選択した結果(仮)   作:ちびっこ

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 意外と無害かもと思っていたが、そんなことはなかったようだ。

 

「あんたの趣味ってこんな感じの子だったんだ」

「やきもち?」

「死ね。あたしは帰るよ」

「残念♥」

「行かないでくれ! 変態と2人っきりは嫌だ!!」

 

 兄の試合を見た後、天空闘技場のトイレの個室を出たところでマチに拉致されたが、今はフミ子も居ないのだ。助けを求めれるのは彼女しかいない。……まぁ今日死ぬ夢を見なかったから、生きて帰れるとは思うが、変態と2人っきりは嫌だ。

 

 変態に捕捉された私を不憫と思ったのか、マチは溜息を吐いて壁にもたれてくれた。いやまぁヒソカがわざわざマチに依頼して頼んだ理由が気になったのもあると思うけど。

 

「どう? せっかくだし一緒に食事でも♥」

「「…………」」

「ああ♥」

 

 もうやだ、この人。

 

 マチと一緒に絶対零度の視線を送ったのに。喜ぶのは兄ぐらいだぞ! ……いや、他にも何人か居たな。どこの世界も変態と変人多すぎ。

 

「……何が目的だ? 兄とディーノか?」

「怒った彼らと戦いたいのもあるけど、君はボクの見立て通りの強さじゃないから♦︎」

「強ければ、捕まってないだろ。私は超弱いぞ」

 

 偉そうに威張る。

 

「知ってる♠︎」

 

 肯定されると、ちょっとイラっとした。

 

「でもボクが今君を殺そうと思っても……」

 

 嫌な予感がし一歩横に動けば、先程まで居た顔の位置にヒソカの腕があった。

 

「やっぱり死なない♥」

 

 すぐにヒソカが離れてくれたが、冷や汗がダラダラである。

 

「ボクの見立てでは今ので死ぬはずなのに♣︎」

 

 ミスった。マチを帰らせば良かったな……。ちょっと興味深そうに私を見ている。

 

 どうしようかと考えていると、ズンっとお腹に響くようなオーラを感じた。私達3人はすぐさまドアへと視線を向ける。見えないのにゆっくりと近づいているのがわかるから。私に至っては優雅に歩いている兄の姿まで想像出来た。

 

「お迎えがきたようだね♠︎ いいオーラだ♥」

「あたしは関係ないのに……」

 

 ヒソカの言葉で巻き込まれたと察したマチは、文句をいいながらも構えた。

 

 コン、コン、コン。

 

 ノックとは珍しく気がきくじゃないか。いやまぁ中の状況がはっきりとわからないから私の動きに合わせるしかないのだろうが。2人の意識がドアの向こう側にいる兄にしかないことを確認し、ゆっくりと『絶』になる。

 

 私が完全にオーラを閉じると『神の代弁者』が発動する。ハッとしたようにヒソカとマチが私に視線を向けようとしたが残念、もう遅い。

 

 ドアが吹っ飛ぶ。

 

 再び視線が兄の方へ向く中でも、マチが私に針を投げてきたが、その未来は見えていたのでしゃがむように避ける。

 

 そして次に起こる未来がわかっていた私は、窓が割れても破片に当たることはない。

 

 まるでタイミングを合わせたように次々に起こる中、窓とドアの両方からヒソカとマチに向かって2匹のパンダが突っ込んでいった。私はそれにかまわず、窓の外へと飛び出す。

 

 スクーデリアに乗って空中で待ち構えていたディーノの腕におさまり、横向きのまま乗せてもらう。

 

 僅か数秒の出来事。

 

 普通ならばこの2人のスキをついて、あっさりと行くはずがない。しかし兄の空気にのまれたのだ。強さではない、好かれやすく注目を集めやすい体質に。また私の能力を知らなかったことが大きい。今の私の状態なら近い未来がみえるからな。

 

「惚れ惚れする連携だったよ♦︎」

「まったくだね。あんたに付き合うんじゃなかったよ」

 

 流石である。ヒソカとマチはフミ子とエリザベスを拘束していた。一瞬で死ぬ気の炎に当たらない方がいいと判断したらしい。

 

 これから起こる未来を知り、ディーノに視線を送ろうとしたがやめた。説得される未来も見えたから。

 

「警告だ。サクラに手を出すならオレ達がお前らを潰す」

「いいね♠︎」

「そうか。なら、まずオールバックに逆さの十字架」

 

 今まで仕方なく付き合っていたマチが本気で私達を見た。

 

「オレ達の大事なものを奪うつもりなら、それぐれーの覚悟は出来てんのかって話だ。言ったぜ、これは警告だ。おめーらに時間をくうのも勿体ねーし、バカじゃねーことを願うぜ」

 

 ディーノが言い終わると、エリザベスが消えてすぐにフミ子も消えた。……スクーデリアが移動し始めたし、兄が逃げる時間稼ぎでもあったのか。

 

「私のワガママに付き合ってくれて、ありがと」

 

 去る直前にマチに向かってバイバイと手を振ると、今のところは手を出す気はないという風に息を吐く未来が見えた。ヒソカは……大丈夫だろう。多分本当に私のことが気になっただけで今回は兄達と戦う気はなかった。もしその気だったら最初からバンジーガムで捕まえていただろうから。そのため次の問題であるディーノへと私は視線を向ける。

 

「君は悪くない」

 

 グッとディーノは歯を食いしばった。言わせない未来を選んだが、正解だったかはわからない。だから……。

 

「……すまん、遅くなった」

「ん」

 

 この謝罪だけは受け取った。もうちょっと早く来て欲しかったのは本当なので。

 

 もう追いかけて来ないとわかった私は『絶』から『纒』に戻し、『神の代弁者』を解除する。やはりちょっと頭が痛い。数手先の未来も見ているのでしんどいのだ。まぁ頑張って起きるけど。

 

「オレだけじゃ不安で、休めねーよな……」

 

 ……ディーノは悪くないと伝えたんだが。

 

「そんなわけないだろ。せっかくだし景色が見ようと思っただけ」

 

 天空闘技場にもう来ることはないと思うし。私の言葉が本音だとわかったディーノは「そうか」と小さな声で呟いた。……まだ気にしているな。

 

「ケーキ食べ放題。ホテルのケーキ食べ放題で手を打ってもいい」

「……もっといいもん奢ってやる」

 

 満足そうに私が笑うと、ディーノもつられて表情を緩めた。黒曜編の後と同じ言葉でかえしたことから、彼も思い出しながら答えたのだろう。

 

「頼んだぞ、ディーノ」

「ああ。任せろ」

 

 いつものディーノに戻ったので、私は今度こそ景色に目を向ける。

 

 離れて行く天空闘技場を見ながら、ヒソカのせいでネームバリューをGETしよう作戦が失敗したなと思った。兄は150階にまでしか行ってないからな。せめてディーノを200階に到達させておくべきだったか。

 

 この未来が見えていたなら防ぎようがあったのにと思うも、景色を見ていたらどうでも良くなっていく。夜だからか、街並みの照明で綺麗だ。

 

「そういや、ゴンとキルア挨拶してない」

 

 ヒソカの性格なら、あの2人をマチに売ることはないだろうが、黙って去れば心配する気がする。

 

「ウイングに伝言を残してきた」

「それが正解」

 

 本人に伝えれば、オレ達も一緒に!みたいなパターンになるし、断ったとしてもついてくるだろう。伝言を聞いて怒るかもしれないが、実力不足なのだからどうしようもない。

 

「これからどこ行くんだ?」

「桂はカキン国に行くっつてたぜ」

「カキン国?」

 

 まったく記憶にない。どこだったか。出来れば近くがいいな。このまま移動するはしんどいから。

 

「結構遠いみてーだから、飛行船をチャーターするって言ってたな」

「ん、ならいい」

「まっ、まずは桂と合流しようぜ」

 

 異議なしというように私は何度か頷けば、ディーノに優しく頭を撫でられた。

 

 ジッと彼の顔を見て、話すなら兄が居ない今しかないと思った。

 

「ん? どうした?」

「……ディーノ。君の覚悟は嬉しかった。でも、ごめん。私は返せない」

 

 嬉しいと伝えても断ったのだから、結局自己満足で自分勝手なのだろう。

 

 一緒に帰る覚悟は出来た。でもどうしても彼の気持ちに応えることは出来ない。無事に戻ってからで返事をすれば良かったかもしれないが、彼の覚悟を聞いてやはりそれは出来なかったのだ。

 

「泣かなくていいんだぜ?」

 

 そう言われて気付く。自身が泣いていることに。

 

「ごめっ」

 

 いつものように拭ってくれた彼の優しさに涙が溢れ出る。彼に甘えて……甘えるだけで、私は何も返せない。

 

「私は、君を、選べない」

「桂を選ぶからか?」

 

 核心をつかれ、私はただ頷くしか出来なかった。すると、ディーノに抱きしめられた。この腕の中も、兄と居る時のように安心出来る場所だった。

 

「ディ、ノ、ごめっ」

「お前の気持ちはわかったから、泣く必要はないんだ」

 

 ディーノはいつも私のためになるように動く。今だって傷ついているのは彼のはずなのに、私を落ち着かせようと背を叩く。

 

「なぁ、サクラ」

 

 返事をしようと思ったが、鼻をすする音が返事の代わりになってしまう。

 

「オレは2番を狙ってるんだぜ? だから泣く必要はないんだ」

 

 耳に入ってきた言葉を飲み込めなくて、思わず顔をあげて少し離れる。ディーノはまた私の涙を拭った。

 

「お? 止まったな」

 

 いや、それは多分驚きすぎたからだと思う。

 

「んんっ。ディーノ、さっきなんて言った?」

「2番を狙ってるってとこか?」

 

 咳払いした後にもう一度確認してみたが、どうやら聞き間違いではなかったらしい。

 

「私が兄を第一に考えるのはいいのか?」

「ああ、いいぜ」

「普通嫌じゃないのか?」

「そうか?」

 

 私の常識がおかしいのだろうか。ディーノが首を傾げながら返事をしたので、釣られて私も首を傾げてしまった。

 

「可愛いな」

 

 あれれー? おかしいぞー? ……思わず、高校生が小学生になってしまった。

 

「……私は兄を選ぶんだぞ?」

「おう」

 

 ニカっとディーノは笑った。あまりにも自然過ぎて納得してしまいそうになった。ブンブンと首を振って、突っかかる。

 

「いや、やっぱりダメだろ」

「なんでだ?」

「君に失礼だ」

「オレがいいって言ってるんだぜ?」

 

 うぐっ、確かに。

 

「わ、私は兄と君なら兄を選び続けるぞ」

「ああ」

「ずっとだぞ! それでもいいのか!?」

「それでいい」

 

 なぜ言い切れるかわからないでいると、彼は何気なく言った。本当に彼は自然に言ったのだ。

 

「オレが好きになったサクラは、桂のことが大好きなサクラだかんなー」

「…………君が変人なのはよくわかった」

 

 プイッとディーノから視線を外す。変人という言葉にショックを受けている気配がしたが、私は振り向かなかった。でも声はかけた。

 

「保留……」

「ん?」

「返事、保留、変更」

「ああ! もちろんいいぜ!」

 

 恋がよくわからないけど、今度はちゃんと彼と向き合おうと思えた。




『神の代弁者』裏モード。
サクラが『絶』になると『神の代弁者』が強制発動し数秒先の未来が見える。
夢の世界に半分入りかけ、白昼夢のように未来がみえるようになるが、現実のサクラは絶状態なので防御力がゼロ。
また半分しか入らないため、現実の世界と夢の世界の両方を見ることになり情報過多で脳に負担も。やりすぎると廃人コース。
ちなみにこの時に現れる天使の眼は開いている。


補足。
桂さんはサクラがギリギリ見える場所にディーノさんを誘導してから別行動しました。
普段はそこまで丁寧に面倒をみないのですが、流石に今回はサクラの危険を減らすためなのでディーノさんの面倒をみています。
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