不死の英雄伝〜不屈の体現者〜 リメイク   作:ACS

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風呂敷が広がり過ぎた旧版から色々抜いてリメイクしました。

主人公の名前が変わり、他にも転生者を二人か三人入れて新しくやり直しです。



不屈の体現者R 1

第一話 転生

 

 

始まりの火を掌握し、人の世を作り上げた俺は気が付けば赤ん坊として生を受けていた。

 

状況が良く飲み込めなかったし、亡者化の影響で俺にはそれを理解出来るほどの知能は残っていなかったので深く理由は考えずにいたが、直感的に自分の創り上げた世界では無いと悟ってはいた。 何故? と聞かれても答えられないような曖昧な違和感、自分が創った世界にしては何かが違うのだ、その何かまでは分からないが。

肉体はともかく魂は当時のままらしく、嘗て使っていた装備等がそのまま手元に残っている事とはじまりの火の力も使える事さえ分かっていればどんな世界だったとしても生きて行ける。

 

…………尤も、今更生きる理由や目的があるのか? と聞かれると答えに困るけど。

 

一人で動ける様な歳になるまで暫くの間はかなり不自由だった、何せ成人男性から一気に赤子へと変わったのだから感覚と肉体の動きがズレていて身動きもロクに出来ないしやる事も無い。

 

時間はあったのでゆっくりと身体を慣らしていったけど、物心つく頃になっても一切泣かず笑わずな子供だと言うのに両親は俺の事を大切にしてくれていたのが非常に申し訳なかった。

 

無気力どころか生きる気力すら湧かず、惰性で生きているような少年だ、実の子供だと言っても不気味に見えるだろうに……。

 

家族なのにこんな風に他人行儀な考えをしている時点で俺の側に問題があるのだけど、こればかりはどうしようも無い。

 

 

家に居場所がない、と言うより居場所を見つけられないと言う方が正確か、そんな訳で普段から俺は暇な時はずっと公園のブランコかベンチに座りながら空を見上げていた。

特に理由は無い、空を見上げて居れば何も考えずにいられるだけだ、ソラールなら熱い太陽語りでも聞かせてくれるだろうか? と考えはしたがそれにも気のない返事しか返せそうにない。

 

それほど、今の俺には自我が薄かった。

 

 

そんなある日、何時もの様に空を見ていると横のブランコに人の気配を感じた。

 

足音、歩調、息遣いから女の子だとは分かったが、それ以上興味を持てなかった俺は横目で見る事すらしなかった。

 

青い空がゆっくりと茜色に染まっていく頃になって少女は漸くブランコから降りる、そのまま帰路に着くのだろうと考えたが予想外な事に彼女の方から声が掛かった。

 

「あの、君も帰らなくて良いの?」

 

「……………」

 

無言で返すつもりは無かったけど、話しかけられた事を理解出来ずに無言で答えてしまう。

 

「えっと、もしもーし?」

 

「………俺?」

 

この辺りで漸く俺は自分が話しかけられていると気づき、ゆっくりと声の方向へと振り向いた。

 

少女は反応が返って来た事にホッとしていたようだったけど、俺の目を見て少し引いていた。

 

この身体は別に左右の瞳の色が違うだとかじゃないんだけど、死人の様な目をしている自覚はある、多分彼女にはそれに驚いたのだろう。

「あ、あの、そろそろ夕日も沈むし、帰った方がいいんじゃ……」

 

「…………どうして?」

 

「へっ? だって、その、お父さんやお母さんが心配するでしょ?」

 

「……そうだね」

 

ぼーっとしていて忘れがちになるけど、一応俺にも門限はあった事を思い出し、彼女の言葉に同意してブランコから立ち上がる。

 

帰り道は一緒だったようで、彼女は俺の横に着いて歩いていた、その間会話は無かったけどそれは俺だけらしく彼女側は色々と話しかけようと努力はしていたみたいだった。

 

結局無言のまま俺の家に着いてしまったようで女の子はだいぶ落ち込んでいた、別に気にはならなかったが丁度俺を迎えに行こうとした父と出くわした。

 

「おお!! 今日は珍しく門限に間に合ったじゃ無いか!! そっちの娘さんは高町さんのところの子かい?」

 

「……名前を聞いてないので分かりません」

 

 

そんな流れにはならなかったし、彼女自身も話掛けようとして空回りしていたので自己紹介すらできていない。

 

両親に対する他人行儀は無意識に使っている敬語でも分かる、別に壁を作っている訳じゃ無いのに距離感が掴めず結果としてこうなった。

 

その事を分かってくれているのか父も母も特に何も言わずに居てくれている。

 

「全く、可愛らしい娘にあったらまず名前を聞けと言ってるだろうに」

 

「俺にはナンパしろと言ってる様に聞こえるのですが……」

 

父は割と女好きの困った人だ、浮気こそしていないものの昔は色々ナンパやら何やらしていたらしい、曰く女性は生活に必要な栄養素だとか。

 

「ナンパしろと言ってるんだ、父さんだって母さんとの出会いのきっかけはナンパだったんだぞ? まぁいい、折角お近づきになれたんなら送ってあげなさい」

 

「分かりました」

 

振り向けば彼女が可愛らしいと言われて照れていた、父の見境の無さは極まっているのだろうか?

 

ともあれ彼女の自宅までは簡単な自己紹介を挟んでそれなりに会話をしていた、受け答えが簡素だったり無反応だったりと会話と呼べるものかは怪しかったが。

 

「じゃあ、なのはは此処だから、送ってくれてありがとう」

 

「うん、さようなら」

 

「うーん、そこは『またね』って言って欲しいかな? と、友達だし」

 

「そう言うものなのか?」

 

「そう言うものなの」

 

「そうか、ならまたな」

「うん!!」

 

 

元気な声を上げて自宅に帰ったなのはを見届けた俺はそのまま家へと帰ろうとしたのだが、振り向いた先に整った容姿をした男が仁王立ちをして怒りを露わにしていた。

 

彼の魂にある種の神性が見える事から何かしらの神が関わってるのだろうと予想できたが今の俺は感心が持てない。

 

彼が何故怒っているのかは見当が付かないが、関わる事でも無い、それに早く帰った方が両親に心配はかけないだろう。

 

「お前、俺の嫁に手を出してるんじゃねぇよ」

 

「…………?」

 

 

お前、とは俺の事で良いのだろうか? 周りにはそれなりに人が居るし、門限で帰る子供も居なくは無い、俺の記憶が確かなら彼とは初対面の筈だから少なくとも俺を対象にしては居ないだろう。

 

そう判断し、恋敵への喧嘩を吹っかける邪魔をしたかと思い軽く会釈してからその横を通った。

 

「あっ、これはどうもご丁寧に」

 

俺が会釈すると反射的に名刺を受け取った社会人の様な動きで彼も会釈を返す、年齢と中身が見合っていない事から俺と似たようなものなのかもしれない。

 

「って!! そうじゃねぇよ!? なんでスルー!? 俺はお前に話掛けてるんだよ!!」

 

「……俺に? 何故?」

 

さては以前知りっていたか? それは悪い事をした、しかし顔も名前も覚えていない、恥を忍んでもう一度自己紹介をして貰おう。

 

「すまない、俺は君の名前が分からない。だから自己紹介をして貰いたいんだが……」

 

「あ、悪りぃ。 俺は門崎 紳助、歳は……って!! なんで喧嘩吹っかけた相手に自己紹介しなきゃならないんだよ!!」

 

「そうか、門崎君か。 俺は……灰原、灰原 悠希、名前の由来は勇気と希望を人に与える様な人になって欲しいからだそうだ」

 

「へー、俺の名前の由来って確か紳士的に人助けできる様な人になって欲しいとかだったかなぁ、元社畜に高望みし過ぎな気がするんだよなぁ……」

 

何か嫌な事を思い出したらしく凄まじく落ち込む少年、彼の用事は何だったのだろうかと首を傾げているといきなり思い出した様に顔を上げ、俺に向かって指を差した。

 

 

「本題を逸らしやがって!! 良いか!! なのはは俺の嫁なんだ!! だから手を出すんじゃねぇぞ!!」

 

「……そうなのか、知らなかった」

 

「えっ? あ、うん、そう言う事だから……」

 

「……夫婦別姓と言う奴か?」

 

 

五、六歳で結婚できるとは思わなかった、それも今日知り合った少女が既に既婚者だったとは……世の中は不思議なものなんだな。

 

「いや、そっちの嫁じゃねーから!! そっちの嫁はガチの嫁じゃねぇか!!」

 

「違うのか?」

 

「ちがわい!! 俺の言う嫁ってのは……そう、漫画とかゲームとかのキャラに使う様な意味合いでの嫁だから!!」

 

「……???」

 

「えーっと、もしかして漫画とかアニメとかのサブカル方面に詳しく無い系の人?」

 

「見たことも読んだ事も無い」

 

 

そう答えたら、彼は『あー、原作知識無い系の人かー』と言ってため息を吐いていた。

 

「ま、ならいいや、あんまりなのは(俺の嫁)と仲良くしようとすると––––殺すぜ?」

 

 

殺気と同時に機械染みた杖を右手に出現させる少年、周りに俗に言う人払いの結界でも貼ったのかいつの間にか俺と彼の二人になっていた。

 

溢れる魔力を見る限りそれなりには強いんだろう、しかし彼の立っている位置は俺の間合いだ、殺る気なら殺り返せる。

 

脅しでも入れるつもりだったのか何らかの魔法を使用しかけたのを見た俺は右足で踏み込み、間合いを一歩で詰めた後右手を捻り上げる。

 

そして驚愕した少年の首を掴み、頸動脈を千切ろうと爪を立てたところで殺すまでもしなくて良いかと思い直して手を離した。

 

「ゲホッ!? ゴホッ!! こいつ、つ、強い!?」

 

「君じゃ無理だ、俺を殺せない」

 

別に殺しても良かったんだけど、この時代だと処理が面倒だ、ロードランならそのまま捨て置いて良かったんだけどね……。

 

気が付けば結界も解けていた、時間も時間だからそのまま帰る事にしたんだけど、意外な事に彼の家は我が家の向かいだった。

 

帰り道に後ろをとぼとぼと着いて来ていた事が疑問だったんだけど、何とも言えない縁だ。

 

彼も『マジかよ……世の中狭すぎんだろ』と言って凹んでいた。

 

 

「気まずいってレベルじゃねぇんだけど」

 

「俺は気にしてないから安心してくれ」

 

「……殺しに来た相手にその余裕って、しかも動きがまるっきり見えなかったし、器の違いって奴なのか?」

 

「命を狙われる事に関心が無いだけだよ」

 

ロードランで自分の生死を気にしていたらキリが無かった、そもそも死ぬ事自体の恐怖は竜狩りのオーンスタインと処刑人スモウとの戦いで消えた、万一残っていたとしてもウーラシールでどうでも良くなる。

 

アルトリウスで表情が消えるまで殺され、マヌスで四桁は殺害された、コレだけ殺されれば生死感に関心が無くなるのは仕方ないだろう。

 

それに殺した数も計り知れない、亡者とは言え元は人間だったものを一体いくら殺したのやら。

 

そんな人間が今更だろう、門崎と言った少年は口では強い事を言っていたが間合いの測り方や懐に入られた時の反応が甘い、実際に他人へ向けて魔法を行使しようとしたのは今回が初めてだろうな。

 

彼がもし自分の発言の通りに人を殺したとして、その時彼は何を思うのか?

 

後悔? 愉悦? 無関心? まぁ何にせよ彼が俺以上に人を殺す事は無いだろう、そう考えたところで自分がこんな事にしか思考を回せない自分に気が付いた。

 

…………ロードランでの癖が未だに抜けないな。

そう苦笑いした俺は自宅に帰ろうと玄関を開けた門崎に向けて教わったばかりの別れの挨拶を交わした。

 

「またな、門崎」

 

「お、おう、またな?」

彼は不思議そうな顔で俺を見た後、そう返事をして手を振りながら帰って行った。





旧版との大きな違いは主人公へのなのはに対する感情が普通になった事と始まりの火は所有しているものの神にはならず、人間として自分が作った世界では無いリリカル世界に流れ着いて新たに生まれた事の二つですね。

何でも出来ますが基本的に感情が磨り減るどころか灰になってるので主人公は当分燃え尽き症候群スタンスです。


門崎君の言動はアレですが根は真面目なので今後も本編に絡みます。
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