堕天使少女と欲望の王   作:ジャンボどら焼き

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だいぶ長い期間を開けました。
亀更新も亀更新ですが、少しずつ投稿していきます。
それでは、暇つぶしがてらにどうぞ。


白龍

 人とは思えない姿へと変貌を遂げたバルパー・ガリレイ。

 目は虚ろで焦点はあっておらず、ぶつぶつと何かを呟く姿はまるで幽鬼のようで。

 

「……アンク、あいつの力」

『ああ、小せぇが確かに感じるぜ。ありゃ、俺たちと同じ力だ』

 

 バルパーの中に感じる力。自身と同種の力の波動に、アンクへ確認する華霖。

 アンクもまた、華霖同様に眼前の相手から感じる力に、彼と同じ結論を出す。

 その答えが決定打となった。内包する力は微弱ながらも、確かにバルパーはコアメダルの力を行使している。

 いったいどこで、そんな考えが脳内をめぐるが、眼前の男はもはや生きた屍も同然の状態だ。到底会話の受け答えなど期待できないだろう。

 

「ァアアァァアアアッ!」

 

 腕を振り上げ、大地を踏み抜くバルパー。

 見た目に反して速いが、油断をつかれた先ほどとは違い、華霖は臨戦態勢に入っている。

 

「……遅い」

 

 小さな体躯を切り裂かんと振り下ろされた一撃はあっけなく空を切り、地面へ深々と突き刺さる。

 その隙だらけの横腹へ、華霖はメダジャリバーをお見舞いする。

 そして、刀身がその体を捉え、華霖は勝利を確信するが

 

「ぉおお!?」

「……っ!」

 

 甲高い金属音とともに、刃とバルパーの間から火花が散る。

 常人であれば確実に仕留めてたであろう一撃は、想像以上の硬度を持つ何かによって阻まれたのだ。想定外の事態に華霖は目を見開き、その一瞬の隙をついて再度バルパーの鉤爪が襲う。

 体を逸らし紙一重で回避し、そのまま後方へと下がる華霖。

 

「……意外と堅い」

 

 無傷とまではいかないが、見たところ大きなダメージも与えられていない。

 奴の体にどんな変化が起こっているのか。思考を巡らせる華霖だが、その答えはすぐにやってくる。

 華霖の手によって切り裂かれた神父服。もともとボロボロだったそれは裂け目から徐々に綻び、遂には完全にちぎれてしまう。

 神父服の下から現れた身体に、華霖は視線を鋭くさせる。

 

 脇腹から下は黄色い皮膚、そして堅牢な筋肉に覆われている。目を凝らしてみれば、獣の毛のようなものも生えており、もはや人としての姿を保ってはいなかった。

 

『ありゃ完全にコアに飲み込まれてますぜ。王サマ、どうしますかい?』

「……とりあえず、叩き潰す――ガメル」

『は、はい……わ、わかりました』

 

 おどおどとした少女の声が聞こえると当時に、華霖の右手に灰色のコアメダルが出現する。

 ゴリラを模した絵が刻まれたメダルを手に取り、メダジャリバーの装填口へ投入しレバーを引く。

 

《ゴリラ!》

 

 流れる音声とともに、メダジャリバーと両腕を灰色のオーラが包み込む。

 そのままバルパーへと向かって駆け出し、再度その体を切りつける。

 先ほど同様に外皮の鎧に阻まれるかと思いきや、前回よりも大量の火花を散らし

 

「がぁあああっ!?」

 

 威力も上がっているらしく、けたたましい悲鳴を上げながらバルパーは後方へ大きく吹き飛ばされる。

 怯んでいる隙をつき、二撃目、三撃目と、反撃する暇すら与えず、絶え間なく攻撃を与え続ける華霖。

 縦一文字、横薙ぎと、これまでの俊敏な一撃とは打って変わり、一つ一つの威力を高めて放たれたであろう一撃に、バルパーは為す術なくやられるのみ。

 

 最後にメダジャリバーを振り上げ、バルパーを宙へと舞い上げた華霖は

 

「……これでトドメ」

 

 コアメダルとは違う銀色のメダル――セルメダル――をメダジャリバーへ2枚装填する。

 そしてオースキャナーを装填したメダルの上で滑らせ

 

――キン!キィン!

《ダブル! スキャニングチャージ!》

 

 読み込み音とともに高らかな音声が響く。

 姿勢を低くし構えを取ると、メダジャリバーに先ほどとは違うオーラが蓄積していく。

 十分に力を溜めた華霖は、落下中のバルパーへと高速で接近し、すれ違いざまに『X』の字に切り裂く。

 

「ォオオオォオオオオッ!?」

 

 今まで以上に苦し気な悲鳴を上げるバルパーは、数瞬後体を大爆発させる。

 そのまま力なく地面に倒れ伏した彼の胸から、一枚の黒いメダルが飛び出し音もなく転げ落ちた。

 華霖はすぐさまバルパーの元へ駆け寄ると、その黒いメダルを拾い上げる。そのメダルにはコアメダル同様に動物の『虎』をモチーフにした絵が刻まれており、やはり自らに宿った力と同種のものだと確信に至る。

 

「……ラザードに渡そう」

 

 この騒ぎを終えて家に帰ったらラザードに調べてもらおうと、華霖がポケットにしまおうとしたその瞬間、メダルに徐々に亀裂が走りついには粉々に砕け散ってしまった。

 戦闘の衝撃に耐えられなかったのか、それとも負けたら破壊する仕様になっていたのか。真相はわからないが、やっと掴んだ手掛かりを失ったことに、少しの落胆を覚える華霖。

 倒れたまま動かないバルパーに目を向けると、彼は息をしておらず既にこと切れていた。

 

「……やっぱり、魔王にもらうしかない」

 

 サーゼクスが有しているメダル。どうやって入手をしたかは不明だが、あれを貰うしか今は方法がない。とはいえ、今はこの騒ぎをどうにかしなければ話をするどころの問題ではない。

 残りの敵は徐々に数を減らせいてきてはいるが、それでもかなりの数が学園を包囲している。

 するとその中でも、ひと際強い力の波動を感じ目を向けると、そこにはアザゼルと相対する一人の女性悪魔が。

 

「……あれは」

『感じる力はコカビエルにも引けを取らねぇ。なかなかやるぞ、あの女』

 

 どうやら敵も主戦力を送り込んできたらしい。

 アザゼルと繰り広げる攻防を見ても、決して格下とは言えない実力を有している。

 

「……危害がないなら、他の奴らを片付ける」

 

 アザゼルとの一騎打ちに集中しているのだ。こちらに何かしかけてこないのであれば、その間に他の雑兵を片付けるだけの話。

 メダジャリバーを構えなおし、残る魔術師の集団へ向かおうとしたその瞬間

 

「やぁ、少しいいかな」

 

 眩い光とともに華霖の前に降り立ったのは、別の場所で魔術師たちの相手をしていたヴァーリだった。

 白い鎧に身を包んだヴァーリは、まるで行く手を阻むかのように立ちはだかると、頭部の仮面のみを解除する。

 

「……いま忙しい。話ならあと」

「いいや、別に話をしようってわけじゃない。ただ、コカビエルを倒したその力、少し確かめてみたくなってね」

「……お前、敵?」

 

 会談開始前に向けられた敵意を再び感じ、華霖はメダジャリバーを持つ手に力を籠める。

 そんな華霖の反応にヴァーリは嬉しそうに笑みを浮かべ

 

「そうだな、これからアザゼルを裏切るわけだから敵と言えば敵、かな」

「なら、どけ」

 

 ヴァーリの返答を聞くや否や、華霖は彼の懐へ入り込みメダジャリバーを振るう。

 唐突の攻撃にも動じず、鎧をまとった左腕で防ぐヴァーリは、より一層その笑みを深め

 

「いい、実にいい敵意だ。そして一つの躊躇いもない一撃……ああ、本当に君は面白い」

 

 腕を振るい華霖を後方へ飛ばすと、再び顔を鎧で覆う。そして背中に生えた機械的な翼から光の粒を零しながら上空へと舞い上がり、眼下から睨みつけてくる華霖へ向けて高らかに宣言する。

 

「俺はヴァーリ、ヴァーリ・ルシファー! 強き者との戦いを求める者だ! 少年よ、ライバルとの一戦の前に手合わせ願いたい!」

 

 端から答えなど聞く気がないらしい。言うや否や滑空し華霖へ襲い掛かるヴァーリ。

 襲い掛かってくるのなら容赦はしない。会談でもそう話した華霖は、メダジャリバーを構え迎え撃つ。

 

 ぶつかり合う剣と拳。両者の一撃は拮抗し、衝撃で周囲の地面に大きな亀裂が走る。

 ヴァーリの拳を弾き飛ばしながら、再度懐へと潜り込むと、今度は脇腹へ強烈な蹴りをお見舞いする。

 鎧越しでも伝わる重い一撃に、兜の中で嬉しそうに口角を上げるヴァーリは、吹き飛ばされることなどお構いなしにと華霖の横顔を殴り飛ばす。

 

「生身でその力、ああっ本当に素晴らしい!」

《Divide!》

「……っ!」

 

 ヴァーリの宝玉から聞こえてくる音声。直後、華霖の体から急速に力が抜けていく。

 何事かと考える華霖だが、相手はそんな思考を待ってはくれない。体勢を立て直したヴァーリは再び華霖へ接近し、再び拳を振り抜く。

 反射でメダジャリバーを盾にする華霖だが、その衝撃は先ほどよりも重く鋭くなっており、拳を弾き飛ばすことはできず後方へ大きく吹き飛ばされる。

 

「……体が、おかしい」

『あいつも急に力が上がったよねー。いったい何したのかなー?』

 

 考え事をしていたとはいえ、こんな簡単に吹き飛ばされることはない。一度拮抗していたからなおさらだ。

 そして体から力の抜けたような感覚。間違いなく、あの宝玉から流れた音声が関係しているのだろう。

 自身に起きたことを整理している華霖へ、滞空したままのヴァーリが声をかける。

 

「俺の神器(セイクリッド・ギア)は『白龍皇の光翼(ディバイン・ディバインディング)』。触れた相手の力を半減させ、自身の力へと変える能力を持つ」

 

 自らの力の種明かしをするヴァーリ。

 なぜわざわざ力の正体を明かすのか、怪しげに睨みつける華霖だが、ヴァーリは調子を変えず言葉を続ける。

 

「なに、不思議そうな顔をしていたから種明かししたまでさ。それに、戦いとは正面からぶつかり合うものだろう?」

 

 種明かししたところで問題はない。自身の強さからくる余裕か、あくまで戦いを楽しむスタイルのヴァーリに華霖は不満げな視線を向ける。

 

「別に君を軽んじているわけではないよ。ただ、俺は力の秘密を教えた。だから君の真の実力を見せてほしいだけさ」

 

 コカビエルを倒した力がこの程度なはずがない。暗にそう示す言葉に、華霖は両眼を閉じて深く深呼吸をする。

 確かにこのまま生身で戦ったとしても、おそらくは勝ち目はない。仕方ない、と華霖は目を開き

 

「……わかった。アンク、カザリ、ウヴァ」

『あんにゃろう、馬鹿にしやがって! ひと泡吹かせてやれ!』

『ちょっと上から目線だよねー』

『まぁまぁ、王サマもあんましムキにならないでくださいよ』

 

 タカ、トラ、バッタの三枚のコアメダルを手にし、『オーカテドラル』へ装填し斜めへ傾ける。そのまま『オースキャナー』を手に取り、装填した三枚のメダルを読み込み

 

「……変身」

 

《タカ! トラ! バッタ!》

《タ・ト・バ! タトバ! タ・ト・バ!》

 

 脳内に流れる軽快なメロディーとともに、華霖はオーズ『タトバコンボ』へと姿を変える。

 

「はははははっ! それが話に聞いていた力か!」

 

 感じるプレッシャーと内包した力の増加に、たまらなず笑い叫ぶヴァーリ。

 なるほど、あれならばコカビエルを倒したというのにも納得がいく。まるで『禁手(バランス・ブレイカー)』の様な力の底上げだ。明らかに姿を変える前とは別次元の力を有している。

 トラクローを展開させた華霖は、『バッタレッグ』に力を籠め跳躍。一瞬でヴァーリとの距離を詰めると、両手の鉤爪で切り裂くが、紙一重のところで籠手に防がれてしまう。

 一息の間に距離を詰められたことへの驚愕と、先ほどとは比較にならない重い一撃に、初めてヴァーリが苦悶の声を上げる。

 

「――ッ! なるほど、凄まじい力だ!」

「……吹き飛べ」

 

 がら空きの腹部へ今度は蹴りをお見舞いし、はるか遠く――アザゼルと女性悪魔との戦闘区域まで吹き飛ばされるヴァーリ。

 突然の来訪者にアザゼルと女性悪魔は戦いの手を止め、砂煙を払いながら立ち上がるヴァーリへと視線を落とす。

 

「……遠くから聞こえてきたが、この状況下で反旗か、ヴァーリ」

「ヴァーリ!? 白龍皇(はくりゅうこう)であるあなたが、いったい誰に!」

「ああ、アザゼル、その通りだよ。聞きたいこともあるだろうが、今は純粋にこの戦いを楽しませてくれ!」

 

 アザゼルの問いにそれどころではないと返すヴァーリ。その視線の先には次のメダルを装填し読み込ませているオーズの姿が。

 

《タカ! トラ! チーター!》

 

 

 鳴り響く機械音声。『タカトラーター』へと姿を変えたオーズは、チーターレッグの速度を生かしヴァーリへ接近。再度トラクローで斬りかかる。

 次は喰らわまいと、ヴァーリはすんでのところで回避し、お返しとばかりに側頭部へと強烈な蹴りをお見舞いする。数度バウンドしながら吹き飛ばされるオーズだが、鉤爪を地面に突き刺し勢いを殺す。

 その攻防にアザゼルは戦いの手を止めて見入ってしまう。過去現在未来においてヴァーリは最強だと、彼の才能を見て確信しているアザゼル。そんなヴァーリと正面切って殴り合いをできる存在が、まさか人間界に潜んでいたとは。

 

「なるほどな、あれが話に聞いてたコカビエルを倒した力か……。ヴァーリとやりあうたぁ大したもんだぜ」

「よそ見をしている暇があるのか!」

 

 眼下で行われる戦いに夢中になっているアザゼルへ、女性悪魔『カテレア・レヴィアタン』は幾重もの魔法陣を展開し隙だらけのその体へ魔法を放つ。

 アザゼルは特に焦る様子もなく、その手に光の槍を出現させると襲い掛かる魔法全てを払いのけた。

 

「余裕はあるさ。にしてもさっきの驚きようだと、ヴァーリ相手にここまでやれる奴がいるのは予想外だったか?」

「……私とヴァーリで暴れ、三大勢力のトップを一人でも葬り去るか、もしくは会談自体を壊す手筈でした。しかし、まさかあの白龍皇を相手取れる戦力があなた方以外にもいるとは……」

「はっはっは! そりゃ予想外だよなぁ。なんせ今ヴァーリと戦っている奴こそが、先日コカビエルをぶったおした存在だぜ?」

 

 半減されるのを防ぐため、ヴァーリの手に直接触れないように切り結ぶオーズ。

 本来であれば吸血鬼を助けに行った赤龍帝が相手をするはずだったろうが、これは思わぬ収穫を得た。このまま赤龍帝が来るまで時間を稼げば一気に形勢は逆転する。

 奴らが呼ぶ魔道士もグレモリー眷属の活躍で徐々にだが数を減らしている。後は頭であるカテレアとヴァーリをどうにかすれば勝ちだ。

 

「さて、余所見して悪かったな。それじゃ、さっさと続きを始めようぜ、旧魔王の末裔さん?」

「どこまで、どこまでも私を虚仮にしてくれるな――アザゼル!」

 

 天と地。二つの領域で行われる戦いも佳境へと突入する――。

 

 

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