罪を犯したエルフをファミリアに誘うのは間違ってるだろうか(凍結)(メインタイトル関係なし) 作:伊つき
活動報告に既に上げているのですが、リアルの諸事情により多忙な期間に入りましたので来週辺りまで休止することをこちらでも報告しておきます。
パラケルススにはもう一つ研究所がある。
否、一つどころではない。
探せば世界中にあるだろう。
ただ帝国にはレン達に突き止められたものの他にもう一つ、存在する。
そこに一時的避難をしたパラケルススは国を出る準備に取り掛かっていた。
「余裕があったのにそこまで焦る理由はなにでごじゃるか」
研究室でパラケルススに問い掛ける声。
女性の整った美しいものだ。
「ケヴィンの奴隷で
軽い口調で影に返すパラケルスス。
影は少し間を空けた後、口を開いた。
「拙者が手伝った理由を忘れてないでごじゃるか?」
「忘れてないさ。君のその口調で語られる事はそう簡単にはね」
「……」
「ま、
「確かに。パラケルスス殿の目的を考慮するならばそれが取るべき手段ではあるでごじゃるなぁ」
「その通りだ」
やっと理解してくれたか、と苦笑いするパラケルスス。
が、一閃、彼の頬をクナイが掠めた。
「……ッ、これは、何を間違えたのかな?」
頬を伝う血液に身の危険を感じながら何処で地雷を踏んだかを考える。
しかし、分からない。
影に隠れる彼女の表情は全く読めないのだ。
「拙者との約束、忘れたとは言わせないでごじゃるよ。帝国を去る前にまずはそれを果たしてからにするでごじゃる」
「……正直。今逃げないと私も君も危ういと思うんだがね」
「それでもでごじゃる。約束を果たした暁には何処へ逃げるにも手助けするでごじゃる」
「分かった。まあどうせ同意しなければ脅し続けるか殺すかするのだろう?ならば乗るしかないという訳だ」
「物分りが良くて助かるでごじゃる」
影の女は機嫌を直したのか、クナイを仕舞う。
パラケルススは笑みを絶やさないながらも安堵した。
「一つ、質問をしたいのだがいいかな?」
「何でごじゃるか」
影のうちへと消えてしまいそうだった彼女を呼び止める。
「もし仮に君との約束を果たしたとして私は本当に逃げ切れるのかな?いや、最悪私は死んでもいいが、私の悲願は間に合うのか聞きたい」
「心配ないでごじゃる。拙者がなんとかするでごじゃる」
曖昧な事を言うのでさらに念を押してみる。
また機嫌を損ねてしまうのではと感じていたパラケルススだったが、彼女は意外にも怒気なく答えてくれた。
「確かに。第一級冒険者や第二級に拙者はステイタスの部分で劣るでごじゃるが、拙者は特殊ゆえ大丈夫でごじゃる」
「ほう。それは興味深いね。レベル差を覆す技量を君は持つというのかい?」
「もっと単純でごじゃる。何も勝てるとは言ってないでごじゃる。拙者の得意とするのは暗躍や罠、そういう類でごじゃる。時間稼ぎには充分なるでごじゃろう?」
「なるほど。その言葉は虚言ではなさそうだね」
嘘はついていない。
錬金術師のパラケルススでも分かる彼女の真に、パラケルススは信頼した。
レン達に合流する為に宿に向かったリュー達。
三日間捕らわれていたリューは無事レンやルシアと再開することになった。
「良かった…リューさん。本当に…良かった…」
「ルシア…もう五回目ですよ」
小さな身体に強く抱き締められるリュー。
再開してからルシアがこうして離れてくれなかった。
ルシアの気持ちはリューにも分かる。
だから、言葉とは裏腹にしっかりと背に手を回して抱き返していた。
「あー、そろそろいいか?」
再開を喜ぶ二人に水を差すのは悪いと思いながらレンが声を掛ける。
ルシアは涙を拭ってリューから離れ、リューと共に頷いた。
「すみません」
「いや、謝らなくていい。リューが無事なのは俺にとっても喜ばしいからな。ただパラケルススを逃がす前に研究所を襲撃したい。もう全員準備はできてるんだ」
「はい。分かっています。私も準備は整っております。レン様、出発ならばいつでも」
「私も大丈夫です。行きましょう」
「あぁ」
ひとしきり泣いたルシアと良き友を持ったと感慨深く感じていたリュー。
二人共切り替えて出撃準備完了をアピールする。
レンはそれを確認して全員を見遣る。
レン、リュー、ルシア、時雨、ヒュプノス、レイラ、バルドル、威吹鬼――そしてゼルフィとラーファ。
「今更なのですが……彼等は?」
「道中説明する。行くぞ」
一刻でも遅れればパラケルススを逃がす恐れがある。
その事からレンを筆頭に直ぐに宿を後にした。
道中、ゼルフィ達が奴隷だと知ってリューは絶句したが、レンの考えを改めて聞いて認識を改める。
レンは非情に見えて非情になりきれない
ハッキリとは分からない。
レンの
リューは色々と考えながらも一行と共に研究所へ急いだ。
「着いたか」
宿から一時間程で辿り着いた研究所。
結論から言えばもぬけの殻だった。
一つ、収穫があったとすればそれは――。
「リュー」
「ガンマ…!」
対面して顔に歓喜を表すリュー。
研究所にはガンマが居た。
ガンマの存在を知らないレン達は彼のことをリューに尋ねる。
「おい、リュー。こいつは?」
「ガンマ。私を救ってくれた人です。彼は敵ではない」
「そうか…。ひとまず信じるか。ホムンクルスが本当に味方か怪しいがな」
「え…?」
「……」
レンの言葉の一部に首を傾げるリュー。
レンは一瞬彼女が何故呆けているのか理解出来なかったが、大体察した。
「こいつはホムンクルスだ。まさか気付かなかったのか?」
「そんな…」
「……」
ガンマを見遣るリュー。
彼の装備は変わっており、黒いローブで隠された身体にはチラホラと鉄器が見える。
背には大きな筒状の物を背負っていて、それも覆われていて全貌は把握できない。
ただそれと彼の目がこれからレン達と共に戦う意思を示していることからリューは首を振ってさっきまでの思考を吹き飛ばした。
「いえ、関係はありません。共に戦いましょう。ガンマ」
「あぁ」
互いに握手し合うリューとガンマ。
その様子を見てレンは特に反応を示さなかった。
「お前か。狙撃手は」
「……うん」
代わりに。
ガンマの武装にレンは反応した。
少し怒気を込めて。
「待ってください。ガンマは――」
「分かってる。どうせ、命令か何かだろ。他のホムンクルスを見てりゃあな、それくらい…」
「あぁ、命令だった」
レンの言葉を肯定するガンマ。
後ろではレイラがヒュプノスを守っていたが、敵対心を感じないガンマにレイラも少し警戒を解いた。
それを横目で確認したレンは無駄話をここで切り上げる。
「銃使いはかなり戦力になる。ま、心の底から信頼するかはまた別の話になりそうだがな」
「……何か証明できればいいんだが」
疑い深いレンにガンマは考え込む。
レンが悪い訳では無い。神友を狙われたのだし、本来なら敵同士なのだから当然の反応である。
暫く考えて何も浮かばないガンマの代わりにレンは提案する。
「ならここ以外に錬金術師が行きそうな場所に案内しろ。まあ、本来なら足りないがそれで充分ってことにしてやる」
「分かった」
提案を呑み、ガンマは頷く。
話を傍らで聞いていたリューがさっきから表情を分かりづらく変える様子にレンは顔を顰める。
ガンマを含めた一行はガンマから次の目的地を聞いた。
「帝国にもう一つ研究所がある。きっとそっち」
「分かった。ところでお前、ちょっと武装が豊富過ぎないか?900年も前に廃棄された兵器をなんでそんなに持ってる」
「専用の武器庫から持ってきた。これは確か……歴史学者のグエンの
「グエン…?」
ここで初めて聞く名前。
ケヴィンはガンマが殺したということをレン達はもう聞いている。
だが、その名前はリューも初めて聞くものだった。
「ガンマ。グエンとは何者ですか」
「歴史学者。確か極東と帝国の歴史に詳しかった。俺もあまり会ってないから詳しくは知らない」
「極東と帝国……ほう」
何か思い当たるのか訝しむレン。
だが、すぐに切り替えた。
「まあいい。今は錬金術師だ。準備はいいか?ガンマ」
「もちろん」
「よし、行くぞ」
パラケルススが居ないとなれば研究所には用はない。
そうと分かればガンマのいうもう一つの研究所へ急ごうとしたレン達だが、出口でレンが制止する。
「なるほど。噂をすればなんとやらってか」
「……その様子ならば予め察しは付いているか」
立ち塞がる強面の男。
彼にリュー達は警戒した。
「いかにも。私がグエン。歴史学者を名乗っている」
「歴史学者が何故錬金術師に加担する」
「なに。旧友なだけだ。まあ今は別の目的があってここにいるが」
「別の目的?まあいい。話は変わるがただの歴史学者が敵前に出るとはどういうことだ。まさかお前も何か――」
「ははははははは!!」
レンの言葉を遮って急に高笑いを始めたグエン。
頭がおかしいのではないかとリュー達が警戒を強めるが、グエンの笑いは止まらない。
止まらない。狂ったように笑い続け、その目はレンを――否、レンしか捉えていない。
「変わってない!変わってないぞ!
「……!」
レンの目が見開く。
最初は誰だ、という表情をしていたリューやルシアもグエンのいう謎の名の『
すぐに彼女らだけでなく、一行がレンを見るのは自然だろう。
「話も、お前も何も変わってない!何故お前が生きているのか、聞いた時は驚いたが、そうか!神になったのか。あのナガト・練が…!」
「……まあ極東の歴史学者って時点で嫌な予感はしてたがな」
極東の歴史。
もし仮に1000年も前の暗黒期に詳しい者なら
決して触れたくない過去にリュー達の前で遭遇してしまったレン。
横目でガンマの銃器を見遣った。
「確か帝国の歴史にも詳しいんだっけか。俺のこと知ってるってことは極東でも帝国でも同じ深さで歴史を知っていると」
「その通りだ。昔、殺戮兵器として銃があったのを知っているのは私。護衛用に活用することをパラケルススに勧めたのも私だ」
「ま、誰にでも使える万能武器だからな。なるほど…それで最も適正のあったガンマに持たせたわけか」
「いかにも。誰にでも扱える銃だが、使いこなすことは訓練を積んだ者か、適正者しか無理だった。そこで第三のホムンクルス、ガンマを活用した。不良品にも使い道があったというわけだ」
「不良品、と言ったか」
「む?」
レンと会話してた筈が、先ほどまで息を飲んで黙っていたリューが発言した。
グエンはそちらを見遣り、興味の無い相手と仕方なく話してやる。
「そうだ。ガンマは不良品だ。パラケルススの実験で生まれたホムンクルス。我らの悲願に決して届かない失敗作だ」
「……」
「不良品……失敗作……」
傍らで無言を貫くガンマを見るリュー。
ガンマは黙ってこそいるが顔を顰めている。
きっと彼ならば自身の感情にも気付いてないのだろう。
だから、リューは一度目を閉じて彼の代わりに彼の
「――クズがっ!」
もう何度目か分からぬ暴言を放ち、リューは飛び出す。
この人でなしを殺す。
その怒気を込めてグエンの首をはねようとした。
だが、リューより速く動いた者に止められる。
「……ッ!貴女は…!」
「気持ちは分かるけど待ちましょ」
「落ち着いてください。リューさん」
「ルシア…!?」
リューより高いステイタスを持ったレイラ、意外にも制止してきたルシアにリューは驚く。
「確かにこの方達は許せる様なことはしてません。リューさんの怒りもご最もですが」
「なら…!」
「リューさんはこの方を殺して何か得るものはありますか?」
「……ッ!それは…」
何も言い返せなくてガンマに視線を移す。
相変わらず自身の感情に首を傾げているだけの彼の隣でレンは首を横に振っていた。
それを見てハッとする。
【アストレア・ファミリア】が壊滅した時、我を忘れて復讐に駆られた自分を思い出した。
あの時も今も無駄に命を奪おうとした。いや、奪った。
確かにグエンは悪だが、殺したところで何も生み出さない。
リューの手がさらに汚れるだけだ。
「それでも!」
ガンマがあまりに可哀想ではないか。
うちに秘めたその気持ちは声には出さない。
リューはただ怒り、レイラとルシアを押し退けてでもグエンの首を切ろうとした。
だが、それを絶対と止める者が一人。
「止せ。一度汚れた手の汚れは一生消えない。だがさらに汚すことはできる。もう後戻りが出来ない程に、自我を崩壊してしまう程にはな」
「……ッ」
レンの制止の言葉に息を詰まらすリュー。
彼の言葉には何処か現実味があったのだ。
仕方なく、小太刀に掛けた手を下ろした。
「申し訳ありません」
「あぁ」
リューの謝罪に短く返すレン。
手間の掛かる
一行の後方でバルドルとヒュプノスは互いに耳打ちし合う。
「れん、いがいとこどもおもい?」
「……違うと思いますが」
ヒュプノスの問いにバルドルの否定的な返し。
ひそひそと話されたそれはステイタスで強化された聴覚を持つリュー達に聞かせない程度に注意を払われていた。
特にリューやルシア、威吹鬼には聞かせてはならない。
「で?俺を目にすることが出来てさぞお喜びってか」
「うむ。極東暗黒期を乗り越えた伝説の暗殺者であるナガト・練。歴史人物に会えるなど歴史学者にとっては至福の極みであろう」
「そうか。ならもういいか?」
どうせ戦闘などできないただの歴史学者グエンに構っている時間はレン達にはない。
グエンとしてもここで足止めしようと抵抗したとしてそれは無駄に変わるだけ。
大した時間など稼げないことくらい把握している。
まあそれ以前に
だからグエンも頷いた。
「あぁ。貴方を目に出来ただけで私は生きてきた甲斐があった」
「……幸せなやつだな。羨ましいよ」
これ以上話す必要とないと感じたレンは、一応パラケルススの共謀者として時雨に捕らえることを命令してからグエンを無視して進む。
「……」
一人、ルシアは縛られるグエンが気になっていた。
戦闘の邪魔になるだけのグエンは宿にでも置いていく算段になり、神であるのだから勿論非戦闘員であるバルドルが彼を見張ることになった。
ルシアは一行から少し離れて別の道を行くバルドルに声を掛ける。
「バルドル様」
「ルシア?どうかしましたか」
以前は主神と眷属の関係だった両者。
今はルシアはレンの眷属であると割り切り、バルドルも気にしてはいなかった。
二人の間には何のイザコザもなく普通に会話を交わす。
「その歴史学者さんは最終的に帝国政府の方に渡すのですよね?」
「えぇ。そうなるでしょうね、レン次第ですが。錬金術師の悪事を政府に告げれば自ずと共犯者も同じ罰を受けるのは当然でしょう」
「そうですか。すみません、それについてお願いしたいことがあるのですがいいですか?」
「……一応聞きましょう」
レンよりもルシアを知るバルドル。
大体彼女が要請してくる内容は酷なものであることをバルドルは知っている。
嫌な予感がひしひしとした。
「歴史学者さんの身柄を政府に差し出す前に色々と話しておきたいことがあるのです」
「はぁ」
思わず溜息を漏らす。
案の定我儘だった。
「まあ、私はいいですが…レンが何を言うか」
「レン様にも事が終わった後に許可を取ります。もし成功したらお願いできませんか?」
「……まあ私はいいですよ」
「ありがとうございます」
バルドルとの交渉を終えたルシア。
グエンがリューやルシア、時雨などに囲まれながら話す姿を予知で確認する。
その際、レンが仏頂面なのは予想済みだった。
レン達の元に戻ろうとしたルシアだが、声を掛けられる。
「娘。主神の事を知りたいのか」
「……」
低く、強面の笑みを付属した声。
グエンに真意を知られたルシアは仕方なしと開き直って振り返った。
「えぇ。貴方の知る『ナガト・練』。私達も知るべきだと思ったので」
それだけ言い残して、「では後ほど」とバルドルとグエンを後にする。
時間が惜しい状況なので小走りで一行に追いついた。
「すみません。少し野暮用を済ませてきました」
「……そうか」
ルシアの断りにレンはまたも短い返し。
バルドルは留守番にするが、命の危機があるヒュプノスは陣形に加えて守りながら移動を再開した。
目指すのは帝国最東端の研究所から地下通路を伝っての帝国西区域にある第二の研究所。
レン達は急いでそこへ駆けた。
長い地下通路を終えた後、再び陽の光を浴びる時、既に使われていない建物を目にする。
建物内に隠し扉があり、奥に研究所があるとガンマは言う。
「乗り込むぞ」
レンの一言に全員同意の意味で頷く。
一行は建物に足を踏み込んだ。
建物は倉庫のようにだだっ広く、その中をレンを筆頭に警戒しながら進んでいく。
が、レンの横をスッと通っていく者がいた。
「おい、ヒュプノス?」
「……」
ふらふらと不安な足取りで前に出たヒュプノス。
返事がない彼女の様子にレンは目を細め、瞬間、ある事に気付いて激昂した。
「ヒュプノス!止まれ!!」
「ふぇ…」
レンの大声で意識を
その時にはヒュプノスの頬を何かが掠め、女神の美貌に一筋の擦り傷が付いていた。
頬を伝う鮮血にヒュプノスも焦る。
「なに、これ…」
「……ッ!」
張り巡らされているそれにレンは気付いた。
時雨を筆頭に順にリュー達も後から気付く。
「お師匠様、これは…!」
「あぁ」
建物内に張り巡らされている
それは一見細過ぎて確認するのは難儀だが、確かに存在する。
ワイヤーの切れ味がヒュプノスを傷付けたのだ。
だが、それだけではない。
「おい!ヒュプノスを抱え込んどけ」
「え?あ、はい!」
レンの怒号の指示にレイラは一瞬呆気に取られかけたが、瞬時に対応してヒュプノスを回収する。
ヒュプノスの足取りが怪しくなった理由が判明したからだ。
「眠りの香…!」
レンの推測ではヒュプノスはそれによって
そして、ヒュプノスの殺害を図った。
「居るのは分かってる!出てこい!」
レンは叫ぶ。
だが、大声は児玉するだけで反応はない。
内心でレンは相手が相当慣れていることとやり手であることを確信した。
なぜなら見破られているからだ。
レンが相手の位置を把握出来ていないことを。
「くそ…!」
「気配が、ない」
傍らでリューやルシアも敵を探るがそれらしいものは感じない。
威吹鬼も興味が湧いて少し試すが同じく。
レンの言う通り、この場には罠を張り巡らせた張本人がいる筈だ。
もしヒュプノスの暗殺に失敗したら……という場合を考慮した時に直接または他の手段を使って手を下さなくてはいけなくなるからだ。
二度によるヒュプノスを狙った行為。今度は逃げるとは思えない。
こちらは相手の懐に潜り込んでいるのだから。
「チッ。何処に――」
『────』
痺れを切らしたレンは背後に音もなく降りた人影に全く気付かない。
リューも、ルシアも、威吹鬼も、Lv.6のレイラでさえそれはあまりに感じなさ過ぎた。
「お師匠様危ない!」
「……ッ!」
「なに!?」
レンの首に迫るクナイを払ったのは意外にも一番レベルの低い時雨。
抜刀して暗殺を防いだ。
「悪い、時雨」
「いえ!」
「……」
静かに、音を立てずに着地する影。
時雨が刀を構える前で彼女は姿を現した。
明るみになった彼女にリューやルシア、威吹鬼――何故かレイラは硬直し、警戒してそれぞれ戦闘態勢に入った。
「中々敏感でごじゃるなぁ」
緊迫する場で意外にも軽い口調を放った黒衣の女。
「ごじゃる…?」と誰もが眉を曲げるが、レンと威吹鬼は険しい表情で警戒を一瞬でも解かない。
レイラは、抱えられるヒュプノスもまた硬直は解けない。
「拙者の忍術が通用しないのは久しぶりでござるよ」
「忍術…なるほどな」
「……っぁ」
悠々と喋る黒衣の女にレンは納得した。
凄まじい気配遮断能力に小細工を駆使して標的の首を取る、
あの異様な静けさ。
そして、彼女の放った『忍術』という言葉から
それを考慮してよく見れば彼女の外見も忍装束だ。
「随分と御挨拶だが、お前も錬金術師達の共犯者と見ていいのか?」
「どちらかと言うと同盟者みたいなものでござるがまあ大雑把に言えばそうでごじゃる」
「ほう。随分と素直だな」
「ここで嘘をついても行動に出た分遅いでござるからなぁ」
「ご最もですが、神を狙うのは関心できませんね」
「おや、そちらの幼子は拙者を非難するでござるか?」
「当然でしょう」
終始軽い口調で話す忍びの女にルシアに代わってリューが非難の声を上げる。
対して忍びの女は「酷いでごじゃるなぁ」と全く罪を感じていない様子で笑った。
一見緩い雰囲気をかもし出しているがそれはブラフ。
長年の経験を持つレンと本能で察した威吹鬼は武器に手を掛ける。
が、彼らとは別に前に出た者がいた。
レイラだ。
「御門…?」
「おや、これはこれは副団長殿。ご無沙汰でござる」
「なに?」
口振りからレイラの身内だと判明した忍の女にレンが訝しむ。
ヒュプノスもレイラから降りて驚いた表情をしていた。
「みかど…」
「主神様もお久しゅうでこじゃる~」
覆面で口元を隠されているせいで目から判断できる笑顔を見せる御門と呼ばれた忍の女。
小さい子に手を振る感じでヒュプノスに同じことをする。
対するヒュプノスは珍しく絶句していた。
「なるほどな」
一人、レンは納得する。
どうも怪しいとは思っていたのだ。
特に最初のヒュプノスを狙った襲撃なんかはあまりにも出来すぎてる。
レンは知らないが、ヒュプノスと対面したことがオラリオを追い出されたあの日しかないパラケルススにはあれ程までに内情を知った誘い込みは無理だ。帝国に居るという時点でも然り。
ならば、ヒュプノスの大体の起床タイミングや寝惚けて外に出てしまうタイミング、その他色々な事を知っている者が居た筈。
そう、つまり御門が
ちなみにFGOの剣豪をプレイして爆誕したのが御門です。最初はただの冒険者にしようとしたんですけどね。無理矢理忍者要素をねじ込みました