最近ポケモンGOをやり始めてそればっかやってました。
ここから古代ベルカ編になります。
楽しんで頂ければ幸いです。
29:覇王は覇王でも別人です
Side ???
「はっ...せい!」
とある城の中庭で1人の男性がトレーニングに励んでいた。彼が拳を放つ度に乾いた音が響き渡り額には汗が浮かんでいて彼が長時間トレーニングに打ち込んでいたことがよくわかる。
「ふぅ...こんなもんか」
そう言ってタオルで汗を拭こうと近くのベンチに向かうと既に先客がいた。
「おや、いつの間に来ていたのですか?オリヴィエ」
「結構前からですよクラウス。相変わらずトレーニングに励んでいると周りが見えなくなりますね」
「気が付きませんでした。というかその言葉は褒め言葉と受け取って置きましょう。それで貴方から見てどうでしたか?」
「そうですね。先日戦った時と比べたら良くはなってるかと思います。ただスピードがあまり変わっていないという印象も受けましたが」
「やはりそうですか。どうも最近スランプに陥っているようです。このままでは貴方に勝ち越されたままになってしまいますね」
「ふっ♪まだまだだね」
「...オーケイ。どうやら貴方とはここで決着をつけるべきのようです」
「受けて立ちましょうクラウス。また私の勝利で終わらせてあげます」
そう言って両者は構える。しばしの静寂の後1枚の葉が落ちた音が響いた瞬間2人は動いた。
「いきますよオリヴィエ!今日こそ引導を渡してあげます!」
「そうはいきませんよクラウス。私の常勝街道はまだまだ止まりません!」
動きだし今にもぶつかろうとした2人だったが突然立ち止まり一緒にある方角を見つめる。
「...クラウス。今の感じましたか?」
「むしろ今のに気づかない方がどうかしています。様子を見に行って見ましょうか?」
「そうしましょう。もし民に害を及ぼす可能性がある物なら取り除かなければなりませんし」
「そうですね。...誰か!誰かいるか?」
「はっ!陛下お呼びですか?」
「すぐに馬とある程度の騎士を集めろ!森へと向かうぞ!」
「は...はっ!」
命令を聞いた兵士はすぐさま走り出しものの数分で準備を終えた。
そしてオリヴィエとクラウスは準備された馬に跨り猛スピードで森へと向かった。
「...確かこの辺りのはずです」
「ええ。間違いありません」
「よし。騎士達よ。ここら一帯を隈無く調べろ。何か見つけたら報告を!」
「はっ!」
命令を合図に散らばっていく騎士達を見送ったクラウス達は報告を待つことにした。そして5分も経たない内に1人の騎士が慌ててクラウス達に近寄る。
「へ、陛下!ご報告いたします。ここから少し歩いた先の広場で1人の少女が倒れております」
「なんだと!?すぐに案内を頼む」
「はっ!こちらです」
騎士の後について行くと広場に出た。そしてその中央部分に報告通り人が倒れていた。
「あちらになります」
「ありがとう。...さて」
馬を降りて近づくオリヴィエとクラウス。そして...
「...これは!」
「...ひどい」
倒れている少女の状態を見た2人は顔をしからめる。それ程までにひどい状態だった。
「クラウス。この子の状態はもしかして...」
「もしかしなくてもこれは明らかに戦闘による怪我ですね。しかも相手はこの子よりも格上だったのでしょう。体に無理をした形跡もあります」
「生きているのですか?」
「生きてはいます。ただ気を失っているだけですね。城に連れて行って治療すれば大丈夫かと」
「そうですか。良かったです」
「では行きましょうオリヴィエ。...ん?」
そう言ってクラウスは兵士へと視線を向けると兵士はすぐさま少女を運び出す準備に取り掛かった。それを確認し自身も馬に戻ろうかとした時に何かを見つけた。
「これは時計...ですか?見たこともない感じのデザインですね。おそらくあの子の持ち物で間違いないでしょう。これも持っていきますか」
「そうですね。というかクラウス。その時計の左上のスイッチらしき部分が光ってませんか?」
「あ、本当ですね。では押しましょう」
「いや、そこは警戒すべきところでしょう!なんであっさり押してるんですか!」
ポチッとなというのが聞こえてきそうな感じでスイッチを押すクラウスにオリヴィエのツッコミが入る。
「いいですかオリヴィエ?男というのはよく分からない物でもとりあえず押してみたくなる生き物なのです」
「真顔で言うことですか!何かあったらどうす......」
言葉を詰まらせたオリヴィエは視線をクラウスから外す。それに釣られてクラウスも視線を向けると時計から空中ディスプレイが展開されそこには先程自分達が見つけた少女と同じ格好をした金髪の少女と大柄の金髪の男が戦っている映像が映し出されていた。
そして映像が進むと瓦礫の中から先程自分達が見た少女が出てきた。
「...やはりあの者の怪我はこれが原因でしたか」
「...そのようですね。直接対峙していなくともこの大柄の男性の強さがわかります」
それだけ言うと2人は再び映像へと視線を戻す。見るからに劣勢なのは明らかだった。固唾を飲んで戦況を見守っていると突然別の人物が現れた。
「な、なんですか今のは!?突然人が現れましたよ!」
「わ、わかりませんよ!こんな魔法見たことも聞いた...こと...も」
クラウス自身も今の現象には驚いたが現れた人物の顔...正確には目を見た瞬間時が止まったかのような感覚を味わった。
「こ、この目は...」
「クラウスと...同じ...」
その衝撃は凄まじくその後の映像も2人の頭にはたった一部を除き入ってこなかった。唯一入ってきたのはその人物の名前のみ。
「アインハルト...それがクラウスと同じ目を持つ者の名前ですか」
「...城に戻りましょうオリヴィエ。話はあの子が目を覚ましてからです」
「...そうですね」
今まで見たこともない顔をしながら帰還を提案してきたクラウスを見たオリヴィエはそれに頷き待機していた騎士達と共に城へと帰還した。
Side end
Side 未來
「...知らない天井だ」
目を覚ました未來は人生で1度は言ってみたいかもしれないセリフを吐きだした。そしてゆっくりと身を起こすと服は変わっているもののブロリーとの死闘でできた傷の所には包帯が巻かれている。
「...誰かが治療してくれたのか。にしてもここはどこだ?海鳴の病院でもないしアースラの中でもない...「目が覚めたようだね」え?」
声が聞こえてきた方を向きその場にいる人物達を見て未來は驚きを隠せなかった。
「な...な...な...」
混乱する
「...未來といったね。話があるから着いてきてもらいたい」
「!?...なぜ名前を?」
「着いてきて貰えば教えますよ。さぁ行きましょうか」
オリヴィエのその一言で未來はベッドから降りて2人の後に続く。
案内の元歩いていると一際豪華な扉の前で2人は止まった。
「さぁ、ここが私の自室だ。入ってくれ」
「お、お邪魔します」
部屋に入り見渡すと机の上に見覚えがある物を見つけ慌てて未來は駆け寄る。
「バオウ!無事だったか!」
『............』
「バオウ?」
『済まねえ相棒。俺としたことがミスをしちまった』
「ミス?こんな事になったのはバオウのせいじゃないだろう」
『...やつとの戦いの映像を2人に見せちまったんだ』
「何!?」
「...話を続けたいのはわかるがこちらの話も聞いてもらいたい」
その一言で未來はクラウスを見つめる。
「あの反応からするに既に知っているようだが自己紹介といこうか。私はクラウス・G・S・インクヴァルド。ここシュトゥラ国の王だ。そしてこっちが...」
「私はオリヴィエ・ゼーゲブレヒト。聖王家の者ですが今はここシュトゥラに留学で来ています」
「...芹沢 未來です」
握手を2人と交わす。
「さて、早速だがあの映像を見て君に起こった出来事は大まかには把握している。君がベルカの人間では無い事もな。それらを踏まえた上でいくつか質問があるから答えてほしい」
「わかりました。答えられる範囲でになりますが」
「かまわん。まずは...」
何個かの質疑応答を繰り返すクラウスと未來。そしてオリヴィエはそんな様子を黙って見守っていた。
「ふむ...なるほど。時のねじれという物に巻き込まれてこの時代へ...それに気と呼ばれるエネルギーに君がなっていた超サイヤ人という物も非常に興味深い」
「...あまり驚かないんですね」
「まぁ私達もいろんな出来事を経験してきているからな。ましてや話してる間に一切目線を外さなかった人物が嘘を言っているとも思わん。それぐらいの人を見る目は持っているつもりだ」
「...ありがとうございます」
「礼を言われるまでもない。さて...どうせならこの後にでも手合わせをしたい所だが君のその怪我では無理だろう。だから部屋を用意するのでそこで養生してくれ」
「あ、怪我に関しては心配無用です」
「何?どういうことだ?」
「こういうことです。バオウ」
『あいよ』
バオウに呼びかけると待機状態だった腕時計から魔本へと変化させる。
「「え?」」
「...ジオルク」
呪文を唱えると未來の全身が淡く光り一瞬の内に怪我を回復させた。
「「...............」」
「っとまぁこんな感じですぐに怪我は治ります」
「いや、そんなあっけらかんと言われても私達には理解ができないのだが...」
「ん〜まぁ俺専用の治癒魔法と解釈してくださればわかりやすいと思います」
「そうか。というかその魔法は医療に喧嘩を売っているな。一瞬で怪我が完治とか医者が見たら泣くぞ」
「あはは...」
「まぁいい。とにかく怪我が治ったのなら軽く手合わせをしてもらえるかな?」
「大丈夫です」
「では移動しようか。あ、その前にどのみち君の部屋を手配しなければな。手合わせはそれが終わってからにしよう」
「あ、はい。よろしくお願いします」
「うむ。では少し待っていてくれ」
未來の返事を聞いたクラウスは部屋を出ていき未來とオリヴィエが残された。
「大変な事に巻き込まれてしまいましたね未來さん」
「そうですね。時のねじれもそうですがまさか過去に来ることになるとは思いもしませんでした」
「転移魔法とかで帰るのは厳しいのですか?」
「既にバオウに試してもらいましたが無理でした。帰るにはまた時のねじれを使うしかないと思います」
「そうですか。となると時のねじれの発生条件とかを調べるしか方法がないと?」
「調べられれば...の話ですけどね。実際に体験したのは
初めてなんでどこから手をつければいいやら」
「目先真っ暗ってやつですね。私達もサポートしますから頑張りましょね」
「はい。ありがとうございます」
「お礼は帰れるようになってから聞きますよ...っとそうでした。この際なので聞いておきたいのですが...」
「はい?なんでしょう?」
「アインハルトって子はクラウスの子孫なんですよね?」
「映像見られちゃってるんで誤魔化しようがないから答えますがそうです」
「それなら私と同じ目を持つ子孫もいますか?具体的にはそう...アインハルトさんのご兄妹とか」
「!?」
オリヴィエのその発言を聞いた未來は体を強ばらせた。そしてオリヴィエもその反応がどういう意味を示しているかわからない程鈍感ではない。
「...いないんですね。...私の子孫は」
「...はい。そしてもっと言うとアインハルトにはオリヴィエさんの血は流れていないんです」
「そう...ですか。ちなみになぜですか?」
「それをお答えする前にお聞きしたいのですがベルカは戦争をしていますか?」
「数年前までは起きていましたが今は平和ですよ。まぁ一時的なものでしょうが」
「その平和は今は各国が兵器開発に勤しんでいるからそうなっているだけとか?」
「そこまで知っているんですね。その通りです」
「なるほど」フムフム
「......あの、先程の質問の答えを聞かせていただけますか?」
「おっと、失礼しました。質問の答えですがオリヴィエさんは再び起こった戦争を終わらせる為に聖王のゆりかごを起動し戦争を集結させる代わりにその生涯を閉じたんです。だからオリヴィエさんには子孫はおろか子供すらいません」
「..................」
「信じられませんか?」
「いいえ信じます。ゆりかごの事まで知っているなら疑いようがないですからね。にしてもそうですか。私はもう時期死ぬんですね。もしかしたらクラウスとならと思っていたのですが人生そう甘くはありませんか」
そういうとオリヴィエは顔を俯かせた。後に聖王と呼ばれる王であってももうすぐ自分が死ぬという未来を聞かされればそのショックも大きい。心にほのかな希望を持っていたのならなおさらだ。
そんなオリヴィエの心境を悟って彼女が落ち着くのを待っているとクラウスが戻ってきた。
「待たせたね。用意が済んだから着いてきて...ってオリヴィエどうされたのですか?顔が真っ青ですよ」
「...なんでもありませんよクラウス。さぁ行きましょう」
「なんでもないってレベルではありませんよ。手合わせは明日にでも延期しますから自室に戻って休んで...」
「なんでもありません!」
「.........わかりました。それでは行きましょう」
オリヴィエの反応に何かあったのだと判断したクラウスは説得をやめ手合わせをする為に3人で中庭に向け移動を開始した。
☆
中庭に到着した一行は顔色が優れないオリヴィエをベンチに座らせ審判役をお願いした後少し離れた位置でクラウスと未來が対峙する。
「さて...治癒魔法で怪我を治したばかりとはいえ全力でやらせてもらうよ」
「ええ。望むところです」
お互いに構えると先程までほのぼのとしていた中庭の空気が静まり返る。
「...お2人とも準備はよろしいですか?それでは始めてください」
両者が同時に動く。
「覇王...断空拳!」
「ふっ!」
開始早々の断空拳を未來は手の甲で受け止める。軽々と受け止めているがその衝撃波が未來の後ろの地面を抉る。だが未來はそんな事に気を止めることもなく受け止めたクラウスの右手を振り払って自身の右手に魔力を込めて魔力弾を放つ。
「ぐっ!!」
クラウスはその魔力弾の威力に少し後退させられるが持ちこたえて拳を振るう。
「............」
その動きを見た未來はその拳を振り払うのではなく掴み取り一本背負いの要領でクラウスを空中へぶん投げた。
「何ぃぃぃぃぃぃ!!!」
「えぇぇぇぇぇ!クラウス!!」
まさかの展開に2人は驚きの声をあげるが未來は舞空術を使わずにジャンプでクラウスと同じ高さまで上がる。
「くっ!空破断!」
「桜花崩拳!」
2人の拳がぶつかりあうが舞空術を使うことができないクラウスは重力に従って落ちながらの攻撃の為従来の威力には及ばすあっさりと力負けし顔面に攻撃を受けた。
「ぷげら!!」
殴り飛ばされたクラウスは地面を滑っていき城の壁に当たってようやく止まった。
「いっつつ...」
「大丈夫ですか?クラウスさん」
「これくらいなんともないさ。それに全力でいかせてもらうとこちらから言ったのだから気にしないでくれ」
「そうですか」
「あぁ。にしてもさっきのが君が言っていた舞空術かい?空を飛べるというのを間近で見るとすごいな」
「え?さっきのはただジャンプしただけですけど?」
「......君は本当に人間か?あの高さまで大人1人をぶん投げる腕力といい、あの高さまであがるジャンプ力といい、とても信じられんのだが」
「人間ですよ失礼な。それにあれくらい鍛錬を積めばクラウスさんもできます」
「いや、私を人外みたいに扱わないでくれ。私は一般人なので君と同じようになれるとは思わん」
「俺だって一般人ですよ!それに俺だって最初からあんな事が出来たわけじゃありません。鍛錬の成果なんですから結果は保証します」
「......本当に?私もあんな事ができるようになるのか?空を飛んだり手から魔力弾とは違うやつを放ったり?」
「ええ。可能です」
「なら超サイヤ人にも!?」
「それは無理です。超サイヤ人はサイヤ人の血を引いていないとなれません」
「そ...そうか。「ですが」...なんだい?」
「超サイヤ人は無理でも鍛えればクラウスさんの実力を何倍にも強くすることはできます」
「...面白い。ならとことん鍛えてもらおうじゃないか。未來...超サイヤ人になってくれ」
「本気ですか?超サイヤ人は通常の50倍にも力を上げます。いくらクラウスさんでもまともに受ければ軽い怪我ではすみませんよ」
「無論覚悟の上だ」
「ならこれ以上は言いません。ふぅ〜...フッ!」
クラウスの目を見た未來は本気であると感じ取り超サイヤ人へと変身する。
「これが...超サイヤ人。間近で見るとものすごい威圧感だ...」
初めて見る超サイヤ人にクラウスは息を飲まれるが未來はそれには返事を返さず構える。
「...いつでもどうぞ」
「では...行かせてもらう!はぁぁぁぁ!!!」
クラウスは自身の力を右手に宿す。
「覇王......断空拳!!」
「雷鳳拳!」
激しい衝突音が響き渡るとその衝撃で砂埃が舞う。審判役を務めていたオリヴィエが砂埃が晴れてから視線を向けると立っていたのは未來だけだった。
「あれ?未來さん。クラウスは?」
「あそこです」
「あそこ?...ってええ!?クラウス!大丈夫ですか!?壁にめり込んでますよ!」
慌てて近寄り呼びかけるがクラウスは気を失っているのか反応を返さない。
「大丈夫ですよオリヴィエさん。手加減はしたので死んではいませんし明日には目は覚まします」
「え?あれで手加減したんですか?少なくともクラウスの一撃は本気でしたよ」
「そりゃ超サイヤ人にならなければ俺も本気でやってましたよ。でも超サイヤ人での雷鳳拳を本気でやったらクラウスさんは例えガードしたとしても腕は吹っ飛んでたでしょうね。いや、むしろミンチになってたのかな?」
「何さらっと怖いこと言ってるんですか!!とにかくすぐに医務室に運びますよ!」
「わかりました」
大慌てで壁にめり込んだクラウスを医務室に運び出すオリヴィエと未來。
運び込まれてきたクラウスを見た医者は大慌てで治療に望むのだった。
☆
クラウスを医者に預けた2人は再び中庭へと戻ってきた。
「まったく!未來さんはもう少し手加減というものを学んでください!あのクラウスだって一応人間なんですから」
「なんかさりげなくクラウスさんをディスってませんか?それにさっきも言いましたが俺も人間で...」
「な・ん・で・す・か?」
「いえ...なんでもありません」
笑顔なのにあまりにもな迫力に未來はすぐに視線を下げてしまう。
「まぁ...起きてしまった事をこれ以上言ってもしょうがないのでこれで終わりますが次はありませんからね」
「...はい。気をつけます」
「よろしい。あ、そうでした。クラウスとの試合を見てお聞きしたいことがあるのですが」
「なんですか?」
「未來さんは鍛錬を積めば舞空術とか気功波?をクラウスでもできるようになると言っていましたがそれは私にも当てはまりますか?」
「えぇ。それはもちろん。でもオリヴィエさんの場合はある意味別の問題が出てきます」
「別の問題?」
「はい。その問題というのが...気を悪くさせてしまったら申し訳ないのですが...」
「...この義手ですか」
「そうです。気はいわゆる体内エネルギーでこれは気を循環させて放出すれば舞空術を使う事もできるし、体の一部分に込めれば攻撃力や防御力を上げたりできます。
そして気功波は手に気を集めることで撃てるようになるので義手のような無機物には通す事ができないのです」
「そう...ですか。残念ですが気功波に関しては諦めるしかありませんか」
「いえ、諦める必要はないですよ」
「え?で、でも先程のお話だとそういう風にしか捉えられませんが?」
「まぁまぁ話はまだ終わってませんから。そこでオリヴィエさんに提案があるんですよ」
「提案?」
「えぇ。オリヴィエさんの腕を治すんです」
「......え?な、何を言ってるんですか?私の腕は幼少の頃にもう...」
「もちろん知ってますよ。ですが俺は本気で言ってます。それをする事ができる手段が俺にはあるんです」
「.........ちなみに聞きますがデメリットは?」
「腕を思うように動かせるまでリハビリをしなければならない点、そして施術中を含めリハビリ中もとてつもない痛みが続くことです。ちなみにどれくらいの期間かはオリヴィエさんの気持ち次第です」
「..................」
「不安ですか?」
「それもありますがその...本当に腕が元に戻るのかなって思って」
「それは約束します。...どうしますか?」
問いかけるとオリヴィエは俯き義手を自身の前に持ってきて見つめた後クラウスがいる方角を見つめる。
数十秒の沈黙の後のちにオリヴィエは未來を見据えて口を開いた。
「...お願いします。例えどのような苦痛が待っていようと耐えてみせます!」
「よし!良い返事です。それじゃあやる場所ですが...オリヴィエさんの部屋でいいですか?」
「は、はい。大丈夫です」
「それでは案内をお願いします」
「わ、わかりました。こっちです」
☆
オリヴィエを後に続いていくとクラウスの自室からそんな離れていない部屋へと案内された。
「ここが私の部屋です。どうぞ」
「お邪魔します」
オリヴィエの部屋はベッドと女性らしいタンス以外に物がない質素な感じであった。ただでさえ広い部屋なのに家具がそれだけとはあまりにも寂しさを感じた。
「キョロキョロしてどうしたんですか?」
「いえ...なんか部屋の広さの割には物が無いなと」
「それは当然でしょう。私がシュトゥラに来たのはあくまで留学なんですから」
「それにしたってドレッサーすらないのはきつくないですか?メイクはどこでしてるんですか?」
「ドレッサー?メイク?すみません。一体何の話をしてるんですか?」
「...いえ、なんでもないです。忘れてください」
スッピンでこんなに綺麗なのかよと未來は心の中で思った。
「はぁ...わかりました。それで?ここでどうするんです?」
「腕を露出させた服に着替えてから義手を外してベッドに横になってください」
「わかりました」
返事をしたオリヴィエは着ていたドレスを脱ぎ始めるとキャミソールみたいな部屋着へと着替えて義手を外し側の机に置いた後ベッドに横になる。
「これでいいですか?」
「大丈夫です。それでは始めましょうか。バオウ、結界を頼む」
『了解』
封鎖結界が展開されるのを確認すると未來は掌を合わせ自身の転生特典を起動させる。はたから見たら錬金術師である。
「オリヴィエさん!自分の腕をイメージしてください!」
「は、はい!」
「行きます!はぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「理想の腕...理想の腕...え?なんか光の粒子が両腕に集まって...いっ!あぁぁぁぁぁぁ!痛い痛い痛い痛い!あぁぁぁぁぁ!!」
未來が特典を使用するとオリヴィエの腕に光が集まりその光が彼女がイメージした腕の形へと変化を始める。だがそれと同時に彼女をとてつもない激痛が襲う。
「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
出会ってからの彼女のイメージとはかけ離れた程の悲鳴が部屋に響き渡る。もし結界がなければ城中の騎士達が驚いて飛んでくる程の悲鳴だ。
まぁなかったとしても未來が部屋には入れないだろうが。
☆
オリヴィエの治療が始まってから約1時間が過ぎた。部屋の中では相変わらず未來が特典を使い続けており、オリヴィエは気を失っていた。まぁ覚悟していたとはいえ絶大な痛みを味わえば気を失っても仕方がないだろう。
「...っつ!はぁ...はぁ...はぁ...はぁ...」
息を吐き出し肩を上下させる未來の額にはものすごい汗が湧き出ていた。やはりどれだけ鍛えようとも転生特典を使うデメリットは解消できないのだろう。でも、今の未來にとってはそれはどうでもいい事だった。
未來の目の前には1時間前までは義手を付けなければ何も無かった所に白く美しく輝く手が存在していた。
「はぁ...はぁ...終わったな。サンキューバオウ。結界解除していいぞ」
『それはわかったが大丈夫なのか?もう立ってるのがやっとじゃないのか?』
「大丈夫じゃない。だからなバオウ...後は任せた」
『ちょっ!相棒〜!!!』
バタンと床に倒れ込み未來は眠りについた。
【翌日】
オリヴィエの腕を治したあと力の使いすぎで眠ってしまった俺は目覚めると与えてもらった部屋で横になっていた。
「ん?...知っている天井だ」
『まだそのネタやんのか相棒』
「わりかし気にいってるからな。それでバオウ。あれからどうなった?」
『まったく...あれから朝まで誰もこなくてオリヴィエを起こしにきた侍女がオリヴィエの腕を見て悲鳴をあげて騎士達がすっ飛んできたんだ。その悲鳴でオリヴィエは起きたが相棒は見事に爆睡をこいてたので俺とオリヴィエの2人で事情を説明して相棒をここに寝かせた後オリヴィエは精密検査を受けに行ったよ。ちなみにクラウスはまだ目覚めてない』
「なるほどな。ってかまだクラウス起きてないの?...ちと力込めすぎちまったかな?」
『まぁ大丈夫じゃねえの?むしろあれくらい見切れるようになれば歴史通りにはならんだろ』
「なるほどな。じゃあ今後もビシバシ吹っ飛ばすか」
『...やめとけ。本当に死んじまうから』
その後もバオウと話していると突然廊下からドドドドドという音が響いてきた。
「ん?なんのおt...「未來はいるか!?」あ、クラウスさん。おはようございます」
「おはよう...じゃない!君はオリヴィエに何をしたんだ!」
「何って...腕を治しただけですけど」
「それは見ればわかる!僕が聞きたいのはどうやって...「まぁまぁクラウス。いいじゃないですか」...オリヴィエ?」
2人してその方向を見るとオリヴィエが戻ってきていた。その服装は煌びやかなワンピースを纏っていて彼女の雰囲気と合って非常に似合っている。
未來は心の中で似合うなと思っているとオリヴィエは左手を伸ばしクラウスの頬に触れる。
「過程はどうあれ私はようやく貴方の温かさを感じる事ができたんです。義手を付けていた頃には願っても叶わなかった事ができる...それだけで私は嬉しいのです」
「...わかりました。これ以上の詮索はやめましょう。未來、いきなり怒鳴り込んですまなかった」
冷静さを取り戻したクラウスは未來に頭を下げる。
「別にそんな深々と頭を下げられる必要はないですよクラウスさん。ところでオリヴィエさん、検査の結果は?」
「正確な結果はまだ出ていませんがお医者様が言うには未來さんの言っていた通りリハビリは必要との事でした。あと鍛錬をしばらく禁止にされましたがどのみちこの痛みでは無理なので問題はありません」
「なるほど。後遺症もなく無事に出来て良かったです」
「はい♪これも未來さんのお陰です。本当にありがとうございました」
オリヴィエの満面の笑顔に照れくさくなりそっぽを向く。そしてそんな反応をクラウスとオリヴィエは微笑ましげに見るという穏やかな空気が3人を包んだ。