罪を犯したエルフをファミリアに誘うのは間違ってるだろうか(凍結)(メインタイトル関係なし)   作:伊つき

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ヒリュテ姉妹の名前を間違えてしまった…


第26話

キメラ・ホムンクルスならびにヴィオラス・ホムンクルスを討伐したレン達。

疲弊した体力や傷付いた身体を治療した後、これから出会うであろう錬金術師の認識を改めるべきだと考えた。

 

「まさか合成獣(キメラ)まで作っていたとは思わなかったな…。あんな化け物を作れるとか相当イカレてやがる」

合成獣(キメラ)……なるほど。先の怪物が私達の見知った攻撃やギミックを出すと思えばそういうことでしたか」

「キメラ…?」

「えっと…ごめん、どういうこと?」

「わたしもわからない。あとねむい」

「あー…説明頼めるか、ルシア」

「はい」

 

ルシアに丸投げするレン。

任されたルシアは何一つ文句も言わず主神の頼みに従う。

 

「キメラ。ホムンクルスのように錬金術で様々な生命体を融合させる技術で生み出された人造怪物(モンスター)です。あらゆる部位が不安定なので進んで作ろうとする者は少ないですね」

「人造、怪物(モンスター)……初めて聞きました」

「なるほどね。見覚えのあるっていうか完全に迷宮(ダンジョン)怪物(モンスター)を融合させていた、というわけですか」

「恐らく。あれは地上に放たれた怪物(モンスター)を使ったものかと」

「大体が中層までの怪物(モンスター)でした…。それにはそんな理由があったのですね」

 

大昔、地上に放たれてしまった怪物(モンスター)達。

その大半は迷宮(ダンジョン)の奥深くにいるような強さを持つものではなく、強くても中層までの怪物(モンスター)だった。

最も迷宮都市外の冒険者にとってそれだけでも脅威なのだが、それはそれこれはこれ。

黒幕の錬金術はそんな地上にいる怪物(モンスター)の中でも中層にいるようなものを中心に集め、合成獣(キメラ)とした。

未だ見解の域を出ないが、ほぼ正解だろうと研究所に潜り込んでいる誰もが思う。

 

「中層の怪物(モンスター)でも個々の能力を集結し、合成獣(キメラ)とすれば迷宮(ダンジョン)深層怪物(モンスター)に匹敵する…。レン様の言う通り、ここの錬金術士はかなりの実力を持つと同時に危険人物のようです」

「さらに警戒すべきか。確かにあれほどの人造怪物(モンスター)を生み出す能力は危険だ」

「というわけで急ごう。早くそいつをなんとかするべきだ。イオタ、引き続き案内を頼む」

「は、はい」

 

イオタに先を歩かせ、研究所内を下へ下へと降りていく。

三階程降りた所でイオタは足を止めた。

 

「この先にマスターの研究室があります」

「いよいよか」

 

鉄製の扉の向こうには黒幕の錬金術師が居る。

その事実だけでレン達に緊張感が走った。

 

「よし、開けるぞ?」

 

レンが確認すると全員が頷く。

それを合図にレンは扉を開け放った。

最初に目に映ったのは床から天井にまで届く円柱型の水槽。

中にホムンクルスの幼体がいくつも浮かんでいた。

それが何本か、室内に存在する。

中央には水槽に囲まれた机が一つ、卓上は散らかっていて周辺にもコードが沢山撒かれていた。

 

「あいつが、錬金術師…」

 

卓上で作業する一人の男。

彼を睨んでレンは呟く。

レンの声で男も振り返った。

 

「おや、お客さんかな」

 

細目に長身、手入れのされてない雑な黒髪は完全に伸びきっていた。

ビーカーを片手に持つその男。

錬金術師だ。

 

「こんなもの寄越してきたくせに初めましてを突き通すか?」

「おや。これは…」

 

レンによって投げ渡された残骸(もの)を見て錬金術師は顎にそっと触れる。

 

「あぁ、警備用の合成獣(キメラ)か。様子を見るに倒したと」

「あぁ、もうお前に逃げ道はない。合成獣(キメラ)のことを帝国政府に報告すればお前も終わりだ」

「終わり……ふむ」

 

何か考え込む仕草を取る錬金術師。

やがて、フッと笑みをこぼした。

 

「何がおかしい」

「いやはや失礼。確かにキメラのことが政府に知れ渡るのは不味い」

「そうか。悪いがお前を――」

「だがしかし、それは君達が無事に帰れたらの話」

「なに?」

錬金術師から敵意を感じ、刀の柄に触れるレン。

いつでも男の首を刎ねれる態勢だ。

 

「つまるところ…君達がここで死ねば私はこれからも私の目的を果たすことができるということさ」

「四肢を斬ってでも連れて帰る…!」

 

遂に本音を漏らした錬金術師、レンは彼の首を定めて抜刀する。

だが、その間に入る者がいた。

その数三。

 

「私を守ってくれ。ゼータ、エータ、テータ」

「「「御意」」」

「なっ!?」

 

ゼータ、エータ、テータと呼ばれたホムンクルスの少年達。

手に両手剣を握り、レンに襲い掛かってきた。

 

「くっ…!」

 

剣の技術はハッキリ言って無い。

が、個々の身体能力は凄まじいものだった。

 

「「やあっ!」」

「ぐうっ…!」

 

同時に放たれる蹴りをなんとか防ぐレン。

一度距離を取って刀を構え直した。

 

「お師匠様。今日はお師匠様一人ではありません。時雨も助太刀します!」

「え?あ、あぁ…。頼む」

 

一瞬呆気に取られたレンが頷く。

 

「もしや一人で乗り込んだ気だったのでは?私達も居ることは忘れずになさい」

「おや、リューさんも少し噛み砕いた口調でレン様に話されるのですね。意外です」

「え?あ…失礼しました」

「いや…いつも言ってる通り、無理に敬意は払わなくていい。そんなことより悪かった。つい、癖でな」

 

遠い昔の記憶を掘り起こしながらレンは謝罪を呟く。

暗殺稼業において複数で行動することは少ない。

仲間がいなかったわけではないし、共に行動しなかったわけでもない。

だが、どうしても単独の方に傾いてしまう。

冒険者だった時もそうだ。

あの頃は()()の眷属は自分一人だった。

その頃の癖が出たのだろう、とレンは静かにほんの一瞬記憶に耽ったがすぐに切り替える。

 

「イオタ。あいつらはなんだ。ホムンクルスなのは分かってる」

「ゼ、ゼータ達は僕の前に産まれた三つ子です」

「なるほどな。道理で連携が上手いと思った」

 

兄弟のような括りになっている彼等はきっと共に行動することも多く、戦闘面では連携を鍛えていた。

先程の戦闘とイオタの話だけあればそこまでくらいなら読み取れる。

 

「おや、イオタじゃないか」

「あ…」

 

イオタの存在に気付いた錬金術師。

どういう訳か、レン達側についている少年に怪訝そうにした。

 

「おい、まさかあっちに付く気じゃないだろうな」

「ひっ!?ぼ、僕は――」

「いや、ただでさえ不完全だというのに私を裏切る粗悪品にもう用はない」

「え?」

 

レンにビクついていたホムンクルスの少年は親とも言える錬金術師から放たれた冷たい声音に固まる。

思考が停止した後、これから何をされるのか予測がついたイオタは顔が青ざめる。

 

食屍鬼(グール)化だ、イオタ」

「や、やめ――アガッ!ガガガガッ!グギッ、ガゴッ。嫌…ダァッ!」

「なっ――」

「「「……!?」」」

 

突如、レンの隣で身体が変化していくイオタ。

関節はおかしな方向に折れ曲がり、歯は凶悪なヴァンパイアのように尖り、腰や背からはもはや何のものかは把握できない気色悪い強靭な触手が彼の肌を突き破って突出した。

暫くして苦しむのを止めたイオタだったものがゆらりと立ち上がる。

 

「おい、まさか…」

「……」

 

グチュグチュと不快な音を引き摺るイオタ――否、食屍鬼(グール)

その眼光はゆっくりと、確かにレンを捉える。

 

「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛……!!」

「お師匠様、避けて!」

「時雨!?」

 

本能のままに噛み付いてきた食屍鬼(グール)を、レンを押し退けた時雨が抜刀して防ぐ。

だが。

 

「ぐっ…!」

「ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!!」

「きゃあっ!?」

 

進行を止められたのが怒りに触れたのか食屍鬼(グール)が激昂と共に時雨を吹き飛ばす。

時雨はパイプに背中を強打した。

 

「っあ…!ち、力強い…!」

「ア゙ア゙ア゙ア゙■■■■…」

 

凄まじいパワーに圧倒された時雨。

倒れ伏せる彼女の首を食屍鬼(グール)が掴む。

 

「ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!!」

「うぐっ…!あああ…!」

「時雨!」

 

苦痛で表情を歪める時雨にレンが駆け寄ろうとするが、その前を三つの影が塞ぐ。

 

「お前は」

「絶対に」

「行かせない」

「邪魔だどけええええ!!」

 

時雨とはリュー達より少し前からの付き合い、怒りで激昂するレンは赤刀身でデータ達を薙ぎ払おうとする。

 

「ゼータ、エータ、テータ。君達も働き次第では食屍鬼(グール)だ」

「「「……ッ!?」」」

 

錬金術師の言葉に絶句するゼータ達。

瞬間、彼等も激昂した。

 

「「「うああああああああああああああああああああ!!!」」」

「このクソ錬金術師が!」

 

イオタのように我を失いたくない。

死に怯える感情を持つ彼等には恐怖がある。

恐怖に支配された彼等は必死になってレンを妨害し、レンは最低な錬金術師を怒気を込めて睨み、ゼータ達の対応に追われる。

 

「なんて、惨い…。こんなことが許されてたまるものか!」

「リューさん!?」

 

密かに怒りを溜めていたリューがルシアの制止を振り払って駆ける。

小太刀が見据える首は錬金術師だ。

 

「殺す!」

「お帰り。カッパ、ミュー、ニュー、クシー」

 

『あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙!!!』

 

「なっ……」

 

錬金術師に接近は出来たリュー。

だが、壁をぶち破って新たに四体の食屍鬼(グール)が出現する。

その容姿の片鱗をリューは見覚えがあった。

それはリューが捉えたホムンクルスの少年達。

死に怯える彼等を、リューが見逃した命だった。

今、その命は食屍鬼(グール)の本能で犯されている。

 

「下種がっ!」

『あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙!』

 

さらに怒るリューと四体の狂う食屍鬼(グール)。双方の殺し合いは残酷にも繰り広げられた。

 

「うぐっ…ああっ…!」

『ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!』

 

今も尚苦しむ時雨。

そこにアマゾネスが蹴りを入れる。

 

「いい加減離しなさい!」

『ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙』

「かはっ!……ゲホッ!ゲホッ!」

 

レイラの介入で時雨はやっと解放された。

だが、目の前の食屍鬼(グール)は敗れたわけではない。

さらに襲い掛かる。

 

『ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!』

「可哀想だけど、私は容赦しないわよ?」

 

時雨の代わりに食屍鬼(グール)とぶつかり合うアマゾネス。

ルシアは彼等彼女等の交戦を潜り、一人で錬金術師を狙う。

 

「貴方のような非情な方は久しぶりに会いました」

「そうかい?私は割と会ってるけどね。あとプレゼントだ」

 

『■■■■■■■■■■■■■■■■――!』

 

()()()ですか…!」

 

さらに出現した六体の食屍鬼(グール)

ルシアは後退を余儀なくされた。

 

「レン様。退きましょう!」

「あぁ!」

 

戦力差を理解したルシアが叫び、レンが同意する。

この状況で反論するような者はおらず、怒るリュー以外は入口に集まった。

 

「おい、リュー!なにしてる!」

「先に行ってください。私はもう止まれない…!」

 

『あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙!!』

『ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!!』

『ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"、ア゙ア゙』

『ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛■■■■■■■■――!』

 

「クソ…!」

 

出入口付近にまで戻ったレン達と奥で多数の食屍鬼(グール)等を相手にするリュー。

助けに行こうにもレン達の前にも食屍鬼(グール)が迫り、簡単には行けそうにない。

ハッキリ言ってレン達が見ている光景は、地獄だ。

 

「リューさん…!」

「ルシア…」

 

リューも気付いたのか周辺にいる食屍鬼(グール)に絶句する。

(ルシア)の叫びにも応えられなかった。

 

「ルシア。……行くぞ」

「レン達、正気ですか!?リューさんがまだ――」

「よく見ろ。俺達の後ろには誰がいる?」

「あ…」

 

ふと疲弊している時雨やレイラ、その後ろを見遣る。

ここまで守り抜きながら連れてきた神達(バルドルとヒュプノス)

非力な二神を従えてあの地獄へと突っ込んでいけばどうなるだろうか。

ルシアはリューを助けに行くことを決断して予知を見る。

 

「……ッ!」

 

映った予知は最悪そのもの。

即ち、全滅。

 

「そん、な…」

「ルシア。お前が決断しろ」

「レン…様…」

 

恐る恐るリューの方に視線をずらす。

 

『ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!』

『ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!』

 

「はあっ!!」

 

未だ交戦するリュー。

食屍鬼(グール)を相手に二対の小太刀を振るう。

しかし、斬撃が浅いとダメージには残らず食屍鬼(グール)達は痛みがないのではないかと思い込んでしまう程に怯まない。

誰がどう見てもリューの方が劣勢だった。

 

『あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙!』

 

「しまっ――」

 

遂にルシアの元にも食屍鬼(グール)が襲い掛かってくる。

触手がルシアを貫こうとしたのをレンと時雨が刀で防ぐ。

 

「早くしろルシア!」

「魔道士さん!」

「あっ……いえ、そん、な…私には…」

 

(リュー)を見捨てるか、逃げてレン達を救うか。

結末は両方知ってる。

未来なら分かる。

だから、どちらを選ぶべきかなんてずっと前から決まっている。

ただ、リューを見捨てる一歩が。リューを殺す決断がどうしても出来ない。

 

「私は……」

「ルシア!このままじゃ全滅するぞ!」

「……ッ」

 

全滅。

その言葉がルシアの脳内に響く。

1を取るか、それ以外を取るか。

そもそも前者を取れば零になる。

――ならば。

ルシアは杖を握る、小さな震える手を抑えて決断した。

 

「リューさんを、見捨てます」

「……全員退くぞ」

 

リューは助けない。

それが他の全員が助かる道。

レンは目を瞑り、苦渋の決意を固めたルシアの頭をぐしゃりと撫でてやる。

 

「よく頑張ったな」

「……はい。ごめんなさい」

「謝るな。行くぞ」

「……」

 

『ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!!』

 

レンと時雨が抑える食屍鬼(グール)が吼える。

 

「うるさいです!」

「ふん」

 

『ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙――』

 

タイミングを合わせた蹴りを懐に喰らわせ、レンと時雨で吹き飛ばした。

それを合図に研究室に背を向ける一行。

リューを除いたレン、ルシア、時雨、ヒュプノス、レイラ、バルドル、威吹鬼は来た道を駆けて行った。

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