5人揃ってウイングさんがいる家に突撃する。いやまぁ突撃と言ってもチャイムを鳴らすけど。
『はい?』
「すみません。ウイングさん、いらっしゃいますか?」
『少々お待ちください。師範ー』
私がちょっとまともな言葉を使ったら、キルアがギョッとしたのが視界の端に見えた。失礼だな、私も最初ぐらいはしっぽをふるぞ。
しばらくすると、扉が開いた。そして兄、ディーノ、私と視線を向けた後にゴンとキルアを見た。
「……ここではなんです、どうぞ入ってください」
そう言って貰えたので、遠慮なく入る。キルアが警戒していたが、ディーノがフォローしてあげたので大丈夫だろう。
「用件を聞きましょうか」
ウイングさんの言葉を聞いて、ゴンとキルアに視線を向ける。私が言っても意味ないし。
「ウイング?さん、オレはゴン! オレ達天空闘技場で200階クラスの人達と戦えるようになりたいんだ! ね、キルア」
「ああ。オレ達に足りてねーから知りたいんだ」
「君達の話はわかりました。あなた達は? 必要ありませんよね?」
そう言って私達に視線を向けたので、口を開く。
「一度お礼を言おうと思って。あなたのおかげで助かったから」
「……どこかでお会いしましたか?」
「一方的に知ってるだけ。でも恩人」
私が頭をさげると、兄とディーノも頭をさげた気配がした。ウイングさんに「気持ちはわかりました。頭をあげてください」と言われたので、頭をあげる。すると、困惑してそうな顔が見えた。
「説明したいけど、彼らをどうするかによっては話せない」
「……わかりました。ゴン君とキルア君でしたね。私から教わりたいということですね。では、今日からあなた達は私の弟子にします。いいですか?」
2人が返事したのはいいが、「押忍!」じゃなかったので違和感がある。
「ゴンとキルアには悪いけど、すっ飛ばすぞ。この場所もあなたが心源流師範代なのも私の念能力で知った」
「「念能力?」」
チラッと視線を向けるとウイングさんが基礎から説明し始めた。が、ちょっと止めるために手をあげる。
「ズシを呼んでもいいぞ。復習になるかもしれないが、勉強になるだろ? それに彼ならいい」
「……そうですか。ズシ!」
ウイングさんに呼ばれてきたら5人も居て、マジックボードに念について書いているのだから、さぞ驚いただろう。それでもすぐに「押忍」と挨拶するのだから偉い。ちなみに私はみんなと違って、軽く頭をさげただけだ。
ズシも話を聞きなさいといい、全員で基礎の話を聞く。何度かディーノが感心していたので、私の拙い説明だとやはりわかりにくかったらしい。申し訳ない。
「サクラの念能力ってどれのことを言ってるの?」
「それは『発』にあたります。そうですよね?」
「ん」
再び発?と首をかしげるので、ウイングさんがホワイトボードを使って説明する。ゴンとキルアは詰め込み勉強である。いやまぁ遠ざけても良かったが、聞いてもらった方がいいと思う。もちろんこの流れになる可能性も考えて、昨日のうちに兄とディーノも了解済みである。
「ふーん。サクラはどの系統に当たんの?」
「対策を取られるから君達はわかっても迂闊に話すなよ。私は操作系よりの特質系、もしくは特質系よりの操作系。多分後者」
「どれかわからないの?」
「いえ、水見式という調べる方法があります。やってみますか?」
それは知っていると答える。
「水見式ではどっちも反応したんだ」
「……初めて聞きました。そのようなことがあるのですね……」
ズシはウイングさんが知らないことがあると驚き、ゴンはついていけなくなってるのか、キルアに後で説明してやるよと言われていた。
「サクラは念とは別に能力を持っていたんだ」
「念の概念を知らなかったのでは? 稀にですが、無意識に使っている人もいます」
「それはねぇ。オレもそん時は覚えてなかったけどよ、念を覚える前と後では明らかに違うと感じ取れた」
私が神の子と会っている時も絶状態だったらしいからな。ディーノはそれはもう驚いたらしい。私の存在感が薄まったから。
「まぁ発が強制的に決まったから、ウイングさんの考えも強ち間違いでもない。ただ素質があったところにプラスされたからややこしいんだ」
「サクラは念でいうと操作系よりのものと特質系よりのものの能力を持っていたからねぇ」
「はあ!? 2つも持ってたのかよ!?」
「……正確に話すなら3つだ」
ディーノの言葉にウイングさんとキルアが絶句した。いや、真実の目はそんな大したことじゃないぞ。……多分。
「えっと、サクラの念能力の1つは二択を外さないのが凄くなったってことだよね?」
「それを入れるなら4つだな……。あれは念で強化はされてねーんだよ……」
「バッッカじゃねーの!? オレ達に話していいのかよ!?」
キルアに怒られたので、大げさに肩をすくめる。話した方がスムーズに進むのだから仕方がない。
「まぁ念能力になって、私もこれはヤバイと危機感を覚えたんだ。その時にウイングさんに助けてもらった」
「……私は何をしたのでしょうか?」
「私をかくまって、神字を教えてくれた。という未来があったんだ」
私は片方の手袋を少しだけ裏返す。普通なら神字は威力を高めるために使うが、ウイングさんは念を抑えるために神字を教えてくれたのだ。
正直、そんな方法があることに私は驚いた。が、考えてみれば、念をかけたものを除念出来るなら、神字で高められるなら弱めることも可能だろ、と。
「……未来? 予知か!」
「ああ。サクラは未来がみえるんだ。いろいろ条件はあるけどな」
ウイングさんのオーラがかなり揺れてるな。いやまぁ驚くしかないだろう。
「ウイングさんは見ればわかると思うけど、迂闊に私は人に触れないんだ。これも厄介な能力で、無差別で発動するから手袋をはめれば外で過ごせるようにしてくれた。だから恩人」
事の大きさにキルアはついに頭を抱えた。ドンマイ。
「サクラはどうしてすぐにウイングさんへ会いに行かなかったの?」
「いきなり恩人ですと言われても混乱すると思ったから。それに君達を案内して念能力で見つけたと言った方が、話を聞こうと思うだろ?」
「あ。そっか」
「ってことは、オレ達が行くと答えるってわかってたのかよ!?」
「それは二択」
そっちもあったとキルアは頭が痛そうな反応をした。
「予知は念能力の中でもレアな分類になるから、バレれば誘拐される。ということで、黙ってて」
「あったりめーだ! 話せるかよ!」
プンスカと怒っているキルアをゴンが宥めていた。まぁ彼らは大丈夫なのでウイングさんに視線を向ける。
「……ズシ、話してはいけませんよ。理由は十分わかってますね?」
「お、押忍!」
混乱しているのにやはり指導者である。
「じゃ、もう一つの本題に入るか」
「……終わりではなかったのですね」
「し、師範! 自分も頑張るっス!」
別に追い詰めたいわけじゃないんだが……。
「キルア」
「んだよ、今度は」
「実家からの呪縛を解きたいか?」
キルアが完全に固まった。呪縛ってどういうこと?とゴンが聞くので、念の説明に使われたホワイトボードを指す。
「まさか……」
「ウイングさん、何かわかったの!?」
「え、ええ。内容はさまざまですが、操作系や具現化系の念能力で相手に影響を与えるものがあるのです。しかし……」
キルアを見た後、ウイングさんは私の顔を見た。ありえないと言いたいのだろう。レアな能力ばかり持っているからな。私もそう思う。
「キルアなら今ここで解いてあげてもいいと思ってる。でも君が解きたくないならしない」
「解きたいに決まってるだろ!?」
「キルア、落ち着いて。サクラは意味もなくこんな言い方しないよ」
兄とディーノから感心したような声があがった。慣れないと私の捻くれた言い回しだと見逃すからだろう。
「理由は2つ。念を覚えてないキルアにやったからなのか、手荒だが自力でも解ける。後、解いたら君は悩む」
「悩む?」
「ん。私が一番危惧しているのは、君が焦って失敗すること。君達も知ってると思うけど、私は弱い。念能力も1つも戦闘に向いているものがない。念をまだ覚えてない君達でもこれがどれだけマヌケなことかわかるだろ?」
兄とディーノが側にいる理由は理解してもらえたと思う。
「……なんで、ここまで……」
キルアの言葉に首を傾げる。すると、兄が私の肩に手を置いた。不思議に思ってるとディーノが前に出て、キルアと視線を合わせた。
「お前は嫌がるかもしんねーけど、まだガキなんだ。オレ達に甘えればいいんだ」
そう言ってディーノはキルアの頭をガシガシと撫でていた。ここは私よりディーノに任せろという意味で兄は止めたようだ。
「サクラ、ありがとう!」
ゴンにお礼を言われたので偉そうに頷く。悪い気はしない。ただ……まだ何もしてないんだが。
「話はよくわかりました。キルア君、いかがなさいますか? 私としては、解いてもらうべきだと思います。彼女の危惧はわかりますが、もしそうなったとしても、それは指導者である私の責任です」
本題に戻しつつ、キルアと私へのフォローを入れるとは……。ウイングさんは理想の指導者かもしれない。いや、リボーンも好きだけどな。
「……頼む」
「ん。ちょっと私もキルアも無防備になると思うから驚かないように」
周りに許可をもらえたので、キルア座ってもらう。私も座ってから両手の手袋をとる。すると、ポンっと手のひらサイズの生物が現れた。
「は? あんただよな?」
「うるさい」
私が一番変だと思ってるのだ、とキルアに八つ当たりする。何が嬉しくて自身を形どったものを具現化しなくちゃいけないんだ。手袋をつけるか、『神の代弁者』を発動している間以外はずっと私の手の周りん飛んでるんだぞ。恥ずかしくて仕方がない。
乱された心を何度か深呼吸をして落ち着かせてからキルアに目を向ける。
「触るぞ」
悩んだ末、キルアの手首を掴む。すると、ミニチュアの私がキルアの胸の中に吸い込まれていく。
その瞬間から切り替わる。目の前でふわふわと浮いているのがキルアの魂だろう。
ゆっくりと慎重に触れながら気持ちを込める。魂が本来の形に戻るように……。
しばらくするとキルアが目の前に居た。どうやら戻ってきたらしい。その証拠にミニチュアの私がキルアの身体から抜け出してきた。
私が手を離すとキルアも普通に戻ったらしい。ボロ泣きしているが。そのためキルアは慌てて袖で拭い、視線もそらされた。
「スッキリしたか?」
「……ああ。すっげー、スッキリした」
それは良かった呟き、手袋をはめ直す。ミニチュアの私は5日というプラカードを首から下げていたので、しばらく使えないようだ。兄の場合は0日でディーノの時は20日だったことから悪くはないのだろう。
「じゃ、後のことは頼んだ」
キルアの焦る声を聞きながら、私はおやすみタイムへ突入した。
「おい!? サクラ!?」
サクラがいきなり気を失って倒れ込むので、キルアは手を伸ばす。しかしその前にディーノがサクラを支えた。
「大丈夫だ。ただ疲れて眠っただけだぜ」
「……んだよ、人騒がせな奴」
そう言いつつも、ホッとキルアは息を吐き、素直じゃないんだからとゴンが小言をもらっていた。ディーノは2人のやりとりに笑いながら、慣れた手つきでサクラを抱きあげる。
「……疲れただけ、ですか」
ポツリと呟いたウイングの発言に、キルアとゴンは視線を向ける。
「いえ、これ以上は何も伺いません。門下生を問い詰めるようなことはしたくありませんから」
「道理でサクラが懐くわけだぜ」
「本当だねぇ。良い人にサクラは巡り会えたよ」
2人はまたしても頭を下げる。今度は戸惑うことなくウイングはその感謝を受け取った。
「じゃオレ達は帰るぜ。キルア、サクラがどういう意味で言ったかオレにはわからねーけどよ。焦んなよ」
「……あんた達に勝てるぐらいになるまでやらねーよ」
「目標が出来たようだけど、友情も忘れてはいけないよ。サクラが解こうと思ったのは、友達がほしいと君が願ったからだからね」
「……んなの、わかってる」
サクラのおかげで頭がスッキリし、友達を見捨てるようなことはしないと断言できるようになったのだから。
キルアの気持ちが伝わったのか、桂は満足したように頷き、サクラと一緒に2人は帰って行った。
ウイングは見送った後、2人に向き直る。
「ゴン君、キルア君、良い友人を持ちましたね」
「うん!」
「……まぁな」
未だにテレてぶっきらぼうのキルアに向かって、ウイングは視線を合わせる。
「君は本当に恵まれました。除念が出来る人はそう簡単に見つかるものじゃありません。私も今日初めて会いました。この意味はわかりますか?」
「……うん」
「では、私からはもう何も言いません。念について、詳しく教えましょう」
師範代、人生何が起きるかわかりませんねとウイングは心の中で言いながら、引き受けた門下生2人と向き合った。そして、彼らも規格外だと気付くまで時間はかからなかった。
増幅出来るなら、おさえる神字もあるはず。
御都合主義じゃないと作者は思ってる。異論は認める。
『神の手』(操作系)
サクラの念能力。
元々もってた魂を元に戻す力が強化された結果、ぶっ飛んだ念能力になった。マジでヤバイ。
念能力になる前から常時発動型のせいで、触れただけで発動してしまう。使えない間か、『神の代弁者』を発動している時間以外は気をつけないといけない。
元々兄を治すためという基準なため、兄と性質が遠ければ遠いほど使えなくなる日数が増える。
ウイングさんは『発』にならないようにオーラをおさえる神字をサクラに教えた。
片手でも発動するが、抑えてるのでオーラ消費の問題で疲れがたまる。また両手を別々の人物に触ると先に触った方で発動する。全くの同時の場合はサクラ自身の魂に触れる。
ミニチュアサクラは手のひらサイズ。服装はなぜか並中の制服。具現化しているはずなのに、相手の身体の中に消えるという不思議な生物。魂の世界へ行った…? 詳しいことはサクラもわかっていない。もちろん桂さんは可愛すぎて悶えている。
この力がぶっ飛んだ理由は、かけられた念能力をどうにかするのではなく、魂に触れて正しい状態に戻すこと。簡単に説明すると、なかったことにする力。相手の想い(念能力)など知ったことではない。
サクラが一番恐れたのは、悪感情を抱いたまま触れてしまえばどこまで戻るかわからないから。実際、魂だけの状態まで戻りキレイにしてしまう。マジでヤバイ。
軽い気持ちで触って使えない期間を作ることが出来ず、ミニチュアサクラが具現化してしまっているせいでバレバレなのも問題。また腹が立つことに念の応用技が使えないという制約だった。
ちなみに、ディーノさんは人と触れるのが怖くなり拒絶しかけていたサクラの手を自らの意思で握った。魂に触れるまで戻ることが出来ないため、サクラはディーノさんのお前なら大丈夫という言葉を信じて触れた。起きてディーノさんが変わらないことを確認した後、わんわん泣いて大変だった。