罪を犯したエルフをファミリアに誘うのは間違ってるだろうか(凍結)(メインタイトル関係なし)   作:伊つき

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第2話

迷宮都市オラリオ。

世界唯一の迷宮都市、その名の通り広大な都市の中央には天を衝く白亜の摩天楼、摩天楼施設『バベル』がそびえ立ち――地下には迷宮(ダンジョン)が存在する。

 

そんなオラリオに訪れた1人の神。

男神は娯楽を求めてこの地に踏み込んだ。

 

「……オラリオ、か」

 

それは、まだ神になって日が浅い男。彼は元々人族(ヒューマン)だった。

だが、様々な苦難を乗り越え劇的な成り上がりを果たしてしまったのだ。

そんな彼は一言呟き、ローブを深く被ってオラリオの街へと足を進めて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まずは街の中央部へ。

そこにある噴水で待ち合わせしている神に会いに行く。

到着すると既にその神は待っていて、手を振っていた。手を振り返して彼に近付く。

 

「よく来ましたね、レン」

「久しいな。バルドル」

 

バルドル。オラリオにいる男神の一人で光を司る神。

彼は待ち合わせに訪れた元人族の男神をレンと呼び、微笑んだ。

彼はレンの神友である。

 

「さて、さっそく行きましょう」

「行くって何処に?」

「酒場ですよ。西メインストリートにあるとても美味しい料理を出してくれる酒場があるのです。少し、お高いですが」

「俺の手持ちはそこまで多くないのだが…」

「心配要りませんよ。お高いといっても何も破格ではありません」

「そうか。まぁ美味いって言うしそれなりに掛かるのは覚悟しておくよ」

 

レンは呆れながら金袋の中身を確認し、溜息をついた。

その様子を神っぽくないとバルドルが苦笑いするもレンがうっせと一蹴し、二人の神は西メインストリートへと向かっていく。

道中、神友の間柄だけあって談笑しながら特に問題はなく『豊穣の女主人亭』という酒場には着いた。

そこで食事を取ることにしたレンとバルドル。

席についてしばらくすると香ばしい匂いで空腹を刺激してくる食事がいくつも運ばれてきた。

 

「おぉ。こりゃ確かに凄い」

「でしょう。この店は私のオススメです。とても美味しいので食べてみてください」

「了解」

 

言われて一口食べるレン。

すると、目を見開き驚いた。

美味い…と一言呟くとすぐに次の料理に手をつける。

もうそこからその手は止まらなかった。

 

それを満足そうに眺める大柄の女性が一人、料理を手にレンへと近付いていた。

レンは彼女がドワーフであることとそのことにすぐ気付き、料理を口に運びながら顔を上げる。

 

「いい食いっぷりだねあんた。バルドル様と居るってことは【バルドル・ファミリア】の――いや、見ない顔だねぇ。なら神様かい?」

「よく分かったな。そうだ、といっても今日オラリオに来たばかりだけどな。バルドルは俺の神友でここが美味いと聞いて連れてこられた。そして、聞いた以上に美味い」

「神様のお褒めとは光栄なこったねぇ。でもここじゃ神も人も亜人も関係ない!腹が減った奴が集う場所だ!で、貴方様はここに来たばかりの神様なんだろ?なら酒もサービスするからジャンジャン飲みな!飲みな!」

「まだ昼なんだが…」

 

ジト目でボヤくがドワーフの女性は凄い勢いで酒を押し付けてくるのでレンは諦めて酒を呷る。

それなりに強いアルコールがレンの身体内にじんわりと伝わってくるが、幸いお酒に強いこともあって昼でも耐えられる。

そもそもまだオラリオに来て一日目のレンには予定などないのだから昼間から酔っ払っても一応問題はない。

レンが酒を一気に飲み干すとドワーフの女性は先程よりも満足そうにして、上機嫌なのが読み取れるようになっていた。

 

「いい飲みっぷりだね。その調子でグイグイいきな!」

「まだ飲ませる気なのか…」

「あまり乗せられない方がいいですよ、レン。確かにここは料理が美味いですがこうして酒に酔わされて多額の金を摂取されます。その分気前もいいですが」

「怖いな、おい」

 

耳打ちしてくれたバルドルにレンは冷や汗を流しつつ注がれる酒を飲んでいく。

ふとドワーフの女性を見ると何故かウェイトレスに声を掛けてこちらに来させようとしていた。

料理も口に運びつつ、レンは向かってくる二人のウェイトレスに目線を向ける。

 

「こんにちは。私はシル・フローヴァ、人族です。よろしくお願いします。神レン様。神バルドル様」

「リュー・リオンです。よろしくお願いします」

「あぁ、よろしく」

 

一人は温和な雰囲気で話し掛けてくれた人族で白鈍色の髪と目の女性。

もう一人は黄緑の髪と蒼い目、尖った耳が印象的なエルフの女性。

二人のウェイトレスが挨拶と共にレンとバルドルの居る席にやって来たのでレンも軽く返す。

どうやら二人はドワーフの女性――店主のミアという名の彼女にレン達へと送り込んだらしく、断る理由もないのでレンも受け入れてしばらく談笑した。

 

しかし、途中レンは何故かシルに違和感を感じ、意識をシルに向けていたら手を滑らせて持っていたナイフが手元から離れた。

重力に逆らえず落ちていくナイフ。だった筈だが、床につく前にナイフを掴む手があった。

エルフのウェイトレス・リューだ。

 

「おぉ、見事ですね」

「速いな」

「いえ…お怪我はありませんか?」

「あぁ、大丈夫だ。サンキュ」

「お気を付けください」

 

ナイフをレンに渡し、淡々と注意するリュー。

だが、レンにはそんなことより気になる事があった。

それは先程のシルへの違和感を忘れてしまう程。

ナイフを拾う時の反射速度があまりに速すぎた気がしたのだ。

 

「リューは元冒険者なのか?」

 

率直に、バルドルとシルが談笑する隣でレンはリューに尋ねた。

レンにとってはただの疑問をぶつけただけだが、リューは質問を聞いた途端ビクリと一瞬反応する。

当然それが地雷だからだ。

 

「それは…」

「それは?あ、今も冒険者でここが副業とかか?」

「いえ…今は冒険者ではありません」

「今は、ってことは昔はやっぱそうだったのか」

「失礼します」

「リュー!?」

 

突然話を区切って立ち上がるリュー。

リューの態度にシルは驚き、レンは内心しまったと思うがもう遅い。

レンも気付いた通り、やはり彼女にとって地雷なのだ。

そこで、一連の流れを片耳で話を拾っていて理解しているバルドルが気を利かせる。

 

「シルさん、でしたか。楽しい時間でした。ありがとうございます。ここはもう大丈夫ですのであの方に付いて行ってあげてください」

「ですが…」

「こちらも久々の再開で積もる話はあるので構いませんよ。寧ろ二神で話したい事もありますので、どうぞ」

「は、はい。ありがとうございます!本当に申し訳ございません!」

 

バルドルの親切心に救われたシルはそのままリューを追い掛けていってしまう。

後に残ったレンは後味悪そうに頬をかき、その隣でバルドルは知り合ってから何百回目か分からない溜息をつく。

 

「まったく貴方はいつもデリカシーに欠けてますね」

「うっ…酒のせいにしちゃダメか?」

「貴方はお酒に強いでしょう。それくらい長い付き合いなので知ってますよ」

「だよなぁ。はぁ…やらかした」

「仕方ありませんね。ここは別の話題に切り替えましょう。折角再開して積もる話があるのは本当の事ですからね。後できちんと彼女に謝るのですよ?」

「分かったよ…。ありがとう、バルドル」

「いえいえ。これまで貴方に対してしてきた尻拭いに比べればそれほどの事ではありませんよ」

「うっ、お前も大概腹黒いよな」

「それほどでも」

 

お互い苦笑いしながら酒と食に手を伸ばすレンとバルドル。

そこへ、もう1柱の神が眠たげに現れた。

目が半開きのまま酒場に足を踏み入れる女神。彼女はそのままレンとバルドルの元へと訪れた。

 

「おはよう、れん。ばるどる」

「もう昼なんだが」

「そのセリフ、デジャヴを感じますね。そして、こんにちは。ヒュプノス」

 

ヒュプノス、バルドルにそう呼ばれた女神はやはり眠たげに欠伸をした。

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