戦女神達の戦争 軍団、『彼の地にて』 作:電話圏外
[ギンザ異界]
判別がつかないどこか不安定な鼻歌が響く
黒い空間、異次元的な世界
仔山羊の母神の心音と中心の父神の白痴のリズムで、鼻歌が響く
軸もない上下逆さま、何方か判らない世界を一人の女の子が歩いていた
白いボディースーツが特徴的なスレンダーな女の子だ
そのまま、いつか長い/短い移動を掛けて"虹色の様な泡立つ林"に入っていった
暗がりに佇む目的の人物を見つけた
「ああ、此処に居たんですね。狭間さん」
ぶじゅ!びゅー!
と音をたてて彼女の眼前より色とりどりの形容しがたい体液が顔に飛び散った
ぴちゃ
ぴちゃ、くグち
「これで、『本体』は抑えられますね。全く、閣下の無茶振りも困ったものだ」
びちゃー!ぐじゅ、じぎびじゅ
「深海に眠る彼も今彼女たちが対処していますが…私達はちょっとだけここで"祈祷"だそうです」
触手の生えた奇形のイノシシ
ぴぷぎ!ぴきー!きー…!キ!
カサキキィキチキチ…キャァオぁぁァあー!
存在が忌諱されるおぞましい蟲
目にし、正気を失い、死に至るおぞましい人類も想像だにしない化け物
ギギギーーーー!ぎぃぃぃぃいいいいい!
死そのものと謂える物質畏怖根源
「しかし、貴女も悪食というか、雑食と言うか…おいしそうにたべますね、くちっ、もぐもぐ」
「アナタたちは、もともと、依代でしたが、あなたのように、
珍しいですねえ
ね!ニャル中佐?
緑、黄、黄金、黒、透明、様々で感覚そのものがズレておりどれも喩えがたい、他にも色とりどり!
形様々な私達にも"判る"ような臓物肉片のようなものや!
嫌悪するリズムで発光鼓動する鱗、毒蟲の様な毛が生えた異臭を放つ悍ましく鮮やかな革、神経が震える皮膚、厭悪させられる血液、"異なる体液"、人神が世界である"筈"の人類存在への冒涜的なゲルといった理の外のもの
奇形の欠片を口に含んで嚥下している黒髪の美女であった
絶世の、それはもう奇跡の光景とも謂うべき美貌の彼女が。
人類の意図も及ばぬ悍ましい背筋のそそり立つ供物を自己の血液臓器に取り込む血肉とする食事を行為するその様は
一種の死生を連想させる。
外なる神の美であった
後ろでへたり込んで、目を目の前の光景を捉えつつ痙攣している桃色の女子に気が付いた
「あら、あらあらどうちたんでちゅか~?」
白の女が撫でる手先は
「ヒメちゃん」
死力を尽くした『闘争』を終えた後の
[シンジュク高層ビル カフェテリア 11:20]
「あの方に…ひひひひっひっ」
「八神少将、笑い過ぎでは…?」
八神は目の端の涙を拭うと
「あー、ひひっ、すまん、くくっ、あの『ニンゲン』が『邪神の一柱にダメージを与える』とは思いも寄らんかった…」
「『閣下』は大変お喜びに、それはもう、娶りたいとまで…」
止めましたけどね、と溜息を吐く
八神はドン引き、同情した顔で
「あの方にそこまで気に入られるとは……」
「部下ですけど、あんな男とヤですよ」
「あー、せやなあ、あの姿を見て正気を保っていられる人間…欲しいな」
「部下にですよね」
「勿論、でも、『白の彼女』でも癒せんかあ…」
「魂魄が大分酷い捻じれ方してるみたいですよ」
「『産れ直す』とか…?」
「あの精神が気に入っているそうで、『白の彼女』が熱望しても"上"が差し止めです」
「壊れてるんじゃあなあ…」
遠くの席からがらんどうの喫煙席から彼女たちの会話を二人の男が聞いていた
「壊れた人間を残念がる八神、彼女達にはもう人間の精神は残っていないかもしれないな」
バケモノどもの会話の内容にストレスを感じ、数年ぶりのタバコに咽るシノサキ
「一本だ」
付き合いでやっただけだとササガワの差し出した二本目に拒否を示した
「最後の希望のケイジサンもイカレちまったしなあ、彼女たちに手先に回られてりゃあ、どーしよーもない」
「『閣下』とやらは何をするつもりなんだかな」
「人類抹殺…八神一人で簡単にできるな」
「スペック上彼女は地球位の惑星ならば氷漬けに出来る」
「ああ、だが、我々は生き残る為の戦いを行う」
「だが、こーなっては、絶望だな」
「でも、これは…アレ、じゃないか」
ササガワは謎のジェスチャーを示した
壁かけテレビにはニュースが甲子園の球場が今年は中止の意図を告げていた
「ああ、夏の選抜はカープかな…?」
互いにニヤリ、と笑う
次には毎年の式典の映像に切り替わり
そこには広島が映し出されていた
席を立つ二人、女性陣に近づくと
「お二人とも、すまないが我々は外食に行くよ」
「おや、どちらにです?」
「新幹線でちょっとね」
「行き先も告げてください」
「我々は…!」
「いい、広島だ、本場の広島焼を食べにね」
「どうぞー、シノザキ本家のお参りでしたらゆっくりと」
「この女っ!」
「どうした、ササガワ、行くぞ」
ちっ、と舌打ちして去って行く彼らを二人はドアまで眺めていた
「見え透いた動きだ、『正義は我らにあり』 だったか」
彼ら二人が行っていたジェスチャーを手慣れたように"八神が"行っていた
「なんです?それ」
「気にするな、言うなれば黒歴史、というヤツかな」
「標準語の方が言い慣れてますね」
昔取った杵柄だ、と八神一人で含み笑いしていた
暗い夜を駆ける車窓を眺め、遠く過去となった『親友』を思い出していた
「おい、ビールこぼれてるぞ」
「ああ、すまん」
「しかし、アツアツじゃないのも…あ、いいなむぐ」
二箱目のシュウマイ弁当を食べているササガワにいつの間にか笑っていた
「…まもなく、岡山、停車します…お降りの際は…」
「おい、どうした、広島だろう」
スーツ上着を着用しだしたシノザキ
「ちょっと立ち寄る場所がある」
二人は世界の運命のサイコロを振っていた