堕天使少女と欲望の王   作:ジャンボどら焼き

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今回は早めに投稿できました。
暇つぶしにでもどうぞ。


未知とのENCOUNT

 

 

 

 駒王町を治める悪魔の令嬢、リアス・グレモリーとその眷属たちが揃い、冥界代表であるサーゼクスの後ろへ控えるように並ぶ。

 華霖はちらりと、一瞬だけリアスたちへ視線を向ける。以前あった時の顔ぶれが並ぶ中、そこには聖剣使いの少女ゼノヴィアの姿があった。

 イリナが偶にこぼしていた話を聞いてはいたが、本当に悪魔へ転生していたらしい。

 

 とはいえ、特に交流があるわけでもないので、華琳はすぐに興味を失い視線を前へと戻す。

 その先には、リアスとその眷属たちへ興味深そうな視線を向ける、サーゼクス以外の三大勢力のトップの姿が。

 

 魔王サーゼクスである(キング)、堕天使幹部である女王(クイーン)、『禁手(バランス・ブレイカー)』へと至った騎士(ナイト)と聖剣使いの騎士(ナイト)、さらには全てを癒す僧侶(ビショップ)

 ──そして極めつけは、神滅具(ロンギヌス)赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)』を宿した兵士(ポーン)

 

 先のコカビエルとの戦いで、実力では劣るものの、誰一人欠けることなく生還した、王とその眷属たち。

 トップたちからの注目が集まるのは無理もないことだろう。

 

 彼らの視線を一身に浴びるリアスたち、その中でも悪魔になりたての一誠とアーシアは緊張で固まってしまう。

 同じ新米悪魔であるゼノヴィアは、特に緊張した様子もなく平然としていた。幼い頃から協会で働いていたから当然とはいえ、肝はかなり据わっているようだ。

 

 会談の参加者が集ったところで、進行役であるサーゼクスが口を開く。

 

「それでは、全員が揃ったところで会談を始めたいが、その前に前提条件の一つ。ここにいる者たちは、最重要禁則事項である『神の不在』を認知している」

 

『神の不在』──コカビエルが死の間際に語った、聖書に記されたかの存在が死んでいるという事実。

 サーゼクスの言葉に、部屋の中にいる者たちの表情に動揺はない。

 

 それを確認し、サーゼクスは会談を進めていく。

 

 

 

 ********

 

 

 

 三大勢力による会談が淡々と、しかし確かな緊張感をもって進む中

 

(……アンク、ひま)

 

 各勢力のトップが顔を合わせる円卓。その一角に用意された椅子に座る華霖は、会談の内容に欠片の興味も抱かず、アンクたちと会話を行っていた。

 

『まったくだ。三大勢力の滅びがどうだとか、和平がどうだとか、俺たちには関係ない話だからな。シカトしとけ』

『アンクの言い方は汚いけれど、それは同意ね。私たちがここに来た目的とは違う話だもの』

 

 アンクの言葉に同意するメズール。

 確かに彼らがこの場に来たのは、サーゼクスの持っていた『黒いコアメダル』の詳細を聞き出すため。

 三大勢力の事情など、華霖にとっては道端の石ころ程度の興味しかわかないだろう。

 

『ったく、おたくらはそろいもそろって……。ちったあ興味を抱く努力をしましょうや』

『でも、あいつらが滅びるとか、僕たちにとってはどうでもいいからねー』

 

 ウヴァの説得も、カザリの一言で一蹴されてしまう。

 どうしてここの連中は、主人も含めて周りに興味がないのか。無い体で頭を抱えたくなるウヴァだったが、悲しきかな、彼に同意してくれる者はいない。

 

 既に一時間ほど経過しているが、おそらく主人含め、話の内容を聞いている者は皆無だろう。

 

「さて、そろそろ俺たち以外に、世界に影響を及ぼしそうな奴らに話を聞いておくか。世界をどうしたいか、無敵のドラゴン様はどう思う?」

 

 アザゼルの言葉に、まずはヴァーリは微笑みながら短く返す。

 

「俺は強いやつと戦えればそれでいいさ」

 

 言葉とともに、一誠、そして華霖へと視線を流す。

 一誠は背筋を伸ばし警戒をするが、対照的に華琳は一瞥しただけで特に反応を示さない。

 

『あの野郎、さっきから喧嘩売ってくれるじゃねぇか。おい、一度あいつしめたほうがいんじゃねぇか?』

『バカだなぁアンク。意味ない喧嘩を買って何になるの? その気の短さ直したらって今まで何回……ああごめん、そういえば鳥頭だったね! あっははは!』

『あ゛ん!? 誰が鳥頭だ! いいぜ、まずはお前からしばいてやるよ、表出ろ!』

『は? 出るわけないじゃん。面倒くさいことになるのわからないの? バカなの?』

 

 頭の中で始まるアンクとカザリの喧嘩。

 もはや慣れたもので、ぎゃーぎゃー言い合う二人をスルーし、アザゼルへと意識を向ける。

 

「そうだな、お前はそういう奴だよ。今も昔も……じゃあ赤龍帝、お前はどうだ?」

 

 ヴァーリの答えに、アザゼルは笑みを浮かべ、一誠へと視線を移す。

 当の一誠本人は、難しそうな表情を浮かべ、頬を掻きながら

 

「正直、スケールが大きすぎて、わからないです。俺には後輩の面倒を見ることでいっぱいいっぱいで、世界をどうこうとか言われても、想像ができないです」

 

 当たり前の話だ。ついこの間まで一般人だった一誠に、世界などというスケールの大きなもの、想像することも難しいだろう。

 世界を動かすほどの力を秘めたとは言われるが、現状一誠は悪魔になりたての新米だ。

 世界をどうする以前に、やらなければならないことはあるし、何よりゼノヴィアやアーシアといった、後輩の眷属たちのお世話をするので手一杯なのだ。

 

「まぁそりゃそうか。いきなり世界をとか、お前にはまだ難しい話だ。なら、恐ろしいほどに嚙み砕いて説明してやろう」

 

 一誠の返答に、後頭部を掻き納得するアザゼル。

 そして、至極真面目な顔で一誠を指さし

 

「俺らが戦争をしたら、必然、お前は表舞台に立つことになる。その場合どうなると思う?」

「どうなるって……戦うん、じゃないのか?」

「ああそうだな、そうなるだろう。それでいざ戦いが始まれば、お前と眷属たちもばらばらになるだろう。つまり兵藤一誠──お前がリアス・グレモリーを抱けなくなるってことだ」

 

 静寂。

 

 真剣に言葉を並べるアザゼルだったが、最後の一言に周囲から冷たい視線が雨霰と降り注ぐ。

 ただその中でただ一人、衝撃を受けている者が一人。

 当然ながら赤龍帝の兵藤一誠である。

 

「和平を結べば戦争をする必要もなくなる。なら、あとに大事なのは種の存続と繁栄だけ──つまり、毎晩リアス・グレモリーと子作りに励むことができるってわけだ」

 

 戦争なら子作り、つまりはそういうことができなくなる。ただし和平を結べば、それができまくる。

 アザゼルの言葉に、一誠は全てを理解したのか、拳を力強く握りしめ

 

「和平で一つお願いします! ええ! 平和、平和が一番ですよ! 部長とエッチがしたいです!」

 

 欲望に忠実とはこのことだろう。

 純度100%、欠片の曇りも見せない瞳で、あらん限りの力で叫ぶ。

 その隣では、リアスが顔を真っ赤にし俯いている。心なしか、湯気が出ている気がしなくもない。

 

『あ、あいつ、また変態発言を……!』

『あらあら、可愛いじゃない。何かに夢中な子って、私は好きよ?』

 

 この手の話に耐性がないアンクは言葉を詰まらせ、逆にメズールは柔らかな口調で一誠の発言を肯定する。

 無論、華琳は一誠の発言を右から左へ聞き流し、用意された紅茶へ口をつける。

 

「でも、俺の力が強力なら、俺はそれを仲間を守るために使います。まだまだ弱いですけど、それでも、体張って守ってみせます!」

「……そうか。その様子なら大丈夫そうだな」

 

 先ほどと違い、小さく笑みを浮かべるアザゼルは、最後に華霖へと視線を移し

 

「それじゃ、最後にこの会談のVIPに話を聞こうか」

 

 アザゼルにつられるように、他の面々の視線も華霖へ集中する。

 だが当の華琳本人は、煩わしそうに半目で睨みつけ

 

「……別に、話すことはない」

「んなこと言わずによ、聞かせてくれや。お前は平和を望むか? それとも戦争を望むのか?」

 

 アザゼルの言葉に、華琳は手にしたティーカップへ視線を落とし、静かに口を開く。

 

「興味ない。平和も、戦争も。お前たちの好きにすればいい」

 

 ただ、そう続け

 

「手を出してくるなら、その時は容赦しない……それだけ」

 

 和平だとか、戦争だとか、そんなもの自分には関係のないこと。争うのなら、好きに争えばいい。

 ただし、こちらに火の粉が飛ぶなら、その時は容赦なく始末をする。

 

 各勢力のトップが揃う中での発言。

 リアスたちは目を見開かせ驚愕するが、トップたちは対照的に笑みを浮かべている。

 

「そうか、なら心配はないな。俺たちは別に、お前に手を出すとかは考えてないからよ。なぁ?」

「そうですね。あなたには恩こそあれど、敵対する理由はありませんから」

「私も! キミみたいに可愛い子に手は出さないよ☆」

 

 アザゼル、ミカエル、セラフォルーの言葉だ。サーゼクスも、言葉こそ発しなかったが、小さく首肯している。

 ヴァーリも満足そうに笑みを浮かべ、華霖から視線を逸らす。

 

「……質問には答えた。次は、僕の番」

 

 華霖がこの場へ来た目的。

『黒いコアメダル』について、サーゼクスへ視線を向けた、その時、

 

『——っ! おい、何か来るぞ!』

 

 

 ──世界が、静止する。

 

 

 

 *******

 

 

 

 

「……今の、なに」

 

 体に感じた違和感に、華霖が周囲へ視線を向けると、アザゼルと視線が重なる。

 

「おっ、やっぱりお前は無事だったか」

「……何が起きてる?」

「簡単に言えば時間が止まってんのさ。ほら、周りを見てみな」

 

 アザゼルに促されるように視線を動かすと、そこには固まったままの朱乃・小猫・アーシアの姿が。

 瞬きの一つもなく、呼吸もしていない。

 まさに、時間が停止しているという言葉がふさわしいだろう。

 

「どうやら赤龍帝も目を覚ましたようだな」

「ちょっ、これってどうなってるんすか?」

 

 停止している仲間の姿に、一誠はきょとんと呆け

 

「なにって、んなもん決まってるだろ──テロだよ」

 

 アザゼルの言葉とほぼ同時、ガラス窓から強烈な光が差し込む。

 唐突な出来事に、一誠は体を震わせ、窓ガラスの向こうへと目を向ける。

 華霖も横目で確認すると、ガラスの向こう側には、地上から上空を埋め尽くす程の影が。黒いローブに身を包み、手から光の球体を放つが、それは校舎に当たる前に魔法陣によりかき消される。

 

「どうやら、俺たちが和平を結ぼうとするのを阻止したい連中らしい。ったく、いつの時代もいるもんだな」

「外にいる者たちは、中級悪魔程度の実力があると推測される。結界で守ってはいるが、これでは外に出ることもできないな」

 

 呆れたように溜息を吐くアザゼルと、襲撃者の実力を分析するサーゼクス。

 校舎を包囲するその全てが、中級悪魔レベルの実力を有しているという事実に、一誠は苦虫を嚙み潰したように表情をゆがめる。

 

 状況が一変する中、サーゼクスの裾を引っ張る小さな手が。

 視線を落とすと、そこには相も変わらず無表情を浮かべた華霖が、サーゼクスを見上げ

 

「……教えて。あの『黒いコアメダル』、なに?」

「……すまないが、この状況では話も満足できそうにない。もう暫く待っててくれないかい?」

 

 確かに、襲撃されている状況で話などできるはずもない。

 現に、打ち込まれる攻撃で校舎が揺れ、さらには大きな爆破音のおまけつきだ。

 

 華霖は煩わしそうにガラス窓へ視線を向け

 

「……だったら、さっさとあいつら、片付ける」

「おい、迂闊に動くと……行ってしまったか」

 

 サーゼクスの制止も振り切り、華琳は単身、校舎の外へと飛び出す。

 あれほどの数の敵へと突撃していったのだ、簡単にやられはしないとわかっているとはいえ、心配はしてしまう。

 彼と同じ程の年齢の子を持つものとして。

 

「あいつらをかく乱してくれるなら好都合だ。ヴァーリ、お前も行って揺さぶりかけてやれ」

「……了解」

 

 アザゼルの指示により、ヴァーリもまた、校舎の外へと飛び出す。

 二人が敵の作戦を乱している間に、こちらはこちらで動くつもりらしい。

 

「さて、白龍皇にコカビエルを倒したガキ。この二人が出れば、あいつらも多少は混乱するだろうぜ」

 

 そう言い、口元に笑みを浮かべたアザゼルは

 

「こっちも反撃といくか!」

 

 二人が飛び出した窓を見つめる一誠へ視線を移し、そう叫んだ。

 

 

 

 

 *******

 

 

 

 

 場所は校庭へと移る。

 会談が行われていた校舎を囲んでいた襲撃者たちは、現在二つの影に翻弄されていた。

 

「白龍皇だ! ひるまず一斉に攻撃を仕掛けろ!」

 

 一人の男の声を合図に、数十人が上空へと向けて光の弾を放つ。

 その先には、純白の鎧を身に纏い、機械質な翼を広げた男──ヴァーリが男たちを見ろしていた。

 

 ヴァーリは迫る光弾を全て拳で打ち砕き、今度は自身の手から生み出した巨大な魔力弾を、周囲を囲む男たちへとお見舞いする。

 男たちは為す術なく光に飲み込まれ、その殆どが戦闘不能へと追いやられる。

 

《タカ》

 

 そんな機械質な音声が響くのは地上。

 メダジャリバーへタカメダルを挿入した華琳は、円状に業火を放ち敵を一掃する。リアスの滅びの魔力をも相殺する炎に、男たちは抵抗すら許されず飲み込まれる。

 

 中級悪魔程度の実力を有する集団が、まるで相手になっていない。

 倒された分だけ、上空に展開された魔法陣から戦闘員が送られてくるが、それも二人の手によって葬り去られる。

 

「白龍皇はともかく、なんなんだあのガキは!?」

 

 未知の少年に驚愕する男たち。

 単身相手にまったく歯が立たず、逆にこちらの戦力が次々と減らされていく。

 対する華霖は、機械のように目の前に相手を切り伏せていく。

 まさに一騎当千と呼ぶに相応しい戦闘を繰り広げる華霖とヴァーリ。

 

「……どいつもこいつも、雑魚ばかり」

『そのくせ、数だけはいっちょ前にいやがるな! 面倒ったらありゃしねぇ!』

 

 アンクの言う通り、数だけは多い。各勢力のトップを襲撃するのだから、当然といえば当然だろうが。

 ひとりひとり切り倒していくときりがないので、華霖が『ウナギ』のコアメダルを握りしめた直後、眼前の男たちの体が突如三分割され、鮮血が校庭を濡らす。

 

「な、なんだこいつ!?」

「しるか、とにかくやっちまえ!」

 

 敵の何人かが後方に攻撃を仕掛けだすが、次の瞬間には先の物たち同様、胴体を切り刻まれる。

 

『おい、気をつけろ。やべぇのがいるぞ』

「……わかってる」

 

 鮮血に彩られる地面。

 華霖はメダジャリバーを構え、暗闇の向こうへ視線を向ける。

 砂を踏み抜く音は次第に近づき、月光に照らされ、徐々にその姿があらわとなっていく。

 盾にするが

 

「ォオ、オォぉオ……」

 

 華霖の目の前に姿を見せたのは、神父服をまとった老人のような男。

 ローブの男たちの返り血を浴び、白だったはずのそれは真紅に染まっており、両袖から覗く手には、およそ人とは思えない巨大で鋭利な鉤爪が。

 

「ぇく、す……かり、ば……わたし、の……」

 

 ぶつぶつと、蚊の鳴くような声でつぶやく男は、華霖へ──正確には、彼の持つメダジャリバーへ緯線を向け

 

「かえ、セ。わたし、ノ……エくスかリバー!」

『──っ! くるぞ!』

 

 咆哮のような荒げた声を上げ、常人をはるかに凌ぐ速度で華霖に迫り、その鉤爪を振り下ろす。

 

「……っ!」

 

 とっさに華霖はメダジャリバーを盾にするが、予想以上の力によって後方へと弾き飛ばされる。

 空中で体勢を立て直し着地した華霖は、眼前の敵を睨みつける。

 

 なぜなら、この男は

 

「……その力、どこから手に入れた」

 

 体の内に、自身と同じ力を秘めていたのだから──。

 

 

 

 

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