Muv-Luv Alternative ~もう一人のイレギュラー~ 作:レン・アッシュベル
10月23日午後 国連軍横浜基地
(シミュレータールーム)
ブリーフィングルームを出た後は、午後からの対戦に備えて皆でPXに向かった。
女所帯に男一人、と言うのは普通なら気まずいのだろうが意外とそうでもなかった。
A-01のメンバーは皆、俺の偉ぶらない態度が気に入ったのか普通に話しかけてくれたし速瀬が宗像にからかわれているのを見るのは実に愉快だった。
そして現在、
「んーー、やっぱり無理か・・・・」
俺はシミュレーターの設定で悩んでいた。
本当ならネクストで戦おうと思っていたのだがデータを何度入力しても画面に映るのはエラーの文字ばかり。
どうもネクストの性能はこのシミュレーターでは再現できないようなのだ。
「ハァ、せっかく久々に乗れると思ったのに・・・・・」
自分の機体のお披露目ほど燃えるものなど無いのにな。
「仕方ない、不知火で我慢するか」
結局、時間がなかったので不知火で挑むことにした。
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「くっ!このぉ!!」
「速瀬、深追いし過ぎだ!!」
通信機越しに速瀬の声と伊隅の怒声が聞こえてくる。
現在、俺は三機の不知火相手に近接格闘で渡り合っている。
「強襲前衛装備にしておいて正解だったな」
盾をつけていては動きが鈍る、そう思って突撃前衛使用にしなかったのが功を奏したようだ。
俺が操る不知火は右手に長刀、左手に短刀で速瀬、宗像、涼宮(妹)の攻撃を裁きつつ隙ができれば反撃、という状況で先程から硬直状態が続いている。
「攻めが甘いぞ、それでは俺は落とせん!」
軽く挑発しながら隙の出来た涼宮機を蹴り飛ばす。
後方に控えている伊隅、風間のコンビは俺たちの機体が密集しているため下手に支援砲撃が出来ない、もちろん狙ってこの状況に持ち込んだのだが。
他の五人はすでに落とした、戦闘開始直後の強襲で築地、麻倉を撃破、柏木、高原は涼宮機を襲っているときに割り込んできたので三次元機動で翻弄した後近接戦で仕留めた。
こうしてゲリラ戦で敵戦力を削るまでは良かったが、涼宮機に止めを刺そうとしたところで速瀬が現れ二対一に、それでも押していたのだが残りの三人が現れ現在に至る。
「くぅ!!」
「ハァハァハァ・・・・」
「なんで落とせないのよ!!」
だがしかし、三人がかりでも俺を落とせないことに焦ったのか涼宮が連携を崩して突っ込んできた。
「このぉ!!」
「!!」
俺に向けて振られる短刀を長刀の刃を滑らせるようにして逸らし、懐に潜り込む。
「え?きゃあ!!」
そのまま左の短刀を機関部に突き刺し噴射しながら体当たり。爆発する敵機は無視して残りを警戒。
これで残るはあと四人。
「やっと仕留めたか」
「茜!」
「どうします速瀬中尉?」
ちなみに補足するなら俺は最初の二人にしか突撃砲は使っていない。
それに気付いている宗像は不利を悟ったのか速瀬に指示を仰ぐ。
「仕方ないわね、一旦下がるわよ」
「了解」
すぐに弾幕を張り後退する二人に深追いは禁物。
シミュレーター開始からここまで八分、なかなかに密度の濃い戦闘だったのでまだこれだけしか経っていないのに少々苦笑いが漏れる。
「さて、後は気長に殺るか」
小休止は終わった。これより始まるのは一方的な狩りの時間だ。
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『状況終了』
ピアティフ中尉の声が聞こえる。
あれから約十分、追い打ちをかける俺に伊隅率いる彼女たち四人はよく持ったほうだろう。
多少の休憩があったとはいえ、俺との白兵戦で消耗しきっていた速瀬と宗像はあっさりと落とされ残る伊隅と風間も近接戦闘で撃破した。
最後に余裕があったから長刀で36㎜弾を防いだときは、二人がパニックに陥り、倒すのはたやすかった。
「ああ、楽しかった」
シミュレーターから降りて背伸びしながらつぶやく。
なかなかに満足のいく出来栄えだった。
今度は新OS、EX3でやりたいものだ。
「さてと・・・・・あ」
俺がヴァルキリーズの面々が集まるところに向かうと中々凄いことになっていた。
伊隅が前に立ち整列しているのだが全員表情が呆けている。
築地と速瀬なんかアホの娘みたいになってた。
「おい、お前たち大丈夫か?」
どう見ても大丈夫ではないのだが、手を振りながら尋ねるとハッ!と正気に戻った連中は顔を真っ赤にしていた。
元に戻ったメンバーを見て安心していると速瀬が詰め寄ってきた。
「なんなのよあれ!」
「何って・・・・何が?」
言っている意味が分からんので聞き返すと。
「最後のあれよ!いったいどうやったの!?」
「ああ、あれか」
最後のあれと言われて銃弾を刀で防いだのを思い出す。
「別にズルはしていない。ただ出来そうだなって思ったからやってみただけだ」
嘘はついて無い、ホントに直感でそう思ったからやっただけだ。
「何よそれ・・・・」
速瀬が強化装備のまま膝をつく。
しかし前から思っていたがこのスーツは女性用だと無駄にエロく感じるんだが・・・・・
多分設計者の趣味だろうという推測を立てたのは俺だけではないはず。
「まぁ、これで俺の実力も分かっただろうし、これからは訓練とか付き合ってやるから落ち込むなよ速瀬」
こちらとしてもなかなかに有意義な時間を過ごせたのでそう提案してみると、顔をあげた速瀬が、
「・・・・ホント?」
と、若干涙目で尋ねるので少し可愛いなと思ってしまったが
「ああ、本当だ、だから立つんだ」
「そ、そう、・・・・・それなら仕方ないわね」
こうして何とか復活させることができた。
そのやり取りをしている間にも残りが正気に戻ったので皆に挨拶をして先に着替えるのであった。
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