覇王とイチャイチャしたい   作:初音 茜

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お久しぶりです。

ようやく形になったかなというレベルになりましたので投稿致します。
楽しんで頂ければ幸いです。

それではどうぞ


30:不穏な影

ベルカに来て3ヶ月が過ぎた。

腕を治して1ヶ月程リハビリを続けていたオリヴィエも医者から完治のお墨付きを貰ってすぐに遅れを取り戻す為に鍛錬に打ち込み始め、今は舞空術をマスターするべくクラウスと一緒に目を閉じて己の中にある気を探る事に集中していた。かれこれ1時間は2人とも微動だにせず同じ姿勢を保っていると突然目を大きく開けた。

 

「これだ!」

 

「これですね!」

 

少しだが2人を中心に風が起こった。それがちゃんと己の気を見つけた証拠である。

 

「さすがですねオリヴィエさん、クラウスさん。こんなに早く自身の気を見つけるとは思いませんでしたよ」

 

「いや、これでもかなり苦戦したぞ。なんせ知らないエネルギーだから魔力とは違う感じとわかっていても己の中を探るなんてやったことないからな」

 

「私もです。でも1度認識してしまうとわかりますね」

 

「一言で気と言っても人それぞれによって性質は変わってきます。だから習得すれば他人の位置を探る事もできるんです」

 

「なるほどな」

 

「さて…気を見つける事が出来たので早速それを具現化できるようにしましょうか」

 

「「具現化?」」

 

「具現化は簡単に言えば気の放出を肉眼で見れる様にする事です。俺やあの大男の体の周りに白いオーラ…あの時は金のオーラでしたがそれが出ていたのを見たと思いますが?」

 

「なるほどあれが具現化か。それができないと舞空術は習得できないと?」

 

「えぇ。前にも言った通り舞空術は全身に気をコントロールさせて飛ぶ技です。まずはこれができないと話になりません。ですがこれがなかなか難しくてそう簡単には…「ふっ!」え?」

 

声のする方を見るとオリヴィエが気を具現化させていた。そのあまりにも早すぎる習得に未來もクラウスも口を大きく開けている。

 

「オ、オリヴィエ…いくらなんでも早すぎませんか?」

 

なんとか復活したクラウスがそう問いかけるが…

 

「そうですか?結構意識してやると簡単でしたよ」

 

あっけらかんと首を傾げながら言ってくるオリヴィエに未來は内心泣きそうになった。自分はそれをするだけでもかなり時間がかかったというのに。

そんな哀愁を漂わせているのに気づいたオリヴィエはなんとか立ち直らせようと未來を励ますのだった。

 

 

オリヴィエが具現化に成功してから数時間が経った。空はすっかり夕暮れとなり訓練を終えた騎士達もちらほらと見え始める。

あれからそう時間もかからずにクラウスも具現化に成功し今となっては2人ともおぼつかない感じではあるが空を飛んでいた。

 

「っとと。やはり少しでも気を抜くと制御が難しくなりますね」

 

「そうですね。でも私はとても嬉しいですよクラウス。生身で空を飛べるなんて思ってもいませんでした」

 

空中で良い雰囲気を作り出す2人を尻目に未來は自身よりも早く舞空術を会得してしまった2人に対していじけてしまい中庭の片隅でのの字を書いているのだった。

 

 

時は流れて3年。

あれから気を習得する為に未來に師事していたオリヴィエとクラウスは完全にその力は我が物にする事に成功した。そして同時にクラウスから覇王流を教わっていた未來も無事に免許皆伝を言い渡され最近は3人で組手を行うのが日課だったりする。

そして未來はオリヴィエ達の紹介で新たな出会いを果たす。

1人目はオリヴィエの義手を作りジークリンデ・エレミアの先祖でもあるヴィルフリッド・エレミア。2人目はファビア・グロゼルグの先祖のソフィア・グロゼルグだ。

ヴィルフリッドは初めて会った瞬間いきなり未來に抱きつき泣きながらオリヴィエの腕を治してくれた事にひたすら感謝の言葉を述べていた。

一方、ソフィア・グロゼルグは彼女の一族が住む森にて会ったのだがいきなり二人っきりで話したいと言われ場所を移すと知っている事を全て話してほしいと言われ話していいのか迷ったが彼女の真剣な目を見て自身が知る彼女達の結末を話した。

話し終えるとソフィアは「そう…わかった。ありがとう」とだけ話してクラウス達の元に戻りその後は皆でたわいもない話をして別れた。

 

そんな感じである意味充実した日々を過ごす未來だったが変化は突然訪れた。

 

「ふんふんふ〜ん♪」

 

『ご機嫌だな相棒』

 

「まあな〜。今日の組手はクラウスに圧勝だったじゃん。超サイヤ人は無しなのはいつも通りだけど気を習得してからのクラウスにあそこまで圧勝できたのは久しぶりだしな」

 

『…てか最近思うんだがクラウスと相棒は戦う時組手というよりガチで戦ってる様に見えるんだが俺の気のせいか?』

 

「お?よく気づいたなバオウ。クラウスに覇王流を教わり始めた途端あいつは俺が気の修行で無茶ぶりをすると自分が師匠になった瞬間仕返しをしてくるから俺はその鬱憤を組手で発散してるんだよ。まぁそれは向こうも同じだろうがな」

 

『なんというマッチポンプ!』

 

「まぁまぁ。そのお陰でお互いに実力は上がってるんだからwin-winだって。ほらよく言うじゃん【やられたらやり返す…倍返しだ!】って」

 

『…そうかい』

 

名言を言ったにも関わらずバオウの反応に拍子抜けしながら自分の部屋に歩いているといつも中庭の修理をしている騎士が慌ただしくこちらに向かってきていた。

 

「あ、ウィルガさん。こんにちは」

 

「あ、未、未來殿!丁度よかった!私と一緒に来てください!」

 

「なんかあったんですか?」

 

「なんかどころじゃありません!炎皇家がやられました!」

 

「なんだって!?」

 

未來は思わず驚いた。3年近く暮らしていれば否が応にもほかの王家の情報は耳に入ってくる。ましてや炎皇家はクラウス達と交流がある王家なのだ。当然未來も彼らと面識はある。

 

「そんな馬鹿な!?炎皇さんがやられるわけが!」

 

「これは確かな情報です!昨夜何者かに襲われ一家断絶に陥ってしまったようです」

 

「そんな!襲撃者の情報は?」

 

「もちろんあります。それらの報告も兼ねて陛下の元に向かうので未來殿も着いてきてください!」

 

「わかりました!」

 

騎士と並走して来た道を引き返す。そしてそのままクラウスの部屋へとなだれ込んだ。

中に入るとシャワーを浴びた後なのか上半身裸で首にタオルをかけているクラウスがいた。

 

「陛下!突然の無礼申し訳ありません。重大なご報告がございます!」

 

「かまわない。一体どうしたんだ?」

 

重大な報告と聞いた瞬間クラウスの顔は真面目になったがその格好でそんな顔をされても違和感しかなく笑いそうになってしまった。まぁさすがにこの空気でそんな馬鹿な事はしないが。

 

「昨夜炎皇家が襲撃されたとの情報が入ってまいりました!情報によりますと襲撃者はピンク色の髪をした騎士との事で」

 

「なんだって!?現炎皇は無事なのか!?」

 

「いえ、残念ですが一家断絶という報告が…」

 

「そんな…馬鹿な…」

 

頭を抱えて立ちくらむクラウスだが未來はそれどころでは無かった。何よりその襲撃者に身に覚えがありすぎるのだ。

 

「…ウィルガさん。その襲撃者は炎の変換資質持ちでしたか?」

 

「え、ええその通りです。よくご存知で」

 

「…そうですか。またあいつか」

 

「知っているのか未來!?現炎皇を倒した相手を!」

 

「…ああ。その騎士の名はシグナム。闇の書の守護騎士の1人で俺の時代でも闇の書が復活しその時に面識があるんだ」

 

実際は面識だけでは済まないのだがそこは割愛する。そして俺の説明を受けてクラウスは更に頭を抱えた。

 

「闇の書だと!存在する事は聞いていたがなんでこの時代に…」

 

やはり闇の書の恐ろしさはベルカの時代からでも有名だったようだ。その証拠にクラウスだけでなくウィルガまで顔を白くしている。

 

「へ、陛下!相手が闇の書であるならすぐにでも諸国に通達をして体制を敷きましょう!いつ奴らがシュトゥラにやってくるかわかりません!」

 

「そ、そうだな!君はすぐに聖王諸国へ連絡を!私はオリヴィエと相談してくる!」

 

「はっ!」

 

慌ただしく部屋を飛び出すウィルガを見送る2人。すると彼と入れ違いになるようにオリヴィエが部屋に飛び込んできた。

 

「クラウス!」

 

「ナイスタイミングですよオリヴィエ!今呼びに行こうとしていた所だったんです」

 

「そうなんですか?…ってそれよりも先程聞いたのですが炎皇家が…」

 

「ええその通りです。そして襲撃者の情報とその正体も掴めました」

 

「本当ですか!?」

 

驚愕するオリヴィエに炎皇家を滅ぼしたのは闇の書の守護騎士だと伝える。するとオリヴィエは悲しそうな表情を浮かべた。

 

「そうですか…一時的とはいえ平和な世界が続いていたのにここに来てまさかの闇の書ですか…」

 

そんなオリヴィエの様子を見ていたクラウスはとりあえずそっとしておく事にして未來へと向き直った。

 

「さて未來。話してもらえないか?」

 

「ん?何をだ?」

 

「決まっているだろう。君の時代で起こった闇の書の事件の事さ。聞いた話によると闇の書はページが埋まると暴走し破滅をもたらすと言われている。君の反応から察するに闇の書は暴走したんだろ?」

 

「…あぁ。だが1つ情報が抜けている。確かに最終的には闇の書は暴走する。だがその前にページが埋まると管制人格が出てくるんだ」

 

「管制人格?ならその人に闇の書を抑えて貰えばいいんじゃないのか?」

 

「それができたらあいつも苦労しねえさ。奴自身でさえ暴走を止める事はできなかったんだからな。あげくにそれが長い間続いたことで心が弱くなり訳の分からない事を連呼もしていた」

 

「…まぁそれは無理もないだろう。その苦しみは私達には理解出来んのだからな。それで最終的にはどうなったんだ?」

 

「最終的には主が管理者権限を取り戻した事で闇の書の闇…俺達はナハトヴァールと呼んでいるがそれが出てきてそいつのコアを艦隊の砲撃で消滅させることで事件は終わったんだ」

 

「なるほどな。なら私達も同じようにすれば…」

 

「いや、それはダメだ」

 

「なぜだ?倒し方がわかってるのに」

 

「ダメな理由は2つある。1つ目はナハトヴァールはコアは完全に消し去らなければすぐさま再生する。あの時は転移魔法でコアを宇宙空間へ運んだから出来た事であってもし同じ事を地上でやれば最悪ベルカは滅ぶ。2つ目は ここでナハトヴァールを倒す…いや、闇の書を救ってしまえば俺達の時代には来なくなる。つまり歴史が変わってしまうのさ。だから闇の書は転生させる必要がある」

 

「だ..だがそれをすればこの先いくつもの人達の命が!」

 

「わかってる!だがそれは本来あるべき歴史なんだ。それにこんな事はあまり言いたくないが俺がベルカに来たのは闇の書が関わっている可能性が高い。つまり闇の書を救えば今ここにいる俺はどうなるか分からん。元の時代に戻っているならまだいい。だが下手したら…」

 

そう言って未來は俯いてしまう。それを見たクラウスは未來が握りしめた拳が震えているのを見て何も言えなくなってしまった。

そしてそのまま3人とも無言のまま時は流れ誰が喋るのかといった雰囲気が流れた瞬間ウィルガが戻ってきた。

 

「へ、陛下!」

 

「どうした!?」

 

「先程諸国に連絡をした所聖王家がオリヴィエ殿の帰還を要請してきました!それと新たにダールグリュン家が襲撃されたとの情報が!」

 

「なんだって!?」

 

「そんな…ダールグリュン家が…」

 

報告を受けた瞬間クラウスは昨日の今日での襲撃に驚いた。ただ未來は別の意味で驚き慌ててウィルガに詰め寄った。

 

「ウィ、ウィルガさん!まさかダールグリュン家は全滅してしまったんですか!?」

 

「い..いえ。それは大丈夫です。現雷帝もご存命ですし他にも生き残っていらっしゃる方はいます。ただその…ほとんどの方が魔力を抜かれていまして…」

 

「そんな…」

 

それを聞いた瞬間未來は焦った。下手したらヴィクターが生まれてこない可能性が出てきた為である。アニメの展開的に彼女の存在は必要不可欠。もし彼女が…いや、ダールグリュン家が滅ぶという事だけは阻止しなければならない。

そんな焦燥感に襲われているとそれを見ていたクラウスはたまらず話しかけてきた。

 

「未來落ち着け。いくら雷帝が襲われたと言っても情報も無しに動くのは危険だぞ」

 

クラウスの言う事はもっともだ。頭の中でそう思っていても口が別のことを言ってしまう。

 

「クラウス。俺がここまで焦っているのはただ襲撃があったからじゃない。1番焦っている理由は俺が知る歴史の中でダールグリュン家が襲撃されたなんて事は聞いたことがないんだ」

 

「…なぜそんな事が?心当たりはないのか?」

 

「残念ながら無い。でも無いならないで情報収集するしかないだろうな」

 

「どうするんだ?」

 

「雷帝に会ってこようと思う。話を聞いてみれば闇の書の主の情報も得られるかもしれんからな。っという訳でクラウス。悪いんだが紹介状を書いてもらえないか?恐らくこのまま行ったんでは状況的に話をさせてもらえないだろうから」

 

「わかった。すぐに書くから待っていてくれ」

 

「助かる。それと俺が出たらクラウスは…」

 

「大丈夫。わかってるさ」

 

「…そうか。あとオリヴィエさんは聖王家に戻ったら絶対に城からは出ないでください」

 

「わかりました。まぁそもそも許可は出ないでしょうけど」

 

伏せ目がちにそう言うオリヴィエに未來はそういう意味じゃないんだよなと思いつつも何も言わずクラウスが紹介状を書き終わるのを待つ。そして…

 

「…よし。これを渡せばいいだろう。後念の為に未來が俺からの使者というのを示す為にこのペンダントも持っていけ」

 

そう言って紹介状と中央に翠色の水晶が飾られている十字型のペンダントを渡される。

 

「助かる。それじゃあすぐに向かうから」

 

「気をつけろよ。雷帝が襲われてからそんな時間は経ってない。守護騎士達がいる可能性は充分にあるからな」

 

「気をつけてくださいね」

 

「分かってるよクラウス。それじゃあ行ってきますオリヴィエさん」

 

そう2人に言って未來はクラウスの自室の窓から舞空術で雷帝家を目指した。

 

※視点変わります。

 

Side はやて

 

「ふぅ〜〜…終わった〜」

 

ぐぐぐと背伸びをしながらウチは椅子に身を委ねた。長い時間デスクワークをしていたから体がバキバキ。早めに家に帰って風呂にでも入ろかな〜っと思っていると呼び鈴代わりのブザーがなる。

 

「どうぞ〜」

 

「失礼します」

 

そう言って入ってきたのは栗色でサイドポニーテールにしている高町なのは一等空尉。その手には報告書らしき物がある為その提出に来たんやろうと思い手を伸ばす。

 

「お疲れ様なのはちゃん。報告書受け取るで」

 

「うん。ごめんねはやてちゃん。渡すの遅くなっちゃって」

 

「気にせんでええよ。ついさっきこっちも終わって手が空いとったしな」

 

「そう言ってくれると助かるよ。あの子達を指導してるとつい力入っちゃって報告書書くの遅くなっちゃうし」

 

「あはは。まぁなのはちゃんからしたら楽しくて仕方ないんやろ?仕事は張り詰めてばかりじゃアカンからね」

 

「……そうだね」

 

さっきまで申し訳なさそうに苦笑いしていたなのはからその表情が消える。

 

「……やっぱりまだフェイトちゃんとアリシアちゃんはロストロギア関連の事件を?」

 

「うん。少しでも手がかりになりそうなロストロギアの情報が入ってきたら2人ともどんな時でもすぐに飛んでっちゃうよ。今はエリオとキャロのお陰で睡眠はちゃんと取る様にはなったみたいだけど2人が来る前は休日はおろか休憩してるのすら見た事も聞いたこともなかったし」

 

「それはウチも聞いとるで。いくら部隊長命令で休め言うても今まで2人が頷いた事はないし命令が聞けないなら休職にして外出を禁止にするで!って言うたらアリシアちゃんには気弾を目の前で作成されて【どの口がそれを言うの?今度言ったらその首吹っ飛ばすよ?】って脅されたしな」

 

「…そうだよね。大切な家族が10年も行方不明になってて平常で居られる訳ないもんね」

 

家族という言葉にはやては心がチクチクと刺される感覚を味わいながらもせやなと返す。

重い空気が部隊長室を覆う中突然なのはの端末が着信を告げる。

 

「もしもし?ってユーノ君どうしたの?」

 

ディスプレイに表示されたユーノの顔はとてつもなく焦っていた。それだけで余程の事があったのだとはやてとなのはは予想できた。そしてユーノはなのはの質問には答えずに開口一番で言い放つ。

 

「(なのは!フェイトさんとアリシアさんはいるかい!?)」

 

「え?い、いないけどどうしたの?そんなに慌てて」

 

「(ごめんなのは。説明は後でするからすぐに2人に連絡を取って無限書庫に来る様に伝えて!)」

 

「いいけど2人が来るかは分からないよ?今もロストロギア関連の事件を調べてるだろうし」

 

「(それでも絶対に来てって伝えて!未來さん関連の事だって言えば例え管理外世界にいてもすぐ来るだろうから!)」

 

その言葉に2人は驚愕する。今の今まで次元世界を飛び回っていたフェイトとアリシアですら未來の情報は手に入らなかったのにずっと無限書庫で作業していたユーノが手がかりを見つけたのだから。

 

「わ、わかったの!すぐに連絡して向かうよ!」

 

「(お願い!)」ブッ

 

通信が切れた後なのははすぐにフェイトに連絡を取る。普段はなかなか連絡が取れないフェイトだが今回ばかりはすぐに通信に出た。

 

「(もしもしなのは?どうしたの?)」

 

「あ、良かったすぐに出てくれた!突然なんだけど落ち着いて聞いてね。ついさっきユーノ君から連絡が来て未來さんの事で情報が手に入ったみたいなの!だからすぐにアリシアちゃんを連れて…「(すぐに行く!)」あ、うん。待ってるよ」ブッ

 

通信が切れてすぐになのはははやての方を見る。それに対してはやては肩をすくめるだけで応えるがふと視線をずらし目に入った物を見てすぐに口をあんぐりと開けた。それに釣られてなのはもその方向を見ようとした瞬間両肩を思いっきり掴まれ向きを変えさせられる。向き直った視線の先にいたのは鬼気迫る表情をしたフェイトとアリシアだった。

 

「なのは!ユーノはどこ!?」

 

「ユ、ユーノ君なら無限書庫に…「よし!すぐに行くよ!」ってちょっ!」

 

居場所を聞いた瞬間フェイトはすぐさまなのはの肩を掴みユーノの気を探り瞬間移動し後に残されるのは1人だけ置いていかれたはやてだけだった。

 

Side end

 

【無限書庫】

 

そこは次元航行部隊本局にある次元世界最大のデータベース。 だが一言でそう言ってもそこにある書物は近年まで整理もされておらず調べ物をするにもチームを組んで手作業で探さなければならないというアナログぶり。

そして今その中でたくさんの端末を操作して作業をしているのが無限書庫司書長にしてなのはの魔法の師匠であるユーノ・スクライアである。

そしてユーノは作業の手を止めて振り返り待っていた人物に向け声をかけた。

 

「やぁ待ってたよフェイトさんアリシアさん。思ってたより早く来てくれたね」

 

「ユーノ!そういうのはいいからすぐに教えて!お姉ちゃんの事で情報が見つかったんでしょ!?」

 

今度はアリシアがユーノの両肩を掴む。

 

「まぁ落ち着いてよアリシアさん。確かに挨拶とかしてる場合じゃないね。それと情報だけど見つかったって確証がある訳じゃないんだ。正確に言うなら2人に見定めて貰いたいって感じでね」

 

「「見定める?」」

 

「うん。まずはこれを見てくれないかな」

 

そう言ってユーノはすぐ横にある本を開いて2人に差し出した。

 

「これって古代ベルカの本だよね?なんで今これを?」

 

「まぁとにかくそこにある写真を見てみてよ」

 

「う、うん。どれどれ…え!?まさかこの倒れてる人って…」

 

「間違いない!お姉ちゃんだよフェイト」

 

「で..でもなんでベルカにお姉ちゃんがいるの!?いくらなんでも過去に行くなんて出来るわけが!」

 

「…よく思い出してフェイト。エイミィさんが言ってたじゃない。あの空間は時間のねじれが起きてるって。だから過去に飛ばされたとしても何もおかしくはないよ」

 

「確かに言ってたけど姉さんどうするの?いくら何でも過去に行く方法なんて知らないよ」

 

「確かに私達では過去に行く事はできないね。でも今までは闇雲に探し続ける事しかできなかったけどユーノのお陰でベルカにいるってのはわかったんだからそれ関連のロストロギアを探せば…」

 

「いや、それは無理だろうね」

 

「なんで?」

 

「まず第一に過去に行けるロストロギアなんてものは存在しないんだ。これは歴史が証明してるし仮にそんな物があったら時空管理局がいくつあっても足らないからね」

 

「じ、じゃあどうしたらお姉ちゃんを助けられるの?いくらお姉ちゃんでも自力で時を超えるなんて無理だよ」

 

「落ち着いてアリシアさん。確かに今はその方法は分からない。今後も調べてみるしもしかしたら未來さんが帰る時の記述が書かれている本もあるかもしれないから僕はそっち方面で探してみるよ。だからアリシアさん達には別の方法で情報収集して貰いたいんだ」

 

「わ..わかった。って別の方法?」

 

「そう。現代に生きる僕達では過去の情報は本や文献でしか得る事ができない。ならより詳しく知るにはその時代を生きた人に聞くのが手っ取り早いんだ」

 

「それってもしかしてシグナム達のこと?」

 

「その通り。彼女達ならベルカの時代を生きていたとしてもおかしくはないしその時に未來さんと会ってるかもしれない。だから話を聞いてきて欲しいんだ」

 

「わかった。じゃあ早速聞いてくるけどユーノも無理しない程度でお願いね」

 

「それはアリシアさん達が言っても説得力ないけど了解したよ。それじゃあまたね」

 

「うぐっ!ま..またね」

 

痛い所を疲れた姉妹は置いてけぼりになっていたなのはを連れて無限書庫を出るとすぐにシグナムの気を探って瞬間移動した。

 

Side シグナム

 

チャポン

 

「…ふぅ〜今日もなんとか終えたな」

 

私は湯に浸かり体を伸ばす。今日もハードな1日であった為疲労は溜まっており伸ばした時にあちこちからポキポキといった軽い音がなる。

そしてそれが終わってからふと帰り際に主はやてから言われた事を思い出していた。

 

「未來に関する情報が見つかった…か。本来であれば我々が見つけなければならないのにテスタロッサやスクライアに手を煩わせてしまうのは騎士として情けないな」

 

そう言って私は俯き目を閉じた。そうする事でここにはいない本人達には伝わらなくとも謝罪の意味を込めて。

 

「別にシグナムがそう思う必要はないよ。私達はお姉ちゃんの家族だから必死になって探すのは当然だよ」

 

「そうそう。少なくとも煩わせられてるって思ってはいないから安心してよ。てかシグナムの胸おっきいね。触っていい?」

 

…ん?空耳か?今まさに考えていた人らの声が聞こえた気がするが…いや、それはないだろう。ここは風呂場なのに彼女達の声が聞こえる訳が【ムニュ】…ってムニュ?

 

目を開けて音がした方を見ると成人女性にしては小さな手が私の胸を鷲掴みにしていた。

状況が飲み込めずそのまま手の先を辿ると胸を触っているアリシアと後ろにテスタロッサ、そして高町が服を着て立っていた。そして…

 

「な…な…な…なんでお前達がここにいるんだ!!」

 

私の叫びが風呂場に響き渡るのだった。

 

 

所変わって八神家のリビング。そこに八神家とフェイト達がテーブルを挟んで向かい合っている。シグナムの大声ではやて達がなだれ込んで来たので用件を説明し今に至る。

ちなみにシグナムは独り言を聞かれた上に胸を鷲掴みされたのが余程恥ずかしかったのか顔を赤くして睨んでいた。

そのシグナムの迫力に他の守護騎士が口を紡ぐ中家主であるはやてが口を開いた。

 

「…それでフェイトちゃん。ユーノ君の話はどないやったんや?」

 

「それなんだけど…まずはこれを見てくれない?」

 

そう言って先程ユーノから見せてもらった写真を見せる。

 

「これって…聖王と覇王か?って倒れてるのは紛れもなく未來じゃねえか!」

 

「た..たしかにどこをどう見ても未來にしか見えない。で..でもなぜ未來がベルカに?」

 

「そこだよシグナム。私達が今日来たのは」

 

「どういう意味だ?」

 

「どういう意味も何も質問は簡単だよ。シグナム達は守護騎士として長い時間を生きてきた訳でしょ?ならベルカの時代の記憶もあるんじゃないかと思って来たんだよ」

 

アリシアがそう言うと守護騎士達はなるほどと頷く。

 

「そういうことか。つまりアリシアが聞きたいのはベルカで未來と会ったかということだな?」

 

「要約するとそうだね」

 

「なるほど。なら答えを言おう。確かにアリシアの読み通り私達はベルカでも主に仕えていた。だが未來にもバオウにも会ってはいない。会えば1発でわかるわけだからな」

 

シグナムがそう言うと残りの守護騎士も頷く。だがリインフォースのみが顔をしかめていた。

 

「どうやら…リインフォースは心当たりがあるみたいだね」

 

「…あぁ。もしかしたらって人物が1人だけいる。だが最初に言っておくと確証がある訳じゃない。何せ私が直接会った訳ではないし思い当たる人物と未來とでは容姿があまりにも違いすぎる上に気もバオウも使っていなかったからな」

 

「…そんな奴いたっけか?」

 

心当たりがないとばかりに守護騎士達は首を傾げる。そんな4人にリインフォースは呆れた目を向ける。

 

「…なぜ直接会ったお前達が覚えていないのだ。まぁいい。聞きながら思い出せ」

 

「お..おう。わかった」

 

「リインフォース。早く話してもらえないかな?」

 

「わかった。思い出しながらゆっくりと話していこう。まずは…」

 

ようやく手に入れた手がかりを逃してなるものかという意思を目に宿しながらフェイトとアリシアはリインフォースの話に耳を傾ける。そして話が一区切りする頃にはリビングの片隅で守護騎士達がガタガタと震えているのであった。

 

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