堕天使少女と欲望の王   作:ジャンボどら焼き

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どうもお久しぶりです。
かなり更新が遅れてしまいましたことお詫び申し上げます。
テストと帰省の連続で書く時間が無くて……という言い訳を一言だけ。

今は帰省も終わったので今後の更新は早めにできると思います。

では、第7話をどうぞ。




動き出す者達

 とある林の中。日の光も射さず、薄暗い、怪しげな雰囲気を醸し出す木々の中──突如として光が爆ぜる。

 木々の間を縫うように、というよりもむしろ木々を塗りつぶしながら進むそれは、光というには荒々しく、獰猛なものに思える。いや現にその光は只の光ではない。その正体は内に全てを焼き尽くす高熱を秘めた熱線である。

 そんな灼熱の熱線は自らの進路を遮る木々をその熱で侵し、勢いのままにどんどんと進んで行く。

 

 そして光が収まり再び暗闇に包まれると、そこはすでに林ではなくなっていた。地面を埋め尽くさんばかりに立ち並んでいた木々は根元からその姿を消し、代わりに黒ずみ炭化した何かが散乱している。

 焦土──まさにそう呼ぶのにふさわしい変わり果てた大地。たった数秒の出来事、そんな短い時間で地獄絵図とも呼べる光景へと変貌した大地。そんな黒き大地の中央にて、二つの影が退治する。

 

「──ハ、ハハハハッ! いい、実にいいぞ! 昂らせてくれる!」

 

 一つは5対10枚の翼を背に、紫の空を浮遊する男の堕天使。装飾の施されたローブを身に纏い、狂気を孕んだ笑みを浮かべている。先ほどの熱線を受けてローブのところどころが焼け焦げ、体にも火傷のような傷を負う男。

 眼下の景色が焼け野原へと変貌したというのに、その笑みからは一切の恐怖や焦りが感じられない。むしろその表情は歓喜に満ち溢れており、狂ったように笑う様は一目で狂人だとわかる。

 

「……うるさい」

 

 そんな男の眼下に立つのは全身を黄色で包んだ異形。その腹部にはバックルのようなものが装着されており、斜めに傾けられたそれには輝きを帯びた三枚の黄色いのメダルが埋め込まれている。

 

 青い複眼で堕天使を見上げながら一言、独り言のように漏らす異形。そしてゆっくりと両拳を握り締め、グッ、と力を込める。直後、前腕部に折り畳まれていた得物が動き出す。

 現れたのは3本の鉤爪上の武器。わずかな光すらも反射し煌めく、ただそれだけでその切れ味の良さを物語る。

 両腕に計6本、自身の武器を展開した異形は静かにファイティングポーズを取り

 

「──お前もう、ついてこれない」

 

 一言、男へそう告げると────その姿を閃光へと変えた。

 

 

 

 

 

 ********

 

 

 

 

 

 

 場所は変わり駒王町、その町の中のとある一軒家。

 

「かーりーんー、夕食作ったんで皿持ってきてほしいっすー」

 

 フライパンを片手に料理を作るミッテルト。そんな彼女の後ろから、お盆に皿をのせた華霖がトコトコと近づいてくる。皿に料理を移し机に運び終えると、ミッテルトと華霖も席に着き食事を開始する。

 

「…………」

 

「……華霖? どうしたんすか、箸が進んでないっすけど」

 

 いつもなら無言で黙々と食事をするはずの華霖だったが、なぜか箸はいつもの勢いをなくし静止を決めていた。そんな華霖の様子にミッテルトもまた、食事をする手を止め不思議そうな視線を向ける。

 食卓を静寂が包み込む中、華霖は静かにその口を開いた。

 

「……ちょっと、嫌な夢見た」

 

「嫌な夢、すか?」

 

 華霖が夢というものを見ることにも驚いたが、何よりも意外だったのは華霖が『いやだ』と、そう発言をしたことだ。見ればいつもの無表情が崩れ、眉間には皺が寄り、どこか面倒臭そうな表情を浮かべている。ミッテルトが居候するようになってから一月以上の時間が経過したが、こんな華霖の顔を見るのは初めてだ。

 

「それで? その嫌な夢ってなんなんすか?」

 

「……むぅ」

 

「華霖……?」

 

 ミッテルトの質問に再び閉口する華霖。そこまで言いにくい夢とはいったいなんなのか、ますます気になってきた。何か何かと何度も聞き返してみるものの、結局、華霖の口からその答えが出ることはなかった。

 

 

 そして食事を終え、ミッテルトが食器を洗い始める中、一人自室へと戻る華霖。扉を開け中に入ると、広がるのは見慣れた殺風景な景色。そのままベッドの近くまで歩み寄り腰をかけ、華霖は無言で虚空を見つめる。

 

『なんであの嬢ちゃんに黙ってるんだよ?』

 

 すると華霖の耳、というよりも脳に直接響くように女性の声が木霊する。無論、室内には華霖以外の誰もいないし、家の中に誰かが侵入したというわけでもない。だというのに聞こえてくる謎の女性の声。しかしながら華霖はそんな謎の声に特に驚くこともなく、落ち着き払っていた。

 

「別に、言う必要がなかった。それだけ」

 

『逆に言えば、黙ってる必要もねぇってわけだろ? なに秘密にしてんだよ』

 

「別に、秘密にしてるわけじゃない」

 

 そのまま水掛け論のように互いの主張を繰り広げる華霖と謎の声。そんな際限なく続きそうな議論を収めたのは

 

『まぁまぁ、二人ともちょっと落ち着きなさいよって。これ以上続けても時間の無駄だと思うがねぇ』

 

 飄々とした男の声だった。男の言葉に華霖は一度口を閉ざすが、女性の方は落ち着かせることができなかったらしく、怒気の込もった言葉が返ってくる。

 

『んだよウヴァてめぇ、なに俺に命令してんだ、あ゛ぁ゛!?』

 

『だから落ち着きなさいなアンク。お前さんも王サマの頑固さは知ってるだろ? この先どこまでいっても無駄なやりとりの繰り返しさね、諦めましょうや』

 

 アンクと呼ばれた女性はもはや喧嘩の域にまで達しようかというテンションで食いかかる。そんな彼女を、どうどう、と物腰穏やかに宥めるウヴァと呼ばれた男性。そんな彼の対応にアンクはぐちぐちと言いつつも怒りを収め、ウヴァは彼女が落ち着いてくれたことに小さく安堵の息を漏らす。

 

『ったく、なにあんなにムキになっちゃってるのかねぇ』

 

「……ウヴァ」

 

『ま、王サマはやりたいようにすればいいさね。俺たちはアンタの味方だ、アンクもなんやかんや言って力になってくれるだろうよ』

 

 そう言い残し、ウヴァの声はそれ以降聞こえなくなる。話し相手が誰もいなくなった華霖はベッドから立ち上がると退室、リビングへと向かって歩く。そしてリビングの扉を開き中に入ると、エプロンを身につけたミッテルトがお盆を手にキッチンから出てくる。

 

「あ、華霖、ちょうどいいところに来たっすね。ほら、食後のデザートっすよ」

 

 そう言いながらミッテルトは、見せつけるようにお盆を華霖へと突き出す。そこには少し大きめな丸皿に盛られた色とりどりの果物が。

 

「いやー、青果店で買い物したらそこのおばさんからおまけでもらったんすよ!」

 

 とても晴れ晴れとした笑顔を浮かべ、ミッテルトは上機嫌に言う。そして机の上へお盆を運ぶ彼女の背中を見つめながら、華霖もその後へと続き机の下へ。

 丸皿、小皿、フォークとそれらを卓上に並べながら、ふと、ミッテルトは華霖へ質問を投げかける。

 

「そういえばさっきどっか行ってたっすけど、いったいなにしてたんすか?」

 

「別に、なんでもない」

 

「ふーん……ま、いっか。ささっ、早く食べるっすよ!」

 

 華霖の返答に首を傾げるも、すぐに切り替え椅子に座りフォークを手に取り

 

「うぉっ、このリンゴ甘っ! ほら、華霖も早く食べてみるっす! 美味しいっすよ!」

 

 リンゴやなんやを頬張りながら笑顔をこぼすミッテルト。そんな彼女の笑顔につられ、華霖もまたフォークを手にする。

 

 

 

 

 

 ********

 

 

 

 

 

「各教会から奪ったエクスカリバーが3本……ふむ、なかなかに上出来だ」

 

 とある廃墟。その一室では神父の格好をした初老の男性が一人、机の上に並べられた3本の剣を眺めながら満足そうに呟きを漏らす。

 初老の男、名を『バルパー・ガリレイ』。かつて教会にて行われた『聖剣計画』の実行者にして、その悪逆な行いから追放を受けた男である。

 

「うっひょぉ! エクスカリバーが3本も並ぶと壮観ですなァ、バルパーのじいさん!」

 

 そんなバルパーの背後からひょっこりと現れ、机に並べられたエクスカリバーを見てはしゃぎ声をあげる白髪の青年。名を『フリード・セルゼン』。神を信仰し、またその信仰によって世の人々のために戦う『祓魔師(エクソシスト)』でありながら、ただ己の快楽のためだけにその力を振るった異端児。

 3本の聖剣を舐め回すように見るフリードへ、バルパーは嫌悪そうな視線を向ける。

 

「ふん、貴様にエクスカリバーの何がわかる。上っ面しか知らぬ分際で語って欲しくはないな」

 

「へいへい、サーセンサーセン。どうせ俺は聖剣についてな〜んにも知らねぇトーシロちゃんっすよ」

 

 決して良いと言えない雰囲気が二人の間に流れる中、不意に部屋の扉が開きそこから大柄な人影が姿を表す。

 

「バルパー、準備は整ったか」

 

「ああ、いつでも計画を実行することは可能だ」

 

「へへっ! コカビエルの旦那、さっさとおっ始めましょうや! 俺っちもう、エクスカリバーちゃん達を振るいたくてウズウズしちゃってるんすよ!」

 

 長身の男、その正体はかつて悪魔・天使と三(すく)みの戦いを繰り広げた堕天使の一員にして、聖書にその名を刻んだほどの存在。名を『コカビエル』。背中に5対、計10枚の黒き翼を生やした堕天使屈指の実力を持った男だ。

 

「三本ものエクスカリバーを奪ったんだ、教会の奴らも祓魔師なりなんなり送り込んでくるだろう。それまで待っておけ」

 

「ケヒヒヒッ、旦那は焦らすのがお好きですなァ! オレちゃん我慢のしすぎでついつい摘まみ食いしたくなりそう!」

 

 ニタリ、と口元に狂気じみた笑みを浮かべるフリード。早く誰かを斬り伏せたいと、見開かれた双眸が物語る。そんなフリードから視線を外し、コカビエルは聖剣へと目を移す。

 

「ふん、かのエクスカリバーが惨めなものだな。7つに分かれたうえ、その力も7つに分散したとは……先の大戦の所有者が聞けばさぞ嘆くだろう」

 

「確かに真のエクスカリバーを知っているお前からすれば、7つに分かれた物などさしたる脅威ではなかろう。しかし私の前でのエクスカリバーに対する嘲罵(ちょうば)は止めてほしいものだな」

 

 エクスカリバーを侮辱されたかのようなコカビエルの発言に、バルパーは怒りを孕んだ視線と言葉を向ける。しかしたかだか人間の怒りなどコカビエルにとっては子犬が睨みつけているも同然。一切表情を崩さず踵を返すと、再び扉の方へ向かって歩き出す。

 

「計画実行の時は来た。行くぞバルパー、フリード──魔王の妹が治める土地、駒王町へ」

 

 その言葉にバルパー、フリードの両者は首肯し10枚もの黒翼の後を追う。その背中が纏う強者としての雰囲気、ああ、確かにかの大戦を生き延びただけのことはある。そんな覇気を纏うコカビエルだが、ある一部だけ、他者の目を引く箇所が。

 それは彼の左腕。空を切る右腕とは対照的に、左腕の袖は肘近くから先が靡くようにひらひらと揺れている。聖書には片腕を失ったとは記されていない、とすれば、いったいどうやって左腕を失ったのか。

 

 その真実は、彼ただ一人しか知らない。

 

 

 

 





はい、というわけです。

今回はグリードを登場させました(声のみ
色々とキャラが変わっているので、それが気に入らないという方々は申し訳ありません。

そしてついに動き出したコカビーさん。え? 原作2巻はどうしたかって?
ま、まぁ、主人公には関係のないことだから、飛ばしてもいいかなって……。

別にサボったとかそういうわけではないので悪しからず、ご理解のほどをお願いします。

次回は早めに更新できるように頑張りますので、気長にお待ち下さい。

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