罪を犯したエルフをファミリアに誘うのは間違ってるだろうか(凍結)(メインタイトル関係なし)   作:伊つき

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ジルの能力が神の恩恵(ファルナ)がないと厳しいものが多かったので物語に合わせて調整しました。
できるだけ提供してくださった設定はフル活用するつもりです。


第45話

『ブラッドスターク』の本拠(ホーム)にて、帰還した暗殺者(アサシン)達の空気は重かった。

 

「メラ…」

 

誰もが俯く中、瞼を抑えるリア。

既にこの場にはいない猫人(キャット・ピープル)の名を呟いた。

クレアやエルも何とも言えない表情で黙っている。

帰還してすぐ冬香は部屋で塞ぎ込んでしまった。

扉をこついても返事のない時間が刻々と経っていく。

部屋の前には世話焼きのマイアが冬香の心配をして、扉に、その向こうにいる冬香に明るく話し掛けていた。

仲間を失った悲しみはマイアにさえあるというのにだ。

 

「冬香~、そんなところにいないでさ。皆でご飯でも食べよう……よ」

 

言っていて虚しくなる。

唐突に悲しみが胸を突く。

元気付けようにも自身の涙を堪えるのにマイアはいっぱいいっぱいだった。

 

「ねえ、ふゆ――」

「もうやめとけ」

「練…」

 

後ろから制止する手に振り返る。

いつもメラと喧嘩していた練が静かに首を横に振っていた。

極東には喧嘩をするほど仲がいいという言葉がある。

その通り、練もメラの死は充分に辛かった。

 

「大切な人の死は時間しか解決できない。俺達は俺達のことに専念しよう。まだ戦いが終わったわけじゃない。やらなきゃいけないことは沢山あるんだ」

「そう、だね…。メラが死んでもまだ何も変わってない…。僕達は立ち止まっちゃダメだね」

「あぁ」

 

練の言葉に納得したマイア。

彼女が切り替えようとしたその時、部屋の扉が開いた。

 

「冬香…!?」

「冬香…」

「……」

 

部屋からは酷い顔をした少女が姿を見せる。

目はこれでもかと言うほど充血し、頬には涙の伝った跡がある。

そんな彼女はマイアと練を見ず口を開く。

 

「……ない」

「え?」

 

小声で呟いた冬香にマイアが首を傾げる。

練も聞き取れなかったようで耳を澄ませると。

 

「メラは死んでない!!」

「……っ」

 

冬香の叫びが廊下に響いた。

だが、その願いをも練は非情に砕く。

 

「現実を見ろ、冬香。メラは死んだんだ」

「ちょ!練!?」

「死んでない!メラはまだ生きてる!行方不明でも戦死報告はまだ来てない…!」

「信じたい気持ちは分かるがな。相手はエリシアだ。死んでる可能性の方が高い」

「そんなこと……っ!!」

 

反論しようとして膝から崩れ落ちる。

大切な人を失うには冬香はまだ幼過ぎた。

異常環境で育ってきた練とは違う。

真実を迫る現実に冬香は涙を流し始めてしまった。

 

「もう、練!なんでこんな酷いこと…!」

「こいつはここで生きていくことを決意した。俺達は立ち止まれないってことを今のうちに学ぶべきだ」

「バカ…っ!!」

 

練の頬に痛みが走る。

練が倒れ、顔を上げると頬は赤く腫れていた。

マイアがぶったのだ。

 

「練は悲しくないの!?メラが死んでもなんとも思わないの!?」

 

そんなことはない。

練だって悲しいに決まっている。

理解している筈なのにマイアは止まらない。

瞳からは涙が溢れ出て止まらない。

 

「僕は…。僕は…!」

「……」

 

怒りと悲しみで混乱するマイアの言動が行き先を失う。

練が怒りのぶつけどころとなってくれたことにマイアは後で感謝し、練の優しさに涙することになる。

その時に何度も繰り返すであろう言葉をマイアは叫んだ。

 

「練のバカ…!!」

 

言い捨ててマイアは走っていく。

頬を抑える練は口の中に溜まった血塊を吐き、ふと冬香がいないことに気付く。

起き上がると部屋の扉は閉まっていて、冬香の啜り泣く嗚咽が聞こえる。

練は死んでしまった猫人(キャット・ピープル)に悪態をついた。

 

「クソ猫が…っ!死んでんじゃねえよ…!」

 

拳を作って壁を殴る。

ぶつけどころのない怒りが練の中に居続ける。

部屋で泣く冬香は布団にくるまってベッドの中で枕を涙に濡らしていた。

 

「メラ…」

 

メラの匂いが彼のシーツ越しに彼女を包む。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

練にあたって逃げてしまったマイアは後になって後悔した。

自室に戻ろうとしたがそんな気にもなれず廊下をトボトボと歩いている。

 

「練のバカ…全部、分かってて…」

 

彼の優しさが逆に胸を締め付ける。

どうしようもない無力感にマイアは自己嫌悪にさえなっていた。

 

「ああもう!僕のバカ!結局…励ますどころか守られてるじゃないか…」

 

頭をポカポカと殴った後、呟いて俯く。

仲間を励ますつもりが気を使われていたことに申し訳なさでいっぱいになっていた。

何の目的もなく歩いていると視界に風呂場が映る。

仲間のエルフ専用の水浴び場とは別に共同の風呂場にマイアは時間帯を確認せずに暖簾(のれん)を潜る。

なんだか何も考えずに全てを流してしまいたいような気分だった。

 

「はぁ~あ。とりあえず一風呂でも浴びようかなぁ…」

「え?」

「え?」

 

誰もいないと思っていた脱衣場に聞き覚えのある声が耳に入る。

顔を上げると獣人の毛深い尻尾と耳が映った。

嫌な予感がして血の気が引くマイアは顔を青くしながら目線を上げる。

そこには狼人(ウェアウルフ)の女性ならではのくびれのある裸体があった。

 

「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああ!?」

「うひゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああ!?」

 

悲鳴じみた声で叫ぶジルとやってしまったと絶叫するマイア。

男のマイアは急いで目を覆い隠した。

 

「ご、ごごごめん!まさかジルがいるとはし、知らなくて…!?」

「何言ってるんですか!?今は男性入浴禁止ですよ…!」

「ふえっ?」

 

言われて暖簾の外にある看板を見るマイア。

確認すると確かに今の入浴時間は女性限定だった。

マイアの顔がまたしても青くなっていく。

 

「ほんっとにごめんっ!!考え事してて見てなかったや…!」

「ちょ!?なんでまた戻ってくるんですか!?」

「え、あっ…違っ…これは!う、うわああああああああ!?」

「叫びたいのはこっちですよ!」

 

もはや混乱の渦に取り込まれたマイアは終始取り乱す。

ジルに言われて急いで脱衣場を出て暖簾の外で待機した。

さすがに面と向かって話し合わずに去るのは申し訳ないと思ったからだ。

きちんと謝る為にもマイアは胸の高鳴りを抑えながら、ジルの着替えで服が擦れる音が聞こえる度に顔を好調させていった。

やがて、ジルが冷静を保とうとしながらも顔を真っ赤にして出てくる。

 

「いや…その…ほんとにすみませんでした!!」

 

極東産究極謝罪法『土下座』を披露するマイア。

手を三角にして額を床に擦り付ける。

全力の謝罪にジルも溜息をついた。

 

「まあ…とりあえず謝罪は受け取ります。もういいので顔を上げて下さい」

「ほえ?いいの…?」

「まあ…考え事の内容は大体察しがつくので」

「そ、そっか…ごめんね。ジル」

 

ジルに従い、身を起こすマイアは再度手を合わせて謝る。

ジルももういいですからと和解し、マイアもホッと胸を撫で下ろした。

だが、入浴後の着物に身を包むジルを前にマイアはまた紅潮する。

チラチラと見える鎖骨や湯気の収まっていない入浴後の姿に男としての理性が刺激されていく。

先程麗しい肌に整った曲線を描く胸、欲張りではない程の凹凸を目にしてしまったのだから尚更だ。

 

「どうしました?顔が赤いですが…まさか…」

「い、いやなんでもないよ!?そ、そうだ!僕はいつになったら入れるの!?」

「え、えっと…エルさんはここには入りませんし、クレアさんは朝が耽るまでいいと言っていたので暫くは誰も入らないかと。冬香さんは分かりませんけど」

「そ、そっかー。じゃあ僕入っていいかな!?」

「えぇ…まあ…いいんじゃないですか?看板さえ裏返しておけば」

「あ、ありがとー。じゃ、じゃあ僕も入ってくるね!」

「分かりました。リアにも伝えておきます」

 

足早に暖簾を潜っていくマイアにジルは首を傾げる。

彼のおかしな焦り具合を不思議に思うジル。

そんな彼の元に、というよりは通りすがったリアが声を掛けてくる。

 

「やあ、ジル。お風呂上がりかい?」

「えぇ…まあ。リアはこんなところで何を?」

「丁度ジルを探してたんだ」

「僕を?」

「あぁ。ちょっと頼みたい『任務』があってね」

 

羊皮紙を手にするリアから任務の詳細を受け取る。

内容を読み進めていくとジルの表情が渋くなった。

 

「あの…これ…」

「まあ言いたいことは分かるさ。だが相手の特徴から見るにジルが最適だと思ってね。任されてくれないか?」

「……任務なら仕方ありません。あまりやりたくないですが」

羊皮紙の内容は未確認の敵の詳細。

少し前から革命軍の同志達が謎の死を遂げていた。

死んだ者達の遺体は回収できるものもあればできないものもある。

回収された遺体の状態は酷く保存が悪く放置されていたと見え、どれも醜い結末を迎えていた。

過去で最も酷いものは骨しか残っていなかったもので、僅かに付着していた肉は千切られたような跡があった。

遺体の周辺にあった荷物から同志だと断定できたという。

 

「これって逆の捉え方をすればそれしか判断材料がなかった…ってことですよね」

「あぁ。ここまで徹底的に殺されたものを私は見たことがない。それに骨に僅かに残っていた肉片の様子からあることが想定されている」

「あること?」

 

首を傾げるジル。

リアは言うか悩み、言葉に詰まった後彼女の考える最悪の考察を口にした。

 

「喰われたんだよ」

「え?」

 

一瞬何を言ってるのか理解できなかったジル。

だが、リアは嘘を言ってる様子もなく真実を伝えた。

 

「恐らく『こいつ』は人を喰ってる」

「……っ!!」

 

リアの言葉にジルは戦慄する。

理解し、想像した途端腹の底から気持ちの悪い感触が込み上げてきて吐き気がした。

人が人を喰う、その様子を思い浮かべたからだ。

しかし、ジルは込み上げる吐き気を耐えた後案外安直な結末に落ち着いた。

 

「モンスターの仕業では?」

「おっ、そこに辿り着いたか。私もそう思った。()()()

「……っ!」

 

かなり的を射たと思っていたのだが違う。

ジルはどうにかして最悪の答えを避けようとした。

 

「モ、モンスター使い…とか」

「ふむ。調教師(テイマー)か。そういう敵がいるとは聞いたことがある」

「……違うというのですか」

「どうもね。喰われた跡が気になる。特殊過ぎるんだよ、食事の仕方が」

「しょく、じ…」

 

ジルの顔が引き攣る。

これがモンスターなら彼女は喜んだだろう。

ジルの境遇は少し練に似ている。

彼女の身体にも『人体改造』が施されていて、成功している。

能力は『悪食(コア・イーター)』、文字通りジルの()()は変わっている。

彼女はモンスターの魔石を食べるのだ。

本来なら自殺行為であるそれはジルにとっては違う。

彼女の体内では魔石を消化し、栄養分として取り得ることができる。

さらに普通の食事とは違い、傷や体力の回復を微量だが可能にするのだ。

それが『悪食(コア・イーター)』。

リアがジルに『任務』を紹介した理由の()()だ。

 

「ジルにこの任務をお願いしたのは君なら何か意見が得られると思ってね」

「なるほど……ってその…あまり一緒にされたくないのですが…」

「はは、すまないすまない。だが我慢して欲しい。この件に関して頼れるのはジルだけなんだ」

「分かりました。出来る限り尽力しますよ」

「うん、ありがとう」

 

リアの感謝にジルはいえ、と返す。

気味の悪い任務でも引き受ける彼女の寛大さにリアは本当に感謝した。

ジルは『ブラッドスターク』の中でもの突出した暗殺者(アサシン)だとリアは思っている。

嫌なことはきちんと表に出すが、それと任務に取り組むかは別として捉えられている。

暗殺に私情を持ち込まないことにおいてはクレアと並ぶだろう。

クレアに関しては剣士の心を捨て、未来のために血筋を利用している。

彼女もまた私情は捨てていた。

故にクレアとジル、彼女達はリアの想定する『暗殺者(アサシン)』の完成系に最も近いと言えた。

そんなジルは既に結論に近付いていたリアに尋ねる。

 

「どうしてモンスターでも調教師(テイマー)の仕業でもないと思ったんですか?」

 

暖簾の前の長椅子に腰掛けて『任務』に真剣に取り組むことを態度で示す。

長話にも付き合う気になったジルにリアも隣にお邪魔し、自身の推測を教えた。

 

「さっきも言ったが喰い跡が気になる。だが、それよりも核心を突くものがあってね…」

「それは一体…」

呪詛(カース)だよ」

「カ...ッ!?」

 

思わずジルが立ち上がる。

魔法とは違い呪いの類。

使用者はごく稀でジルはその一人だった。

これまで政府側に呪詛(カース)を持つ者はいない。

初めて現れた敵の呪詛(カース)持ちに衝撃を受けたジルだったが、情報を聞き終えてないことにハッと冷静に立ち直る。

 

「す、すみません。取り乱しました」

「大丈夫だ。ここに来て初めてだからね。あちらになく、こちらにあるもの…ジルの呪詛(カース)はある意味クレアの魔剣同様に切り札だったんだけど…」

「相手にも、居た…」

「あぁ。これはかなりの痛手…計算違いだよ」

座り直したジルの横でリアが苦悩を物語る表情で溜息をつく。

先手を打たれたことにリアもまいっていた。

呪詛(カース)の話を聞いて、ジルは指名された理由を理解する。

 

「なるほど…相手が呪詛(カース)持ちであるから僕を…」

「その通り。呪詛(カース)の勝手を知っているジルなら対処できると思ったのさ。改めて任されてくれるかな?」

「はい。それに関しては答えは変わりません。任務でかる限りお引き受けします」

「頼もしい限りだね」

「ところでなんで呪詛(カース)に気付いたんですか?」

「ん?あぁ、それは…」

 

いくら被害者の遺体や骨があったとして呪詛(カース)が必ずしも跡に残るとは限らない。

ジルはまず呪詛(カース)の特徴について知ろうとした。

今わかる情報を最大限リアから引き出す。

呪詛(カース)と分かる何かが遺体に残っていたのか否か。

それだけで系統が大分絞れるようになる。

 

「遺体には呪詛(カース)と判断できる材料はない」

「なら何故?」

「単純に生存者の証言さ。まあすぐに死んでしまったけどね」

 

骨まで喰われた被害者がいる中、なんとか生存して帰ってきた者もいたという。

さすがは命を掛けて戦場へ行く者というべきか死を悟っていた生存者は報告だけを終えて生を遂げた。

そんな生存者の報告をリアは伝達されていた。

 

「『本拠(ホーム)へ辿り着いたが最期、身体の痙攣は満たされ指一本たりとも自由は効かない』…ですか」

「遅延性…いや、持続的に身体を麻痺させる。蝕む呪詛(カース)、私はそう睨んでいる。どうかな」

「……僕の考えとそんなに相違はないです。おそらく身体の自由を奪って『捕食』するのかと」

「ふむ。ついに捕食と言ったか」

 

ジルの言葉にもリアの考えに乗ってきたことを確認したリアは再度同じ質問をする。

 

「さぁ、ジル・アリアドス。君の意見を聞かせてくれ。これはモンスターの仕業か、それとも調教師(テイマー)の仕業か、それとも…どうかな?」

「そう、ですね…」

 

既に答えなど知っている筈なのに、とジルは内心毒づく。

リアの意地悪な尋ね方に表情を曇らせるもジルは彼女と向き合い、答えた。

 

「モンスターでも調教師(テイマー)でもない『何か』かと。調教師(テイマー)呪詛(カース)使いという可能性も捨てきれませんがね」

「そんな人材がいるならこれまで何故表に出てこなかったのかという疑問が出るね」

「……」

「はは、そう睨まないでくれ。考えられるのはあちらも扱いに困る存在だということだね」

 

リアの考えは正しい。

尽く否定されるその理由も納得できるものがある。

だからこそジルはこの『任務』に底知れない畏怖と警戒を抱く。

リアから話を一通り聞き、ジルが羊皮紙を眺めていると突如暖簾が捲られた。

ジルもリアも思わずそちらを見る。

そこには一人の小人族(パルゥム)、マイアだ。

 

「僕もその任務に参加させてくれ」

「は?」

 

突然何を言っているのか。

ジルは困惑したが、リアは彼女の――否、彼の力強い瞳に込められた思いを汲み取る。

だが、首を振った。

 

「なんで!?」

「まだ謎は深い。今回の任務はあくまで様子見、少数で参加してもらいたいんだ。やはり適任のジル以外に任せるわけにはいかないね」

「で、でも一応敵の討伐も任務に入ってるんだろう!?そんなのジルだけじゃ危険すぎる…!」

「マイア。その発言はジルの力を信用していないと取ってしまっても構わないかな?ジルを想うならあまりそういう発言は控えた方がいいと勧めておくよ」

「それは…!」

 

続けようとして言葉を詰まらせるマイア。

ふとジルを見るとリアの言う通り非力を指摘されたと思ったのかその瞳には闘志があった。

しかし、マイアは否定する。

 

「ごめん。違うんだ、ジル。そういうつもりで言ったわけじゃなくて…ね?」

「じゃあどういうつもりで言ったんですか?」

「ぼ、僕は…ただ…ジルが心配で…」

 

言い淀むマイアだが、本音だ。

ただ任務の異常さにジルを危惧して隠れていたにも関わらず飛び出してしまった。

マイアの優しさを知るジルは相変わらずな彼に少し頬を緩めて溜息をついた。

 

「分かりました。僕は賛成です」

「本当かい!?」

「えぇ。大丈夫です、マイアは僕が守りますよ」

「え?あ、うん…」

 

ジルの思いやりにマイアが微妙な顔をする。

マイアの同行を賛同したジル。

しかし、最終的な決定をするのはリアだ。

 

「リア。どうですか?」

「……はぁ。ジルが言うなら仕方ないね。同行を許可しよう」

「ありがとうございます」

「あ、ありがとー。リア…」

 

ジル共にマイアも礼を言う。

任務を伝え終えたリアが去った後、自室に戻ろうと立ち上がったジルにマイアは声を掛けた。

 

「ね、ねえジル…」

「どうしました?」

「えっと…僕って頼りない?」

「はい?」

 

突然の問いに思わず問い返すジル。

ジルの困惑を見てマイアは慌てて首を振った。

 

「や、やっぱりいいや!ご、ごめんね!」

「いえ。では僕は行きますね」

「うん…またね」

 

自室へと戻っていくジルの背にマイアは手を振りながら眺める。

マイアの目線には何処か熱烈なものがこもっていた。

ジルの姿が見えなくなり、俯く。

 

「強く…なりたいなぁ…」

 

先程までジルが座っていた長椅子に腰掛ける。

彼女の温もりがまだ残っていて、マイアに伝わってきた。

少しだけ頬を紅く染める。

 

「もう守れるのはやだよ。特に君には…」

 

長椅子に寝そべる小人族(パルゥム)の小さな身体。

薄い胸に狼人(ウェアウルフ)の温もりを密着させる。

そのまま小人族(パルゥム)は眠りへと落ちていった。

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