罪を犯したエルフをファミリアに誘うのは間違ってるだろうか(凍結)(メインタイトル関係なし)   作:伊つき

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第36話

ある日、陣はオールベルクに呼び出された。

オールベルクの個室に陣は一人で訪れる。

 

「俺を呼び出したってことは任務か?父さん」

「話が早くて助かる。今回の『標的』はでかいからな、お前と俺だけで行く」

「わかった」

 

素直に頷く陣。

特に珍しいことは無い。国から言い渡された反逆者の『標的』が練達が手に負えないくらい危険度の高い強者だった場合、度々陣はオールベルクと組むことがあった。

今夜には出ると聞き、陣は退室しようとする。

そこをオールベルクに呼び止められた。

 

「ガキ共の調子はどうだ?」

「練達?……特に変わったことはないけど」

「そうか?その割にお前の顔色最近酷いな」

「……っ!」

 

思わず冷や汗を掻き、息を呑む。

先日会った紅髪の女性から言われたことがずっと陣の頭の中を旋回していた。

彼女のことが気掛かりで謎の不安がこの頃の陣を悩ませていた。

陣はそれを見破ったオールベルクに驚き、口を開こうとして閉ざした。

いつもなら父親であるオールベルクに殆どのことを相談していたが、なんと切り出していいのか困る。

それに……気になることがあった。紅髪の女性が自分に何を伝えたかったのか、陣はそれを知らねばならない気がした。

とにかくもう一度彼女に再会したい。

そこまで思考を巡らせると陣はオールベルクに対して取り繕った。

 

「大丈夫だ、父さん。少し疲れてるだけだ。俺はいつでも戦える」

「そうか。ならいいが」

「また夜に来るよ」

「あぁ」

 

なんとか誤魔化して陣は背を向ける。

今度こそドアノブに手を掛けるかというところでまた呼び掛けられた。

今度は首だけをひねる。

 

「陣」

「なに?」

「分かってるとは思うが……裏切るなよ。政府(俺達)を」

「何言ってるんだ。俺は父さんの息子だ」

「そうだな。今のは忘れろ」

「あぁ」

 

最後にそれだけの会話を交わし合い、陣は今度こそ退室する。

退室した陣は何故か大量の汗をかいた。

何故オールベルクが裏切りを疑ってきたのかは分からない。

分からないが、陣は何か嫌な予感がした。

今までだって忠実に従ってきて、自分のしてきたことが間違ってるなんて思ったこともない。

だというのに汗が止まらない。

何故かあの一言だけでとてつもなく焦っていた。

 

「はぁ…はぁ…」

 

荒い呼吸を聞かれぬように個室から離れて壁にもたれる陣。

高速で脈打つ心臓の爆音が陣の焦燥に拍車をかけた。

何故これほどまでに焦っているのかは分からない。

分からないが、こんな動揺をオールベルクに見破られたらあそこで即死だった。

実の息子である陣だからこそ実の息子であっても裏切れば手を掛けるオールベルクの性格を熟知していた。

死と極限まで隣り合わせになった陣は汗を拭いながら自室へと戻って行った。

一方、オールベルクは女性が去った後の扉をしばらく睨みつけている。

 

「半蔵」

「はっ」

 

名を呼ぶと一人の忍者がどこからともなく姿を現す。

オールベルク直属の部下であり忍者の半蔵にオールベルクは指示を出す。

 

「陣を泳がせる。常に見張っておけ」

「了解」

 

短い命令を聞くと半蔵が姿を消す。

オールベルクは長年の経験から陣に裏切りの予兆があると睨んでいた。

もし裏切りならば例え実の息子でも容赦はしない。

それがオールベルクという男だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『任務』のために動く陣は『標的』を発見する。

敵地に乗り込んでいることもあってまだ身を隠しているが、もうすぐ時間だ。

オールベルクが配置につくであろう時間に敵の注意を散乱する。

その手に煙玉を握り、陣はタイミングを計った。

時は訪れた、煙玉を屋内に投げ入れたところ反逆者達は混乱する。

 

『な、なんだ…!?』

『敵襲か…!』

『……警戒しろ』

 

「……」

 

数人手練れがいるのは調査済みだ。

確か今回の標的は亜人の戦士を何人か雇っていた。

彼らの腕がかなりたつ為、こうしてオールベルクもここに来たのだ。

そのオールベルクが煙に紛れて敵地に侵入する。

手練れのうちの一人はその時殺された。

だが、オールベルクでも苦戦する相手らしく目には映らないが、激戦を意味する金属音が鳴り響いている。

 

「……俺も行くか」

 

何かオールベルクの助けになろうと潜入しようとした陣だが、背後に気配を感じる。

 

「誰だ…!」

 

振り向く直前で気付いた。

嫌でもあの色彩が目に入る。

燃え盛るような紅い髪、神秘をおも感じさせる美形。

絶世の美女と表現に値する女性がいた。

二度目。陣がこの女性に出会うのは二度目だった。

 

「あんたは…」

「クレア」

「え?」

「私の名はクレア・レル・バローナ。貴様も名を名乗れ」

 

崩れるのが惜しいくらいに美しい唇を動かしてしまうクレア。

だが、言葉を紡ぐ柔唇は一層見惚れるものだった。

クレアに名を聞かれ、域を飲みながらも陣は応える。

 

「陣だ」

「そうか。着いてこい」

「は?お、おい…!」

 

敵でありながら敵対する意思を見せず、クレアは場所を変えた。

屋上から降り、屋敷の中に潜入し中庭に隠れる。

陣は背を向けられ警戒すらされていなのかと苛立ちを感じたが彼女との間にある差が絶対的であることは悟っている。

それに警戒していないと思っていたが、後ろから襲おうものなら返り討ちになるくらいには周囲に気を配っている。

毅然とした戦場でのクレアを見て陣はその才能に身を震わせた。

まるで戦場で生きるために生まれたような天性を感じるのだ。

後を追ってこない陣にクレアはまだかと目をやる。

逆らえばどうなるか分からない陣は目が合った瞬間に向かった。

 

「……なんで俺を殺さない」

「必要がない。お前はこちら側の人間だ」

「前も言ってたな。どういう意味なんだ」

「時期に分かる」

 

尋ねてみたがあまり良い返しが貰えず顔を渋らせる陣。

仕方なく指示に従って中庭に隠れた。

 

「見ろ」

「ん?」

 

クレアの指差す方――オールベルクが今戦っている戦場を見遣る。

別にいつもの光景だ、と陣は思った。

しかし、陣だからこそ気付く。

オールベルクの戦う姿は何か変だと。

オールベルクは笑っていた。

戦場の中で、人を殺す時は一層笑っていた。

 

「あははははははは!ひぃひゃひゃひゃひゃ!もっと喚け!もっと殺させろおおおおおお!!」

「……は?」

 

盛大に笑いながら首を斬り落としていくオールベルク。

何がおかしいのか、命を絶つ度に表情を愉快に歪めていた。

陣はあんな父親を見たことがない。

ましてやこんな至近距離で彼が仕事(殺し)をしているところも初めて見た。

 

「なんだ…これ…」

「……」

 

クレアは何も言わない。

陣はただ絶句した。

今目に映るのは地獄か、そう言いたげな顔で硬直する。

四肢は分断され、手練れの亜人戦士など既に肉片となっている。

それでもオールベルクは止まらない。

『標的』以外も殺し続ける。

命乞いをした老人が絶命したところで陣は後退った。

 

「…………」

「お前とお前が可愛がっている孤児達。気の毒だがやつに利用されているだけだ。その間に愛情などない」

「…………」

「オールベルクという男は一級殺人鬼だ。殺しの快楽に溺れ、政府の中でも有力な人間に数えられている。かの有名な軍曹や大佐と同列だと言われるほどにな」

「軍曹…エリシア軍曹。大佐…サイトウ・壮馬(そうま)大佐」

「そうだ」

 

極東政府で有名な軍曹エリシア――エルフ種の魔道具使い(アイテムユーザー)、大佐サイトウ・壮馬――魔法拳士(マジックソルジャー)

五本の指に入ると言われる強者の二人。

この二人がいる限り()()は守られるという。

実質極東最強の二対にオールベルクが並ぶと言われ、陣は信じられないと表情に表す。

 

「確かに父さんは強いが……本当にそこまで?」

「あぁ。我々が最も恐れている人物の一人だ」

「我々ってことはやっぱりあんたは国に反旗を翻す反逆者なのか…!」

「……今更なんの真似だ」

 

陣が距離を取って抜刀するとクレアは目を細める。

下らない、とクレアも立ち上がった。

 

「現実を見ろ。オールベルクは悪だ。証拠が欲しいのならいくらでも見せてやる」

「黙れ。確かに父さんは人殺し趣味を持ってるかもしれない……でもきっと必要だから殺してるんだ!」

「ほう」

 

オールベルクはただの非情な男ではない。と言い張る陣にクレアが真実を告げる。

 

「ここには何故来た」

「……言う必要があるか?まあいい。あんたもどうせ父さんには勝てない」

「そうだな」

「だったら教えてやる。ここには元大臣が――」

「大臣か。確かに国に疑問を持ってこちら側にやって来たな。だが彼はもう死んでいる。ずっと前にだ」

「は?そんなわけ…」

 

陣が死体を囲むオールベルクを見遣る。

その下の死体へ目を配らせるが――大臣の姿が、ない。

 

「ど、どういうことだ…」

「ここは我々の支援者である亜人戦士達が住まう屋敷だ。大臣などいない。亜人戦士達の家族などもいる」

「そんなバカな…いや、それが本当だとしても何の問題がある!亜人戦士達は反逆者に加担している悪だ!ならばその家族だって…同罪として見られるのが今の世の中だ」

「開き直りか。まあいい。どうやら勘違いしているのは根っこのようだな」

「うるさい。もう戯言は充分だ」

「そう言うな。聞け」

 

陣が命を捨てる覚悟で敵意を剥き出しにするが、クレアはそれを圧で止め、屋敷のある山の下――小さな町を見遣る。

 

「真実を見せてやる。この国は腐っている」

「戯言は要らないって言ってるだろ」

「いいから着いてこい。ここで肯定しておかなくては認めることと捉えることもできるぞ?」

「……わかった。ただし嘘だったらどうする」

「自害でもなんなりしよう」

「二言はないな」

「あぁ」

 

事前に受けていたオールベルクの命令から離れてしまうが、どうしてかクレアについて行ってしまっだ陣。

クレアに連れたいかれた小さな町をクレアの後を追いながら見遣る。

だが、目に映った光景に陣は絶句した。

 

「なっ……!?」

 

町、町といった。

しかし陣には荒地にしか見えない。

何も無い。住まうのは痩せこけて今にも死にそうな人間達ばかり。

誰もが最低限を身を隠すだけの布を纏っていて服と呼べるものはない。

ただ歩いているだけで陣は三人以上の絶命を見た。

死体など数え切れない程だ。

動揺し、呼吸を乱しながらも陣はクレアにどういうことだと問い詰めるように目を向けた。

 

「これが真実だ。この惨状はこの町だけではない。この国の上層部は完全に民を切り捨て、私利私欲の為に権力を振るっている。重税などによって民は年々減っていき、遂に民の声を聞き届けた反逆者が狼煙をあげた」

「それがあんた達か…」

「そうだ。私達は苦しむ民の為に反逆する。間違ったこの国に対抗するんだ」

「……」

「まだ悩むか。まあ良い。陣・オディナ、『ブラッドスターク』という名に聞き覚えはあるか?」

「……っ!ない訳が無い!反逆者共を率いる気の狂った暗殺集団だ!」

「この町の惨状を見てまだ我々の方が狂っているといえるのか」

「それは…」

 

正直陣の見てきた世界は狭い。

オールベルクによって見せられたものだけで、こうしてそこらの小さな町を見るのは初めてだ。

だからこそ陣は言葉に迫る。

自分がこの民の惨状を知らないのも実はオールベルクによって仕組まれたことじゃないのか?という疑問が拭えないからだ。

見兼ねたのか、クレアが先に口を開く。

 

「お前の弟妹(きょうだい)達も利用されているだけだ。衣食住を与えられ、まるで恵んでくれているように見えるかもしれないが。オールベルクはただ手駒が欲しかっただけだ」

「修達が洗脳されている、とでも言いたいのか」

「実際そうだろう。ならばいつから彼らは平然と人を殺すようになった」

「俺が出会った時には…もう…」

「私から見ればそちらの方が狂っているな。その事に疑問を感じたのならこれを読め」

「なんだこれ?」

 

クレアに手渡された数枚の羊皮紙。

陣はそれを読み進めて目を見開く。

 

「人体実験…?」

「洗脳と肉体改造。孤児達は既にそれを施されている」

「なっ…!?」

 

有り得ない。

否定したかった陣だが、何故か首を横に振れない。

 

「真実を理解したなら私達の元に来い。陣・オディナ」

「俺を勧誘してるのか…。俺に国を裏切れと?」

「それが正しいことであることにお前なら気付ける筈だ」

「……。修達は…」

「彼らはもう手遅れだ。悪いが切り捨てるしかない」

「なっ…!?ふざけるな!やっぱり俺を嵌めようとしたんじゃないか!俺と修達を隔離する気か!」

「お前も中々の洗脳を受けているな。脳は弄られてないだろうが」

「黙れ!」

 

抜刀して距離を置く陣。

殺気を剥き出しにする陣にクレアは一歩も動かず冷静に淡々と告げる。

 

「何もお前の手で殺せとは言わない。それがどれほど辛いことなのかは分かっているつもりだ。だが、直接服従を植え付けられている彼らに説得は不可能。お前が裏切る時、孤児達は敵対するぞ」

「黙れ!もう聞きたくない!」

「そうか…。確かに突き付けすぎたか。ならば逆に救える者を教えてやろう」

「はぁ…?」

 

ついさっき弟妹を切り捨てろと言ってきたと思えば次は誰かを救えるという。

陣はただ混乱するだけだ。

脳内で修達の顔を浮かべてはクレアの言ったことは嘘だと自分に言い聞かせ、切り捨てる選択肢に首を振る。

陣が苦悩する中、クレアはポツリと呟いた。

 

「ナガト・練」

「は?」

「ナガト・練は脳手術による洗脳を受けていない。人体改造もあの少年だけは適正が悪くあまり成功していない」

「そ、そうなのか…?」

「あぁ」

 

練だけが洗脳を受けていない。

本当のことを言うと陣は人体改造については知っている。

戦闘中、修達の動きは奇妙だからだ。

腕がぐにゃぐにゃに曲がったかと思うと次見た時には普段のように戻っている。

妙に毒に影響を受けなかったり、傷が自然に回復したりしていた。

陣はそれを初めて見た時以外は見て見ぬ振りしてきた。

ただの現実逃避。

信じられないと自分に言い聞かせ、人体改造の現実から目を背けていた。

オールベルクがそんなことをするはずがない。していたら何か理由があるはずだ、と。

人体改造によって寿命が縮むことを知っていながら、無視をした。

だが、確かに練にはそういうのは見られない。

 

「……」

 

陣は考え込む。

なにが正しいのか、なにが真実なのか。

兄弟の中でも陣は最年長なのだ。

迷ってはいけない。

もし仮にクレアの話したこと全てが真実なのだとしたら陣は決断しなければならない。

一人でも多く愛する者達を救うために。

クレアの言葉が全て嘘で、陣を動揺させる為の策略である可能性は充分にある。

だから、陣はまず最初の決断をした。

 

「……少し、考えさせてくれ」

「良いだろう」

 

クレアは肯定した。

促すこともなく、告げたことは告げた、後は陣の決断に任せるとでもいうように。

もし仮にクレアが真実なら陣は疑問に思う。

『ブラッドスターク』、国中で指名手配を受けた最悪の暗殺集団。

構成メンバーの一部の顔は割れており、思い返してみればクレアもその一人だ。

仮にクレアのような実力者が揃っているのならば陣など戦力外だ。

だが、クレアは陣を誘ってきた。

これは救いだ。救済だ。

彼らには必要も無いのに陣と練に救済の手を伸ばされている。

無力な自分を悔やみながら陣はクレアの言葉の信憑性を上げた。




ゼルフィとラーファについて掘り下げれられなかったので短編書きました。掘り下げれられなかった理由は主に尺。

短編⑩
title︰

鉄の冷たい感触が肌を刺激する。
うめき声が響く暗闇の中で、檻に閉じ込められていた狼人(ウェアウルフ)のゼルフィは妹のラーファを抱きしめる。

「寒いか?ラーファ」
「いいえ、兄さん…。兄さんのおかげで温かいです…」
「そうか…」

言葉とは裏腹にラーファは弱々しい声だった。
いつもより白い肌に、紫色に染まった唇。
元々持病で弱ったラーファは冷気に一層不健康な顔色になる。

「おい。なんとかならないのか」
「して欲しいのなら稼げ」
「ぐっ…!」

通りかかった監視員に頼むが奴隷であるゼルフィに人権などない。
戦闘奴隷であるゼルフィがラーファを助けるためにできることは一つ、戦いに勝ち続けることだ。
だが、酷使され続けた身体が神の恩恵(ファルナ)で強化されているにも関わらず悲鳴を上げている。
蓄積したダメージと疲労が神の加護などないも等しいにしていた。

「ゴホッ…ゴホッ…」

排気管の弱いラーファが咳き込む。
ラーファの病気は重病で、回復薬(ポーション)高等回復薬(ハイポーション)では効果は見られない。
万能薬(エリクサー)を定期的に服用することで延命し、本格的な治療を施すには大きな治療院で見てもらうことでしか完治しない。
ゼルフィは戦うことで万能薬(エリクサー)をラーファに与え続けたが、お金が無くなり、家は没落して借金を背負って奴隷にまで落ちてしまった。
なんとかしたいと思うゼルフィだが疲弊した身体を見下ろして苦渋の表情になる。
寒そうにしていたラーファに自分用のボロい掛布を被せてやった。

「これじゃ兄さんが寒いんじゃ…」
「俺は大丈夫だ。ラーファも知ってるだろ?兄ちゃんは強いんだ」
「兄さん…。うん…」

ラーファが少し微笑んで頷く。
ゼルフィはそんなラーファを優しく撫でてやり、寝付くまで抱き寄せて温め続けた。
そんな時、死んでしまった親の顔より見た奴隷商が近付いてくる。
いつもの如き気色悪い笑みを浮かべている奴隷商をゼルフィは殺気を込めて睨むが、奴隷商が男を連れてきたのを視界に捉えた。

「ウッー!」
「ほう」

奴隷商が連れてきた男が『客』であることを瞬時に理解したゼルフィは野蛮な狼人(ウェアウルフ)を演じて唸る。
敵対心もあるが、こうすることで手綱の握れない亜人の戦闘奴隷であると思わせ追い返そうとしているのだ。
しかし、奴隷と思わしきハーフエルフと人族(ヒューマン)の女を連れた男はゼルフィ達を見て口角をあげる。

「良し。こいつに決めた」

ゼルフィは絶句する。
来客に気づいたのかラーファが目を覚まし、ゼルフィにしがみつきながら眠そうに目を擦る。
二人の目にはとても黒い、奥の見えない瞳を持った『神』がいた。
神威で『神』と認識させられるので彼は間違いなく『神』。

その神の名は――。
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