始まりの村、リンとバットを見捨てた村から逃走し数日が経過した。
ケンシロウに生まれ変わった俺は、この世界では日本にいた引きこもりではなく、俺の家も部屋も当然ここには存在しない。
基本、野宿か不自然に戦争前のインフラに疑問を覚えるような感じに点在するビルなどの廃墟に夜を明かす日々が続いた。
ケンシロウとしての記憶を探れば、北斗関係の寺院や拳闘場などのまともな場所を思い当たりもするが、見た目は超人中身は雑魚の俺にとって、北斗関係の施設は鬼門にしか思えず行こうとは思えなかった。
原作では心では兄と慕いついてくる少年も、命がけで後追ってくれる少女もすでにこの世にはいない。
しかし寂しいという感情は無かった、そもそも前世では一人だったし、それどころか引きこもれる場所が見当たらず、何もしなくても部屋の前に置かれている食事などが無い状況がきつかった。
死屍累々の環境には今は少し慣れてきた、死体にも近づけるようになりハイエナのごとく死体をあさり食料を捜す毎日。
恐らくこのケンシロウの肉体のおかげだろう、世紀末使用の超人体が俺の精神に影響を与えていた。
シンとの戦いに敗れた直後の以前と違い、よほど肉体にダメージが無ければ野宿生活などこの肉体にとって苦ではなかった。
何十キロ歩こうが走ろうが疲れを知らず、ガンダム並の頑丈さと筋力(適当)に守られている感覚にまるでアイアンマンスーツを着ている安心感みたいなものを感じおかげでどうにか生きてこれた。
それでも前世の習慣が残っているためか引き込める状況が無いのは落ち着かず、今は廃墟同様に不自然に点在するコンテナの様な箱の中に閉じこもっていた。
廃墟はね、窓やドアとか無くてね鍵もかからないし落ち着かない。
後ネット環境は諦めた、そもそもネット自体存在しない世界だし。
そしてこの日も少し離れた一般人のモヒカン襲撃現場で、外道どもが回収し忘れた食料を回収してマイルームなっている箱へ戻っている最中、遠くでモヒカンにバイクで追われている老人を見つけた。
種籾爺さんか・・・・・原作で始まりの村を出た後に出会う人物。
出来るだけ原作みたいな人生を送らないようにコソコソと生きているのに、偶然なのか原作のイベントが目の前からやってくることに不審に思いながら、かかわりを持たないように伝承者の身体能力を生かし、暗殺者の技術を駆使しその場からこっそりと離れてやり過ごすことにする。
モヒカンたちに気付かれない数百メートルほどの距離まで離れたとき、超人的五感で種籾爺さんがたった今殺されたことを知る。
そしてモヒカンどもが小さな袋からわずかな種籾を出して食べようと(美味いのか?)しているところを、恐らく視力が6以上の北斗の目で確認した。
人が目の前で殺されたことの驚きはここ数日でなれた、毎日どこかで虐殺のある世界だし、モヒカンどもの残虐な行いに怒りを感じるよりもその場をやり過ごせたことに安堵する。
この世界で過ごしたことで殺人に対する感覚が麻痺し、そもそも人付き合いが嫌いな性格だったのだ、爺さんには同情はするが怒りはわかなかった。
前世では幽霊やあの世、転生など存在しないと信じていた、あくまでも人間の空想でしかないと思っていた現象を、まして異世界しかも元の世界ではマンガの世界に転生、いやこの場合憑依なのか?経験している。
今の自分の状況が現実と受け止めていてもどこか夢を見ているような感じが抜け切れていない。
神様転生ジャンルの主人公みたいに同じ経験をしてるにしても「俺は転生したみたいだ、能力で活躍してみるか」みたいな即座に現状認識して納得できる都合のいい脳みそは持っていない。
そして遠くで起きた種籾爺さん虐殺イベントをボケ~~~と傍観しているとき、優秀な北斗の五感が自分の身に危機が迫っていることを教えてくれた。
俺の背後から突如脈絡も無くモヒカンBが現れて武器を片手に襲ってきた。
あせった俺は攻撃を回避し北斗の拳骨をモヒカンBの顔面に叩き込む。
華麗な回避と攻撃、この肉体に染み付いた動作の記憶が焦り慄いたヘタレな俺でも悪党を倒せるように反射的に動いてくれた結果だ。
初めての北斗神拳、顔面に拳を食らったモヒカンBはその威力に押し上げられるように顔面陥没頭部から空中に舞い、律儀にお馴染みの断末魔をあげながらその体を爆砕させて果てた。
俺の目の前で至近距離で血しぶきを上げながら、小型爆弾の爆発音みたいな音を出しながら。
グロイヨ止めてくれ・・・・マンガ調の人物ではなく現実の生の人間が目の前で爆砕するなんて、アメリカ映画以上にホラーだよ、質感が半端ない・・・少し返り血浴びるし。
俺は気分が悪くなりその場で吐いてしまい、よろよろと歩きながらその晩箱の中に閉じこもった。
次の朝、昨晩の出来事で気分が悪いままずっと箱の中に引き込みたかったけど、この厳しい世紀末の世界、食料は自分で確保しないといけない。
それと単純にトイレに行きたくなり、俺はしばらくあ歩いた場所に以前確認しておいた集落へとむかった。
手にはわずかな保存食を、通貨など無意味なこの世界、何かを手に入れるためには基本物々交換しかない。
そして今の俺にはトイレットペーパーが無い。
始まりの村をでたあと虐殺現場で偶然発見しばらくはそれで済ませたが今は切らしていた。
果たしてこの集落にトイレットペーパーが手に入るのか、有っても快く交換してくれるのか不安だ。
足元を見られたりしないか、人間不信からの引きこもりにはその程度の人との接触でも不安になる。
伊達に自分の部屋から出てこれず、肉親とも接触できなかったわけじゃない。
と言っても今俺のトイレ事情はすぐに済ませないといけないほど切羽詰ってもいない、下品な話になるが今着ている服が一張羅だ、小はまだしも大をもらしたりしたら大変なことになる。
限界だったらトイレットペーパー気にせず集落にも行かずその場で済ませているだろう。
集落に付き人々におどおどしながら食料を抱え、トイレットペーパーと交換してくれる人を探しているとき、集落の入り口で悲鳴と叫び声が。
昨晩、種籾爺さんを殺したモヒカン連中が襲撃しにきていた。
どうやら俺が昨晩殺したモヒカンBは連中の仲間でその犯人を探していると言うか、犯人がいそうだから集落襲撃して皆殺しにしようとしているみたい。
どうせ皆殺しにするなら淡々とやればいいものをご丁寧に「俺様の仲間を殺した奴出て来い」とか見逃す気がないくせに「死にたくなければ犯人を連れて来い」とか無茶な要求をしながら次々と殺人を楽しむモヒカンたち。
一番俺が驚いたのは「北斗の拳の使い手が犯人だ」と言い出したときで、「え?何故ばれたの?」とか想いもしたが、原作でも死体を見ただけで「これは北斗神拳!!」ってばれてるシーンがあったなたしか。
死体見ただけでばれるなら「暗殺拳」じゃないよな・・・・・誰がやったかバレバレだ。
集落は阿鼻叫喚の地獄絵図、その恐ろしさにトイレのことを忘れ自分も逃げようとしたが、俺の周りには逃げ惑う人々が邪魔をして逃げ出すことが出来ない。
おかしい、モヒカンBを殺すときは伝承者さながら素晴らしい動きが出来たのに、逃げようとするとその動きが鈍くなる。
肉体か?北斗神拳伝承者としての肉体が戦闘はともかく逃げることを許さないのか、体の自由が利かないわけではないが、こと逃げることに関しては動きが素人になる。
そしてただ殺されるだけの一般人とはかけ離れた、筋肉質の一回り大きな体格、誰がどう見ても只者ではないその姿のせいで、名乗りもしないのにモヒカンたちに目をつけられ「お前怪しいな」とか言われて囲まれた。
戦闘はもちろんできるだけ人間社会から接しないように生きようとしているのに、どうしても戦闘に巻き込まれるみたいで。
そういえば昨晩のモヒカンBの存在がそもそも不自然だ、暗殺技術で気配を消したプロの俺の背後に何故雑魚のモヒカンがいきなり現れた?
連中の仲間ならあの時遠く離れた連中のそばにいるべきなのに、そもそもあのモヒカンBが襲ってこなければ、俺は殺すこともなく、今のようにそれが理由で連中に囲まれることも無かったはず。
これが北斗の宿命か!?戦闘を避ける伝承者に宿命とやらが無理やり戦いに導いているのか。
そこから先はもう無我夢中だった、種籾爺さんは昨晩死んでいるので原作道理の展開みたいに「お前たちに今日を生きる資格はねえ」と言うイベントは発生しない。
そもそも周囲の人々同様逃げることしか考えない俺が、仮に目の前で種籾爺さんに死なれても怒りで筋肉肥大はさせないだろう。
さっきも言ったけど一張羅なの、原作みたいにいちいち自分の筋肉で服を破っていられん。
俺がどんなに相手に恐れても、肉体の性能は染み付いた戦闘力はケンシロウそのものだ。
怒りを力に変え肉体を鋼鉄よりも強くすることは、いまだ怒れない俺には出来ないが、それを抜きにしても戦闘は結果圧勝だった。
技の名前を言うわけでも説明するわけでもなければ「この指を抜けばお前の命は後三秒」も無く昨晩倒したモヒカンB同様に単純にワンパンして全員爆死させた。
一発殴れば殺せるのにいちいち100発も打ってられるか。
戦いは終わり集落は原作同様に崩壊、違うのは爺さんの墓は無く墓に巻く種籾も無く、巻いたとしても「そんなところに巻いても育たないと」言ってくる少年は死んでおり、俺がしたことといえば死体ばかりの集落で物資をあさることだった。
目的のトイレットペーパー等、食料や物資を意外にも多く手にいれ思わず小さくガッツポーズして喜ぶ伝承者。
世紀末救世主としての伝承者の宿命が本人の意図と関係なく、無理やり戦いに放り込むのではと一人で仮説を立て、もしかして近々シンと戦うことになるのかと思い、不安になって仕方が無い。
遠くへひたすら逃げても恐らく無駄なのだろうか。
自分の目の前でシンがユリアの胸を貫いてもそれが人形で、しかもユリアは南斗最後の将でとっくにフドウやリハクに保護されてると知っているから怒れないだろうな。
怒りを力に変える北斗神拳の特性上、俺が本気で怒らなければ本領は発揮できないし、原作知識がマイナスに働くなこの場合・・・・・・・・・・・・・・・・・。
そもそも俺、ユリア好みじゃないし・・・・・・・萌えないし。