罪を犯したエルフをファミリアに誘うのは間違ってるだろうか(凍結)(メインタイトル関係なし)   作:伊つき

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第23話

迷宮(ダンジョン)から帰ったリュー達。

レンから今回の件を一通り聞いた。

 

「なるほど。状況は理解しました」

 

代表としてリューが頷く。

そして、居間(リビング)の机を囲んで話された内容に怪訝そうにする。

 

「神を狙う者ですか…」

「ヒュプノス様が心配ですね」

「あいつのことはレイラとかいう…アマゾネスが守る筈だから大丈夫だろ」

「レン様…?」

 

アマゾネス。

その単語で一度詰まったレンにルシアは気にかけてしまう。

――もしやレン様はアマゾネスに特別な感情を?

そこまで考えて止めた。

また同じ過ちに至ってしまったことに気付いたから。

 

「なんだ?」

「いえ、何も。続けてください」

レンも察しつつ敢えてルシアに振った。

ギリギリ回避したルシア。

謝罪と共に話は進んでいく。

 

「まあ話は以上だ。ヒュプノスの件は本人達でなんとかするだろ。あいつの眷属にはLv.6もいるらしいし」

「え…?」

 

冒険者依頼(クエスト)を受けたことは話さなかったレン。

眷属に協力を要請するでもなかった彼に思わずシルヴィアが声を漏らす。

ルシアは横目で、リュー達は彼女の方を見てしまう。

 

「シルヴィア、何かありましたか?」

「え、えっと…」

「……」

 

目を泳がせるシルヴィア。

レンは目を合わせてくれない。が、何故か圧を感じた。

 

「い、いや何もないかな~。あはは…」

「怪しい…」

「えっ」

 

リューの指摘にシルヴィアは内心ビビる。

冒険者職についてない彼女の動揺はリュー達には筒抜けだった。

 

「何か隠してるのでは?」

「いえ、隠していますよね。レン様」

「あー…」

 

リューとは違う、ルシアの確信めいた指摘。

ある事を思い出したレンはしまった、と頬をかいた。

 

「そうか。お前には千里眼があったな…。警戒してたのに抜かった」

「ふふっ。何処にでも落とし穴はあるものです。では、白状してくださいレン様」

「…仕方ない」

 

ルシアには過去あったことに関する嘘は絶対につけない。

未来でも危うい。

本当に仕方なくレンは自白した。

 

「実はヒュプノスのその冒険者依頼(クエスト)を受けた。この事件が解決するまで手は引けないだろうな」

 

――最も、ヒュプノス(神友)が狙われている時点で手を引く気はないが。

最後に付け加えたレンにその覚悟を全員が見出す。

レンの自白にルシアは不敵に笑って見せた。

 

「決まりですね。お手伝いします、レン様」

「えぇ。元より私は神を狙う者など放置できない」

「わ、私も手伝います!」

「はいはーい!時雨にも手伝わせてください、お師匠様!」

「はぁ…分かったよ」

 

もう言い出してしまえば取り返しはつかない。

レンは諦めてみんなに協力してもらうことにした。

 

「早速だがこれを見てくれ」

 

真剣な表情で机上に金属の何かを転がすレン。

全員それに注目した。

 

「これは…?」

「鉛玉だ」

 

三角錐型の金属に首を傾げていたリューにレンが応える。

誰もピンと来ない中、考え込むルシアの横で一人心当たりがある顔になった時雨。

そちらに視線を向けつつレンは続ける。

 

「鉛玉を使う武器…時雨。なんだと思う?」

「まさか…いえ、そんな…」

「まあ動揺するのも無理はない。そんな武器まだ出回ってるなんておかしいからな」

「……?」

 

戦慄する時雨と妙な事を言うレンに一同は首を傾げる。

やがて、時雨が戸惑いながらその武器の名を呟いた。

 

「鉄砲…」

「あぁ。別名、銃。大昔帝国で密売されていた殺戮兵器だ」

「「「なっ…!?」」」

 

殺戮兵器、銃。

初めて聞く物騒な武器にリュー、ミレニィア、シルヴィアが目を見開く。

ただ一人ルシアはやっとピンときた表情をしていた。

 

「なるほど。確かに鉄砲が出回っているのはおかしいですね。その殺戮性能の恐ろしさから900年以上前に帝国にて製作さえも犯罪とされ、文明から滅ぼされた古代の兵器…話は聞いたことがあります」

 

実在していたとは、とルシアも驚きは隠せない。

ルシアでさえその反応を示す武器に何も知らないリュー達でさえも息を呑んだ。

 

「何せ900年以上前の兵器だ。今存在するのは有り得ないんだが……恐らく今回の黒幕はこれを作り出した」

「黒幕は帝国出身者なんでしょうか?」

 

犯人の全容が個人なのか、集団なのか分からない今、黒幕がいると仮定して進める。

 

「可能性は高いな。銃なんてのはとっくの昔に歴史の闇に葬られた。それを知ってるってんだから帝国史に詳しい奴だ」

「その銃という武器を使って神ヒュプノスを狙った襲撃者個人の犯行なのでしょうか…」

「個人だとしたら今回ヒュプノスの殺害に失敗した時点で相手側の思惑は終わった。が、もし真に襲撃者以外に黒幕がいるなら複雑になりそうだ」

「個人の方が有難いですね」

「そりゃもちろん。もし目的がヒュプノスの殺害以外にあったとしても対処できなくはないしな」

「それは他に銃を使っての思惑があると…?」

「分からんが否定はできない」

 

まずは個人か集団かの犯行か。

前者ならば楽だろう。

 

「あ、あの…そもそもその槍使いと狙撃手は同一人物なのですか?複数による襲撃ということも…」

「ないな。銃であんなにも正確に的を狙えるやつはそういない。槍使いの精密な動きならばあの射撃も納得ができる」

「戦ったレン様だからこそ分かることなのですね」

「あぁ」

 

槍使いと狙撃手は同一人物。

これはレンが確信を得て推すことだ。

両者共に体験したレンだからこそ、動きの同一を見抜けた。

 

「これで分かってることは纏められたな」

「襲撃者の狙いの一つは神ヒュプノス。大昔帝国に存在した兵器、鉄砲を少なくとも一つは保持。相手側の構成員は一人かそれ以上…といったところでしょうか」

「おう、サンキュ」

 

リューが気を利かせてメモしてくれたものを渡す。

レンも一通り目を通した。

 

「ルシア」

「はい」

 

そろそろ来るだろうと予測していたルシアは即座に返答する。

当然、尋ねられるであろう内容も把握している。

 

「レン様の交戦は見ておりました。襲撃者の行く末も当然追ってます」

「よし。とりあえず敵陣に乗り込むか」

「しかし、途中で撒かれてしまいました…」

「なに?」

 

ルシアの言葉にレンが思わずそちらを見る。

それほどに予想外だった…という訳ではないかもしれないが期待が外れたのは確かだ。

 

「そうか…。基本全てを見通せる千里眼だが目標を失ったらどうしようもない」

「すみません」

「いや、俺が頼り過ぎた。寧ろ途中までは分かるんだろ?」

「はい。オラリオから出るまでは」

「それだけでも上出来だ。無いとあるじゃまったく違う」

 

瞬時に考え方を変えて対応。

レンの素早い采配にルシアも感嘆する。

 

「流石、といったところでしょうか」

「えぇ。やはり彼は尊敬に値する神だ」

 

隣にいる友人のリューと誇れる主神に微笑むルシア。

ここで時雨が提案する。

 

「お師匠様。敵がオラリオの外にいると分かった以上、まずは帝国に行くのはどうでしょうか。古代帝国の兵器を所有してますし、間違った線ではないかと…!」

「一理あるな。よし、採用だ。まずは帝国に行こう。他に意見があるやつはいるか?」

「いえ、特には。私も賛成です」

「時雨の言う通り、可能性が高いと思われる場所でしょう。私も同意します」

「わ、私もルシア様やリューさんと同じく…異論はありません」

「はいはーい!あたしもないよ!」

「決まりだな」

 

全員による意見の一致により、レン達の目的地は帝国となった。

迷宮都市オラリオを出て西方にある帝王の国、帝国。

名の通り、皇帝が王位を治めている大国である。

先の襲撃からそこへ目指すことを決めた【レン・ファミリア】。

出発は明日となった。

 

「俺はヒュプノスのとこに伝えてくる。お前達は明日の準備をしておけ。あ、シルヴィアお前は留守番だ」

「えぇ!?それはないよー、レン~!」

「うっせ。本拠(ホーム)を留守にする訳にはいかないだろ」

 

出掛け支度を片手にシルヴィアに留守番を言い渡したレン。

つまらない留守番に既に一度不満を漏らしているシルヴィアはもちろん意義を唱え始め、レンの物言いにも反抗した。

 

「やだやだやだ!あたしも皆と一緒に行く!」

「はぁ。我儘言うなよ…。仕方ない、ミレニィアも置いていく。これでいいか?」

「えぇ!?」

「ミレニィ姉が一緒かー…。うーん、それなら妥協してもいいかな」

「ちょ、シルヴィ…!」

 

突然妹の我儘に付き合わされたミレニィア。

想い人(レン)と離れると聞いてショックを受けた。

 

「もう、シルヴィ!我儘言わないでよ!」

「いいじゃん、別にー。一人で留守番なんて寂しいよぉ。ね?いいでしょ、ミレニィ姉」

「はぁ…」

 

ミレニィアから嘆息が漏れる。

頭が痛い、そんな妹に悩まされる姉を表現するミレニィアを見てシルヴィアも途端に冷めて、俯いた。

また姉に迷惑を掛けてしまった。

そう思ったのだ。

 

「ごめん、ミレニィ姉。やっぱり迷惑だよね…」

「え…。いや…えっと…そんなこと、ないよ?」

「ほんと!?あたしと留守番でもいい?」

「う、うん。シルヴィと一緒なら退屈はしないかな…」

「やったぁ!久々にミレニィ姉と二人きり!何しようかな、何しようかな」

「シルヴィ…ふふっ」

 

どうにか機嫌を直したシルヴィアにミレニィアは笑みを零す。

もう妹に昔の思いはさせたくない。元気になった今のシルヴィアでずっといて欲しい。

そう願うのはミレニィアだった。

だからこそ、例え想い人と離れてしまう悲しさがあってもシルヴィアだけは悲しませないと思い、本拠(ホーム)へ残ることを決意した。

 

「レン様。留守は任せてくだい!」

「あぁ。頼んだ」

 

残るからには本拠(ホーム)は守る。

そう決意を表明するミレニィアはレンに笑顔を向ける。

レンも応じ、頷いた。

 

「レン様。ミレニィアさんが減るとなると私、リューさん、時雨さん…あとレン様を含めるにしても四人と、少数で大丈夫でしょうか」

「どうせヒュプノスのとこが何人か貸してくれるさ。最悪あと一人か二人入れば充分だろ」

「そうですね。分かりました。準備はこちらでしておきます。馬車なども手配しておきましょう」

「任せた。じゃあ行ってくる」

「はい。いってらっしゃいませ」

 

玄関までお出迎えしてくれたルシアと挨拶を交わして本拠(ホーム)を後にするレン。

ルシアもそれを見送った後、準備に取り掛かった。

 

 

 

数刻経って夕暮れ頃、オラリオの街ではちらほらと迷宮(ダンジョン)から帰る冒険者の姿が見られる。

そんなオラリオの西区画。

『眠りの館』に再び訪れたレンはそこで思いもよらぬ神物(じんぶつ)と顔を合わせた。

 

「「あっ」」

 

【ヒュプノス・ファミリア】副団長のアマゾネス、レイラに案内されるがままに待合室に来たレン。

バッタリと神友のバルドルと出会う。

 

「よぉ」

「…どうも」

 

戦争遊戯(ウォーゲーム)以来、微妙な空気が続いていたため、バルドルが気まずそうに目を逸らす。

要するに喧嘩の後始末ができていなかった二人の関係はギクシャクしていた。

 

「そういえばまだ仲直りしてなかったな」

「そう、ですね」

 

バルドルと同じソファーにレンが腰を下ろし、バルドルはすすっと横に移動する。

二人の間に物理的にも間が開き、レンは苦笑いした。

 

「オーズが居たらきっと俺達の間に入って仲直りさせようとするんだろうなぁ」

「確かに。彼ならばそうするでしょう」

「懐かしいな」

「ですね」

 

二人の空いた間に本来ならば居るはずの神物(じんぶつ)

オーズ。

レンにとっては初めて神友、バルドルにとってはよくお節介を焼いてきたお人好しの神友(とも)

そもそも彼がいたら喧嘩など起こらなかっただろう。

 

「レンは…何故リュー・リオンを選んだのですか?」

 

突然リューの話を振るバルドル。

レンは少し考えた後、素直に話した。

 

「理由は二つくらいかな。分かるか?」

「一つは…彼女に貴方の過去を被せたからでは?」

「ま、正解だな。あいつは復讐を終えた後だ。俺が昔、アフロディーテ(変態女神)と帝国に行った時とそっくりな目をしてる」

「なるほど…。確かアマゾネスのアン――」

「そこから先は言わなくていい」

「失礼。失言した」

 

レンの触れてはいけない部位(過去)に思わず触れてしまったバルドルはすぐ撤回する。これにはレンも責めない。

 

「ところで、もう一つは?」

 

話を戻してもう一つを尋ねるバルドル。

 

「そうだな…。バルドルは、俺が何故ファミリアを作ったか分かるよな」

「…オーズの仇を取るため。()を殺すためです」

「そうだ。酒場の時点では作る気はなかったが、俺にもファミリアができた。それはまあ予防線みたいなものだな。俺()でもし殺れるに足りなかった場合の」

「そうですか…。そこまでは納得できました。ですが、未だに納得出来ないのは何故リュー・リオンなのか、です。彼女の事を理解できる貴方だからこそ、彼女は選ぶべきではなかったはず…」

 

一度は要注意人物一覧(ブラックリスト)に載ってしまったリュー。

殺人や罪を犯した過去があり、今でも彼女に恨みを持ち、その首を狙う者はいる。

かつて消えた名が今となって復活したなら尚更だ。

そんな危険要素を大量に含む人物を欲した訳、それがバルドルの知りたい答えだった。

 

「お前の考えは最もだ。だが、俺にも考えがある。俺にとってあいつは危険要素を持っていることが良いんだ。冒険者が成長するにはできるだけ多くの障害が必要だからな」

「……!そこまでには…至りませんでした…」

 

知らなかったレンの思惑。

その全貌にバルドルは戦慄を走らせる。

そこへ、ヒュプノスが入室してきた。

 

「「遅い」」

「…ごめん」

 

開口一番謝らせられるヒュプノス。

レンとバルドルはもう慣れっこなので互いに苦笑いを交わしあった。

 

「あれ…なかなおり。した?」

「どうだか。必要なやつが居ないんで分からんな」

「とりあえず誤解は解けましたよ」

「そう。よかった」

 

二人の間に流れる空気の微妙な違いにヒュプノスが気付き、レンとバルドルで用意された珈琲を口にする。

ようやく神友同士で揃った図に三者共に自然に頬が緩んだ。

 

「なんか、久しぶりな気がするな」

「わたしもそうおもう」

「なにせ三人しかいませんからね。一人欠けるだけで寂しいものですよ」

「欠けたのはお前だけどな」

「いいえ、貴方です」

 

レン、バルドル共に違和感に気付く。

そして、同時にヒュプノスを見た。

 

「まさかお前バルドルと会ってたのか!?」

「まさか貴方レンと会っていたのですか!?」

「うん。わたしちゅうさいのやくわりだし」

「うるせえ!仲裁になってねえよ!」

「ほんとですよ!仕事してください!」

「ひどい」

 

二人に責められるヒュプノス。

そんな馬鹿みたいなやり取りでまた一笑。

完全に三人の仲は戻っていた。

 

「そういえばレンは何しに来たのですか?」

 

珈琲を口に加え、尋ねるバルドル。

もう仲を取り直したバルドルにレンは一連の流れを全て説明した。

 

「なるほど…。中々厄介なことが起きてますね」

「ヒュプノスが狙われてるってのが問題だよな…」

「だいじょうぶ。ふたりがきっとわたしをまもってくれる」

「おい、バルドル。もし危機が迫ったらこいつを身代わりにしようぜ」

「賛成です」

「ひどい」

 

冗談を交わしつつも話は真剣に進んでいく。

 

「私も手伝いましょうか?」

「助かるっちゃ助かるが…お前、もう愛想尽かしたんだろ」

「結局レンに頼ってるなら同じですよ…。それに、今回は初めて事がでかいです。協力しますよ」

「そうか。なら助かる」

「ありがとう」

 

バルドルも協力することになり、話は明日帝国に行くというものになる。

これにはバルドルも顔を渋らせた。

 

「帝国ですか…。オラリオから少し離れることになるとファミリアが心配ですね」

「もしかしてバルドルが付いてくるのか?てっきり眷属を貸してくるのかと…」

「ヒュプノスの命が掛かってますから私も行きます。それと眷属()だけを付かせるのは実は少し不安なのです」

「不安?」

「はい。どういう訳かうちは癖の強いものしかいないので…」

「なるほどな」

 

ライオネルやガイを思い浮かべながらレンも納得する。

他にもまだ目にはしていないが戦闘を好むリョーカというオラリオ最強と謳われるエルフ剣士、【バルドル・ファミリア】の団長。

まともな者といえばマリウスくらいだ。

 

「『光の騎士団』だっけか?そいつら全員変わり者なのか」

「まあ間違ってはいませんね。あとその名前は恥ずかしいので止めてください」

「だよな。やっぱ恥ずかしいよな」

「はい…」

 

恐らく外部に付けられたであろう【バルドル・ファミリア】上層部の名称。

随分と恥ずかしい名だな、と思っていたレンだが本人も感じていたことに神友なだけあって安心する。

 

「俺にはリューやルシア、あと時雨がつく」

「時雨とはあの時雨ですか?レンに一時期しつこく師事を求めてきた人族(ヒューマン)の…!」

「しぐれ。わたしもおぼえてる」

「そうそうそれそれ」

 

時雨については会ったことのあるバルドルとヒュプノス。

思い当たる人物がレンの眷属となったのを知ってバルドルは感慨深く思う。

 

「まさかあの人族(ヒューマン)を眷属にするとは…。やっと夢が叶ったのですね、彼女の」

「いや、別に弟子にはしてねえから。勘違いするな」

 

未だに師事を受け入れてないレンは呆れながらツッコミを入れる。

バルドルもなんだ…とあの難解な性格を知っているからか何処か安心した。

 

「脱線したな。ヒュプノスはもう付ける奴は決まってる。バルドルはどうする?流石に誰も護衛を付けないってのは危ないだろ」

「そうですね…。私はレンみたいに戦えるわけではありませんから。マリウス辺りを連れていきますよ」

「マリウスか…。良かった。常識人だ。いや、エルフか」

 

失礼にもホッと胸を撫で下ろすレン。

気持ちは分かるバルドルは苦笑いしかできない。

 

「じゃ、これで決まりだな。絶対眷属を一人は付けることを条件で明後日帝国に行こう」

「はい。私にも準備期間が必要ですが、一日で必ずこなしてみせます」

「あしたっていった。なのにあさって?わたしはいつになったらねれるの…」

「寝るな、は酷だから今日は寝ていいぞ」

「その代わりに明後日には起きてくださいね」

「えぇ…」

 

見てわかるほどに肩を落とすヒュプノス。

だが、協力してくれる神友達を無下にするわけにもいかない彼女は仕方なく頷く。

 

「わかった…。がんばる」

 

元々これでバルドルを怒らせてしまえば今度こそ縁を切られそうだった。

もはや断る理由などないだろう。

 

「決まりだな」

「えぇ」

「がんばる…」

 

それぞれ決心し、頷き合う。

そこへ対談室の扉をノックする音が室内に響いた。

 

「いいよ」

 

ヒュプノスが許可を出す。

扉を開けて入室してきたレイラが神々に礼をし、レンには目を逸らされたが、それでも気にせず自らの主神に伝えた。

 

「きゃく?だれかきたの…?」

「はい。神アフロディーテ様がお見えになっています」

「なっ…!?」

 

珍しくヒュプノスに来訪客が来たかと思えば、衝撃の名前にレンがレイラを見てしまうほどに驚く。

その際、レンに視線がいったレイラは目を完全に開き、凄まじい表情をしていたヒュプノスを見逃した。

 

「いいよ、通して」

「は、はい」

 

いつものおっとりした口調が掻き消えたような気がする声音にレイラはただ指示に従い、アフロディーテを案内してきた。

 

「やあ」

 

突然訪れたアフロディーテは朗らかな笑みを彼らに向け、子供たちたけでなく、神さえも魅了してしまいそうなその容姿を見せた。

 

「アフロディーテ…」

「珍しいお客ですね」

「……」

 

友好的に挨拶したはずのアフロディーテだが、返ってきたのは顔を顰めるレンの目線、目線すらくれないバルドル、そして…。

 

「そんなに僕のことが嫌いかい?ヒュプノス」

「気安く名を呼ぶな。アフロディーテ」

 

普段とは全く違う。

ハキハキと喋るヒュプノスの姿がそこにはあった。

レンとバルドルは対して驚きはしない。

稀に意識が完全覚醒したヒュプノスを見たことがあるからだ。

それも高頻度でアフロディーテと出会った時に。

 

「はははっ。そんなに睨まないでおくれよ」

「汚らわしい。早く消えろ」

「五月蝿いな。用があるのは君じゃないよ」

 

態度を変えてくれないヒュプノスにアフロディーテも冷たく出る。

あっちがそれならこっちも、というやつだ。

 

「用があるのはレンさ」

「ここは私の館。出ていって」

「一度通しておきながらそれとは…傲慢だねぇ」

 

レンと話したいのにヒュプノスが邪魔をする。

この調子ではレンとは話せそうにないと思ったアフロディーテは身を翻す。

 

「また来るよ。今度はレンの本拠(ホーム)に」

「行くな。レンが苦しんだのは誰のせいだと思っている」

「さぁ?僕には分からない」

「貴様…」

 

レイラが見たことのない表情でアフロディーテを睨むヒュプノス。

この間特にアフロディーテに興味を示さなかったバルドルも密かに目つきを険しくしていた。

全く歓迎ムードではない一同にアフロディーテは「やれやれ」と呆れたように対談室を後にしようとし、直前で振り返る。

 

「レン。帝国に行くなら気をつけた方がいいよ。帝国は僕等が知っているものから様変わりしているからね」

「…ご忠告どうも」

「特にとある科学者には気をつけるといい。では僕はこれにて」

「……」

 

言い残すことを言い残してアフロディーテは『眠りの館』を去った。

犬猿の仲であったヒュプノスはアフロディーテが居なくなってすぐレンを見遣る。

 

「れん。だいじょうぶ?」

「あぁ、悪いな」

 

さっきまでの饒舌振りはどこへやら。

普段の口調に戻ったヒュプノス、彼女は真っ先にレンを心配してレンも彼女に感謝した。

 

「思わぬ神物(じんぶつ)と出くわしましたが、我々の目的は変わりません。明後日に帝国に行きましょう」

「まあ大して干渉をしてこなかったけどな。忠告については気を付ける程度でいいだろ」

「あんなやつのいうこときにしなくていい。わたしたちならだいじょうぶ」

「はは…かもな」

 

相変わらずアフロディーテを毛嫌いしているヒュプノスにレンは苦笑いで同意する。

帝国行きについて詳細が決まったことによりここらで解散という話になった。

 

「それじゃあ明後日」

「また会いましょう」

「あの女神(おんな)…こないよね?」

「来そうだからそういうの言うのやめろ」

「ごめん」

 

最後にいつも冗談を交わし、それぞれ帰る場所へと向かった。

一人残ったヒュプノスは誰もいなくなった玄関で呟きを漏らす。

 

「やっぱりれんがふぁみりあをつくったりゆうは()()()…」

 

三神で掲げた復讐。

あの漆黒の竜が奪った命の報復。

ふと悲しげにそれを思い浮かべながらヒュプノスは再度呟きを漏らした。

 

「オーズ…」

 

今度は旧き神友の名を。

三神をつなぎ止めていた掛け替えのない彼。

同時に、漆黒の竜が奪った命だった。




ダンまち×銃のSSがあったので受け入れて貰えると少し期待しております
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