今回オリキャラが出ますので、そういったものが苦手な方は申し訳ありません!
「そういえば、あんたの使ってたあのメダルってなんなんすか?」
カレーを食べ終え一息ついた後のミッテルトの開口一番の言葉はそれだった。
確かに、あの銀のメダルと赤いメダルの力はとても強力なものだ。リアス・グレモリーの『消滅』の魔力と相殺するなど、ただのメダルでは済まされない。
ミッテルト自身としては『
ミッテルトの質問に、華霖はゆっくりと口を開き
「あれ、コアメダル」
一言。たった一言を口にし、それから黙り込む華霖にたまらずミッテルトは
「いやいや名称だけじゃなくて、もっとこう、詳細を詳しく教えて欲しいっす」
「詳細……」
そのまま口を閉ざしてしまう華霖。そして顎に手を当てて考え込むこと約1分、彼が口にした言葉は
「僕にもよく、わからない」
「はぁ? わからないって、それあんたの力っすよね?」
「違う。あれ、僕の力じゃない」
華霖の言葉にますます意味がわからなくなるミッテルト。あれが自身の力ではないなど、そんなことあの一連の戦闘を見ていた彼女からすれば信じられないものだった。
あの赤いメダル──確か『タカ』と言っていただろうか? 恐らく、あの戦闘で見せた力もほんの一端にすぎないはず。であれば、あんな見た目普通なメダル一枚にいったいどれほどの力が秘められているのか。想像も及ばない。
華霖は胸元に手を当て、また、視線を下へと落とす。
「みんなが力、貸してくれる。だから僕、戦える」
「みんな……貸して……?」
いったい目の前の少年は何を言っているのか。その言葉の真意を問おうと口を開きかけたその時、視界の端に見知らぬ魔法陣が展開。リアス・グレモリーか、と咄嗟にミッテルトは身構える。そんな彼女とは対照的に、華霖は落ち着き払った様子で魔法陣を見つめる。
そして魔法陣の輝きがより一層増し、一瞬、室内を光が満たしたかと思うと
「邪魔するぜ、ゼロ」
そんな挨拶とともに現れたのは一人の男性。黒い短髪に整った顔立ち、そしてがっしりとした体格から
突然の来訪者にミッテルトは目をぱちくりとさせ、男もまた、ミッテルトの存在に気がつくと同じように目をパチパチさせ
「おいおい、こりゃどういうこった!? ゼロ、お前が女連れ込むたぁいったいどういう風の吹き回しだよ!」
ミッテルトと華霖を交互に見ながら、心底驚いた顔で叫ぶ。
「ミッテルト。僕の、友達」
「友達、ねぇ……。くくっ、そうかそうか!」
何やら嬉しそうに笑う男。すると華霖から視線をミッテルトへと移す。
急に顔を向けられたミッテルトは、びくり、と肩を跳ねさせる。そんなミッテルトへ男は歩み寄りそのごつい右腕を前に出すと、ニカリ、と口元に大きな笑みを浮かべる。
「ミッテルトって言ったな? 俺はラザード、ラザード・フォルスタインだ、よろしくな!」
「え、あ、ああ……よろしくっす」
男──ラザードの自己紹介にミッテルトはやや気後れしつつも彼の右腕を握り返す。そうとう鍛え上げられたとわかるごつごつとした右手だが、ミッテルトに痛みを与えないようその手を優しく包む。それだけで彼がいかに気を配れる人物であるかが図れる。
そんなラザードはというと、ミッテルトの顔、体、足の順に全体をくまなく観察するように瞳を動かす。そして何を思ったのか、さらにその笑顔を深めると
「何がきっかけかは知らねぇが、とりあえずありがとな嬢ちゃん。こいつの友人になってくれてよ」
「はぁ……どういたしまして?」
「にしてもまぁ、
その言葉にキョトンと顔を惚けさせるミッテルト。そして次の瞬間に、その表情は絶句し青ざめることとなる。
なぜなら──
「アザゼルは元気にしてるか? 昔っからそうだが、あいつは研究所に引きこもってがちだからな」
宙を舞う黒い羽。その一枚一枚は単純に黒というには澄んだ色をしており、どこか夜空を彷彿とさせる。そしてそんな羽が舞う元には四対にもなる翼があり、ミッテルトの視界を覆わんばかりに広がっていた。
計8枚の翼。それらを視界に収めたミッテルトは目の前の人物が何者であるのかを悟り、わなわなと体を震わせる。
「だ、だだだだ、だだだてっ!?」
「おう、俺も堕天使だ。もっとも、ずいぶん前に『
混乱と焦りがミッテルトの意識を支配する。だがそれも仕方のないことだろう。相手は自分と同じ堕天使で、尚且つ自身よりもはるか格上の力を有しているのだから。
そんな呂律が回らないほど混乱するミッテルトに対し、ラザードはどこか面白いものを見たかのように笑う。
しかしミッテルトからすれば気が気でない話だ。自身は上司の指示とはいえ、本部に無断で行動を起こした身。もしかしたら自分を裁きに来たのかと、そう動揺するのも当然といえば当然のことだろう。
だがその心配はすぐに杞憂となる。
「んでゼロ、お前『メダジャリバー』でコアメダル使ったって?」
「……ん。でも仕方なかった」
「かぁ〜、お前なるだけコアメダルは使うなって言ったよな? それに別段、人間界で仕方ねぇことなんてそうそう起こらねぇだろ」
どうやらラザードがここに訪れたのは華霖に用があってのことらしい。ほっと胸を撫で下ろすミッテルトは二人の会話に聞き耳をたてる。
「んで、メダル何枚使った?」
「タカを単独。コブラ・カメ・ワニを同時」
淡々と使用状況を説明する華霖。するとラザードは再び、かぁ〜、と深い深いため息を吐きがっくしと肩を落とす。
「お前、三枚同時って……いやいい。とりあえず状態を見るから、今すぐメダジャリバーを持って来い」
「ん、わかった」
ラザードの指示に従い、華霖は部屋を出て何処かへと向かう。華霖が出て行ったところで再び溜息を吐くライザーへ、ミッテルトはある質問を投げかける。
「あの、ラザード様。ちょっといいですか?」
「あん? ああ、俺のことはもっと気軽に呼んでくれていいぜ? もう『神の子を見張るもの』とは殆ど無関係だしな」
「じゃあラザード、さん。コアメダルって、いったい何なんすか?」
ミッテルトの聞きたいこととは『コアメダル』の正体だ。先ほどの華霖の説明ではあまり、というか何一つ分からなかった。
先ほどの会話を聞くに、ラザードは何かコアメダルについて知っていそうなので、たぶん華霖よりかはマシな答えが返ってくると思ったわけだ。
「華霖……あ、ゼロに聞いたんすけど、わからないって答えだけで。けど、あのメダルがただのメダルじゃないってのは、なんとなくだけどわかるっす。
ラザードさん、あんたなら何か知ってるんじゃないんすか?」
ミッテルトの質問にラザードは後頭部に手を当て、あー、と呟きながらしばしの間考え込むと
「
苦笑と共に返される答え。
だけどな、その言葉と共に表情は一変、真剣なものへと変化する。
「少しだけだったら、分かっていることがある」
その言葉にミッテルトの肩が跳ねた。どうやらお手上げ状態ではあるようだが、それでもわかっていることがあるらしい。
ようやく掴んだコアメダルの真相への道。ミッテルトは前に乗り出しそうな体を抑えラザードの言葉を待つ。
そんなミッテルトに依然、ラザードは真剣な表情を崩さず話を進める。
「嬢ちゃんはコアメダルのことを知ってるみてぇだから教えるが……その前に一つ質問だ。嬢ちゃん、お前はコアメダルについてどう推測を立てた?」
「どうって……神器じゃないんすか?」
ミッテルトの答えに、ちっちっ、と人差し指を左右に振るラザード。
「残念だがあれは神器じゃねぇ。じゃあ何かって言われたらそうだな……『無限の何か』を秘めたメダルってとこが妥当か」
「無限の……?」
ああ、と頷くラザード。
「その『何か』まではわからねぇがな。だがその『何か』がコアメダルの力を生み出す鍵だと俺は睨んでいる。その力は並の神器はもちろん、下手したら『
予想以上の答えにポカンとするミッテルト。そんな彼女を現実へ引き戻すように、ラザードは彼女の顔前に人差し指と中指を立てた右手を近づける。
「そして二つ目だ。コアメダルは『生物』、しかも人間界のものをモチーフにしている」
赤いメダルの『タカ』も然り、先ほど会話に出てきた三枚の名前も人間界での生物の名前だった。これはミッテルトもすぐに飲み込んだのか、コクリ、と首肯し次を促す。
「んで次だが、コアメダルは計54枚存在している。しかもそいつらは現在、全てゼロの体の中に同化している状態だ」
「なっ!? 体に同化!?」
コアメダルの同化。その驚愕の事実に、ミッテルトは思わず叫ぶ。
これが神器であるならばここまで驚きはしない。なぜなら神器とは宿主である人間の生命力や魂と密接に結びつくもの、謂わばその人間の半身とも呼べるものだからだ。
だがコアメダルは神器ではない。そんなものが体と同化しているなど、どういった弊害が出るのか想像もつかない。
「今はまだ体に影響は出ていない……と言いてぇところなんだがな」
「何か、影響が出てるんすか?」
「影響っつうか、コアメダルが原因かはわからねぇんだけどよ……嬢ちゃん、あいつがいったい
再び投げかけられる質問。その真意はわからないが、ミッテルトは華霖の容姿を思い返しつつ当たり障りのない答えを返す。
「人間基準で十代前半、くらいじゃないんすか?」
「ははっ、まぁあいつの見た目だとそう思うのも無理ねぇわな。けどまたまた残念、少なくともあいつの年齢は百を超えている」
またも斜め上をいく答えに言葉をなくすミッテルト。まさかあの容姿で百を超えているなど思いもよらなかっただろう。
堕天使や悪魔といった人外ならともかく華霖は人間の筈だ。だというのに百を超えても全くと言っていいほど衰えないあの容姿、確かに同化の弊害といえば納得がいく。
「言っとくが、これが同化の原因だと決まったわけじゃねぇ。ただの仮説だ。もっとも、殆ど確信に近いけどな」
そこまで言ったところで、ガチャ、と部屋の扉が開き愛用の剣──メダジャリバーを手にした華霖が姿を表す。
「メダジャリバー、持ってきた」
「ん? おおサンキューな。んじゃ、ちょっくらこいつ借りてくぜ」
華霖からメダジャリバーを受け取ったラザードは、パチン、と指を鳴らす。すると現れた時と同じ魔法陣が床に展開され、淡い輝きで室内を照らす。
「また調整が終わったら返しに来るぜ」
「ん、またね」
「ああ、またなゼロ。いや──カリン」
そう言い、ラザードはミッテルトへと笑みを向ける。それを最後にラザードの姿は光に包まれ、それが晴れた頃にはその姿は部屋の中から消え去っていた。
来訪者がいなくなり静まり返る室内。先ほどまでラザードが立っていた場所を眺める華霖。そんな彼を見つめるミッテルトの頭には、先ほどのラザードとの会話が流れていた。
『──「無限の何か」を秘めたメダルってのが妥当か』
『──しかもそいつらは現在、全てゼロの体の中に同化している状態だ』
華霖の有する力『コアメダル』。その謎の解明に一つ近づこうとした筈が、むしろ逆に謎を増やす結果に陥ってしまった。
神器とは違う力。しかし神器と同等、下手すれば『神滅具』にすらも届きうるかもしれない力。
謎が新たな謎を呼ぶ。しかも新たに呼ばれた謎は、ミッテルトに不安を募らせるには十分なものだった。
自然、険しい顔をしてしまうミッテルト。そんな彼女の表情の変化に気づいた華霖は、首を傾げ話しかける。
「ミッテルト、怖い顔してる。何かあった?」
「……いや、なんでもないっす」
追及はない。ただただ無言でミッテルトに視線を向けるだけだ。
(ああ、うちって華霖について何も知らなかったっすねぇ)
ラザードとの話で再確認させられた。自分が知っているのは『華霖』として共に過ごした少年のみ。今より百年以上先から生きてきた『ゼロ』としての少年のことを、自分は何一つとして知っていない。
いったいなぜコアメダルという力を手にしたのか。百年もの間何をしてきたのか。聞きたいことは山ほどある、あるのだが……。
「さっ、もう用は終わったことだし、風呂にでも入るっすかねぇ」
「ん、僕もまだ、入ってない」
ぐぐーっ、とその場で背伸びをし部屋を後にする。そんなミッテルトの後を、華霖はトコトコと付いて歩く。
確かに聞きたいことは山ほどある。だが、そう急ぐほどのことではないだろう。時間が解決する、なんて楽観的なことは言わない。けれどまだ、もう少しだけはこの時間を楽しんでいたい。
いつか知るであろう『ゼロ』としての華霖の一面。その時、この関係を続けていられるのかはわからない。だからこそその時が来るまでは、今の『華霖』との暮らしを大切にしよう。
華霖の方へ振り返るミッテルト。そして顔に挑発的な笑みを浮かべ一言。
「だったら一緒に入るっすか?」
「うん、いいよ?」
はい、といった感じです。
今回出したオリジナルキャラ、ラザード・フォルスタイン。
覚えている方がいればわかると思いますが、1・2話での電話の相手です。
基本何でも屋として依頼を受けつつ、主人公へ依頼を回し報酬を与えるといった関係です。
本作品ではメダジャリバーは彼が作りました。会長ファンの皆様申し訳ありません!
そしてコアメダルについてさわり程度の説明でした。
さて序章はここまでです。次回からは本格的に本編に入ろうと思います。
では、次話もごゆるりとお待ちください!