選択した結果(仮)   作:ちびっこ

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「んだよ、それ!!」

 

 1人がそう叫ぶ始めると、他の者達も同意し始める。私が言ったわけじゃないし、傍観者に徹しようとすれば、本気の嫉妬の視線や殺気が突き刺さる。それでも私に直接何かしてくる訳じゃない。放置しておこうと思ったが、許さない者がいた。

 

「やべっ」

 

 焦ったようなディーノの声を出していたが、私も頬を引きつらせていた。兄から禍々しいオーラが出ている。耐性のない人が悪意あるオーラに触れれば大変なことになる。隠が使えないので人前で使いたくなかったが、そうも言ってられない。

 

「『愛のあるツッコミ』」

 

 スパーン!と気持ちいい音がした。ブッ倒れている兄を放置し、ギリギリ間に合ったと私は周りを見渡す。一応、ハンター志望というだけあって気を失ってるものはいないようだ。冷や汗は凄そうだが。

 

「で、バカはいつまで寝ているんだ?」

 

 『愛のあるツッコミ』は兄を元に戻すきっかけを作る念能力である。私の視界に兄がいて技名を発すると、必ず兄の頭にハリセンが当たるぶっ飛んだ仕様だ。しかし裏を返せば、兄にしか使えない残念な念能力でもある。ちなみにハリセンが当たると脳内に私のことが流れるらしい。その代わり兄のダメージは0。だから倒れているのは兄のノリ。

 

「すまない、サクラ! 許してくれたまえー!」

 

 私に向かって土下座し始めた兄を見て、溜息しか出なかった。謝る相手が違うし、『愛のあるツッコミ』だけで済んだからいいものの、もう一つ使うことになればイルミとヒソカに目をつけられる可能性があった。私の念能力はかなりレアだから本当に気をつけてほしい。

 

「サクラ、後でオレが怒るから。な?」

 

 暗にお前だけは許してやれとディーノが言うので、許すことにする。後でディーノに思いっきり怒られるといい。

 

 兄のせいで妙な空気になっていると、「合格者一名はちとキビシすぎやせんか?」と外から聞こえてきた。メンチとブハラが連絡した様子はなかったたので、サトツがしたようだ。流石に見過ごせなかったらしい。

 

 ぞろぞろと外に出て行くが、ついていく気がしなかったので、後から行こうと受験生を見送る。すると、流れに逆らってこっちに来る人物がいた。

 

「やぁ♥」

 

 私を守るように兄とディーノは前へ出た。

 

「いい加減、キミ達の本気がみたいな♦︎ それとも後ろに隠れてる子を殺さないと、本気が見れないのかな♣︎」

「くだらない挑発に乗るなよ」

 

 オーラが跳ね上がった2人に注意する。すると、兄が私を抱き上げ、ディーノが窓を割って一緒に建物から出た。

 

 窓は三階ぐらいの高さにしかなかったので、当然そんな派手な方法で外に出ると注目される。

 

「今年は活気がいいのぉ」

 

 ふぉふぉふぉと笑っているネテロ会長はやはり大物かもしれない。でもまぁおかげで脱力出来た気がする。

 

「会長。彼女は試験合格していたので再試験から外してもらってもいいですか?」

「ほぉ。彼女がメンチくんが認めた料理人か」

「それはこっち」

 

 私が兄を指差すと、ネテロ会長はヒゲを撫でながらメンチに視線を向けた。

 

「少々事情がありまして……。ですが、彼女はこの試験の意図を正確に読み取り行動したことから、私が測る予定だった注意力と観察力は申し分ないかと思います」

「よかろう。それにこちらの都合で取り消すのはあまりにも可哀想じゃしな」

 

 そうしてくれと私は頷く。別にスクーデリアに乗って卵を取りに行ってもいいが、撤回されれば兄がうるさいだろうし。今日はもう兄の暴走はやめてほしい。

 

 卵をとりに飛行船で移動することになったが、兄はまだヒソカを警戒しているようで横抱きのままである。ジロジロと見られて恥ずかしい。

 

「おい! ゴン!」

 

 キルアの声が聞こえ視線を向けるとゴンがこっちに駆け寄ってきた。

 

「さっきのどうやったの?」

「どっちだ?」

「えへへ。どっちも」

 

 兄からの威圧感か私が出したハリセンのことかわからず質問すれば、まさかの両方である。欲張りだな。

 

「どっちも原理は一緒。きっかけさえあれば、身につけれるものだ」

「きっかけ?」

「そう。でも無闇に教えてはいけないものだから、知らない人が大多数を占めている。良い師匠を見つけるのが早道だ」

「そっか! ありがとう!」

 

 ブンブンと手を振りながらゴンはキルアの元へ戻って行った。大方、アニキと同じ強さとか言ったのだろう。……可哀想にゴンがキルアに殴られていた。

 

「ディーノ、フォロー頼む」

「君から見える位置にはいるさ」

「……わかった」

 

 ゴン達の仲裁にディーノが入ったので、少しはキルアの警戒心は薄れるだろう。……ディーノが居てくれて本当に助かる。

 

 多分そう思っているのは私だけじゃないと思うので、私は兄の首にしがみついたのだった。

 

 

 みんなが卵を取りに飛び降りている間、私はスクーデリアとフミ子を撫でながら時間を潰す。今回は2人とも一緒に向かった。多分ヒソカを見張りながら行った方がいいと判断したと思う。しかしヒソカがバンジーガムを使った時はどうするのだろうか。……その時は兄が植物を使って足止めをするのかもしれない。

 

「変わった能力じゃのぅ」

 

 オーラを纏ってないから言ったのだろうか。呟いたネテロ会長に答えを教える。

 

「違うぞ。これは科学者が作った生物兵器。……私はこの子達に何度も助けられた」

 

 気にするなというようにスクーデリアが私の頬に顔を寄せた。本当は主人を守りたいはずなのにいい子だ。

 

「なるほどの」

 

 そう言ってネテロ会長は私から離れたが、バレた気がする。主人が私でないことも、そうせざるを得ない理由も。手袋の内側にしか神字は書いてないのに……。

 

「僕の勝ちのようだね!」

「くそっ、負けちまった」

 

 聞こえた声に視線を向ける。どうやら兄とディーノは勝負をしていたらしい。無駄に帰ってくるのがはやかった。私が心配なのもあると思うが。

 

「んなことより、卵プリーズ」

 

 当然のように私は2人に向かって言うと、片方は自信満々にもう片方は苦笑いしながら、二個ずつ取って来ていると私に見せた。

 

 二個も食べれることに上機嫌になった私は2人にさっさと鍋にいれてくれと視線で促す。

 

「ほんと、可愛いな」

「そうだとも! サクラは誰よりも可愛いのさ!」

 

 頭おかしいんじゃないのかと思い、僅かに2人から距離を取るとレオリオにぶつかった。

 

「おっと、悪い。大丈夫か?」

「大丈夫。そもそもこっちが悪いし」

 

 体格のせいで私の方がフラついたが、ぶつかりに行ったのは私である。文句は言わない。

 

「あ」

「お、おい!?」

 

 まずい、倒れる。と思った時、誰かに支えられた。

 

「後のことは任せて寝ろ」

「……ん」

 

 慣れ親しんだ声が聞こえ、私は素直に目を閉じたのだった。

 

 

 

 

 

 眠りについたサクラを抱え直し、ディーノはサクラの上空に視線を向ける。そこには翼の映えた天使のような存在が目を閉じ祈るように手を組んだ姿で浮かんでいた。サクラが強制で絶状態になったことから予想していたが、念能力が発動したらしい。

 

「おいおい……大丈夫なのか? これでも医者志望なんだ、少しは役に立つぜ!」

「いや、大丈夫だ。たまにあるんだ」

「……持病か?」

 

 過保護と言われてもおかしくないぐらい、サクラが1人になることはない。基本、ディーノと桂のどちらがいるし、離れる時があっても動物が側にいるのだから、目の前で倒れるところを見たレオリオがそう考えるのは仕方がないことだろう。

 

「そんなところだ」

「……そうか。ある程度薬は持って来てるんだ。いるなら声をかけてくれ」

「そん時は頼む」

「ああ」

 

 話を切り上げようとする気配に気付いたレオリオは、医者を目指してるものとして、いつでも手助けするということだけは何とか伝えた。が、ディーノの様子からして頼る気はないと薄々感じていた。予想通り、2人は話が終わればその場からすぐに離れた。

 

 レオリオの過去を聞いたクラピカはそっと肩に手を置く。クラピカはディーノとサクラとの交流を減らしたが、それはサクラの兄の異常さを警戒しているからであって、2人を嫌ってるわけではない。

 

 クラピカも気持ちは一緒だと通じたレオリオは振り払うこともなく、サンキュと小さな声で言った。

 

 

 ディーノはレオリオと別れた後、人混みから離れるように移動した。今のところ不審な動きはない。桂が他の念能力者を見張ったのもあるだろうが、ディーノが円をつかったことに気付いているのもあるだろう。

 

 現在のディーノの円の大きさは約30m。念を覚えてそれほど立っていないことから考えると、広範囲だ。尚且つディーノはその状態を一日中維持出来る。ただし、サクラと触れているなら。

 

 ディーノは短時間に念の威力をあげるため、1つの制約をたてた。

 

 サクラがディーノのムチによる攻撃範囲に入ると、その距離に応じてオーラ量がはねあがるように。

 

 もちろんサクラが強ければ、制約の意味がなくここまでディーノは強くならない。そのため条件を満たした状態でサクラが攻撃をしかけると、サクラが与えたダメージの十倍、ディーノのオーラ量が減っていく。オーラが無くなればディーノは絶になる。期間は不明。つまりサクラは足手まといでならないといけないのだ。そのサクラを側に置くリスクを抱えることで、ディーノは強くなっている。

 

 現在、ディーノはサクラを抱き上げて密着している状態だ。更にディーノ本人すら気付いていないが、サクラは念能力を発動し絶状態で眠っていることで、オーラ量がプラスされている。

 

 この制約を知っているため、サクラが眠りに落ちた時に駆けつけたのは桂ではなくディーノだった。

 

 人混みから離れるとネテロが気を遣ったのか、今日の試験は終わりで合格しているから先に休んでいいと飛行船を指しながら言った。ディーノは頭を下げ、飛行船で守りやすそうな場所を確保し、サクラを抱きながら腰を下ろした。

 

「食べるかい?」

 

 すぐに合流した桂の手には、ディーノの分のゆで卵があった。

 

「いや、サクラと一緒に食う。お前もそうだろ?」

「もちろんだとも」

 

 互いに答えはわかっていたのか、2人は笑う。そしてサクラの顔を覗き込む。

 

「いつもこんな急なのかい?」

「普段は夜中だ」

「基本は変わらないのだね」

「ああ」

 

 サクラ曰く、念能力になったおかげで見える未来がわかりやすくなったらしい。サクラの手袋も夢の中で覚えてきたものだ。

 

 重宝はしている。が、リスクは格段に増した。念能力者なら今の状態だけで、サクラはレアな能力者に分類するとわかってしまうだろう。本音を言うと、念を覚えてほしくなかった。

 

「ままならない世界だよ」

「ちげぇねぇ」

 

 あっちの世界ならもっと守りやすいのに、と思わずにいられない2人だった。

 

 

 

 

 

 その日の夜、飛行船の一室で一次試験官のサトツと二次試験官のブハラとメンチが一緒に食事をしていた。

 

 やはり役目を終えたと行っても、先程まで関わっていたのだ。自然と受験生の話題になる。

 

「やっぱり、あの3人組は異質よね」

「そうだねー。組んで受験する人達は毎年いるだろうけど、飛び抜けてるよ。3人とも念能力者だし」

「3人とも受かるかもね」

 

 ハンターという職業柄、強さを求められる試験が多い。そのため念能力者は他の受験生よりアドバンテージがあるのだ。ちなみに不公平という考えはない。努力して身につけたもので、『発』が試験に使えるとも限らないからだ。そもそも試験官や他の受験生の前で『発』は大っぴらに見せるようなものでもない。『発』を知られるのは今後のハンター生活を考えると不利になるのだから。……それでも有利なのは変わりないが。

 

「彼らは1人でも取れればいいそうです」

「はぁ!? ……まじ?」

 

 サトツの表情から冗談ではないと読み取ったメンチだが、信じられない気持ちの方が多い。先程も言ったが、有利な念能力者がハンター試験を受けて、二次試験のような課題に当たらない限り不合格になる確率は低い。

 

「それってやっぱり407番のため?」

「そうでしょうね。恐らく彼女は特質系。そして特質系の中でも珍しい能力の持ち主です。ハンター証があるとないとでは、差は歴然でしょうからね」

「ハンター協会が保護しないのかな?」

「もし彼らが受からなければ、ネテロ会長も考えていると思いますよ。……彼女がその提案に乗るかはわかりませんが」

 

 沈黙がこの場を支配する。ハンター協会としても珍しい念能力者は確保したいだろうが、無償でとは行かない。そんな生易しい世界ではないことを彼らは知っていた。

 

「んー408番が許さなさそう」

「45番でしょ。あのヤバイオーラをあんたも見たでしょ」

「オレは割り切れるのは45番の方だと思うな」

 

 ブハラとメンチの意見が分かれたので、サトツに視線が集まる。

 

「ふむ、そうですね。私は選ぶのは彼女だと思ってます」

「理由は?」

「2つありますね。まず彼らは彼女に弱いです。条件次第では彼女はそのつもりだったと思ったからです」

「どこで思ったの、サトツさん」

「一次試験中、知り合った受験生から彼女が持っている動物について聞かれてあっさりと答えたのです。45番のことについても彼女が答えましたよ。私から情報が漏れることを考慮し、問題ないと判断した範囲だけ答えたのです。彼女の価値が少しでも高まる言葉を混ぜながら」

 

 サトツが知っているだけで、サクラは念能力以外にも生物兵器の持ち主でそのメンテナンスが出来、変わった体質持ちだとわかっている。もちろんウソを摑まされている可能性もあるが。

 

「あの3人の中で一番弱いでしょうが、場数は踏んでいますよ。条件が合わなかった場合は今回縁が出来た新人から探すつもりなのでしょう」

「サトツさんは407番がイチオシみたいね」

「そうかもしれません。あれだけ守られることに慣れている念能力者はそうそう居ませんから」

「結局ハンターは変わり者が多いってことね」

 

 メンチもその変わり者に入るってことなんだけど……とブハラは思ったが、口に出すことはなかった。




念能力の解説。

『愛のあるツッコミ』(操作系)
サクラの念能力。
長年愛用のあるハリセンだから具現化に成功した。
またハリセンで殴ったのがほぼ桂の頭だったのも成立した鍵(ほぼなのは過去に一回だけ雲雀を叩いたから)。
桂にしか使えず、ダメージもなく、サクラを思い出せるだけで、この念能力では桂自身を操作出来ないと制約をたてた結果、サクラが技名を言い終わると絶対に当たるというぶっ飛んでるようで全く使えない念能力。
ちなみに、サクラから見えなくなれば発動しないので、サクラの声が聞こえた瞬間に桂のスピードなら逃げれるという大きな穴があるのも成立した鍵。



『Wish You Were Here』
ディーノの念能力(正しくは制約)。
一刻もはやくオーラ量を増やさなければなかったのもあるが、守るべき存在のサクラを1人に出来なかったため作った、苦肉の策でもある。
オーラ量の問題を解決出来た結果、持ち前の才能と器用さで念の基本と応用を大幅に短縮し習得した。得意なのは『周』と『円』。というより、時間がなく先にこの2つを優先し鍛えた。
もちろん『円』は戦闘時になるとオーラ量の問題で範囲が狭まる。が、ムチの届く範囲を維持しながら戦えるので、やはりかなり器用。戦闘時に一般的に多い『堅』ではなく『円』を使うのはサクラが居るから。


余談。
仕方ないのでサクラは修行中、出来るだけディーノさんにふっついてました。サクラからすれば、制約が成立するのが不思議でしかないです。精神的にはディーノさん役得だからww
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