罪を犯したエルフをファミリアに誘うのは間違ってるだろうか(凍結)(メインタイトル関係なし)   作:伊つき

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第28話

錬金術師の研究所から逃げ仰せたレン達。

リューという犠牲を払った彼らは一度宿に集まり、深刻に話し合った。

時刻は夜、月明かりが帝国を照らす。

 

「……」

「……」

 

ルシア、レイラを筆頭に重い沈黙から始まる。

それを破ったのはレンだ。

 

「いつまで暗い顔をしている。俯いててもどうしようもないだろ」

「レン様…」

 

確かにレンの言う通り。

元はと言えばヒュプノスの命が狙われたからここまで来たのだ。

今更引き返すことはできないし、このままあの錬金術師を放置するいうわけにもいかない。

あれは危険過ぎる。それに、ヒュプノスの危機は未だに去っていないのだ。

 

「みんな。ごめん」

「謝らなくていい、ヒュプノス。問題はこれからどうするかだ。それ次第で結果はどうにでも変わる」

「レンは我々の勝機があると?あの食屍鬼(グール)合成獣(キメラ)を見ても言えるのですか」

「落ち着けバルドル。それを考えるためにこうして集まってるんだろうが」

 

少し口調を荒くするレン。

レンにとってもリューを見捨てたのは苦渋だったと、忘れそうになっていたことを全員が思い出す。

 

「すみません…」

「だから謝るなって」

 

気を使えなかったバルドルが謝罪し、ヒュプノスと同じことを繰り返した。

 

「まず俺達が負けた理由からいこう」

 

ルシア、レイラがドキリとする。

この場に何故かいない時雨を除いた戦闘組がこの二人だった。

 

「Lv.6。Lv.5。Lv.4。神の恩恵(ファルナ)を受け、ランクアップしたお前らの実力だ。それぞれ一人ずつ。戦力としては充分すぎる」

「……はい」

 

これにはルシアも頷く。

第1級冒険者が二人、第2級冒険者が一人。

たった三人でも一大勢力となりゆる驚異の集団だ。

だが、それが負けた。

 

「敗因は幾つかある。一つは情報収集。俺達は敵を知らなさ過ぎた。相手の出方にいちいち混乱していては実力があっても対応しきれない時もある」

「……確かに。大型派閥の遠征でさえも油断すれば壊滅という危機に陥る例があると聞きます」

「ろき・ふぁみりあとか?」

「ヒュプノス…。私はロキが嫌いだということを知っているでしょう」

「ごめん」

「まあいいですよ。えぇ、彼女のファミリアはとても大きな派閥ですが遠征内で危機がなかったことはないでしょう」

「奴らでも予想外のことが起きれば対応に追われる。そして、それで損失することもあるだろう。今の俺達がそれだ」

 

レンの言葉の重みが違う。

損失――紛れもないリューのこと。

悔しく思うルシアは内心全力で自身を罵った。

 

「リューさん…」

「……。次に連携と戦力配分だな。前者は合成獣(キメラ)戦の時は良かった。が、食屍鬼(グール)の時は酷かったな。全員がバラバラ。あれじゃあ壊滅しますと言ってるようなもんだ」

「リュー・リオンの独立行動。それに、魔道士であるルシアが錬金術師の元へ前線へ向かうというのも問題視するべきですね」

「申し訳、ありません…」

「焦り過ぎたな。あの時の最善は全員の援護だ。状況次第でお前が前に出るのはいいと思うが、あの場面でそれは愚策だ。それに…知ってたんだろ?後から出現した食屍鬼(グール)共のこと」

「……はい」

 

各場所で交戦する中をくぐり抜けて錬金術師と距離を詰めたルシア。

その後、六体もの食屍鬼(グール)が現れた時、彼女は『やはり』と言った。

それは千里眼で予め知っていたのに無謀にも間違った選択を選んだことになる。

 

「リューの怒りに同情した。リューのために自分が倒そうとした。そんなところか」

「レン様の仰る通りです。全ては私の…勝手な意地がリューさんを…」

「リューは死んだのか?」

「え?いえ…何度か試みましたが、見えません」

「ならまだ分からない」

 

え?とルシアが俯く顔を上げたと同時に部屋の扉が開け放たれる。

全員がそちらに注目すると、現れた時雨は息切れながらも笑顔を向けてきた。

 

「お師匠様!魔道士さん!ビッグニュースです!」

「生きてたか」

「……!?」

「はい!妖精さんは生きてます!」

 

ルシアだけではなく、この場の誰もが息を呑む。

リューの生存。

それに安堵する者もいれば、希望を見出す者も、何故時雨がその事を知っているのか気になる者もいた。

 

「時雨には一人戻ってリューの安否を確認しに行ってもらった」

「いやー、食屍鬼(グール)に見つかった時は危なかったです!」

「でも…どうやって?」

「そこは古典的ですが排気口をすすっと辿ってきました!」

「えぇ……」

 

普段人族(ヒューマン)といえども眷属(仲間)のエルフ達と引けを取らない容姿を持つ時雨。

そんな彼女がお転婆とでも言うように排気口を蛆虫(うじむし)のように進む図。

ルシアが想像して微妙な表情になった。

が、直ぐに切り替えて一番聞きたいことを尋ねる。

 

「時雨さん。リューさんはどうなりましたか?」

「えっと…時雨が見たのは妖精さんが食屍鬼(グール)に襲われて男の人に連れていかれた所までです」

「その男の正体は分かるか?」

「いえ…でも錬金術師と仲は良さそうでした!」

「ま、当然身内だろうな…。それにしてももう一人か」

 

顎に手を当てて思考するレン。

やはり情報が足りなかった。

そう思わされる。

 

「よし、取り敢えず俺からの提案だ。俺達が足りてない部分はまだある」

 

合流した時雨も含め、レンの言葉に聞き入る。

 

「俺達が思っていたより敵の戦力は上だった。特に数がな」

「確かに…。キメラにも食屍鬼(グール)にも前者は予想外の強さで、後者は予想外の数で押し通されました」

「そうだ。ならこっちにも数が必要だ。あと連携。さっきも言ったが実力があってもバラバラじゃ最悪こっちの戦力が下がる」

「……はい」

 

思い当たる節などいくらでもあるルシア達が頷く。

もう決して同じ過ちを繰り返さないと。

 

「連携については一日あれば充分だ。問題は数だが…最悪リューの穴を埋められればそれでいい。何せうちにはもう一人戦力がいるんだからな」

「あひゃひゃひゃ。それはワシのことか?」

「……」

 

ずっとバルドルの隣でダンマリを貫いていた鬼人、威吹鬼。

潜入の時に彼女は一度も戦わなかったのをレンは知っていた。

 

「お前……ほんとはなんで付いてきた?」

「そう怖い顔をするな。ワシはあくまで我が主の護衛として呼ばれたのであろう?ならばその責務を全うしようと思っただけじゃ」

「よく言う。バルドルを守る気なんてさらさらないことに気付かないと思ったか。お前の視線の先はいつもリューだった」

「ほう。勘づいておったか」

「……!」

 

まさか正解を出すとは思わなかったルシアが威吹鬼に振り向く。

そんな彼女にも愉快そうな表情を見せ、威吹鬼は自白した。

 

「そうじゃ。ワシはあの【疾風】とやらが気になって来たのじゃ。それ以外になんの目的もない」

「ほう。なら協力する気はないと?」

「ふむ。どうしても、と言うのならばワシも考えてやらんでもないぞ」

「そうか。ならお前は大好きなリューのとこにでも行け」

「レン様!?」

 

思わずレンに振り向くルシア。

予想外の指示に威吹鬼も目を見開いた。

 

「あひゃひゃひゃ。それにはどういう真意があるのじゃ?」

「別に。ただお前はリューにしか興味がないんだろ?それを利用する。俺達には準備期間が必要だ。仲間をもう一人揃える時間と連携を強化する時間」

 

指を二本立ててそれぞれ説明する。

威吹鬼はその様子を目を逸らさず見遣る。

 

「その間にリューが死んでしまう可能性はいくらでもある。お前にはそれを防ぐ係としてリューを監視してもらいたい」

 

ここで一拍空いて、口端を上げるレン。

威吹鬼も少し反応した。

 

「だから敵陣に乗り込む訳だが、もしかしてできない…なんてことはないだろうなぁ?鬼人」

「ほう。ワシの扱いは我が主より上手そうじゃのぉ。いいだろう、乗ってやるぞ元劣化種(ヒューマン)

「はっ、お前も煽りが上手い」

 

愉快そうな表情は消え、口端を吊り上げる邪気を感じる笑み。

レンと威吹鬼は互いにそれを交わし合い、威吹鬼は立ち上がってフードを羽織った。

 

「ではさっそく行ってくるかの。吉報を待つが良い」

 

それだけ言い残して窓に足を掛け、姿を消す威吹鬼。

それを見届けることもせず、レンは全員に目を配る。

 

「今後の予定を言う。ほら、ヒュプノス寝るな」

「ヒュ、ヒュプノス様…起きてください」

「ん……ねむい」

 

張り詰めていた場の空気が少し緩む。

それに乗じてレンも少し楽しげな口調に変化した。

 

「今日はもう月も出てる。全員疲れを癒すべきだな。で、明日だが…ある場所へ行こうと思う」

「ある場所?」

 

ルシアが聞き返す。

レンは頷き、確かにその言葉を放った。

 

「奴隷商人のところだ」

 

 

 

帝国の奴隷制。

そんなものは存在しない。

帝国では大昔にあった奴隷制を廃止し、新たな国家として生まれ変わった歴史があり、今も尚奴隷を扱う商人に対しては法罰が下されることになっていた。

だが、それでも人間というのは汚い者も少なからず存在し、非人族(デミ・ヒューマン)に偏見を持つ人族(ヒューマン)の奴隷商人は未だに消息を絶たなかった。

その逆も然り。

人族(ヒューマン)の奴隷を扱う非人族(デミ・ヒューマン)もいる。

隠れながらに奴隷商売をする彼等は帝国の法を破っても影でひっそりと鳴りを潜めて悪事に手を染めていた。

 

帝国東区域にいる奴隷商人・ケヴィン。

彼の元にレン達は訪ねてきた。

 

「おやおや、お客様。何をお求めで?我が店舗ではあの迷宮都市オラリオにあるような品質のポーションを数多く販売しておりますよ。うヒヒヒっ」

「御託は良い。お前の本業に用がある」

「なるほどなるほど。お客様はそちらのお客様でしたか。ウヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒ」

「……」

 

気色悪い歪んだ笑顔。

骨までビッシリと見えるほど痩せこけた細身の男にレン以外が顔が引き攣るのを我慢する。

レンはルシアと時雨を連れてきた。

二人を奴隷のように見せるため、汚い格好をさせて。

 

「お客様は既にお二人も所有されているご様子。他にもご所望を?」

「最近こいつらには飽きてな。どうやら虐め過ぎたらしい」

「おやおや。これはこれは素晴らしい奴隷使いの方のようですね、お客様」

「あぁ」

 

内心、クソ野郎がっと呟くレン。

決して表情には出さず、残念な奴隷愛用者として振る舞う。

こうでもしなければ相手に下手を取られて良質な奴隷を買えない。

質の悪い奴隷を握らされるからだ。

 

「では商売の話に移りましょう。お客様はどのような奴隷をお求めで?ウヒヒヒ」

「そうだな…。出来るだけ強くて戦闘力のある奴が望ましい」

「おや?それでは痛めつけるのに苦労するのでは?お客様?」

 

少しの矛盾に奴隷商人のケヴィンは詰め寄ってくる。

この男の前で下手な嘘は直ぐに見破られる。

それが奴隷商人というものだ。

だが、それを知っているのに対策をしていないレンではない。

 

「あぁ。確かに最初は苦労する。しかし、強い奴程俺に屈した時の表情が堪らないんだ。あんたなら分かるだろう?」

「ウヒヒヒ。なるほど、そういう訳で。お客様も中々良いお趣味をお持ちでございますなぁ」

「ははは、そう褒めるな。男でも女でも良い。活きの良い奴をくれ」

「はい。それでしたら奥へどうぞ」

「あぁ」

 

ケヴィンに導かれるままにテントの奥へと進んでいくレン達。

レンは道中後ろを見遣り、上手くいく傾向にルシアと頷き合う。

が、時雨の方を見ると何故か顔を青ざめていた。

不思議に思ったレンだが、今構えば怪しまれるし、このままなら奴隷として誤魔化しやすくなるので放置する。

当然後できちんと話は聞くつもりだ。

 

「腕に自信のある者ですとこちらになります。ウヒヒヒ」

「ほう。十は居るか」

「はい。それはもう…。中には剣闘士だったものや戦闘奴隷の過去を持つものも居ます。あぁ、そういえばなんとあのかの有名な迷宮都市外では珍しい神の恩恵(ファルナ)持ちもいますぞ。ウヒヒヒ」

「なに…?」

 

神の恩恵(ファルナ)持ち。

即ち、ステイタスを背中に宿しているということ。

その言葉にレンは興味を注がれる。

ケヴィンは予想通り、と気色悪いの笑みをさらに歪める。

「気になりますか?お客様。ウヒヒヒ」

「……そうだな。拝見しよう」

 

やられた、と思ったが好都合。

レンは案内されるまま一つの檻の前に立つ。

そこには十六くらいの少年、まだ幼い少女の狼人(ウェアウルフ)が居た。

外見の酷似からレンは二人を兄妹だと認識する。

 

「こちらの狼人(ウェアウルフ)は血縁関係にありまして、兄の方が神の恩恵(ファルナ)持ちでございます。ウヒヒヒ」

「ほう。ステイタスは?」

 

どうせ奴隷として扱っているからには知っているだろうとレンがケヴィンに聞く。

案の定ケヴィンは答えた。

 

「なんとLv.4でございます」

「なに!?」

 

レンだけではない、ルシアや時雨も目を見開く。

Lv.4となれば手練れ、第2級冒険者だ。

それをこの少年は……年相応の年齢だとしたら脅威である。

レンは自然と口端を上げた。

 

「良し。こいつに決めた」

「お目が高い!……ですが扱いはとても難しい故大丈夫でしょうか?」

「安心しろ。そっちのエルフはそれなりの腕を持つ魔道士で、そっちの人間は剣術に優れている」

「ほほう…」

「……!」

 

ケヴィンにギョロリと舐め回すように見られ、肩を揺らす時雨。

先程から様子のおかしい時雨は腕が立ちながらもレンには恐怖で抗えない。

そんな奴隷のようにケヴィンの目には写った。

 

「わかりました!良いでしょう!少々お高いですがよろしいですか?」

「構わん。金ならある」

 

強者であるが故に、もし手渡した奴隷愛用者が手違いで手放した時、Lv.4の狼人(ウェアウルフ)が野に放たれてしまう。

その危険性があってからか、渡す時にも注意を払っていたケヴィン。

だが、目の前の男は信用に値すると売った。

最も最初は推す振りをして他のものを買わせようとしたのだが。

レンの為にケヴィンが檻を開ける。

 

「ウー…ッ!」

「……」

 

レンが檻に入ってくると、足と首に鎖を繋がれた狼人(ウェアウルフ)の少年は会話を聞いていたからか、レンを警戒して唸りを上げる。

レンはそんなこと気にもせず、それより彼の首元にある紋章に目がいった。

 

「おい、これは?」

「奴隷紋といって奴隷商人の間で出回っている魔道具(マジック・アイテム)です。大昔、凄腕の賢者が作った代物で奴隷商人の間で流通したと聞いております。ウヒヒヒ」

「なるほど。Lv.4が縛られてるわけだな」

「はい。ですので万が一のことがない限りは安全でございます。間違っても解除したり、奴隷を手放したりしないようお気をつけを。ウヒヒヒ」

「あぁ、分かってる」

 

言葉の中に何度も念を押す奴隷商人、ケヴィン。

レンは頷き、手続きを済ませる。

これで狼人(ウェアウルフ)の兄妹はレンの物となった。

 

「今日からお前の主は俺だ。はははっ、お前の屈する顔を見るのが楽しみだぜ!」

「ウーッ!!」

 

わざと悪役を演じるレン。

警戒を強める狼人(ウェアウルフ)の少年を強引に連れ出す。

奴隷紋のお陰か、狼人(ウェアウルフ)は抵抗できない。

 

「奴隷紋の項目チェックはお忘れずに。では良い交渉に感謝を。ウヒヒヒ」

「ありがとう。いい買い物ができたよ」

 

狼人(ウェアウルフ)の兄妹を引き連れてルシア達とテントを後にするレン。

正規の道に戻ると直ぐに宿へ戻った。

 

「良し。いいやつを見つけた。期待以上の成果だったぞ!」

「ウーッ……ウ?」

 

妹を庇うように唸っていた狼人(ウェアウルフ)の少年だったが、部屋の中にいる者の服装が奴隷が着るようなものではないことに首を傾げる。

だが、直ぐに彼らも共犯(グル)なのかと目付きを険しくしたが、隣にいた奴隷と思っていたルシアや時雨も汚い服を脱ぎ捨てて奴隷が着るには少し豪勢な格好になる。

特にエルフの少女の方は。

 

「上手くいきましたね。レン様にまさかあんな特技があるとは……」

「慣れてるだけだ。おい、ガキ共。お前らの名前はなんだ?」

「は…?」

 

突然名前を尋ねられ、困惑する狼人(ウェアウルフ)の少年。

その隣の何処か弱った狼人(ウェアウルフ)の少女も咳き込みながら同様の反応を見せる。

 

「ほら、早くしろ」

「ゼ、ゼルフィ・レリウス…」

「ゴホッ…ラーファ…ゴホッ!……レリウス、です…」

「ゼルフィとラーファか。妹の方は病気持ちか?だから、強いのにお前は奴隷なのか」

「なっ!うるせえ!関係ないだろ!」

「あるさ。()()俺はお前のご主人様だからな」

「……ッ!言っておくが妹に手を出したらお前を殺す!」

「はいはい。言ってろ言ってろ」

「この…!」

 

主に嫌悪を抱き睨んでくるゼルフィ。

レンはその視線を流して、ルシア達の方に声を掛ける。

 

「ルシア。ラーファの方の治療を頼む。お前の魔法で全快するならいいが、無理そうなら万能薬(エリクサー)を買ってこい」

「は…?」

「はい。宜しいのですか?」

 

同時に首を傾げるゼルフィとルシア。

ただ後者は振り(フェイク)

 

「構わん。必要経費だ」

「分かりました」

「なん…で…」

「時雨。お前にも話が――」

「なんで!!」

 

室内に響く声。

疑問を爆発させたゼルフィがレンをキッと睨んだ。

 

「なんで…妹を助けてくれたりするんだ。痛めつけるんじゃないのかよ…」

「?言ってることがよく分からん。それは俺になんのメリットがある」

「はぁ!?あんたテントで言ってたじゃないか!」

「あぁ。あれは全部嘘だ」

「なっ!?」

 

驚愕に驚愕を重ねるゼルフィ。

肩をわなわなと震わせた。

 

「あんたはどういうつもりで俺達を買ったんだ…?」

「仕方ない、後にして欲しいんだがな。教えてやるよ」

「……ッ」

 

これから聞く真実に喉を鳴らすゼルフィ。

レンの口から全てを聞く。

リューを解放するため。

戦力増強のため。

それさえ終われば奴隷紋も解除して自由にするなりなんでもしろと告げる彼にゼルフィは混乱した。

 

「アンタ達…一体…」

「俺はレン。人から成り上がったものだ。そもそも奴隷制を許容した覚えはない。最終手段としてお前らに頼ったわけだ」

「お前、ら…」

 

ふと妹のラーファを見るゼルフィ。

レンの目には弱く使えない彼女を見捨てる気は感じなかった。

 

「妹は救ってやる。だから、今は抵抗せずに手伝え。お前の力が俺達には必要なんだ」

「……」

 

レンは嘘をついてない。

それくらいゼルフィにも分かる。

だからこそ戸惑った。

暫く考えてゼルフィは結論を出す。

傍らに咳き込む妹を視界に捉えて。

 

「分かった。そのあんた達の仲間を助け出せばいいんだろ?そしたら妹を、俺達を解放してくれる……本当か?」

「あぁ。本当だ。なんなら証明してもいいが…」

 

その前に、とレンは時雨に目を移す。

先程からずっと聞きたかったことがあるからだ。

 

「時雨。あいつか?錬金術師の仲間って」

「はい…お師匠様の言う通りです。あの奴隷商人が錬金術師の仲間です」

「やっぱりか。それで顔色悪かったんだな。よく頑張った」

「い、いえ…」

 

そっと撫でてやるレン。

敵を目の前にして我慢した時雨を褒めてやる。

そして、そのまま今度はルシアへと話を振った。

 

「決まりだ。ゼルフィへの証明と錬金術師の仲間を潰す意味を込めて…ルシア、お前のやり方でいい。あの奴隷商人と帝国の奴隷組合を手当り次第にぶっ潰してこい」

「……!?」

「了解しました」

 

突如、ルシアに下った命令に目を見開くゼルフィ。

続いてバルドルが挙手する。

 

「レン。私も手が空いています。何かしましょうか?」

「そうだな。じゃあ万能薬(エリクサー)を買ってきてくれ。ルシアの手が空かなくなったからな。俺は他に用がある」

「わかりました。任せなさい」

「時雨、お前はルシアにつけ」

「はい!お師匠様!」

 

全体に指示を出し終えたレン。

ゼルフィとラーファが目を丸くする中、レンはそんな二人の狼人(ウェアウルフ)に笑みを見せた。

 

「ゼルフィ、ラーファ。目に焼き付けておけ。これが【ファミリア】だ」

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