目を見開く。

同時にレンを見る。

 

「昔の話だ…」

あまり触れてほしくない。

そう言うかのように目をそらすレン。

誤魔化すように時雨の頭をグリグリし始めた。

 

「まったく、お前はベラベラベラベラと勝手に俺のことを話すな!」

「うー、あー、いー、ごふぇんなふぁーい」

「……」

 

その様子を他所に、ルシアは一人考え込む。

突然現れた時雨という少女、彼女によって明かされたレンのほんの一部の過去。

レンは暗殺者だった。

それも伝説を残すほどの。

それ以上を聞いてもレンは答えないだろう。

ならばこのレンのことを知りたい好奇心を満たすためには――。

 

「あの」

 

全員が聞き取れる最低限の声で。

その一声は発せられた。

 

「何故殺し屋稼業をしていたのですか…?」

 

それはどういう意図で聞いたのだろう。

リューは率直にレンに尋ねた。

人を殺す、その真意を知っているリューだからこそ自らの主神にとっての殺しを知りたい。

もしかしたら彼女はそう考えているのかもしれない、とルシアはふと思い、レンはいい顔をしないまま意外にも答えてくれた。

 

「1000年以上前の極東は暗黒期で権力者に支配された国だった。そして、市民を苦しみから解放するために殺し屋組織が生まれた…それが」

「それが、レン様…いえ、貴方のいた暗殺集団」

 

リュー言葉にレンは正解の意味で頷く。

1000年以上前、神が下界に降りてない時期。

そこからまだ彼が人族(ヒューマン)であった時期の話だとルシアやリューは自然とたどり着く。

最初に質問したリューはとある酒場の猫人(キャット・ピープル)人族(ヒューマン)の元同僚を思い浮かべる。

彼女達にも事情があってあの稼業についた者、殺しは褒められたことではないが自分に責めることはできない上に、レンの場合はそれを必要としている人達がいたと聞き、驚く。

 

「多分察してるだろうが、俺がまだ人間だった時の話だ。市民の嘆きと願いを聞き、国に反旗を翻した者によって発足された暗殺組織、その中の一人が俺だ」

「なるほど、それも一種の正義…なのですね」

「いや、違う」

 

顔を顰めながらも納得していたリューをレンが否定する。

 

「命を奪う正義なんてない。だから、俺は正義を謳うことは永遠にしないんだ」

「……ッ!それは…」

 

レンの思いを聞いて思い出す彼の言葉。

 

『これは正義じゃない。ただの私情だ』

 

レンは正義を謳わない。

代わりに我儘になるのだ。

救いたい。助けたい。守りたい。

それら全てを正義ではなく、私情で片付ける。

それがレンという男、リューは一ヶ月も経って初めて彼の人物像を掴んだ気がした。

 

「レン様。一つ、質問をしていいでしょうか?」

「ダメだ。この話はもう終わりだ。俺はもう暗殺者じゃない、今となっては全部関係ない話なんだよ」

 

挙手したルシアの疑問をバッサリと切ったレン。

これ以上あの頃を思い出したくない、そんな感じをずっと黙ってた姉妹は最初から察していた。

苦しそうだ、と。

だが、リューでさえその制止で止めたのに、一人、ルシアだけは止まらなかった。

 

「レン様。お願いします。一つだけ」

「くどい。終わったって言っただろ」

 

ルシアの思いがけない押しの強さにおいてけぼりを喰らってる時雨以外の一同が目を見開く。

これ以上掘り下げようとする彼女に皆驚いているのだ。

 

「ルシア、これ以上は…」

「止めないでください」

「なっ…」

 

リューの制止も聞き入れない。

ルシアは再度口を開く。

 

「レン様」

「いい加減にしろ!!」

 

玄関に響く怒号。

これには当人のルシアも汗を流す。

 

「何度言えば分かる…。話は、終わりだ。もうこれ以上二度と話を掘り返すな!」

「どうしても、ですか」

「どうしても聞きたいなら出て行け!」

「……分かりました」

「ルシア!?」

 

まさか同意してしまうとは思わなかったリューが思わずルシアに振り向く。

ルシア本人は既に覚悟を決めた強い表情を少なくともリューから見れば、していた。

 

「おい、時雨」

「ふえっ!?は、はい!」

 

まさか予想にもしなかった重い空気に頑張って耐えていた時雨。

急に声を掛けられて肩を跳ね上がらせる。

 

「お前も役目を終えたならささっと帰れ」

「はい…」

 

元はといえば火種となった時雨を怒気を込めてレンが睨み、彼女はビクつきながら言う通りに従う。

そそくさと帰り支度をして戸に手を掛けた。

 

「で、ではお騒がせしました。眷属の皆様…」

「私もついでに」

「ルシア…」

 

時雨の隣に並ぶルシア。

ついでに、この本拠(ホーム)を出る。

そう言っているのだとリューは悲しく思った。

 

「本当に、出て行くのですか。何もそこまでしなくても…」

「私はレン様に謝る気はありませんので。質問も答えてくれるまで待ちます」

「なに…?」

 

懲りずに怒気に触れてくる少女にレンは睨みを効かせながら表情にさらに怒りを加える。

 

「短い間でしたが、お世話になりました。レン様」

「ま、待ってくださいルシア様!」

「ごめんなさい、ミレニィアさん。暫く後衛職はお任せします」

 

突然の展開についていけず、悲しみ、止めようとするミレニィアをも振り切り、ルシアは背を向ける。

 

「行きましょう、時雨さん」

「え?あ、は、はい…?」

「さようなら」

 

最後にそれだけの言葉を残して扉は開け放たれた。

数秒後、訪問してきた人族(ヒューマン)だけでなく、仲間であるハーフエルフまで消えてしまい、【レン・ファミリア】を冷たい静寂が襲った。

最初にその静寂を破ったのはリュー。

 

「ルシアを呼び戻してきます」

「止めとけ」

「……ッ!?」

 

制止され、リューは信じられないとでもいう視線をレンに向ける。

 

「どうしてですか!?」

「頑固なあいつのことだ。多分戻ってこない」

 

言い切るレン。

対しリューは彼の態度に苛立ちを覚えた。

表情を険しくするもレンは気付かず、ミレニィアも前に乗り出してしまう。

 

「で、でもこのままルシア様を放っておけ――」

「何故だ…」

 

ミレニィアの言葉を遮って放たれた冷えた低い声音。

レンの怒声に怯え、警戒していたミレニィアは背後から異なる怒気を不意打ちで感じ、背筋を凍らせる。

そんなビクつく彼女をリューは押し退けてレンの前に迫る。

 

「……ぜ」

「なんだ?」

 

なにか言いたげなリューだが、レンは肝心の言葉が聞き取れない。

だが、耳を澄ませて近付いた途端…

 

「何故だ!何故、居場所を与えた貴方がっ!あろうことかルシアから居場所を奪う!!」

「なっ…」

 

友を思うが故の叫び。

レンはそれに慄き、汗を一筋垂らす。

至近距離の大声に驚いたのではない、彼女の言葉に衝撃を受けたのだ。

 

「ルシアのたった一つの居場所がここだというのに…貴方はそれを奪った」

 

相手が唖然としている隙にリューは繰り返す。

胸に刻み込むように、思いを捻じ込むように。

 

「貴方は彼女の主神失格だ。見損ないました」

「……ッ」

 

冷酷な一言と共に横を過ぎるエルフの眷属。

彼女の冷めた目線を受けながらもレンは動けずにいた。

 

「リューさん…?」

「ちょ、団長さんまでどこ行くの!」

 

玄関口の前に移動したリューは姉妹に先程の惨事からか、声を聞く。

既に扉に手を掛けているリューは振り向くこともなく、彼女達に向けて返答を返した。

 

「ルシアを連れ戻しに行きます。私は彼女に隣にいて欲しい」

 

それだけを言い残してリューは本拠(ホーム)を後にした。

リューが出た後、残されたレンはただ立ち尽くす。

 

「……」

 

自分の手を見て俯く彼に、ラングレー姉妹が心配して声を掛ける。

 

「だ、大丈夫ですか…レン様…」

「なんか皆バラバラ?になっちゃったね」

 

シルヴィアの一言にミレニィアは小さく頷き、場の空気はさらに冷ややかなものとなる。

そんな中、レンはやっと口を開く。

 

「胸糞悪いな…」

「え?」

 

レンの放った呟き。

ミレニィアが聞き取れた筈なのに聞き返してしまってハッとする。

要らないことを言ったと思ったのだろう。

しかし、レンはそんな彼女を寂しくもあり優しくもある笑みでそっと頭を撫でてやる。

 

「まさか自分に対して胸糞悪い気持ちになるなんて、な…」

「レン様…」

 

なでりなでりと煌びやかな金髪を揺らす。

撫でながら再度微笑んだ。

 

「リューとルシア、連れ戻しに行くか」

「……ッ、はい!」

一番聞きたかった言葉を本人から聞けたミレニィアは満面の笑みで頷く。

ほんのり頬を紅く染め、綺麗な髪を揺らして微笑むその様は妹のシルヴィアでさえ見惚れた。

 

(ミレニィ姉が見たことない顔してる。なんだか、凄く幸せそう…)

 

チラリと、まだ紅潮しているミレニィアの目先にいる異性(レン)を見る。

それで何やら察したシルヴィアは、ははーん、と口端を吊り上げた。

 

「ねえねえ、ミレニィ姉」

「ん?」

 

リュー達を探しに行くことが決まってそそくさと外出の準備をしていたミレニィアをシルヴィアが呼び止めて、耳元で囁く。

 

「レンの何処が気に入ったの?」

「え、ちょ、えぇ!?」

「あははは!凄い慌て様!」

 

姉の慌てふためく姿を見てシルヴィアは腹を抱えて笑う。

それを見てミレニィアは恥ずかしそうに俯いた後、可愛らしく頬を膨らませる。

 

「も、もうシルヴィったら何言って…」

「誤魔化しても無駄だよー、ミレニィ姉」

「べ、別に誤魔化してなんか」

「まあまあ親愛なる妹に全部言っちゃいな、よ!」

「きゃあ!?」

 

飛びついてくるシルヴィアにミレニィアは押されるがままに抱きつかれて倒れる。

 

「何やってんだお前ら…」

 

話の内容など露知らずのレンは呆れた表情で倒れた姉妹を見る。

 

「で?で?どうなの!」

「えぇ…。え、えーっと 」

 

尚、迫り尋ねてくるシルヴィアにミレニィアはチラチラとレンを窺いながら、レンに聞こえぬよう、彼と出会った時の話をシルヴィアにする。

すると、シルヴィアは

 

「あーもー!ミレニィ姉、ちょろ過ぎ可愛すぎ!」

「わわっ!シルヴィ!?」

 

愛らしい姉を精一杯抱擁し、ミレニィアは動けない、と微妙な表情をしていた。

そんな様子を用意を終えて確認したレンはリューが遠くへ行ってしまわない内に、と急かす。

 

「おい、お前ら早く――」

 

その時だった。

本拠(ホーム)の窓を貫いた一筋。

それは綺麗な直線を描いてレン達の間に突き刺さる。

動きを止めてそれが矢であることを確認できたレン達は結ばれた紙にも気付く。

 

「これは…」

 

真っ先にレンが矢から紙を解き、広げる。

すると、そこに記されていた内容にその場の全員に緊張感が走る。

 

『【疾風】は預かった。返して欲しくば神レン単独で指定の場所に来い』

 

共通語(コイネー)で書かれたその脅迫文に最初に動いたのはレン。

だが、直ぐに立ち上がって本拠(ホーム)を出ようとした彼をミレニィアが呼び止めてしまう。

 

「ど、何処に行くんですか!?」

「決まってるだろ。探しに行くんだ」

 

背を向けてそれだけ返す。

彼の表情をミレニィアは窺うことが出来ないが、何故か悔やみは感じ取れ、ミレニィアのそれも曇る。

 

「で、でも何処にいるか…」

「そうだ。()()()()()

 

レンは敢えて強調して頷く。

 

「じゃあさ、闇雲に探すの?ギルドに冒険者依頼(クエスト)を発注した方がいいんじゃ…」

「ダメだ。今、リューは敵の手の中にある。俺一人という内容からして誰かに助力を頼めば最悪の結果が待ってる筈だ。勿論、冒険者依頼(クエスト)なんて論外だ」

 

冒険者依頼(クエスト)は公に事を晒して大勢に助けを呼ぶことになる。

それでは敵の指示を無視し、脅迫通りリューは何かされる。

最悪、殺されるかもしれないという可能性もリューがいくら実力のある冒険者だからといって無いとは言いきれない。

だから、レンはシルヴィアの提案をバッサリ切った。

 

「じゃあやっぱり闇雲に探すしか…」

「いや、方法ならある」

 

絶望に浸りそうなミレニィアだったが、レンの一言に思わず顔を上げる。

そこには目をキッチリと合わせてくれているレンが居た。

 

「指定の場所、なんて言われているのに場所が記されていない。これに何らかの暗号があるかもしれないが…そんなもん解くより早く住む方法がある」

「方法?それって…あっ。ま、まさか…!」

 

答えを聞くより前にミレニィアがそれに辿り着く。

一方、シルヴィアはピンとこないようだった。

 

「だから、探すんだよ」

 

再度念を押すように告げるレン。

次には既に身を翻して扉を開け放っている。

 

「千里眼を持つ。ルシアを」

 

やっと居場所を手に入れた竜と妖精の子。

レンが与えたにも関わらず、居場所を奪ってしまった小さな少女、ルシア。

レン達はリューより先に時雨と共に去ってしまった彼女の捜索を始めた。




短編⑧
title︰アマゾネスの御使い

天を衝く白亜の摩天楼。
摩天楼施設『バベル』八階の武具店。
【ヘファイストス・ファミリア】のバベル支店であり、八階に並ぶ品揃えはその中でも最高級のものが並ぶ中、【バルドル・ファミリア】のアマゾネス団員レオナ・スロットルは武器を眺めていた。

「おお~」

名高い鍛冶師達の作品を一人で見て感嘆するレオナ。
傍から見ればはしゃいでいて奇異の視線を集めてしまう。
レオナはそんな事に気付かず、気付いたとしても気にせず興奮する。

「この大剣とかオネルンに似合いそうだなぁー」

ガラスをツンツンつついて買うつもりもない大剣も眺める。
同僚の狼人(ウェアウルフ)を思い浮かべながらまた隣のガラスへと横移動した。

「かっこいい弓矢!ミーちゃんとかに使って欲しいなぁ!お金ないけど」

次は幸薄な少女と自身のみすぼらしい金袋を思い浮かべて笑う。
とにかく表情の変化が激しい彼女は一際人の目を集めた。

「むふふふ。何か欲しいもんでもあるんか?お嬢ちゃん」
「んー?」

後ろから声を掛けられ振り向くレオナ。
そこには変な口調と道化師(ピエロ)で有名な大派閥【ロキ・ファミリア】の主神ロキがいた。

「なんならうちが(こお)たろうか?」
「ん~、気持ちは嬉しいけど申し訳ないしバルドルに怒られるから止めとく~。ありがとね」
「なんや残念やなぁ。それにしてもバルドルぅ?んー、どこの神やったっけなぁ」

聞いたようなそうでもないような名にうんうんと唸るロキ。
そんなロキを他所にレオナは店を見渡し、思い出したことがあった。

「あっ。あああああ!忘れてた!そういえばポーション足りないんだった…。途中で買い食いしたの『王様』にバレちゃうよぉ…」
「『王様』…?」

眉を動かすロキ、気になるワードに細い目をさらに細めた。
そして、バルドルが誰かを思い出し口元をニヤッと歪める。

「そうかそうか。お嬢ちゃんバルドルのとこの子やったんか!そういえばこの前戦争遊戯(ウォーゲーム)やっとったなぁ」
「え?あ、うん。そだねー」
「んで、遠征の買出し中か?一人でえらいぎょーさん持って大変やなぁ。なんなら手伝う…は無理やからポーション奢ったろか?」
「ほんと!?いいの!?」
「いいに決まってるやん!うちを誰やと思っとるんや?【ロキ・ファミリア】のロキやで?そのくらい奢ったるやないかい」
「わーい!ありがとー!!」
「あ~可愛い。ティオナにちょい似てるけど違う純粋さが堪らんわ!ええよええよなんでも奢ったるわ!」
「やったー!」

両手を上げて喜ぶレオナにロキは頃合と見てある賭けに出た。
オラリオではもはや有名なロキの美女趣味。
ここまでいえばこの後の展開は大体察しがつくだろう。

「そういや名前聞いてなかったな。なんて言うんや?」
「レオナだよー」
「レオナちゃんかぁ。なぁなぁ!さっそくやけどうちのファミリアこーへん?」
「んー?」

バベルの階段を下りながらレオナを口説こうと――もといファミリアに勧誘しようとするロキ。
周囲の冒険者達は見慣れた光景に「また神ロキが美女にちょっかい出してる」と呆れた。
ロキに誘われたレオナは初め目をぱちくりさせ、その間ロキを期待させたがやがて()()()に笑みを作った。

「……っ!?」

ゾクリとロキの背筋に悪寒が走る。
レオナはその笑みのまま先程までと同じく軽い口調でロキの誘いを断る。

「ダメだよ。『王様』が怒っちゃう」

ティオナのような明るく元気で無邪気な性格はどこにいってしまったのか伺ってしまう程に底冷えた声音。
ロキはゴクリと息を飲んでなんとか取り直した。

「そ、そうか。それは残念やわぁ」
「うん。ごめんねー」
「ええよええよ」

ほんの一瞬。
レオナの冷えた声音も表情も刹那の間だけだった。
すぐに気の抜けるような軽い口調に戻って機嫌の良いステップで階段を降りていく。
後ろからあとを追うロキは少し距離を置いて冷や汗を流した。

「やばぁ~、もうちょっとでとんでもないもん勧誘するとこやったわ…。天界でバルドルを殺しそうになったなんて口が裂けても言えへんわ」

ロキの漏らした呟きにレオナが笑顔で振り向いた時は道化師(ピエロ)のロキでさえ背筋を凍らせた。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。