Muv-Luv Alternative ~もう一人のイレギュラー~ 作:レン・アッシュベル
あれから俺たちは四時間ほどの検査の後に、確か博士の秘書官であるピアティフ中尉の案内で地下十九階にある博士の執務室に向かっていた。
「こちらの部屋です」
そう言って示された部屋に入りながら
「有難う」
「有難うございました」
それぞれ返事をすると部屋へと入る。
「やっと来たわね」
そんな俺たちを迎えたのは第四計画の立案者でありこの横浜基地の副司令でもある香月夕呼博士その人である。
だがもう一人の計画関係者の少女の姿が見当たらない。
「(おそらく隣の部屋だろう・・・・)」
そんな感じでその少女――――社霞のことは頭の隅に置いておく。
「さて早速で悪いけど―――――」
ガチャ!
『!!』
「あなたたちが何者なのか話してもらいましょうか」
突然香月博士が俺たちに銃を向け、それに対して白銀が驚く気配がする。
俺のほうは大体予想していたことなので別段驚きはしない、常識的に考えたら自分の頭の中にしかない単語を出すような人間は警戒されて当然だからな。
「待って下さい、先生!!俺は―――――」
それに焦った白銀が言った単語に博士が反応した。
「先生?あいにくだけど私は―――――」
「「生徒なんて持ったことないわよ?」」
「ッ!!」
俺が綺麗に台詞をかぶせてやると此方を睨む博士。
そんな博士に俺は薄笑いしながらなぜ言いたいことが分かったのかを教えてやる。
「何で言いたいことが分かったのか?博士も気になってるでしょうから答えよう」
「・・・・」
「簡単に言うとだな、俺はさっきその男、白銀の言った先生と言う単語に博士がどんな反応をするかを知っているんだ」
俺が本当に簡単に説明してやるとそれを聞いた博士は鼻で笑いながら
「ふん、まさか自分たちが未来を知っているとでも言うの?」
「ええ、そのまさかだがな」
「・・・・」
俺がそう言うと黙ったので勝手に続ける。
「実際俺たちはこの世界の未来を知っている。事実、そこの白銀はこの世界は二回目だからな」
「じゃあ何?あんた達はこの世界をやり直してるとでも?」
「確かに白銀はこの世界をループしてる。最も俺の場合は経験したわけじゃない、映像みたいにこの世界の未来を見たんだけどな。ああ、信じられないなら隣の部屋にいる社にでも聞いてみればどうだ?リーディングさせてるんだろ?少なくとも嘘をついてはいないことが分かると思うが」
「ッ!?社のことまで知ってるのね・・・・」
「まぁ、俺よりは白銀のほうが社とは親しいはずだが?」
此処まで話せば少なくとも嘘をついてないことが分かるはずだ。
「・・・・あんた達の目的は?」
「手に入れた知識と力で世界を救うこと」
迷わずに白銀が答えると今度はこちらに聞いてきた。
「あんたのほうは?」
「俺は白銀とは動機が違うけどな、まぁ似たようなもんだ」
「そう・・・・」
俺たちが意思表示をすると少しは警戒が薄れたようで銃を下してくれた。
「分かったわ、あんた達の話、信じてあげる」
「じゃあ、これから起こることについて説明するが―――――――」
こうして俺たちは博士と交渉を始めるのであった。
―――――――――――――――――
Side白銀
あれからまずはこちらの要求として情報の代わりに身分を用意してくれるよう頼むと普通にオーケーが出た。
その後は俺がこれから起こることを夕呼先生に話してそれが終わると霞に会いたかったので俺は部屋を出た。
身分のほうについては前と同じで訓練兵から始めることにして、冥夜達207B分隊に入れてもらうことになった。
俺の話が終わると今度は優希の番なのだが今聞かれるとまずい情報を話すから霞と話したらすぐに出ていくように言われた。
こいつは前回の世界にいなかったし正直まだ信じられない、覚悟について聞かれた時は少し尊敬したが・・・・
「(結局今はまだ本当の仲間じゃないんだな・・・・)」
まだお互いに信頼してないのは分かっていたので俺は霞にあいさつした後はおとなしく部屋を出て皆に先生に言われたまりもちゃんのいる所に向かうのであった。
―――――――――――――
Side優希
「で、あいつに聞かれたくない話って何?」
白銀が部屋を出た後博士はすぐに聞いてきた。今は少しでも情報が欲しいからだろう。
「ああ、00ユニットの件何だがな。あれの元になる脳の持ち主、鑑純夏の件何だが」
「驚いたわね・・・・あんたどこまで知ってるの?」
「二度目の世界については大体な、それよりあの脳が白銀の幼馴染の少女だってことはまだ白銀に教えないでくれないか?」
「良いけどなんで?」
「あいつは甘いからな、俺の知っている世界の話ではその事実を知った時に少し暴走したんだ、だから今はまだ話さないほうがいい。一応此処にくる前にも世界を変えるにはどれぐらいの覚悟がいるか話したが現実は残酷だということを実際に体験してもらった後ならすぐに覚悟も決まるだろうし下手に話してまた暴走されたらたまらんからな」
「なるほど、白銀にそんな事がね・・・・」
「それにあいつは一度目の世界にいなかった俺のことをまだ信頼してないだろうから」
「あんた達も大変ね」
「まぁそれは良いが白銀の話は決まったしあいつが言った対策をした結果起こりうることについて話す」
「どうぞ」
そして俺は博士にクーデターとかについて話し終えた。
「さて、これで大体話したが、俺の扱いはどうする?」
「そうね、あんたは傭兵だったって言うしいきなり任官でも構わないわよね?」
「ああ、それでいい、ついでに対BETA兵器についても前の世界から引き継いだ武器データとかも出して協力しよう。それと白銀が訓練兵の面倒みるなら俺はA-01のほうの面倒をみるさ、死なれても困るしな」
「ヴァルキリーズについても知ってるのね」
「あと、90番格納庫についても知ってるが?」
「そう・・・・・分かったわ、取り合えずあんたの腕前を見てから階級は決めるからシミュレータールームに行くわよ」
「了解した」
そして移動すること数分、俺はシミュレータールームにいた。
「じゃあ始めるが、これを着ないといけないのか?」
「そりゃあそうよ、それを着ないと危険だもの」
そう愚痴る俺の手元には男用の強化装備が一つある。
「いいや、こんなの」
俺はそう言って返したが博士が
「あんた死ぬ気?」
とか聞いてきたので
「俺は強化人間だから要らないんだがな・・・・」
「!!」
そんな俺の呟きを耳ざとく聞いてた博士が驚いた顔でこっちを向いてきた。
「あんた・・・・」
「聞こえてたか。・・・・・一応博士には教えておくが前の世界でな、実験で体をいじられたんだよ、主に脳とか神経とかをな」
「だから、これは必要ない」
そう言って強化装備を返してシミュレーターに乗り込む。
後ろで博士が此方を見つめる気配がするが仕方ない。
同情されるのは好きではないから・・・・・
まぁ、あの世界ではリンクスになった時から碌な死に方をしないのは分かってたのにな。
「ッ!!」
その時おもむろに彼女の最後が思い浮かぶが頭から追い出す。
あの世界はひどかった・・・・最初はゲームの世界に入れて浮かれてたがすぐに絶望した。
戦いに明け暮れる日々、死んでいく戦友、初めて人を殺したその日の夜は眠ることさえできなかった。
今では、神と話した時が普通だったように少しは耐性が出来ているが飛ばされた初期はひたすら恨んだ。
あの世界で出来た守りたいものも守れずに死なせた。
だからあのときはあんなことを言ったが再び生きることができると言われた時は歓喜した。
今度は誰かを救えると思ったしな・・・・たとえそれが俺の自己満足に過ぎないとしても。
俺が考え込んでいると通信機から声が聞こえる。
「あの?始めたいのですが」
この声は管制のピアティフ中尉だろう。それに対して考えていたことを消した俺は返事をする。
「了解した。設定はそちらに任せる」
今は実力を見せるのが優先だ、前の世界のことは忘れよう。
そう考えヘッドセットだけ装着し思考を強化人間の思考を戦闘モードへと移行。
「設定完了、状況開始します」
「始めるか」
こうして俺のテストが始まった。
――――――――――――――――
Side夕呼
画面に映る神夜の腕前は圧倒的の一言に尽きた。常人なら気絶必死の高速三次元機動を強化装備も着けずに難なくこなしその高速化における射撃力、高度な近接戦闘力、どれをとっても戦士としては完璧。
だからだろうか、さっきあいつが自分が強化人間と言った時一瞬だけ見せた悲痛な表情が、前の世界でどれだけのものを見てきたのかを物語っていた。
「社、あいつの事は読める?」
モニターに映る男を見ながらつい先ほど呼んだ少女に話しかける。
「・・・・やってみます」
あの男をじっと見つめた社はフルフルと首を振って
「深くは読めませんでした・・・・」
「そう・・・・」
「ただ・・・・」
「ただ?」
「とても悲しい色をしていました。とても・・・とても暗い色・・・・」
それを聞いた私は、以前は傭兵だったという男の脊負ったものについて測りかねていた。
テストは大変だ