ハンゾーの勝利が決まれば、キルア対ギタラクル……イルミの試合が始まった。イルミは針を抜いて変装をといた後、キルアの気持ちをバッサリときって捨てた。そしてレオリオの言葉でゴンはもうキルアを友達だと思っていると知った彼は言った。
「よし、ゴンを殺そう」
イルミが発した言葉に息を呑んだ者が数名居たが、私はその中でやっぱりよくあることじゃないかとズレた言葉を発した。
それにしてもイルミの話を聞いているとイライラする。私は兄に誘導はされても強要されたことはないし、私の気持ちをきって捨てるようなことはしなかった。
確かに私が兄のために思い行動し、兄は私の気持ちを汲み取ってスレ違ったことはある。他にも10年後の兄が死ぬとわかって、私も一緒に連れてってと兄に懇願した時は、兄にあんな顔をさせるなとディーノが私の頬を叩いて止めてくれたこともあった。
私達はいっぱい間違えた。多分これからも間違えると思う。でもそこには確かに互いを思い合う気持ちがあった。
「お前はキルアの兄なんかじゃない……!」
気付けば、私は口を開いていた。
「キルアがどれだけ勇気を振り絞って伝えたのか、なんでわかってやらないんだ! それに心が狭すぎる! 軽く話を聞いただけだが、母親はまだ心が広いぞ。心配だからそれとなく様子を見にいってほしいと言っただけなんだろ。殺し屋としての道に進むことを願っているようだが、君のように強要するような言動はしていない! 私の兄も時間がある限り私を観察したり盗撮しているが、私の将来を縛るようなマネはしないぞ!」
「もちろんさ!」
「……お前ら、威張る内容じゃないからな? 特に桂はもう少し自重しろ」
ディーノのツッコミはスルーする。私達兄妹が変わっているのは知っているし、頭を冷やすためにも自虐ネタをいれたのだ。
しかしまぁここまで言ってしまったんだ。後は私の口八丁で乗り切ってやる!
「それと、だ。私の個人的な感情は一旦横に置いても、さっきから矛盾しているぞ。キルアがゴンを殺してしまっても、どこに問題あるんだ」
「あるに決まってるだろ!?」
「ないだろ。もしキルアがゴンを殺した時は彼の言ってることは正しかったってことだ。キルアも殺し屋が天職だったと自覚出来て良かったねという話じゃないのか?」
「問題大有りじゃねーか!?」
レオリオはもう少し落ち着け。まぁクラピカが待てというように手を伸ばしたから大丈夫だろう。……ねちっこい視線を感じる。「ククク♦︎」とか言って笑ってるだけだから、害はなさそうだが。
「サクラの考えも間違いではない。ギタラクルからすれば、キルアがゴンを殺しても不都合なことは起きない。強いて言うならば、殺し屋と自覚するまで時間がかかることだ」
予想通り、クラピカも乗ってきた。キルアがゴンを殺さないと信じているからこの展開に賛同出来るのだ。
「そうだろ? 今脅して無理矢理押さえつけてイヤイヤ殺し屋をさせるか、時間をかかるかもしれないがキルア自身が自覚して殺し屋として戻ってくるのか。どっちがいいのかって話だ。後々のことを考えると答えは決まってると言ってもいいけど。まぁもし気絶しているゴンがこの話を聞いて、キルアとは一緒に居られないとか言えば、話は変わってくるが……」
ここまで言えば、レオリオも理解したらしい。ゴンはキルアを拒絶するわけないからな。後は論点を正すだけ。
「母親の話を聞いた感じでは、殺し屋云々は君の一存で決めれないんじゃないのか? いくら考えても無駄なこと。今考えれるのは、ハンター証を取らせるべきか取らないべきかぐらいじゃないのか? 決めれるのは今ここに居る君だけだし」
「……うん。そうかも。今すぐキルが大人しく帰るなら、父さんにはオレから話しておくけど?」
キルアはゴンのことを思ったのか一度目を伏せた後、コクリと頷いた。
「それとキルにハンター証は必要ない」
「うん……わかった」
なんとか上手くいったらしい。家族間のかわったルールと針をさしているからキルアが絶対に殺し屋になると信じて疑わないから誤魔化せた気がする。原作でキルアの父親もそう考えて送り出したことを知っていたのも大きかった。
「ふむ。では、キルアが不合格者で良いのかの?」
「……オレはハンターになりたかった訳じゃないから」
キルアが暴走しなかっただけでも私の行動は意味があったと思う。自画自賛してもいいレベルだろうとホッと息を吐いていると、ガシガシと頭を撫でられた。
「偉いぜ、サクラ」
「私が手を打たなかったら、君がなんとかしたくせに」
「オレの場合は力づくだったからなぁ」
……確かに。決して頭が悪い訳じゃないのに、ディーノは相手が乗り気なら力づくになるんだよな。雲雀恭弥と初めて会った時がいい例である。
残念すぎるとディーノに視線を送った後、私は兄の元へ向かう。兄は苦笑いしてから、私を抱きあげた。
「……ごめん、心配かけた」
「違うよ。少し……照れ臭かっただけさ。僕の気持ちが届いているからサクラは怒ったということだからね」
……なんだか急に恥ずかしくなってきたぞ。もじもじと隠れるように兄の肩に顔を押し付けた。
「無自覚だったみたいぜ」
「そんなところも可愛いけどね!」
「オレもそう思うけどよ、部屋に案内するって言ってるぜ」
都合の悪い話は聞こえないフリをして、お風呂に入れるかもと期待を寄せる。私の反応を見た2人は軽く笑った後、移動し始めた。無視だ無視、お風呂が私を呼んでいるのだ!
サッパリした後、私達はこれからの予定を相談する。
「再び天空闘技場に戻るのもありだと思うよ」
「桂の念能力を考えると資金はあった方がいいのは間違いないからなー」
「でも彼がいるぞ?」
これ以上、ヒソカと関わるのもどうかと思うのだ。
「もう手遅れだと思うぜ」
それは知りたくなかった。
「オレとしては試しの門に挑戦したいんだよなー。それに確かキルアの実家だろ?」
うわぁと私はドン引きする。あれに挑戦したいと思う気持ちも、自然に原作へ関わろうとする彼がヤバイ。身体能力の差として試しの門という例をあげたが、ここの原作の流れは教えてないのに。
「ディーノは念を極めた方がいいと思うよ! 差を埋めるにはその方向しかないからね」
ちょっと落ち込んでそうだが、私もそう思う。まぁディーノも否定しないからわかってると思うが。ハンター試験で身体能力の差がはっきりしてしまったからな。
「兄の目から見て、どれぐらいかかる?」
「……修行期間を含めてもクリアまで半年はかからないよ。ただそれは効率重視で、サクラが割り切れると思えないけどね」
「割り切れる?」
「最後のクイズとクリア報酬から考えて、一度クリアしてしまえば、僕はゲームが続くとは思えないのだよ」
……つまりゴンとキルアを鍛える機会を潰すのか。
「もちろん彼の父の言葉から考えるとゲーム自体は続く可能性もあるけど、クリア報酬があるかはわからない」
ビスケと出会える機会を無くすのはほぼ間違いないと兄は予想しているようだ。
ジッと2人が私の顔を見ている気がする。私が二択すれば答えはわかるからな。
「……ディーノ」
「大丈夫だ。あいつらなら、オレが居なくても上手くやってるぜ」
結局、また甘える形になってしまったと私は苦笑いするしかなかった。ディーノが居ると居ないではやれる範囲が全然違うのだ。
「話は決まりだね!」
「ん。猶予は出来たけど、やることはいっぱいだし」
「そうだねぇ。流石にわかっている範囲だけでも手を打ちたいところだね!」
「ああ。オレにはわからねーけど、サクラが悔やみながら戻ることは防ぎたい。なんでもするぜ」
「……ありがとう」
私が巻き込んだのに2人は責めないし、私のためにと動いてくれる。言葉にしたことで気が緩んだのか、私はボロボロと泣き始めてしまい、2人を慌てさせてしまったのだった。
次の日、講習を受けるためにどこに座ろうか悩んでいるとレオリオが手をあげたので私達はそっちへと向かう。ゴンとクラピカも一緒に居るな。
「サクラ、ありがとう!」
近付くとすぐにゴンに声をかけられた。礼はキルアのことだろう。
「私も腹が立っただけだ。それと君がむかえに行けば、後押しになると思う」
「私達もその話をしていたんだ」
「問題はどうやってキルアの家を聞き出すかなんだ。いい案はねぇか?」
「彼の実家は有名だぞ? 確かククルーマウンテンだったかな。観光バスも出ていたはず」
驚いた3人を見て、先にめくれとツッコミしたくなる。ハンター専用サイトで調べなくてもわかると思うし。
私がやれやれと肩をすくめた後、兄とディーノに視線を向ける。会話に入ってこないことに変だと思っていたが、ジャンケンをしていた。何やってんだか。
私が呆れた視線を送っているとイルミがやってきた。……おい、私の後ろに止まるな。怖いから。
恐る恐る振り返ると、いつものように2人は私を守っていたのであまり見えなかった。ホッとする。
「僕達に何かあるのかい?」
「……オレ、人に操られたことはないんだよね」
ぞぞぞっと来た。あれか操る方だといいたいのか。兄に抱きつきたいが、いつでも動けるようにしている2人の邪魔は出来ない。
「ただ納得もしているんだ。だからお前の言う通りになっただけ。そう思うのも操られているのかな」
イルミは返事が欲しかったわけじゃないようで、言うだけ言って席へ座った。が、ジッと見られている気がする。こっちを向いて居ないのに。
「サクラ、僕の腕の中にきたまえ!」
すぐさま兄の膝の上に座った。明らかにおかしな行動だが、誰も引かなかった。……ヒソカは楽しそうに笑っていたが。
「相変わらずサクラはかわったタイプに好かれるね」
「まったくだぜ」
2人ともブーメランでかえってくることに気付いているのか。残念ながらビビっていた私の口は動かなかった。
兄の膝の上に乗りながら、講習を聞く。後から来たハンター協会側の人達は何が起こったのか知らないが、注意は飛んでこない。非常に助かる。
講習が終わるとすぐにハンター証は兄に預ける。私が持ってても盗まれるだけだ。
「サクラ、ディーノに預けてもいいかい?」
「ん? かまわないが……」
私がそう答えると兄はディーノに渡した。ディーノが驚かなかったことから、決めていたらしい。
「サクラ達も行かない?」
「悪いが今回はパス」
「そうか。残念だ」
「連絡先だけでも交換しねーか?」
まいった。戸籍がなかったため、携帯電話もないのだ。
「僕達はまだ連絡手段を持っていないのだよ。君達の連絡先を教えてくれれば、こちらから連絡するよ」
「ん? そうなのか?」
そう言いながら、レオリオはすぐに名刺をくれた。クラピカもそれに続くが、ゴンは持ってないので悲しそうな顔をした。
「ゴン、良いこと教えてあげる」
「ん? なに?」
「近いうちに君とは会えると私の勘がそう言ってる」
「ほんと!?」
自信を持って頷く。私達はこれから天空闘技場で資金集めをするからな。兄達も修行するらしいし、間違いなく会うだろう。ゴンの腕は折れてないし。
レオリオとクラピカの連絡先を貰っていると、ハンゾーからも名刺を貰う。……日本語が懐かしい。
「ジャポンには味噌があるのかい?」
「2次試験の時も思ったけどよ、詳しいな!」
「サクラ、ジャポンに行くのもアリだと僕は思うよ!」
そうかもしれないと頭によぎる。米や味噌が私を呼んでいる……!
「……行くしかねーみたいだな」
苦笑いしながらディーノに頭を撫でられた。だが、譲れない。日本が恋しいのだ。お風呂に入りたいのもその影響である。
ハンゾーにまた連絡すると約束し終われば、ここにはもう用はないと思っているとメンチがやってきた。私達というより兄に用があるんだろうな。
「ありがたく受け取りなさい。私の料理を食べようと思えば数年待ちするのよ」
私とディーノの分もくれたことから、兄の性格がよくわかっている。1人分なら絶対行かなかった。3人分というより私の分もあったため、兄が手土産を持って行くと約束していた。その際にメンチが小さくガッツポーズしていたのを私は見逃さない。「オレ達にはねーのかよ……」というレオリオの呟きはスルーするが。
今度こそ終わりだと思っているとイルミが居た。いつから居たんだ、超怖い。兄とディーノ以外みんなギョッとしているじゃないか。
スッと名刺を私に向かって出されたが、兄が受け取った。イルミは何も言わず、ジッと私を見た後に去った。
「思った以上に厄介な奴に目をつけられたな……」
「僕も連絡先を渡すほどとは思わなかったよ」
そう言って兄は名刺をポケットにしまった。……捨てないのか。
「そろそろオレ達は行くぜ」
ディーノの言葉で今度こそ、さよならだ。ズルをいっぱいしたけど、割と楽しかったなと思いながらもゴン達に手を振った。
章の終わりっぽいけど、まだ1話ある。
次の章は全部で6話っぽい。6話で5ヶ月進むから、やっぱりサクサク行く。薄っぺらいともいう。
グリードアイランドについて。
クリア後の展開は賛否両論だと思う。
一度じゃなければ、せこい話だけどキルアも擬態とか使えば99枚集めれて、報酬をもらった後に揃えればまたもらえるんですよね。クリア報酬をどれにするか悩まなくて良いじゃん。
選挙にゲームマスターも居たし。
だから私は「一度限り」と決めた。異論は認めるw