……うむ、いい湯加減である。この世界でも風呂文化があって本当に良かった。
湯船に浸かりながら、私は夢の内容を思い出し悩み始める。どうするべきか。
私の予知夢に念能力が加わったせいか、性能が恐ろしことになってしまった。……いろんな未来が見えるようになってしまったのだ。
例えば今回だと、私が一番気になっていたのか、ハンター試験を受かるまでの道のりが見えた。ただ見えただけじゃない。パラレルワールドのように数種類の未来が見えるのだ。もっとも白蘭とは少し違うけどな。
昔、ユニが私が予知に現ると未来が広がるといったし、これが神の子がいう未来をかえる力なのだろう。私が存在することで増えた未来なのだ。
どれか一つでもその結末に納得できれば、予知通りに動けばいい。しかし今回はちょっと微妙だ。兄が暴走したり、ディーノが無理するなどいろいろ問題があった。
なので、見えた未来から良いところ取りして、新たに未来を増やす。まぁそうすると三次試験後に私が怒られる未来も出来てしまうだろうが、仕方がない。これが一番ベストだと判断した。
「『神の代弁者』か……」
大げさな名だと鼻で笑いたかったなと思いながら、両手を見る。迂闊に人と触れなくなったこの手より、まだマシかと開き直りながら風呂から私は出た。
手袋をしっかりはめたことを確認して私は風呂場から顔を出す。
「ゆっくり出来たかい?」
「ん」
兄が誰も入らないように見張ってくれたおかげで、サッパリ出来た。言葉足らずだったが、兄にはちゃんと伝わったようで嬉しそうに微笑んだ。
「ディーノは?」
「僕が居るのだからね。サクラのためにも、見張りはやめてもらったよ」
それは助かる。割り切ることは出来るが、ディーノに風呂の前で待たれるのはやはり恥ずかしいからな。まぁ私も出来るだけ離れないようにディーノが風呂に入っている間、扉の外で待機してたし、彼も似たような気持ちでいただろうが。
「お兄ちゃん」
「なんだい?」
「どうしてハンター試験を受けるか迷ってたの?」
私は兄の未来がよく見えなかったのだ。だからエレベーターから降りるまで、確証は持てなかった。二択を当日にしなかったのは怖かったのもあるけど……。でも私の勘も日によって変わったのだから、本当に兄はギリギリまで迷っていたのだと思う。
「……僕以外に居ないという現実を見たくなかったのかもしれないね」
兄に抱きつく。1人じゃないと教えるために。
「サクラ、ありがとう」
「ん」
優しく頭を撫でられ気持ちよくて目が閉じる。
「それにしてもサクラでもわからなかったのだね」
「ん。お兄ちゃんが私のことが心配だったからだと思う」
……兄は私がこの世界に居る可能性を捨てきれなかったから、未来があやふやになった。つまり私の存在が影響を与えていたのだ。
「今は安定しているぞ。まぁいつ見れるかわからないし、そんなに見れないけど」
向こうの世界と比べるとかなり見れる回数が減っているし、あまり遠い未来は見えない。多分オーラが足らないのだ。
『神の代弁者』は私自身が強制絶状態なのに、発をしているという意味不明な仕様になっている。ディーノは夢の世界でオーラを練って、身体は疲労回復をはかり維持しようとした結果じゃないかと推測した。向こうの世界で夢の世界があることを知っているから出来たのだろうと。
まぁこれ以上は欲張る気はない。元々の予知夢の力がなければ、私のメモリじゃ成し得なかったことだろうし。もう一個というより二個か? 1つは微妙なラインだがそれも私が元々持ってる力の上乗せだからな。
「無理は禁物だよ、サクラ」
「お兄ちゃんもね」
少し兄が不安定な気がする。いや、間違いない。普段の兄なら私への悪意ぐらいなら牽制はしても我を忘れることはなかった。……彼女がぶっ飛んだ能力を授けた理由も今ならわかる。
「僕は大丈夫だよ。だからやらなくていい」
手袋を外そうか悩んでいたのがバレていたようだ。やはりハンター試験が終わるまでは無理か……。
「次は僕がシャワーを浴びさせてもらおうかな」
兄の言葉でディーノが帰っていたことを知る。兄から離れながらも、なんとなく目を合わせれなくて下を向く。兄が「すまないね」と言って私の頭を撫でてから去っていった。
「少しは気分転換出来たか?」
気まずい。私は起きてすぐ頭を整理したいと言って、ディーノから逃げた。……別にディーノの膝の上で寝ていたことに恥ずかしかった訳ではない。毎回のことだし、ディーノの念能力や守りやすさから考えると仕方がないことだとも思ってる。ただ起きた時、心配そうに私をみるディーノの顔が一番最初に目に入るのが耐えれないのだ。今も多分心配そうに私を見ている。
もういい、と言えればいいのに。でもディーノの力は必要だ。……だから結局いつものように顔をあげて、返事をする。
「……ん。スッキリ出来たぞ。ディーノも風呂に入っていたんだな」
「ああ。桂が戻ってきたらメシでも食おうぜ」
「ゆで卵!」
「ちゃんと置いてあるから心配するな」
それならいいと偉そうに返事をして、ディーノと会話を続ける。ふと、気にせずオレの気持ちを利用しろというディーノの心の声が聞こえた気がした。
身体を思いっきり伸ばす。兄の膝を枕とし再び寝たのが悪かったのか、ちょっと身体が痛い。
「変わったところだな」
ディーノの言葉に軽く頷く。私と兄はマンガを知っているからイメージ通りだが、この世界の常識とハンター試験内容ぐらいしか知らないディーノは、不思議に思うことが多そうだ。
……いや、私の説明が悪いのか。三次試験はトリックタワーの攻略としか教えてないし。今となっちゃ教えなくて正解としか思えないから気にする必要はないか。
さて、生きて下まで降りてくること。という試験内容なので私に視線が集まる。仕方ない、行くか。……十中八九無理なんだけどな。そんな簡単な方法で済むなら、夢で見ている。
「……スクーデリア」
名を呼べば、ディーノが合わせたのか天馬が現れる。そしていつの間にか居たフミ子に補助をしてもらいながら跨る。
「見てくる」
「待て。オレも行く」
さっさと乗れと視線を送れば、ディーノは簡単に私の後ろに跨った。「気をつけるのだよ」という兄の言葉に手を振って、タワーの下へと向かう。
地面に降り立つ前に『正規ルートのみ合格』という文字が見えた。
「まっそう簡単にはいかないよな」
「ん。スクーデリアが飛べるのはバレていたし」
私もディーノも期待してなかったので、タワーの上へと戻る。すると、ロッククライマーのように降りようとする人が居たので声をかける。
「こっちはハンター試験側が用意した道じゃないから、合格にならないらしいぞ」
「……本当か?」
「お前の目で確かめてもいいが、時間の無駄になると思うぜ」
私達はがそれを証明するかのようにタワーの頂上へ降り、スクーデリアに戻ってもらう。流石にそれを見れば、壁から降りる気はなくなったようで頂上に戻ってきていた。
これでどこかに下へと続く道があると気付く者が続出する。またトリックタワーという名称と制限時間72時間というヒントが後押しになった。
各々考え込んだのを見て、私は兄とディーノを引っ張る。
「お兄ちゃんはこれ、ディーノはここ。私はそこ。カモフラージュされた扉がひっくり返ったら、もうそこは開かないからな」
「バラバラなのか?」
「ん。今回は個人戦。一緒になる部屋はない」
兄が私の顔を見ているが、無視する。
「なら、お前は棄権するんだ」
「大丈夫。あの道は私との相性がいいんだ」
「ダメだ」
まいった。ディーノが頑固だ。普段なら兄が手助けしてくれるが、兄は私のウソに気付いている。
「……サクラ、見たのだね?」
ディーノは僅かに目を見開く。私は兄の言葉に頷くだけだ。
予知を見ても内容をいつも2人は無理に聞き出すことはしない。私が話せば新たに未来が変わることもあるとわかっているし、話すのが正解とは限らないと知っているからだ。だから話すタイミングは全て私に任せている。
「本当に大丈夫なのかい?」
「ん。私1人じゃ無理だけど、スクーデリアが居れば大丈夫」
「仕方ないね、わかったよ。僕は止めない」
兄の言葉に嬉しくて勢いで抱きつく。兄はふらつくこともなく、私を抱きとめた。
「……わーった。その代わり約束はしてくれ」
ディーノの言葉に反応し、兄に抱きついたまま顔を向ける。ディーノは私と視線を合わせるように、かかんだ。
「危ないことはするな。ヤバイと思ったらすぐに棄権しろ。お前なら……わかるだろ?」
「ん!」
しっかり頷けば頭をガシガシと撫でられた。なんとなく昔に戻った気がして、ちょっと笑ってしまった。すると、ディーノの手が止まる。頭に手が乗ったままなので、変だ。
「ディーノ?」
「……いや、なんでもねぇ」
頭から手を離し、視線を逸らしながらディーノは立ち上がった。これも変な反応だったが、ツッコミしなかった。……耳が赤かったから。
くそっ、やりにくい。私も極力ディーノを見ないようにしながら「私から行くぞ」と声をかけた。
「じゃ、悪いけど頼んだ」
扉が回転し、下の部屋へ繋がっている状態じゃなければ、スクーデリアを出せないと思うからな。壁を一枚挟んだ状態で匣兵器を出したところを見たことはないし。まぁディーノならタイミングをミスしないだろう。
「僕達のことは気にしなくていいよ」
「……ありがとう」
兄に甘え、私はカモフラージュされている地面に乗った。すると、ガコンという音と共に落ちる。
「うわっ」
やばい。ディーノと兄がいる未来では助けてくれていたから、後のことを考えてなかった。『纒』から『練』なんてスムーズに出来ないぞ!?
「「パフォ!!」」
地面に衝突する前に助けてくれたようだ。ただきになるのは鳴き声は重なっていたことだ。ゆっくりおろしてもらい、落ち着いてから声をかける。
「エリザベス、フミ子、助かった」
えっへんと威張るように腰に手を当てたパンダ2匹を見て、兄もディーノも甘いなと思う。そもそも兄は主人が私だと勘違いさせるためにディーノが手袋をはめてると知ってから、アニマルリングを外していたはずだ。だから今も怪しまれるからつけていないと思うのだが。
「……飛行船で炎を込めていたのか」
用意周到の兄に苦笑いする。エリザベスもフミ子と一緒で先に炎を込めていれば好きなタイミングに出てくるのだろう。
「よろしく頼む」
3匹?に声をかけると頷いたので、私は周りに目を向ける。壁に『多数決の道』と書かれていたので、望んだルートに来ることが出来たようだ。
腕輪をはめて、後はゴン達が来るのを待つだけだ。隅にでも座ろうと考えていると、スクーデリアが足をたたんで座っていた。もたれていいと目で訴えていたので甘えさせてもらう。
「今頃、ディーノは怒ってるんだろうな」
兄と同じ場所に出るだけじゃなく、もう1人枠が余っている3人で進むルートなのだ。出来れば私もそのルートに行きたかったが、扉が見えたのは2つだけだった。
ディーノの体質を考えると1つは埋まる。見なくても私達と別れればどうなるかわかるからな。
夢で私とディーノが一緒に行くと、クリア出来るパターンと出来ないパターンが見えた。クリアするにはディーノが無理するし、私達以外のもう1人が死ぬ。最後までは見えなかったが、間違いないと思う。『死』に慣れない私がシャットダウンしたとしか考えれないのだ。
かといって、私達3人が『多数決の道』に行くと別ルートに進んだクラピカとレオリオが落ちる。ついでとばかりに三次試験の合格人数も変わったのか狩るものが減り、四次試験でディーノも落ちる。……いやまぁ、これは私が悪いんだが。
私とディーノが『多数決の道』に行き、兄がキルアと一緒に攻略するのも見たが、これは絶対なし。兄が暴走する。
どれも結末が良くなかったので、こうするしかなかったのだ。キルア以外の者を誘導するより確実だし。
私の言動から兄はディーノと組むとわかっていたし、フォローしてくれることを期待しよう。……でもやっぱり怒られるだろうなぁ。
念能力の解説。
『神の代弁者』(特質系)
サクラの念能力。
元々持っていた予知夢の力を念で飛躍的にアップさせた。
その結果メモリの消費は少ないが、その消費に見合ってない念能力を持ってしまった。
サクラにとって都合のいい未来を作り上げたり、選ばなかった未来の情報も掴むことが出来る。
念能力になってから内容はあがった分、見れる回数は減った。が、それはサクラが未来をかえすぎたせいで不安定だから。
ちなみに、とある団長さんが盗んでも意味がない。
いい夢ぐらいは見えるかな。
サクラ「ついに私にもチートが!」
桂「サクラは弱いけどね」
サ「……(グスン)」
桂「で、でもこの念能力にはまだ隠れた力があるのだろう?」
サ「ん!これで私も少しは戦える!」
桂「無茶だけはしないでくれたまえ(強くなったわけじゃないから戦っちゃダメだよ!)」
サ「それぐらいわかってる」
作者「そのことなんだけどー。伏線ははったし、次の話にもはってあるけど、使うかはわからないからww」
サ「なん、だと……!?」
作「いいじゃん、他にもチート能力あるから」
サ「はっ!そうだったな」
桂「良かったね、サクラ!」
サ「ん!」
桂・作「(サクラ自身は弱いままとは言えないね)」