選択した結果(仮)   作:ちびっこ

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 やっぱり飛行船は時間がかかるよな。スクーデリアの移動に慣れ始めていたため、余計にそう思ってしまう。楽だから飛行船でいいけど。

 

「サクラ、少し話をしよう」

「……ディーノは?」

「散歩に行ってもらったよ」

 

 え、大丈夫か?という言葉をのみこむ。私達のために部屋から出てもらったのだから。

 

「心配ないさ。この飛行船には念能力者はいないからね」

 

 先に調べていたのか。まぁヒソカとばったりとか私も嫌だし確認するのも当然か。安心した私は兄と向かい合うように椅子に座る。

 

「……お兄ちゃん」

「なんだい?」

「一緒にこの世界で過ごさない?」

 

 私の言葉に兄はすぐさま首を振った。

 

「サクラにこの世界は合わないよ」

「兄は過ごしやすいだろ?」

「それは関係ないさ。サクラが苦労するこの世界に僕が留まる理由はないよ」

 

 また私のためか。思わず睨んだ。

 

「すまないね。僕はサクラが怒る理由がわからないのだよ」

「だってお兄ちゃんはいつも私のためって言う! お兄ちゃんは自分のために動かない!」

 

 感情的になり過ぎたのか、目に涙がたまる。

 

「そんなことはないよ」

「あるもん!」

 

 うー!と唸りながら、鼻息を荒くする。そんな私を見て、兄は「怒ってもサクラは可愛いね」と言い、微笑んだ。……完全に相手にされていない!

 

「お兄ちゃん!!」

「僕はね、サクラが考えるような良い人ではないよ。……サクラが幸せになるためなら僕は手段を選ばない」

「ダメだ! 絶対にダメだ!」

 

 私が怒ると兄は嬉しそうに笑うだけだ。

 

「少しは真面目に考えろ!」

「僕はいつでも大真面目だよ」

「……お兄ちゃんはもっと好きに生きていいんだぞ?」

「僕以上に好きに生きている人はいると思うかい?」

 

 つい「いない」と言いそうになった。でも兄は好き勝手に生きてるように見えるが、私の幸せを最優先している。

 

「お兄ちゃんが無理する必要はない!」

「僕は無理をしたつもりはないよ」

 

 平行線だ。いくら言っても通じないことが悲しい。

 

「……少し席を外したほうがいいかな」

 

 止めようとしたのに、声をかけれなかった。心配するようにエリザベスが私の顔を覗き込んだのが視界に入る。私はエリザベスを机の上へ移動させ、顔が埋もれるように抱きく。

 

 しばらくすると、頭を撫でられた。撫で心地でディーノとわかる。兄が呼んだのだろう。また私を優先した!

 

「……兄になんて言われたんだ」

「ん? あいつはサクラを怒らせてしまったと言ってただけだぜ?」

「違う! 怒ってない! わかってくれないのが、悲しいんだ……」

 

 顔を上げて否定する。ディーノは椅子を移動させて、私の隣に腰掛けた。

 

「最初から話してくれ。お前らは家族のことになると視野が狭くなるから、これだけじゃ判断出来ねぇ」

 

 少し悩んだが、全部教えた。私がディーノだけを元の世界に戻すことを考えていたもバレてしまったが、あまり彼は怒っていなかった。

 

「その可能性も考えていたからな」

 

 私の思考を読んだようにディーノはそう言って、私の頭をガシガシと撫でた。

 

「オレの言葉より桂からの方が納得すると思って何も言わなかったんだ。任せてこんなことになっちまったけどな」

 

 はぁとディーノは大きな溜息を吐き、一緒に居れば良かったなと呟いた。

 

「まず桂の言葉は間違ってねーよ。あいつはサクラのためなら人だって殺す。それは知ってるだろ?」

 

 コクリと頷く。10年後の兄は私のためにボンゴレ狩りをした。

 

「でもお兄ちゃんは平気じゃない」

 

 エリザベスはユニの命を肩代わりするために改造された。責任をとって10年後の兄は死んだのだ。

 

「今なら大丈夫か……」

「ん?」

「あの時はちょっと違うんだ。桂が納得したことじゃなかったからな。桂が必要だと思えば、人を殺してもなんとも思わねーよ」

「やっぱり私のせい、だよな……」

 

 10年後の私が人質にならなきゃ、兄はそんなことしなかった。

 

「そう考えているとわかっているから、誰も言わないんだ。特にあの時のお前は、桂のあとを追って死のうとしていたからな」

 

 うぐっと言葉に詰まる。

 

「そもそも10年後のオレがサクラを守れなかったことが発端だ。責任を取るとしたらオレであるべきだった」

「いや、それは違う。私は君にずっと守られていた。ディーノが防げなかったなら、兄でも防げない」

「お前がそう思ってるから桂はオレを責めなかったんだぜ。もちろん桂はサクラも悪いと思っていない。あの時、桂が一番自分の中で納得したのがあの結末だったんだ。サクラを残すことになるが、オレ達が居るなら大丈夫だと思えたんだよ、あいつは……」

 

 ディーノも死んだ10年後の兄のことを度々思い出していたことに今になって気付いた。

 

「あの時は例外だが、桂はお前を守るためなら平気でやる。お前の知らないところで脅していることをオレは知っている」

「……そうなのか」

 

 守られているとわかっていたつもりだったが、甘かったらしい。

 

「そうだな……。例えば、ファミリーを守るためなら、オレは手を汚すこともある。それはわかるんだろ?」

「……ん。いろいろあると思うし」

「桂も一緒だ。それをずっとサクラに見せなかっただけだ」

 

 行き過ぎだとは言ってはいけないと思う。守られているのは私だから。

 

「深く考える必要はないんだ。あいつはお前が幸せならそれで救われる」

「ディーノもロマーリオ達が幸せならいいのか?」

「ああ。まっオレはそこにシマのみんなも入るぜ」

 

 そういえば、ディーノのシマの人達はみんな笑っていたな。……ディーノに守られていることに誇りを持っているかもしれない。

 

「私は、兄の気持ちを踏みにじっていたのか……」

「……なんでそうなるんだ」

 

 視線を向けるとディーノは困ったように頭をかいていた。

 

「ぁー、オレがサクラを心配したり怒るのは負担か?」

「いや。どっちかというとありがたい。ディーノは私のストッパーになっている」

 

 兄は何でも許すから、歯止めがきかなくなるのだ。

 

「桂も同じように考えても不思議じゃねーだろ? あいつは特に嬉しいと思うタイプだぜ」

 

 そういえば、私が怒ったら兄は笑っていたな。……あしらってるのではなく本当に喜んでいたのか。

 

「じゃ私もディーノみたいにガミガミ言った方がいいのか」

 

 頬を引っ張られた、痛い。頑張って冗談と伝えると放してもらえた。

 

「ったく……。あいつはサクラに幸せになってほしいだけだ。この世界にきて、何回ぶっ倒れてるんだ? そんなところでサクラと一緒に過ごしたいと桂は絶対に思わねーよ」

 

 頬を押さえながら頷けば、ディーノは良くできましたというように笑った。ふと疑問に思ったので口を開く。

 

「ディーノはどうしてそこまでしてくれんだ?」

 

 割と面倒な兄妹だと思うんだよな。それなのにディーノは積極的に関わろうとしている。

 

「……珍しいな。聞きたくなったのか?」

 

 僅かに首を傾げれば、ディーノはニッと笑って言った。

 

「サクラが好きだからだ」

「え、あ、うん。そう……でした」

 

 なんだか急に恥ずかしくなってきたぞ……!

 

 視線を泳がしていると頬に手が触れた。さっき摘んだ場所を撫でられて、もっと恥ずかしくなる。

 

「ほんと、サクラは可愛いな」

「……お、お兄ちゃん探してくる!!」

 

 脱兎の如く、椅子から立ち上がり部屋から出る。止められなかったので追いかける気はないのだろう。護衛として私についてきたエリザベスを抱え、足早に歩き出した。

 

 

 

 兄は簡単に見つかった。反省中というように落ち込んで居たからか、たくさんの人に慰められていたからだ。久しぶりに見る光景に思わずヒクッと頬がひきつる。

 

 人だかりに突入する気力はなかったので、「お兄ちゃん」と呼びかける。兄が反応したからなのか、人が波が割れるように動いた。……つい逃げたくなる。

 

「……帰るんだろ」

 

 パッと顔をあげて兄は私が伸ばした手を掴んだ。

 

「チョロすぎ」

「僕が愛するサクラの言葉だからね!」

 

 もう私は仕方ないように笑うしかなかった。

 

 2人揃って部屋に戻ると、ディーノが転がっていた。……兄もディーノも目を離すとめんどくさいことになりすぎだろ!?

 

「ち、違うからな。今のは床が滑ったんだ」

「そんなことより、これからの予定をおさらいするよ!」

「急に威張るな」

「スルーかよ……」

 

 仕方ないよなと兄と目で会話する。

 

「まっ仲が戻って何よりだ」

「また世話になったようだね! そろそろディーノには何か返した方がいいかもしれないね! でも僕が用意するよりもサクラがした方がディーノは嬉しいだろう?」

「そりゃな」

 

 慌てて2人の会話を止め、どうしてそうなるとツッコミする。

 

「サクラはお礼したいとは思わないのかい?」

 

 そう言われると何も言えない。世話になってるのは事実だし。

 

「桂、無理矢理はダメだ。気持ちだけもらうぜ、ありがとな」

「……私に出来ることならいい。変なことはダメだぞ!」

「本当にいいのか?」

「二言はない」

 

 威張るように胸を張る。ディーノは少し悩んだ後、口にした。

 

「……これしかねーな。3人一緒に帰る」

「え?」

 

 想像していたのと違った。それにディーノはもう私が帰る前提でいるとわかっているはずだが……。

 

「サクラがそう願うだけで、オレと桂は迷わない。死ぬ気の炎も念も同じだ。覚悟すればするほど強くなれる」

 

 ジッと2人から見つめられ、私は口を開いた。

 

「一緒に帰りたい。……お兄ちゃん、ディーノ、一緒に帰ろう!」

「僕達がサクラの願いを叶えるのは当然さ」

「ああ。オレはそのために来たんだ。一緒に帰ろうぜ」

「ん!」

 

 私が頷くと、2人に思いっきり頭を撫でられた。また髪がボサボサになったが今回は怒らなかった。

 

 

 

 

 その日の夜、サクラが寝静まったころから桂とディーノは飲み明かしていた。もちろん警戒を緩めることはない。

 

「すまないね。君に頼りっぱなしだよ」

「オレも好きでやってんだ。気にすんな」

 

 そう言ってディーノは桂に酒を注ぐ。桂もお返しにディーノのグラスへ注ぎながらも再び口を開く。

 

「それでも今回のことでサクラは更に僕に依存してしまっただろ? 苦労しているんじゃないのかい?」

 

 再会してからすぐに桂はサクラがディーノへの恋心が薄れていることに気付いていたのだ。

 

「否定はしねーけどよ、桂が謝ることじゃねぇんだ。それに少しは進展があった」

 

 おや?と桂は眉をあげた。いつの間に。

 

「可愛かったぜ?」

「当然さ」

 

 サクラのことが好き同士には、最高の酒のアテだった。

 

「しっかしよー、イルミだったか? あいつのことはどう思う?」

「彼の倫理観はズレているからね。正直僕もどう転ぶかわからないよ」

「やっぱ好きという感情じゃねーのか」

「そうだろうね」

 

 2人して頷く。サクラの見る目からはそう言った感情は読み取れなかった、と。

 

「僕はね、サクラがゾルディック家として必要だと彼が判断した時が怖いよ」

 

 サクラは相手の性格や未来を知っていると、空気を読みすぎる。最終試験に参加していないはずなのに、誰よりもあの場をコントロールしていた。本人は人見知りで口下手だと思っているが、サクラの話術は群を抜いている。情報戦で圧倒的に有利なのだから当然だ。慣れれば、サクラの欠点にも気付くが浅い付き合いでは不可能に近い。

 

「それで試しの門に行くことを却下したんだな」

「身体能力の差は仕方がないけど、念をつかっての成果もわかりやすいところだったけどね……。サクラがゾルディック家と関わる機会は極力減らしたかったのさ」

 

 サクラが何に対して心残りが出来るのかわからないディーノは、桂が極力という言葉を使ったことで関わることは決定していることに気付く。

 

「そこまでキルアに肩入れしてんのか……」

 

 あんなにイルミに対してビビっていたのにな、とディーノは溜息を吐く。それと同時に嫉妬心も湧き上がる。

 

「キルア、というより死んでしまった僕と重ねてるんじゃないかな」

 

 それなら仕方ねぇとディーノは笑いながら酒を飲む。

 

「僕としては、キルアで良かったと思ってるよ」

「? ……クラピカか?」

「彼は復讐者だからね」

 

 消去法で導き出したと判断したので、桂は理由を教えた。ディーノの反応から予想通りサクラから何も聞かされていなかったようで、空になったディーノのグラスに酒を注ぐ。すぐさまグィッと飲み干したことに桂は苦笑いしながらもサクラのフォローする。

 

「君に頼ったのもあったと思うよ。サクラは君や沢田君のような性格を好むからね。気にはしているけど、どうしても彼の考えが理解出来ないのだよ」

「知ってると、オレはサクラのために関わらねーようにと思うだろうかんなー」

 

 サクラが気にする範囲が思った以上に広いことがわかり、ディーノに桂が求めるレベルの高さを理解した。修行期間をとるわけだ、と。

 

「おりるなら今のうちだよ」

「おりた時点でお前はオレを失格とみなすくせによく言うぜ」

「サクラに相応しくないからね」

 

 ニコニコとしながら言い切った桂に、ディーノは溜息を吐く。桂を味方にしなければ、サクラを落とすのは不可能なのだから。

 

「まっ泣かせたくねーから、やるに決まってんだけどな」

「惚れた弱みだね」

「お前も似たようなもんだろ」

 

 フッと笑い合い、2人はグラスを空にした。




桂さんの交友関係。
親友…笹川了平
悪友…白蘭
飲み仲間…ディーノ
一方的な遊び相手…六道骸

桂さんが考えるサクラの理想の相手。
一位…ディーノ
二位…リボーン
三位…沢田綱吉、雲雀恭弥
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