罪を犯したエルフをファミリアに誘うのは間違ってるだろうか(凍結)(メインタイトル関係なし)   作:伊つき

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第4話

神レンに忠告されたリューだが、もはや彼女は止まらない。

いや、止まれない。

何故彼女が男達を殺したかというと彼等がリューの仇だからだ。

これは私怨しかないリューの復讐。

レンの推測通り、リューは元冒険者だった。

所属ファミリアは【アストレア・ファミリア】、正義と秩序を司る女神アストレアによるオラリオ内の秩序を乱す者達の粛清をも活動に含めた憲兵的なファミリアである。

だが、その為に敵対する【ファミリア】は絶えない。オラリオにいる数えるのも呆れ返るような数の犯罪ファミリアと犯罪冒険者。彼等ほぼ全てを敵に回していると言っても過言ではなかった。

だからだろう。【アストレア・ファミリア】は恨みを持った違法ファミリアに根絶やしにされた。

【ルドラ・ファミリア】の罠で『怪物進呈(パス・パレード)』され、【アストレア・ファミリア】の団員はリュー以外全滅。

唯一生き残ったリューは私怨を抱えて主神アストレアをオラリオ外に逃がし、【ルドラ・ファミリア】を壊滅させた。

筈だった。

確かに潰した、リューは確信していた。

だが、生きていた。

奴らはこの数年で生き残りの団員をかき集め、新たに人員を補充し、天界に返ったと思っていた神ルドラと共に潜んでいた。

全ては彼らも復讐の為に。

【アストレア・ファミリア】の生き残りで【ルドラ・ファミリア】を潰したリュー。

彼女に復讐する理由は二つもある。

そして、期が来た今【ルドラ・ファミリア】の残党がリューを襲ったが返り討ち。帰らぬ者となった。

そのリューは今路地裏を人目を避けて駆ける。

ただひたすらにある目的地を目指して。

 

「何故、何故!何故だ!私は、あの時!確かに壊滅させた筈だ!」

 

怒りに呑まれながらも明確な場所を目指す。

既に先程の男達から敵のアジトは聞いてある。

あとはそこを襲撃するだけ。

例えこれ以上の罪を積んでもリューは残党共を殺す。

神ルドラも手に掛けたい。

全てが終わった後、リューを待ってるのは粛清という名の死だけだろう。

それを理解していながらもリューは足を止めない。

四年前やったことを後悔していながらも止められない。

 

「許さない。許す訳にはいかない。それは、私自身も。絶対に復讐する。それが私の使命だ!」

 

暗闇の中、最短で目的地に辿り着く。

薄暗い普段のオラリオの裏の裏にある敵のアジトだ。

まずは隠れてフードを深く被る。

店に迷惑は掛けられないと着替えは済ませてあった。

見張りの人数を確認し終え、あとは襲撃するのみ。

覚悟など四年前から決まっている。

 

「すまない、シル…私は止まれない。ごめんなさい、ミア母さん。私はやらなくてはいけない」

 

一言店の皆に向けての謝罪を呟いた。

シルやミアだけではない。

アーニャや他のウェイトレス達にも。

自分を受け入れてくれたあの酒場の風景。

もう見られないだろう、それを覚悟にリューは一歩踏み出した。

だが、それもすぐ止められる。

 

「待て」

「……ッ!?」

 

いつから後ろに居たのだろうか。

飛び出そうとしたリューをレンが無理矢理強引にまた物陰へと引っ込めた。

 

「見張りはアジトの入口だけじゃない。ここら辺を巡回してるのが十二、上に五人いる。騒動を起こせば何人かは駆け付けてくるぞ」

「なっ…!?なぜそれを…」

 

淡々と涼しい顔で敵の座標を口にするレン。

しまいにはアジト内の構成人数も把握していた。

リューも知らなかった訳じゃない、勿論殺した男達に聞いた。

しかし、レンは誰からも話を聞いていない筈だった。

リューが男達から情報を聞き出した時は彼の気配はなかった。

……いや、今さっきレンは自らの背後に音も気配もなく現れたではないか。

思い返すリュー。

あまりの驚愕に目を見開いた理由の一つだ。

だとするとリューが情報を聞き出した時、隠れて聞いていても不思議ではないかもしれない。

きっとそうだろう、リューは勝手に心の中でそう結論づけた。

だが、実際はまったく違った。

 

「来た時確認した」

「……!?わ、私と殺した男達の話を盗み聞きしていたのではないのですか?」

「なんだそれ。知らん」

 

問いにレンは顔を顰める。

それは本気で何もしらない顔だった。

 

「そう、ですか…。分かりました。情報提供感謝します。ですが、これ以上邪魔はしないでください。私にはやるべき事が――」

「何を勘違いしてる?俺が親切にお前の支援でもしに来たと思ったか?それに今与えたのはお前も承知のことだろ」

「……ッ!?なら、何故…!」

「黙れ。忠告した筈だ。次は見逃さない、と」

 

鋭い目線、咎める如くレンはリューを睨む。

ドスの効いた低い声にリューでもビクリと一瞬肩を震わせた。

そして、リューの脳内が少なからず混乱する。

――なんだ、この神は。私は知らない。こんな神は。そもそも神なのか?分からない。私には得体の知れない何かに見える…。

 

「いいか?よく聞け。引き返せ。今からでも遅くない。こういう胡散臭い奴らはギルドにでも任せておけ」

「それは……ダメだ。私が、やらなくては」

 

絞り出すようにレンに内心怯えながらも、信念を突き通そうとするリュー。

すると、いきなり胸倉を掴まれた。

 

「馬鹿が。こんな所で人生を台無しにする気か?殺しのレッテルは、返り血の匂いは一生お前に付きまとうぞ。お前にはあの酒場の日常がある。それを捨てるな!」

 

見張りには聞こえない程度に声を張り上げるレン。

その瞳には切実な思いが浮かんでいた。

人だろうが、何だろうが生命を奪うことの意味を知っているからこそ言う。

だが、それは相手には伝わらない。

 

「……貴方に、貴方に何が分かるというのだ!?私の何を知っているというのですか!」

 

胸倉を掴んでいたレン手を力尽くで振り払ってリューは激昂した。

対してレンも吠える。

 

「知るか!今日あったばっかの奴のことなんかの事情なんざ知ってるわけないだろ!」

「なら邪魔をするな!私は為さなければ…果たさなければならない宿命があるのです!」

「宿命?ハッ!どうせ復讐だろ。そんな下らんもん犬でも喰わせておけ!」

「なっ…何故分かったのですか!?」

「目を見りゃ分かる。俺はその目を知っている。俺自身が、よく…。何があったが知らないが…復讐はやめろ。そんなもん宿命でも何でもない。ただの感情暴走だ!」

「……ッ!そうだとしても…私はやらねば満足出来ない!」

「だからそれが感情の暴走だって言ってんだよ!!いい加減にしろ!」

 

気付かぬうちに2人の言い合いはオーバーヒートして隠れることなど忘れて立ち上がり、まだ懲りずに続ける。

 

「いい加減にするのは貴方です!大体いきなり出てきて貴方は何様のつもりで――」

「こっちは気を使って忠告してやってんだよ!これもお前の為を思って――」

 

「貴様ら!何者だ!」

 

「「うるさい!!」」

 

「ゴハッ!?」

 

同時に武器を手に迫ってきた男の腹に蹴りをぶち込むレンとリュー。

邪魔者を排除し、口論を続けようとしたが…そこでやっと2人は今も状況に気付いた。

 

「いってぇな…。この野郎…!」

「テメェらいつの間にこの近くに居やがった…!」

「ここら辺が俺らのテリトリーだと知っていたのかぁ?あぁ!?」

「これは…」

「やらかしてしまいましたね…」

 

気付けば2人は既に何十人もの男女に囲まれていた。

明らかにレンが見つけた見張りより数が多い。

無論、周りを気にせず激しく言葉でぶつかりあったレンとリューが呼び寄せてしまった者達だ。

リューも敵のアジト付近だということを忘れて、自分の事を知らない癖にお節介ばかりを焼くレンとの口論に夢中になっていた。

レンも然り、である。

 

「さて…どうする?」

 

リューをチラ見しながら尋ねるレン。

 

「【今は遠き森の空。無窮(むきゅう)の夜天に(ちりば)む無限の星々】」

「詠唱!?魔法使う気なのか…!?」

「させるか!!」

 

詠唱を唱え始めたリューに詠唱を完成させまいと攻撃を仕掛ける【ルドラ・ファミリア】の残党達。

だが、詠唱を止めることなくリューが木刀を手に駆け出した。

 

「【愚かな我が声に応じ、今一度星火(せいか)の加護を。汝を見捨てし者に光の慈悲を】」

「グハッ!?」

「こいつ、『並行詠唱』してやがるだと!?」

「そんな…嘘だろ…ぐあああッ!」

 

『並行詠唱』。

言葉の通り、詠唱を唱えながら動き回ることだ。

優れた魔道士でも一度止まって詠唱しないと魔法が発動しないことがあり、『並行詠唱』できるだけで相当な実力者であることを伺える。

リューは『並行詠唱』を涼しい顔で行いながら、残党たちを木刀で斬っていく。

 

「【(きた)れ、さすらう風、流浪の旅人(ともがら)】」

「ぐっ…うぐっ!?」

「ごふっ…」

「や、やめ…うわああ!」

「お、おいおい…」

 

レンの目では追えない速さで残党の数を減らしていくリュー。

もはや詠唱が終わる前に敵が全滅するだろう。

外にいる分はあらかた片付いてきた。

 

「【空を渡り荒野を駆け、何物よりも()く走れ】」

「あッ…ああ…た、頼む!やめてくれ――」

 

また一人、これで最後の首を斬った。

だが、アジトの中に今以上の人数がいる。

だから、リューは詠唱を続けた。

 

「【星屑の光を宿し敵を討て】」

「おい!もういいだろ!やめろ!」

 

既に血で汚れたリューがさらに血を増やそうとすることに咄嗟にレンが止めに入るがもう遅い。

詠唱は既に完成した。

リューはアジトの扉を蹴破り、呟く。

 

「【ルミノス・ウィンド】」

 

瞬間、緑風を纏った大光玉が星屑のように、建物を吹き飛ばした。

路地裏とはいえ響く大音。

さっきまで建造物だった欠片が様々な所を降り注ぐ。

これ程の魔法を密封された室内に放ったのだ。

中に居た者達は跡形もなく消し飛んでいる、筈だった。

だが、やりきった顔をして脱力するリューの隣でレンは微かにその気配を察知した。

 

「避けろ。リオン!」

「……え?」

 

突然のことに唖然とするリューをレンが飛び込んで抱き抱える感じでその場から飛び退く。

次の瞬間、先程までリューがいた場所に火球が着弾し、爆炎が炸裂した。

 

「……ッ!?こ、これは…!」

「どうやら手練が居たらしい」

 

リューを抱えながらレンが上を見上げる。

リューも火球の飛行ルートを逆算し、その大元の姿を確認する。

見上げる建物の屋根には複数の男女が薄汚い笑みを浮かべながら夜空を背景にしていた。

その集団の中に明らかに雰囲気の違う者が二人。

一人は背丈と同じほどの巨大な盾を持った男。

もう一人は包丁のような大剣を肩に、軽装で動きやすそうな装備をしたこれも男で種族は狼人(ウェアウルフ)

どちらも嘲笑うようにレン達を見下ろしていた。

 

「貴方達は何者だ!何故その者達の味方をするのです!?」

「何故って…そんなの報酬がいいからに決まってんだろ?最高の仕事だぜ!」

「下衆が…ッ!」

 

口端を吊り上げて笑う大剣の狼人(ウェアウルフ)にリューが怒りを込めた睨みを効かせるが、狼人(ウェアウルフ)はまったく気にしてないどころか更に笑みを歪ませた。

その隣で盾の男もヘラヘラと悪趣味な笑いを零す。

 

「生憎だが、良い金蔓になってもらうぜ?【疾風】さんよ」

「大人しくウェイトレスとして客に尻を振ってれば良かったものを。馬鹿な奴だ」

「こいつらの狙いはリオンなのか?なら護衛として雇った訳じゃなくて――」

「貴様らッ…!殺すッ!」

「あっ、おい!」

 

重要な事に気付いたレンだがそれより早くリューが動く。

完全に怒りに身を乗っ取られ敵に飛び込んでいくリュー。

得意の敏捷と掛け合わせた剣術で目にも止まらぬ斬撃を男達にぶつけた。

しかし、それら全てを盾の男が防ぎきってしまう。

 

「なにッ!?馬鹿な…私の速度に付いていける筈が…。まさか、貴方も!?」

「俺達はLv.4。貴様と同じだ」

「さぁ、お次は俺達の番だ!頑張って耐えろよ」

「ぐっ…!」

 

盾の男が下がり、入れ替わるように大剣の狼人(ウェアウルフ)が前に出る。

猛獣のような鋭く激しい斬撃にリューは苦しい表情を見せながらなんとかギリギリの所を防いでいった。

だが、大剣の狼人(ウェアウルフ)の剣速も中々。

【疾風】の異名をかつて持っていた程の敏捷を有しているリューに速度でさえも遅れは取っていない。

自惚れではないが、リュー自身相当な実績を積んできたと自負している。だというのにこれ程までの動きを見せるなら彼等は相当な実力者であることを窺わせた。

 

「貴方達は一体何者だ。名乗りなさい!」

「いいぜ。冥土の土産だ。俺はライオネル・モルド・レッド!」

「俺はガイ・ガラハ」

「なっ…【猛獣(ビースト)】に【守護者(ガーディアン)】!?【バルドル・ファミリア】の精鋭がどうして!」

「なに…?」

 

今まで戦闘を見守っていたレンが親友の名にピクリと反応する。

直後、顔を一気に不快そのものとしたが誰も見てはいない。

 

「【バルドル・ファミリア】といえば別名、光の騎士団とも評されているオラリオの秩序を守りし【ファミリア】…。だというのに貴方達は元違法ファミリアの者達に手を貸しているというのか!」

「ハッ!知るかよ。大体うちのファミリア自体気に食わねぇんだよ。何が秩序だ。何が光の騎士だ。馬鹿馬鹿しい!」

「誇れるファミリアに居るというのに。貴方には勿体ない」

「偉そうな事言ってんじゃねえ!」

「ガハッ…!?」

 

何とか均衡を保っていた剣術戦が崩れた。

リューの斬撃をガイが防ぎ、ライオネルの蹴りがリューの腹へとクリーンヒットした。

それによりリューは吹き飛び、壁にめり込んでしまった。

もはやただの観戦者となった【ルドラ・ファミリア】の残党はリューの敗北を確信してゲラゲラと笑ったり、ガッツポーズを取って歓喜している者もいる。

 

「くっ…!」

 

悔しくて歯を食いしばるリュー。

動こうとしても壁に捕らわれ、思い通りにはいかない。

当然その隙を見逃す程ライオネルは優しくない。

 

「死ね!【疾風】!」

「……ッ!!」

 

迫り来る刃先にリューは目を瞑る。

だが、いつまで経っても痛みは来なかった。

 

「……?」

 

うっすらと瞼を開けていく。

すると、驚きの光景が広がっていた。

 

「これ以上俺の神友の名を汚すのは止めろ」

 

大剣を止めていたのは木刀。

リューは即座に自らの手元を見て先程まで使っていた木刀がいつの間にか消えていることに気付き、驚愕した。

そして、再び彼を見る。

木刀を奪い、ライオネルの剣を止めた張本人である神レンを。

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