選択した結果(仮)   作:ちびっこ

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 川に足をつけ、バタバタと動かす。跳ねた水をかけられ邪魔されたにも関わらずフミ子は楽しそうだ。

 

「それにしても遅い」

 

 私の足腰が多少回復するぐらい経ったのに、まだ兄とは合流出来ていないのだ。

 

「念での戦いは感じねーから、その内戻ってくるだろ」

「むぅ」

 

 ご機嫌ナナメである。兄のことだから私のために無茶してそうだ。足手まといとわかっているが、1人で背負わないでほしい。

 

「まっもう帰ってくるぜ。あいつのことだ、サクラがそろそろスネ始める時間とわかってるはずだかんなー」

「スネてない」

 

 否定と一緒に睨め付けるが、ディーノはヘラっと笑って気にする素振りさえ見せない。……面白くない。

 

「嫌い」

 

 フンっと横を向けば、後ろの方でアタフタしている気配がし始めたので「うそ」と訂正した。

 

「好きとは言ってくれないのか?」

「……人としては好き」

 

 視線は合わせていないが、嬉しそうな気配を感じる。恋愛感情はないと断ってるのに、なぜだ。

 

 よくわからない男だと思っていると、急にディーノが私を庇うように構えた。

 

「僕だよ」

「なんだ、桂かよ」

 

 ディーノが離れそうだったので私はそっと袖を引っ張る。

 

「合流出来たんだ、さっさと移動しようぜ。この通り、フミ子のおかげで魚も取れたしな」

「流石、サクラのフミ子だね」

「だな!」

 

 ディーノはニッと笑って私を抱き上げるために後ろを向く。その瞬間に、ムチで何か叩き落とした。

 

「……おかしいな、何か間違えた?オレの変装は完璧だったのに」

「いや、まったく」

 

 思わずツッコミすると、初めて私を視界に入れた。……殺気が懐かしいと感じる時点で、私もかなり毒されている気がする。

 

「お前のターゲットはオレ達じゃねーだろ」

「それもバレているんだ。オレが思っていた以上に厄介そうだね。……うん、早めに消そう」

 

 私達が臨戦状態になった時、莫大なオーラを発しながらもただの散歩中のような足取りで兄は姿を見せた。

 

「サクラの敵は僕の敵だからね。僕も混ぜてもらうよ」

 

 兄が言い終わると同時に、敵対している相手……イルミの足元から植物が生え、晴の活性による急成長で搦め捕ろうとする。

 

 前触れがなかった攻撃だが、流石は有名な殺し屋といったところである。足にオーラを集中させ、飛び退けて逃げた。

 

「すまない。捕まえられると思ったんだけどね」

「桂が来た時点で逃げる気だったみてーだからな。無傷で退けたなら、十分だ。まっ1番のお手柄はサクラだけどな」

「そうだね!」

 

 偉い偉いと2人に頭を撫でられたが、私の感覚では正直何もしていないんだよな。針を使わずオーラで操作したのかもしれないが、『真実の目』だと勝手に『隠』まで見破ってしまうからな。オーラを使った時点で私にはバレバレなのだ。

 

「手の内をひとつ見せちゃったけど、大丈夫?」

「問題ないさ。それに僕が操作系か具現化系だと思っただろうしね」

 

 つまり兄は操作系や具現化系じゃないのか。いったい何だろうと気になりながらも移動し始める。もっとも、私の歩調だと遅いので兄に抱っこされているが。

 

「僕は変化系だよ」

 

 ハンター協会の者が尾行しているのにいいのかと疑問に思う。口元が見えず聞こえない位置なのだろうか?

 

「大丈夫だよ。聞こえたとしても彼は聞かなかったフリをするさ」

 

 合流する前に私を尾行している者に釘を刺していたらしい。それで遅かったのかもしれない。

 

「じゃ遠慮なく。兄は本当に変化系なのか? 気まぐれでウソつきの?」

「そうだよ」

 

 どうも想像がつかなかったので、首を傾げる。しかしディーノは心当たりがあるのか頷いていた。

 

「ディーノが強化系なのは納得出来たのだろ?」

「ん」

「……オレはそんなに単純なのか」

 

 今度は私と兄が揃って頷く。まぁディーノの場合は身内認定した者には騙されやすいという言葉が隠れているが。

 

「それに、強化系は一途だしね」

 

 慌てて兄の口を押さえたが遅かった。そーっとディーノの顔を見ると嬉しそうに笑っていた。……見なかったことにしよう。

 

「サクラの水見式はどのように変化したんだい?」

「私の場合、練がショボいからな。わかりにくかったぞ」

 

 なんとかして練が出来るようになってから試したみたが、大変だった。

 

「時間がかけると、ゆっくりと葉が揺れたんだ。でも念能力から考えると特質系も持ってるのはわかっていたからな。頑張って続けたんだ。でも何も変化が起きなかったから悩んだよな?」

「ああ。そこで浮かせるものを変えてみたんだ」

「いろいろ試した結果、虫に喰われたり折れた葉っぱを浮かせれば葉が揺れながら元に戻った」

「……それはまた、限定的だね」

 

 私もディーノも頷いた。『発』から入らなければ、気付かなかったかもしれない。長時間『練』をすると、疲れるから特に。

 

「オレの考えでは、サクラは普通の念能力者とちょっと毛色が違うんだ。サクラは自分を操作して、元々あった力を高めた結果、特質系が強まったんだ」

「サクラは能力に目覚めるのも遅かったからね。ディーノの言う通り、生れつき特質系の性質を持っているのに、眠っていた可能性はあるだろうね」

 

 自身でも思うが、面倒な体質である。しかしまぁ見事に系統が別れたな。私に攻撃手段がないのを除けば、上手くバランスは取れていると思う。

 

「お兄ちゃんの『発』ってなに?」

「口にした薬の効力をオーラに変える、だよ」

「ん? それって意味あるのか?」

「もちろんだとも。薬を組み合わせて効力を高めたり、副作用をなくすことも出来るのだよ。変化させた僕のオーラに包み込めば、どんな病気だって治してみせるさ」

 

 ……10年後の私が白蘭のせいで寝たきりになったのが関係しているんだろうな。

 

「ただ、まだこの世界の病気を調べきれていないし、金銭面の問題でそこまで手を伸ばせなかったからね。少し失敗したと思っているよ」

「お兄ちゃんも苦労したんだ」

 

 ちょっと意外だという気持ちもあるが、私達は移動手段があって天空闘技場に行けたのが大きかったからな。キャンプグッズは自炊するための道具として揃えたのかもしれない。店で食べる方が高くつくだろうし。

 

「桂」

「僕の苦労話は教えないよ! サクラが心を痛めてしまうじゃないか!」

「……わーった。なら、後で語ろうぜ」

 

 なにそれ、ズルイ。私も聞きたいぞ。

 

「男はね、カッコ良く見せたいものなのだよ。それにこれからは一緒に過ごすのだよ? ハンター証があれば、苦労はぐっと減るのだから、サクラには気にしてほしくないのだよ」

「……じゃぁお兄ちゃんも私達の苦労話を聞いたとしても私に謝らないでね」

「甘やかすのは許してくれたまえ」

 

 謝られるよりはマシかと、了承の意味も込めて兄の首に手をまわす。すると、兄がポンポンと私の背を叩き、ディーノが私の頭を撫でた。

 

 ……この関係のまま続けばいいのに。

 

 思わず出た気持ちにフタをする。私は幸せだが、ディーノに失礼過ぎる考えだ。でも今日ぐらいはいいかと抱きしめる力を強めた。

 

 ある程度移動したところで、兄は足を止めて私をおろした。どうやら今日はここで野宿するらしい。

 

「サクラのためにご馳走を用意したいけど、あまり手の込んだ料理は作れないからねぇ」

 

 残念そうに呟きながらも兄はテキパキ動いていた。ちらっとディーノに視線を向けると、水の量を増やしていた。……強化系ってサバイバルに便利だよな。

 

「私にも何かすることある?」

「休んでろ」

 

 食い込み気味に言われた。少しぐらい考えてくれてもいいのに。大人しくフミ子をもふもふしようと目を向ければ、フミ子は兄の手伝いをしていた。……役に立たないのは私だけか。

 

「そういや、ディーノはどうして彼のターゲットは私じゃないと気付いたんだ?」

 

 私のターゲットはディーノだから、ディーノが外れる理由はわかる。

 

「お前のおかげで絞れていただろ?」

 

 コクリと頷く。私は予知が出来るようになった同時期ぐらいから幸運持ちになった。だから今回のようなクジでもある程度は発揮する。

 

 しかし私が引いた番号はディーノの番号だった。

 

 私が強請ればくれる人物という意味では、間違いなく幸運が発揮している。だが、最高は自分の番号を引くことなのだ。獲物の番号として3点、自身のナンバープレートとして3点が溜まるからな。しかし私は引けなかった。

 

 私が引いた時点では、ディーノの番号が最善の番号だったのだ。つまり私が引く前に無くなっていたことを意味する。だから私よりも早く3次試験をクリアしている人物に絞られた。

 

 問題はイルミは私よりも早くゴールしていたので、この法則に当てはまる。なぜ違うとディーノが言い切れたのかがわからない。

 

「この広い島の中で探すのは大変ってのはわかるだろ?」

「……そうか。見張っていたのか」

 

 私よりも先にクリアしているなら、後からスタートする私を見張るべきだ。ナンバープレートを隠さなかったことがいきてくる。

 

「オレのナンバープレートを絶対に欲しい奴はいねーし、オレらがスクーデリアに乗って猛スピードで移動しても焦るのは1人しかいない」

「それを僕が狩ったのさ」

 

 試験官のことを抜きにしても、あの移動には意味があったらしい。兄が取り出したナンバープレートを見て、思わずご愁傷様と呟いてしまった。殺してはいないだろうが、初日に動けないようにされたので絶望的だと思う。

 

「もしサクラのプレートを狙ってるのがあいつなら、念の戦いになるのはわかっていた。そん時は合流している」

「僕が1人で片付ける案もあったけど、念の戦いには相性があるからね。流石の僕も自重したよ」

「確かに。操作系だったと思うし、私が居ると居ないでは勝率が大幅に変わりそうだもんな」

 

 2人ともなんとも言えないような顔で私を見ていた。弱くて攻撃手段もないのに、相性は良いからだと思う。

 

「そういや、兄はつけられなかったのか?」

「サクラとは前提条件が違うからねぇ。僕の幸運はこのように出たよ」

 

 次に兄が取り出したのは、兄のターゲットのナンバープレートと45番とかかれたクジの札だった。

 

「お前ら幸運過ぎだろ……」

 

 ディーノの呟きに否定することは出来なかった。どうやら兄のターゲットは兄を狩ろうとしていたらしい。兄は狩りながら狩る者も倒せたのだ。

 

 2番目の兄が自分の番号を引けなかったので、てっきりヒソカが引いたのかと思っていたが、兄は私と違って狩れるので自身や仲間の番号を引く必要はなく、兄にとって最良のクジを引いたらしい。……流石、産まれた時からの幸運持ちである。

 

「そういうディーノのターゲットは誰なんだ?」

 

 念のため船の中では名前を出さなかったので、私は誰か知らないのだ。

 

「ポックルつったか?」

「うわぁ。でもある意味良かったのか……?」

「良かったことにすればいいと思うよ」

 

 ディーノが不思議そうにしているので、話すべきか悩む。

 

「その、なんというか、うん。ディーノらしいと思う」

「……詳しくは聞かねーけどよ、それは褒めてるのか?」

 

 私達は頷く。無意識にフラグを立てたり、折ったりするのが本当にディーノらしいのだ。もちろん彼を狩って不合格にすればだが。

 

「もってる男は違うね」

「確かに」

「ぜってぇ褒めてねーだろ!?」

 

 そんなことはないと私達は言ったが、ディーノは信じようとしなかった。




『真実の目』(強化系?)
サクラの能力。
名前に相応しいぐらい、ぶっ飛んでいる。
特に具現化系は泣いていいと思う。
『纒』をするだけで強化され、常に『凝』状態なので。
つまり他の能力を発動時(『絶』の時)は見破れない。



『○○○○○』(変化系)
桂の念能力。
サクラに話した能力は咄嗟に作った建前。
建前なので使えなくはない。
サクラの風邪を治そうとしなかったことから、ディーノさんはウソとすぐに気付いた。
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