覇王とイチャイチャしたい   作:初音 茜

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これでGOD編は終了です。

あとフローリアン姉妹がお好きな方は閲覧注意でお願いします


28:覚醒!身勝手の極意と事件の終幕

身勝手の極意に覚醒した未來は腕を軽く振って自身に起こった事を確認していた。そしてそれをモニターで見ていたアースラの面々はというと...

 

「未來さんのあの姿は一体?」

 

「あれだけの熱量を放ちながら気は穏やか……あの姿は?」

 

「なんかお姉ちゃん...神様みたい...」

 

「う、うん...」

 

アインハルトとクロノは困惑しフェイトとアリシアは未來に神々しさを感じていた。

まぁそれは無理もない。なぜなら身勝手の極意は神の領域にあるとされる境地だからだ。

そしてアースラの面々が未來の姿に見惚れていると未來はキッ!っとブロリーを睨みつけ一歩前に足を踏み出した。

 

「くっ!死に損ないめ!今度こそ楽に...グボォォォ!!」

 

そしてその様子を見たブロリーが攻撃に移ろうとした瞬間自分の腹に未來の足がめり込んだ。

 

「あ...が...ぐっ!カカロッ...ガァッ!」

 

さっきまで離れた位置にいた人物の攻撃を受けそれがどうやって行われたのか分からないまま反撃を開始しようとしたブロリーだがすぐさま拳で殴られ思いっきり吹き飛んだ。

そして未來は吹き飛ばしたブロリーの方向に瞬間移動で先回りをし拳を構えタイミング良く打ち下ろした。

 

「.........」ゴッ!

 

「がはぁぁぁぁぁ!!」

 

拳を背中から受けたブロリーはそのまま地面へと落下し大きなクレーターを作る。

 

「が、がはぁ!そ、そんなバカな!?」

 

「......貴様はもう終わりだブロリー。地獄に堕ちて自分の人生を悔やむんだな」

 

手を前にかざし気を貯める。そしてそれを見たブロリーは自分を奮い立たせるべく思いっきり叫びながら右手に気を貯める。

 

「ま、まだだ!まだ終わらんぞぉぉぉ!俺は伝説の超サイヤ人だ〜!!うぉぉぉぉぉぉ!!」

 

貯めた気を使って大量の気弾を放つブロリー。

だが身勝手の極意に覚醒した未來にそんなものは通じない。雨のように降り注ぐ気弾を無意識で避ける。たとえ目と鼻の先を気弾が通り過ぎようと未來の表情は変わらない。

 

「く、くそ〜〜〜!!!」

 

やけになったブロリーは右手に気を貯めギガンティックミーティアを繰り出すがいくら威力があろうと冷静さを欠いた攻撃程弱いものはない。

未來はブロリーの攻撃を半身ズラしただけで避け向かってくるブロリーの巨体に向け思いっきり拳を突き出した。

 

「はぁっ!!!」

 

「がっ!!!」

 

ブロリーは踏ん張ることでなんとか体をくの字に変えるのを防いだ。

 

「ぐふっ!た、大した威力だがいくら貴様でもこの距離では避けきれまい!死ねぇぇぇ!!」

 

手に気を纏わせ殴り掛かる。まだ未來は片手は伸ばしきった状態であるため通常ならば避けきれない。ならばどうするか?それはもちろん...

 

「......... 」ガシッ!

 

「な、何!?う、受け止めただと!?」

 

空いた左手でブロリーの拳を受け止める事だ。身勝手の極意は何も避けるだけが専売特許ではない。体が勝手に判断し行動する。要は体が避けきれないなら受け止めてしまえばいいと判断したという事だけなのだから。

そしてそのまま両手に気を貯めブロリーの腹と右腕に向かって放った。

 

「はぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

「がぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

攻撃を受けブロリーは地面を何回もバウンドして吹き飛んでいった。

それを見届けた未來だがその目の色が一瞬だけ黒目へと戻りすぐに瞳孔のある目へと戻る。その現象について思う事があると考えていると瓦礫の山が爆発し中からブロリーが出てきた。

 

「はぁぁぁ!!認めん!認めんぞ!!うぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

離れた位置にいる未來からでもブロリーの膨れ上がった気の大きさが見て取れた。

それを見て未來は腰に手を添え気を貯め、意識を攻撃のみに集中させる。

 

「か〜」

 

「これで今度こそ死ねぇぇ!!カカロットォォォォォォ!!!」

 

先に準備を終えたブロリーは体中に纏ったその気を四方八方無差別にレーザーのようにして広範囲の攻撃を放つ。どこへ行こうと必ず当ててやるという狙いを込めて。

そしてブロリーの狙い通りに攻撃は気を貯めている未來の元へと向かう。だが未來はかめはめ波を放たず身勝手の極意の力で攻撃をかいくぐりブロリーへと近づく。

 

「め〜」

 

「はぁぁぁ!!」

 

「は〜」

 

近づいてくる未來に危機感を覚えたのか先程以上に攻撃を加速させさらにブラスターシェルをも放つブロリー。だが未來は軽々とそれを避けた。

 

「おぁぁぁぁぁ!!」

 

「め〜」

 

「なぜだ!なぜ貴様がこれほどの力を持つ!この俺が宇宙最強なのだ!!うぉぉぉぉぉぉ!!」

 

レーザー攻撃ではもはや意味は無いと悟ったブロリーは自身が持つ全てのエネルギーを拳に宿し迎撃せんと未來へと突貫する。

 

「くたばれ〜!カカロットォォォ!!!」

 

まさに全身全霊を込めたブロリーの一撃は構えた状態のままの未來へと当たったかに見えた。

 

「な、なに!?ざ、残像...だと!?」

 

目の前にいた未來が透けていきブロリーの拳は空を切る。慌ててブロリーは本体の居所を探ろうとしたらそれは既に遅かった。

ブロリーを少し見上げる位置に現れた未來はずっと溜めていた気を解き放った。

 

「波ぁぁぁぁぁ!!!!」

 

極太い閃光がブロリーを包み込む。その大きさは親子3代かめはめ波をも遥かに凌ぐ。そしてその破壊力も然り。

そんなかめはめ波に呑み込まれればいかに伝説の超サイヤ人であろうともはや生存は不可能。

呑み込まれたブロリーは叫び声を上げることもできず細胞一つすら残さずに消滅した。

それを見届けた後身勝手の極意は解除され膝をつく形で座り込んでしまうが高らかに左腕を掲げ勝利の余韻を噛み締めた。

そのすぐ後ろに小さい黒い穴が出来ている事にも気づかずに…

 

【アースラ】

 

未來がブロリーを倒した瞬間管制室では歓声と事件の終わりを喜ぶ声が上がり盛り上がっていた。

魔導師組は元気玉の時の影響でほとんど動けないが顔は嬉しそうにしている。

そしてテスタロッサ家やアインハルトも安心しきった表情をしていた。

 

「良かった。未來さんが勝ちましたよお義母様!」

 

「そうね。本当に良かったわ」

 

「「さすがお姉ちゃん♪」」

 

アインハルト、プレシア、テスタロッサ姉妹が労いの言葉を放つ。それを見ていたリンディはすぐに未來を回収するよう指示を出そうとした瞬間はやての声が響き渡りその和気あいあいとした空気も瞬時に終わりを告げた。

 

「あ、あれはなんなんや?」

 

その言葉に全員が騒ぐのをやめて見る。するとそこには未來を中心に半径2メートル程の黒い円が広がり更にその中にいるものを逃がさないかのように薄い膜が展開されていた。

それだけならばある程度の魔導師でも突破するのは容易いだろう。

だがそのドーム状の物体の中では激しい重力が動きを鈍らせ、更に静電気のような物が発生し中にいる者の自由を阻む。

 

「あ、あれは一体何なの?…」

 

全員の想いを代表してリンディがつぶやく。そしてモニターを見ていたエイミィが慌ただしく声を荒らげる。

 

「艦長!今出現した物の影響で次元に乱れが生じています!そのせいで転移座標が定まらず未來さんを転移させる事ができません!」

 

「なんですって!?ならこの際座標の指定はいいわ!ランダム転移で未來さんを救出するのよ!」

 

「は、はい!」

 

リンディの指示でランダムでの転移魔法を起動するエイミィだったがその魔法陣が展開された瞬間魔法陣がぐにゃりと曲がり破壊された。

 

「そ、そんな!?ランダム転移すらできないなんて!」

 

「艦長!おそらくあの空間は時間のねじれが起きている可能性があります!魔法陣が破壊されたのはそのせいかと!」

 

「そんな!?なんとかできないのエイミィ!」

 

「無、無理です!転移魔法が使えない以上私たちには手の施しようがありません!」

 

「そ……そんな!」

 

「嘘でしょ!」

 

リンディはエイミィの報告に言葉を失い、フェイト、アリシアは絶望の表情になる。

そのあまりの事態にリンディはおろかアースラにいる全員が驚く。

そしてアースラでそのような会話が行われている間も時のねじれから抜け出そうともがいていた未來だったが遂に時間切れとなってしまった。

 

「(ぐ…く…くそ〜〜!!!!)」

 

「「お姉ちゃん!!」」

 

「未來!」

 

「未來さん!」

 

フェイト、アリシア、プレシア、アインハルトが必死に呼びかけるが返事する暇もなく時のねじれ内で黒い霧のような物が発生し未來を飲み込む。

そして時のねじれが収まったその場に未來の姿はなかった。

 

「え?」

 

「ウソ……でしょ?」

 

「「お…お姉ちゃん…?」」

 

「未…未來…さん?」

 

テスタロッサ家とアインハルトの言葉が静まり返ったアースラの管制室で響く。

そして端末を操作していたエイミィの声が響き渡る。

 

「…未來さんの生体反応…ありません。完全に消失しました」

 

その一言を聞いた瞬間アインハルトの脳裏にはある一つの記憶がフラッシュバックする。

それは彼女自身の記憶ではなく先祖のクラウスの記憶。

それを思い出した瞬間アインハルトは自身を抑えることができず悲鳴をあげた。

 

「イ…イヤァァァァァァァァァァ!!!」

 

脳裏に蘇るは死地へと向かうかつての最愛の人の背中。そしてそれをボロボロの状態で見送るしかなかった自分(クラウス)

あの時の思いを二度としないと心に決めトレーニングに打ち込んで力をつけたのに再び同じような展開を迎えてしまった。

自分の無力さに嘆き、怒り、悲しみを覚えアインハルトは泣き続け、アースラにいる面々はそんなアインハルトを黙って見続ける事しかできずしばらくアインハルトの啜り泣きだけが響き渡っていた。

 

 

事件が終わってからしばらく経ったアースラの管制室では事後の処理が終わりリンディが手を叩いて全員の注目を集めていた。

 

「皆さんこの度はお力をお貸しいただいてありがとうございました。これにて砕け得ぬ闇事件は解決です...未來さんの件を除いてはですが」

 

リンディの言葉を受け一部の人間の顔に影がさす。それはこの事件を引き起こすきっかけともなってしまったフローリアン姉妹である。

そんな姉妹を横目に見ながらプレシアはリンディへと話しかける。

 

「...提督さん。未來の行方は掴めないのかしら?」

 

「申し訳ありませんプレシアさん。尽力をつくして探したのですが唯一わかったことは地球にはいないという事だけでした。これからも調査は進めますが見つかる可能性は限りなく低いです」

 

結果を報告し頭を下げるリンディ。だがプレシア自身も未來の気を感じない時点で地球にいないことはわかりきっていた為「...そう」と呟いて黙ってしまう。

そしてそれを聞いていたアインハルトは黙ったまま怒りを隠すことなくフローリアン姉妹を睨みつけ、その視線を直に受けた姉妹は顔を俯かせてしまった。こうなってしまったのは自分達がこの時代に来たからなのだから無理もないが。

それを見ていたリンディはしょうがないとは思いつつもまだまだ話すことがあるので続けた。

 

「先程アミタさん達のお話をお聞きした所彼女達が未来に帰る際にヴィヴィオさんとアインハルトさんを送り届けるそうです。そしてそれをする際に未来への影響を考慮して記憶を封鎖する事になりました」

 

「お断りします」

 

その場にいる全員がしょうがないといった雰囲気を出した瞬間アインハルトの声が響き渡った。

 

「...アインハルトさん。理由をお聞きしても?」

 

「リンディさん。わざわざ説明する必要がありますか?未來さんを見つけていないのに帰る理由が私にはありません。ましてやそこの元凶(フローリアン姉妹)の都合になぜ私達まで巻き込まれなきゃならないのでしょうか?」

 

「未來さんの捜索は我々が責任を持って行います。ですから...」

 

「記憶を封鎖するのにどうやって捜索するというのですか?今は記憶があるからそういった事が言えます。ですが封鎖してしまえば覚えていたとしてもせいぜい夢と判断するのがオチです。そうなれば自然と捜索は打ち切りと言う事になるんじゃないんですか?」

 

その発言を聞いたアミタが会話に割り込む。

 

「現地の方の記憶封鎖をするのはあくまで時間移動という出来事が存在したという箇所だけです!なので未來さんの事を忘れることは...」

 

「現地の方は?...では私とヴィヴィオさんの場合はどうなるんですか?」

 

「...非常に申し上げにくいですがお2人の場合は時間移動はもちろんの事..過去に関する事...つまりなのはさん達の事に関する事を重点に封鎖する事になります。思い出したとしてもせいぜい不思議な夢を見たという認識になるでしょう。そうしなければ未来が変わってしまう可能性が高いのです」

 

「...ならなおさら未來さんを見つけるまで帰る訳には行きません。体力と魔力が回復次第私は捜索に当たります」

 

そう言って背を向けて歩き出すアインハルトの前にヴィヴィオが顔を俯かせながら立ち塞がった。

 

「...どうしましたか?ヴィヴィオさん。私はこれからやるべき事に備え休息を取らなければならないのですが」

 

「...アインハルトさん。貴方がそうしたい気持ちは痛いほどわかります。ですが既に未來さんが地球にいないとわかっている以上個人でどうこうできる範囲を超えているんです。今私達にできることは記憶封鎖を受けて元の時代に戻ることなんです!どうしてそれが分からないんですか!」

 

目に大粒の涙を流しながらアインハルトを見据えるヴィヴィオ。だがそんなヴィヴィオを見てもアインハルトは揺るがない。

 

「では逆にお聞きしましょうかヴィヴィオさん。今回未來さんに起こった事をなのはさんやフェイトさん、アリシアさんに置き換えた場合に先程の貴方のセリフを私が言ったとして納得できますか?」

 

「...っ!そ、それは!」

 

「無理でしょうね。貴方にとって3人とも大事なお母様ですから。つまりそういう事です。そんなに早く元の時代に戻りたいならヴィヴィオさんお1人でどうぞ。私は未來さんを見つけたら帰りますから」

 

「...すみませんがそれは無理です」

 

「...なぜですか?」

 

ヴィヴィオを黙らせ今度こそ休息を取ろうとしたアインハルトにアミタが声をかけた。

 

「私達が持つ渡航機はあと1回の使用が限界です。時間移動にはとてつもないエネルギーが必要ですしそれを貯めるとなると数年はかかります。なにより未来の人間が過去の時代に長く居続けると世界の修正力が働き最悪の場合......」

 

「...消滅すると?」

 

「正確には弾き飛ばされるといった所です。もちろんこれは最悪の場合なので必ずそうなると言う訳ではありません。ですがもしそうなったらもう私達でもどうする事もできません。私達が未來さんの捜索を行えない理由はそれなんです。お願いしますアインハルトさん。わかってください」

 

そう言ってアミタは頭を下げた。ふと下を見るとアミタの所に水滴が落ちていて彼女が泣いている事を示していた。

 

「...アインハルトさん」

 

「なんでしょうか?お義母様」

 

「わかってあげて頂戴。確かにアインハルトさんの言ってる事も気持ちも間違ってはいないわ。それでも受け入れざるを得ない事って言うのはどうしても出てきてしまう物なのよ。例えどれだけ納得できなくてもね。アミタさん達だってできるなら未來の捜索をしたいわ。でもそれができないから彼女達も自分の不甲斐なさで泣いているの」

 

「............」

 

「大丈夫...大丈夫よアインハルトさん。確かに今は未來の行方は分からない。だけど貴方の時代で未來が生きている事を私達は知っているの。例え記憶封鎖を受けたとしても事件の事は忘れないのだから必ずあの子を探し出すわ。だから色々と思う事はあるかもしれないけど後は私達に任せて貴方とヴィヴィオちゃんは自分の時代に戻りなさい」

 

「...お義母様。...わかりました...後は...お願いします」

 

そう言って渋々引き下がるアインハルトを尻目にリンディはプレシアへ念話を送る。

 

「(ありがとうございますプレシアさん。彼女を説得していただいて)」

 

「(気にする事はないわ。それと彼女の顔を見れば分かると思うけど私が言ったからあくまで渋々そう言っているだけであって本当は納得なんてしていないわ。それは間違えてはダメよ)」

 

「(...そうですね。わかりました)」

 

「(よろしい。なら後は任せるわ)」

 

「(はい。ありがとうございます)」

 

念話を切るとリンディはアミタへ視線を向ける。

 

「それではアミタさん。お願いします」

 

「...はい。それではアインハルトさんとヴィヴィオさん。こちらへ来てください」

 

その指示によって2人は姉妹達の元へ向かう。だがその場に未来組とは関係のない人物達がいるのを見てなのはが疑問の声を上げた。

 

「あれ?どうしてシュテルちゃん達がアミタさん達と?」

 

「...ナノハ。私達はこの方達の世界に行くことにしたのです」

 

「え?」

 

「ユーリの希望でな。ユーリ自身の力が向こうで役に立つと聞いて行くことを決めたのだ」

 

「まぁ僕は向こうに行けばダンジョンとか強いモンスターと戦えるって聞いたからなんだけどね」

 

「破壊する事しかできなかった私の力が役に立つならと思いまして」

 

「そ、そうなんだ...」

 

「寂しくなるね...」

 

シュテル達の言葉になのはとフェイトが悲しい声を上げる。

 

「ナノハ。そんな顔をしないでください。確かに簡単に会える訳ではありません。ですが永劫の別れではないのですからいずれ会えます」

 

「僕もオリジナルに会えなくなるのは寂しいけどこの世界は僕にはつまらないからね」

 

「そうだね。うん♪また会おうシュテル」

 

「あはは...レヴィらしいね」

 

いつか再会する事を願うシュテル、自分の欲望に忠実なレヴィに苦笑いするフェイトだがその場を和んだ空気が包む。

 

「...それじゃあそろそろやりましょうか」

 

キリエがそう言うと会話が途切れた。

 

「未来組と現地組の皆さんの記憶封鎖は完了しています。私達がいなくなった後にはもうその影響が表れますので最初はちょっと違和感があるとは思いますがご了承ください」

 

その連絡事項を伝え周りが頷く中ずっと俯き反応すら示さなかったアリシアが黙ってアミタとキリエに近づいた。

 

「...アミタさん。キリエさん。ちょっといい?」

 

「はい?何でしょうか?」

 

「何かしら?」

 

目線が違う為しゃがみこむ姉妹を確認したアリシアはキッ!と睨みつけると思いっきり2人の頬を引っ張たいた。

 

パァァァァァァァン!!パァァァァァァァン!

 

「「!?」」

 

まさかのビンタに姉妹は体を硬直させる。そしてそれは見ていた面々も同様。

そんな周りの視線をものともせずアリシアは2人をより睨んで口を開いた。

 

「...なんで私が叩いたか言うまでもないよね?」

 

「...はい」

 

「...わかっているわ」

 

「...ならもういいよ。さようなら」

そう言ってアリシアはプレシアの元へと戻り足にしがみつく。その肩は小刻みに震えていた。それを見たプレシアは何も言わずアリシアを抱きしめアミタとキリエは黙って叩かれた頬を抑えながらそれを見ていた。

そして...

 

「...お姉ちゃん」

 

「...ええ。わかってる。それでは皆さん本当にありがとうございました。そして未來さんのご家族の皆さん...本当に申し訳ありませんでした」

 

その言葉を最後にアミタ達は帰っていった。

彼女達がいなくなった直後に肩を震わせていたアリシアは声を上げて泣き始める。そしてそんな姉を見たフェイトは糸が切れたのかぐにゃりと顔を崩して泣き始めた。

そんな愛娘2人を見たプレシアは黙って抱きしめ2人はプレシアの肩に顔を埋めてしばらく泣き続けた。

 

 

Side アインハルト&ヴィヴィオ

 

「あ、アインハルトさ〜ん。おはようございま〜す♪」

 

「おはようございますヴィヴィオさん。今日も元気ですね」

 

「えへへ♪まぁそれが私の取り柄なんで。そう言えばなんですけど今日不思議な夢を見たんです」

 

「不思議な夢...ですか?」

 

「はい。といってもはっきり覚えてる訳じゃなくてなんていうかその...楽しかったような、色んな人に会ったような...そんな感じの夢なんです」

 

「...ヴィヴィオさん。そんな感じの夢なら私も見ましたよ」

 

「え!?そうなんですか!?」

 

「はい。ただ...私の場合はそれだけではなくて...なんていうか胸が締め付けられるような感じもあって」

 

「締め付けられる...ですか?」

 

「そうです。なぜそんな風に感じるのかはわかりませんが...」

 

「心当たりはないんですか?」

 

「はい。それとなぜか未來さんを見た瞬間涙が出てきて思わず抱きついてしまったんです。こんな事は今まで無かったんですが」

 

「ほへぇ〜。アインハルトさんがそう言うって不思議な事もあるんですね。にしても2人して似たような...」

 

「お〜い。ハル〜」

 

「あ、未來さん」

 

「未來さん。おはようございます」

 

「おはようヴィヴィオちゃん。今日も元気だね」

 

「えへへ〜ありがとうございます♪あ、そうだ未來さん。今日もし良かったら舞空術の特訓お願いできませんか?」

 

「あぁかまわないよ。っとそうだ。まず目的を果たさないとな。ハル。ほれ差し入れだ」

 

「あ、ありがとうございます未來さん。すみません。今朝は取り乱してしまって」

 

「気にすんな。あんな状態になるって事は相当な事があったんだろ?深くは聞かんさ。あ、あと来る途中でなのはとフェイトに会ってな。ヴィヴィオちゃんにこれを渡してくれって頼まれたよ」

 

「はい。...ありがとうございます」

 

「ありがとうございます♪あ、美味しそう。でも結構な量がありますね」

 

「後で合流するであろう人らの分まであるって言ってたからそれだと思うぞ。まぁなのはとフェイトの分もあるんだろうが」

 

「それにしてはなのはさんとフェイトさんが来ない理由がわかりませんが?」

 

「...察してやれハル。唯一言えることは2人とも目にハイライトがなかったってことだ」

 

「...あ、はい」

 

「...あははは」

 

苦笑いを浮かべる2人は心の中でその原因を作ったであろう人物たちへ黙祷を捧げた。

 

「まぁ差し入れを食べるのは全員が合流してからでいいだろう。それじゃあヴィヴィオちゃん。やるかい?」

 

「はい!お願いします!」

 

「未來さん。その後で私と手合わせお願いします」

 

「OK♪それじゃあやるぞ〜」

 

「は〜い♪」

 

「今日は勝ちますから」

 

和気藹々とした雰囲気を出しながら3人はトレーニングに入っていった。

 

Side end

 

Side アミタ

 

アインハルトさんとヴィヴィオさんを元の時代に送り届け私達はエルトリアに戻って来ました。

相変わらず死蝕は続いており大地は死に続けています。ですが現状を確認した王様とユーリがすぐさま紫天の書を開き使える魔法を協議し始め、シュテルは水場を蘇らせる為博士と話し合い、レヴィはエルトリアに着いた瞬間モンスターの気配を感じ取ったのか飛び立っていきました。

王様やシュテルがそれを見て何も言わなかったのでこういった事には慣れているのでしょう。だから私も気にしない事にしました。

各々がやる事を見出している中キリエの姿が見えない事に気付き探してみると丘の上で左頬を抑えながら大地を見下ろしているキリエを見つけました。

 

「どうしたの?キリエ。頬を抑えて」

 

「...お姉ちゃん。ただ痛いだけよ。あの子にビンタされた頬がね」

 

「...............」

 

「あれは効いたわ。...あんな重い一発は食らったことなんてないもの」

 

「その痛みが私達の罪の重さです。今の私達に出来ることはその痛みを忘れずエルトリアを救う事です」

 

「...わかってるわよ。あんな事をしてまでユーリ達を連れてきてエルトリアを救えませんでしたってなったら今度はあの子達に殺されちゃうわ。だから...今は前を向く。罪を懺悔するのは...全てを終えてからになっちゃうわね」

 

「その通りです。さぁ行きますよキリエ」

 

「了解よお姉ちゃん」

 

丘を降りながらどうしていくかを話し合う姉妹を柔らかな風が包んだ。

 

 

砕け得ぬ闇事件から一日経った今日は大晦日という事で街は年末特有の空気が広がる。そしてそれは魔導師組も例外ではない...と言いたいが今回ばかりは違う。

年末年始の休みに入った翠屋にはフェイトとアリシアを除く魔法関係者と高町家が勢揃いしていた。

 

「...あれからアースラのスタッフを総動員して未来さんを捜索しましたが他の次元世界にも反応は見られませんでした。本当に申し訳ありませんプレシアさん」

 

「何を言っているのよ提督さん。むしろたった1日で調べきってくれただけでもお礼を言いたいわ。お願いだから頭を下げないで」

 

「......はい」

 

言われるままリンディは頭を上げる。その目の下には隈が出来ていた為寝ずに捜索していたのが伺える。

 

「プレシアさん。フェイトちゃんとアリシアちゃんの様子は?」

 

「...フェイトはなんとか落ち着きを取り戻したわ。でもアリシアは目を覚ました後お正月の準備をし始めたの」

 

「え?準備を?」

 

「ええ。目を覚ましてすぐにそんな行動を取ったものだから理由を聞いてみたのよ。そしたら...」

 

【え?何言ってるのお母さん。今買い出しに行ってるお姉ちゃんが帰ってきたらお姉ちゃん特製の年越しそば作ってから食べてその後にカウントダウンするんだから今のうちにお正月の準備しちゃうんだよ♪】

 

「...って言われて私は言葉を失ったわ。いくら記憶封鎖を受けたと言っても未來がいなくなった瞬間の記憶は消えない。だからアリシアはこの辛すぎる現実から精神を保つ為に未來がいないのは出かけてるからと自分に言い聞かせているのよ...」

 

プレシアの話を聞いた面々は黙って顔を俯かせる。特に子を持つリンディ.士郎.桃子にとってはその時のプレシアの心境を想像するのは難しくはなかった。

そんな空気となり誰もが言葉を発せず静まり返った店内に来店を告げるベルがなった。

 

「あ、お母さんここにいたんだ。なかなか帰って来ないから心配して探しに来ちゃったよ。早く帰って準備しないとお姉ちゃん帰ってきちゃうよ」

 

その言葉を聞いた瞬間全員が息を飲んだ。だがアリシアはそんな様子には一切気づかずにプレシアの元へと近づくと手を取った。

 

「ほら早く帰ろうよお母さん。こうしてる間にもお姉ちゃんが「アリシアちゃん!いい加減にして!」...え?」

 

突然大きな声を上げたなのはにアリシアは目を向けた。そしてなのははアリシアの両肩を掴むと無理やり目を見させて話し始めた。

 

「いつまで現実から目を背けてるの!いくら早く帰っても未来さんは帰って来ないの!これ以上変なことを言ってプレシアさんを困らせ...【パァァァァァン!】...っ!」

 

なのはが真実を告げた瞬間アリシアは思いっきりなのはの頬を叩いていた。その目には怒りが宿っている。

 

「なのはちゃん。言っていい事と悪い事ってあるのがわからないのかな?いくらフェイトの友達でもこれ以上変な事言うなら...」

 

「変な事言ってるのは姉さんの方だよ!」

 

その言葉に全員が声のする方を見ると入口に大粒の涙を流しながらアリシアを睨みつけるフェイトがいた。

 

「な、なんで私がおかしいことになるの?私はちゃんとお姉ちゃんが買い物にいく所を見てるのに...」

 

「それは姉さんが思い込んでるだけなの!お姉ちゃんは行方不明なんだよ!いい加減...いい加減目を覚ましてよ!」

 

そう言うとフェイトはその場にしゃがみこんで泣き始めてしまった。そしてアリシアはそんな妹を見て動揺していた。

 

「ち、違うもん。思い込みなんかじゃない。私はきちんとお姉ちゃんが買い物に行く所を...」

 

「...アリシア」

 

「...お母さん。ねぇ!お母さんも見てるよね?お姉ちゃんが買い物に行く所を!」

 

「...残念ながら私が未來を最後に見たのは砕け得ぬ闇事件の時よ。それ以降はあの子は行方不明になってしまったのだから見れるはずがないわ」

 

「う、嘘だもん!お姉ちゃんが行方不明になんてなるわけない!ましてや...ましてや...家族皆でお正月を楽しもうねって言ってたお姉ちゃんがいなくなるわけ...いなくなるわけ...ぅぅぅ...うわぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

もう限界だった。目が覚めてから必死に現実から目を背けていたアリシアだったがなのはの叱責とフェイトの涙..そしてプレシアの辛そうな顔を見た瞬間認めざるを得なかった。もう2度と大切な家族と会えなくなるかもしれないという現実に...。

そしてアリシアはアースラの時とは比べ物にならない程の大声で泣き始める。

それを見た子供組は釣られるように泣き始め大人組は自分の子を抱きしめ慰めていた。

子供達が泣きやみそれぞれの家に戻る頃には日付が変わり新たな1年を迎えていた。

 

 

チュンチュン...チチチ...

 

鳥の囀りが聞こえてくるここはどこかの森の中。そしてその森の中央には広い空間が広がっている。

平和な空間を刻んでいるその場所に突然ドーム状の空間が現れそれが収まった頃には1人の少女が横たわっていた。

 

 

 

 




時のねじれ

鬼武者3というゲームに出てくるシステムで時代を問わずその中に入った人物を強制的に別の場所に飛ばす。
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