エリザベスとフミ子が踊っているのを見て時間を潰していると、ゴン達が降りてきた。……レオリオは頭から落ちて大丈夫なのだろうか。
「サクラ!?」
「ん。詳しくはあっち」
ゴン達が看板を読んでいる間に、私は立ち上がる。そして全員が腕輪を嵌めたのか、扉が現れた。張り切って進もうとする彼らへ念のために声をかける。
「わかってると思うが、戦闘だと私は足手まといだから」
威張っていうと、レオリオに残念な子というような視線を向けられた。
「とにかく行こうよ!」
「ああ。時間が惜しい」
ゴンとクラピカの一言で歩き出した。……今となっちゃディーノの方がすらすらハンター文字を読めるんだよな。私を押すのをみんな待ってる気がする。
「これのどこに悩むんだ!? 開ける以外ねーだろ!?」
「まぁまぁレオリオ落ちついて」
「声に出して読んでくれたら、もっとはやく出来る」
「読めないのか?」
「時間がかかるだけ。母国語が違うんだ」
クラピカはハンター文字以外の母国語を使う民族とか考えていそうだ。なんにせよ、私が遅い理由がわかってもらえたので次からはゴンが読んでくれる。
右か左か……。ポチッとな。
「なんでフツーこういう時左だろ!?」
右の扉が開けば、レオリオが怒り出した。私は当然右である。左はヤバイ気配がするのだ。だから原作通りになってしまった。左を選ばなかった理由をクラピカが説明してるので私は静かに過ごす。
「ゴンも右を選んだのかよ」
「オレはレオリオと一緒で左だよ。サクラが右を選んだんでしょ?」
「なにぃ!? お前も知っていたのか!?」
「勘」
おかしい。またレオリオに残念な子という風に見られた。
とにかく右に進むと、手錠をした5人組が目に入る。やはり1人は念能力者だ。どの道を選んでも念能力者には念能力者が当たるようになっているんだろうな。
ルール説明をしてくれているハゲに向かって質問という形で手をあげる。
「なんだ!」
「外野からも負けを認めることは出来ないのか?」
「……少し待て」
試験官と相談し始めたようだ。私はどういうことか説明しろとレオリオに声をかけられる。
「例えばずっと決着がつかず、本人も熱くなって負けを認めない場合は? 1試合に何時間も足止めされるのもどうかと思って」
「なるほど。向こうは試験官だ。そう簡単には負けを認めることはない」
「一番最悪なのは残り時間ずっとボコられて続けてハンター試験に落ちる」
クラピカもそこまで考えてなかったのか、ギョッとしたように目を見開き私を見た。
「オレもその女に賛成。あのボウズ頭、元軍人か傭兵だよ。向こうが足止め目的ならありえるぜ」
「おいおい、向こうは試験官だろ? そこまでするか?」
「……いや、どうやらサクラが正解のようだ。奴らの話を聞いた」
私の耳には聞こえないが、彼らが犯罪者だとわかったらしい。
「外野からの負けも認める。ただしその場合は10時間ずつ、別室で過ごしてもらう」
「元々迂闊に言えないのに、10時間となればもっと言いづらいな」
「ああ。我々は2度しか負けれないからな」
「でも早めに割り切らなければ、それこそ時間のロスだ」
追加されたルールに私とクラピカは難しい顔をしながら会話する。すると、意外と2人は似てる?というような会話が聞こえたので揃って中断し、話をすすめる。
「トップバッターは誰が行く? 結構重要だぞ」
私がそう声をかけると、私を抜きに話し合いをし始めた。正解である。
「じゃオレから行くね!」
多分ゴンが立候補したのだろう。心配そうにしながらも、誰も止めはしない。
「ああ、そうだ」
「なんだ?」
「人が死ぬところを見れば、間違いなく使い物にならなくなるから終わったら起こして」
私は嫌だぞ。キルアが人を殺すのを見て吐いたりするのは。
「はぁー!? 散々みてきただろ!?」
「あの2人は過保護だからな。私には見せないように動いている」
私の言葉にレオリオとクラピカは絶句した。
「あんたの見えないところで殺すのはいいの?」
「いい。知り合いに暗殺者がいるし。否定はしない。ただ見たくないだけ」
「ふーん」
「死体は落としてくれれば嬉しいな」
スクーデリアがまた座ってくれたので、枕にして寝転ぶ。フミ子が死ぬ気の炎を浴びせてくれたおかげで、簡単に眠りに落ちた。
「サクラ、サクラ」
「……ん、終わったのか?」
ゴンに呼ばれて目をこすりながら起き上がる。なんだか気まずい空気が流れていた。
「あんたが勝たないと、オレ達の負けが決定」
落ち込んでる具合からみて、クラピカとレオリオが負けたらしい。で、残っているのは念能力者。
「期待はしないでくれ」
「あんたさー、足手まといっていうけど、結構出来るんだろ?」
「んなわけないだろ」
感覚で念を使えるのがわかっているのだろう。だが、念能力は戦闘に向いているとは限らないのだ。私が出来るのは時間稼ぎぐらいで、今回のルールじゃ役に立たない。
スクーデリアに跨り、リングの上に降り立つ。『練』の量から見て、まともにやりあったら勝てないと思った。
「……君は犯罪者じゃないだろ」
念能力者がただの手錠で大人しくするとは思えないし。
「理由はわかるだろ?」
どうやら試験官が用意した囚人ではなく、ハンターらしい。道理で最後まで残ってるわけだ。私が違う人と当たれば、手加減はするが勝ちを譲る気はなかっただろうな。
「……ルールは?」
「オレを戦闘不能にするか、まいったと言わせろ」
「私は戦闘タイプじゃないんだが……。この子達は?」
「お前の強さの一部として認めよう」
「それは助かる」
これで気が楽になった。
「じゃ、後は頼んだ」
私の言葉と共にスクーデリアは飛び立ち、エリザベスとフミ子が彼の周りを囲む。
「はっ」
「放出系かよ!?」
ついツッコミしてしまった。エリザベスとフミ子を無視して私に念弾を飛ばしてきたから、仕方がないことにしよう。……夢だと私は戦いもしなかったから能力がわからなかったんだよな。
「しっかり掴まってるから、多少なら問題ない」
スクーデリアのスピードなら簡単に逃げれるが、私を乗せてるから気を遣ってるからな。激しく左右に動いたりしなければ、大丈夫だと声をかける。
「エリザベス、フミ子、終わらせろ」
私の合図と共に、2匹から炎が放出する。相手も警戒し飛び越えるように逃げた。
「残念、それは悪手だ」
私とスクーデリアが迫まるのを見て、避けれないと判断し『堅』を使ったようだ。スムーズ具合から見て、かなりの使い手っぽい。それでも、私は先程の言葉を撤回する気はない。
ザシュッ!という音と共に血が舞う。その血すら灰となって消えていく。
「スクーデリアの翼は触れるものを切り裂き、灰とする」
……オーラさえも。
「だから認められた者以外は、触らないことをオススメするぞ」
相手が切られた肩が石のように固まったことに驚きながらも、着地した。が、先程の言葉はまだ続いているぞ。
「パフォ!!」
フミ子とエリザベスは晴の活性のおかげですぐに治るため、多少の無茶は平常運転だ。パンダがパンダを投げるという変わった戦術も普通である。
弾丸のように投げ飛ばされたパンダは、勢いよく相手の顔にしがみつく。この距離なら死ぬ気の炎から逃げれはしない。フミ子とエリザベスの炎は浴びれば浴びれほど怪我は治る。が、その代わり眠りに落ちやすくなる。この特性を知っているディーノですら、抵抗するのは厳しいという。目の前にいる人物が抗えるわけがない。
「この勝負、私達の勝ち」
私の言葉と共に、相手は崩れ落ちた。怪我もちゃんと治ってるし、完勝である。レオリオ達が驚いているが無視だ。
「で、どうすればいいんだ?」
寝ていたせいで、試合の流れを知らないのだ。説明を求む。
「……ここを通り過ぎると奥に小さな部屋がある。そこで20時間過ごしていただこう」
「20時間?」
「クラピカの試合で10時間、その分をレオリオが取り戻そうとしたんだけど増やしちゃったんだ」
「えっ、バカだろ」
思わずツッコミをいれた。クラピカがワガママを言って、外部が負けを認めた流れはまだわかる。時間を賭けなくていい流れが起きていたのに、なぜ賭けるんだ。ため息を吐きながら小部屋に入った。
暇なのでゴンに試合の流れを説明してもらう。小部屋に入る時に思ったが、やはりローソクの人は居なかったらしい。そしてクラピカの試合は私の予想通りの流れだった。で、レオリオは相手の女性の口車に乗って負けて倍にした、と。
「放棄して眠った私が言うのもどうかと思うが、クラピカが冷静じゃないなら私を起こすべきだった。冷静に物事を進めれる人物が居なければ、相手の思う壺だぞ」
「ふーん。そこまで言うならあんたなら、どうしたの?」
「レオリオの代わりに私が出ただろうな。賭け事には強いんだ」
「うわっ、もうちょっと説得力がある答えはねーのかよ」
ゴン以外が信じようとしないので、軽く息を吐いてから、口を開く。
「4人とも、表か裏どちらかを頭にイメージさせろ。当てるから」
「くだらない」
「面白そう! やってみようよ!」
流石、主人公。他の者もちょっとヤル気になったぞ。
「……ゴンは表、キルアも表、レオリオは裏だろ。クラピカは表か?」
全員がギョッとしたように私を見た後、顔を見合わせた。どうやら各々の反応から合ってると気付いたのだろう。
「言っただろ、変わった体質持ちって。二分の一なら外さない」
「はぁ!?」
レオリオが声をあげるだけで終わらず立ち上がった。キルアとクラピカは驚きすぎて声を失ったらしい。
「じゃぁ、サクラはこれからどっちに進めばいいのかわかるの?」
ゴンの言葉に軽く頷くと、レオリオはマジか……と驚いた。ゴンは純粋に喜んでいるが、キルアとクラピカは警戒しているようだ。
「便利に思うが、結構使いどころが悪いぞ。さっきの試合も誰と誰が戦うとわかっていなければ、条件が整わず外れるんだ」
「それでは説明ができない。他に何を隠している?」
「もう少しクラピカはキルアを見習った方がいい。真面目過ぎるのもどうかと思うぞ」
私のアドバイスにゴンとレオリオが首をかしげた。仕方ないので説明する。
「たまたま私が落ちた部屋が『多数決の道』で、『多数決の道』はたまたま私に有利で、たまたま一緒になったメンバーは知り合いで、私の言葉を簡単に切って捨てることは出来ない。だから偶然が重なりすぎてクラピカとキルアは警戒しているんだ。で、愚直にもクラピカは私に聞いたから、もし私の頭がイかれていればこの子達が攻撃を仕掛けていたぞと教えたんだ」
ゴンは感心したように息を吐いた。
「それと質問の答えはノーコメント。護衛がつく理由に関わってくる」
「サクラ。オレ、親父に会うためにハンターになりたいんだ。この試験に協力してほしい」
「心配しなくても、これ以上引っ掻き回す気はないぞ? 私だって早く合格したいし。……遅くなればなるほど、ディーノに怒られる時間が伸びるから」
私の本音にゴン達が吹き出すように笑ったので、頬が熱くなる。
「お節介かもしんねーが、なんで付き合わねーんだ? お前も好きなんだろ?」
「それは君の勘違い。……私は好きじゃなかったんだ」