W主人公なり群青劇なりのタグを付けようかな?
第四話 非日常への入り口
回復魔法を使った応急処置をして貰った後、俺はせめてコレぐらいは……と子猫の死体を上着で包んで近くの林に埋葬してから一旦落ち着く為に公園へと移動した。
身体中の痛みや未だに残る血の味が自分の居る世界がどうしようもなく無慈悲なのだと理解させる、俺は分かったようで分かっていなかったんだろう、結局創作物の世界だからと、物語の流れや知識を知っているから上手く立ち回れると、そんな馬鹿みたいな事を考えていた自分が恨めしい。
ちょっと考えれば当たり前だ、この世界は現実で、俺達はそこで生きている、その人生に原作者も脚本家もありはしない。
だからアニメや漫画に描かれている通りの物事が必ず起きる訳でもないし、起きたからと言って同じ結果になる訳じゃない。
仕方なかったとは言え、灰原は小動物の命を一つ奪ってしまった、俺が躊躇わなければ、なのはが砲撃を行なっていたら、あの子猫は助かったかもしれない。
後先考えずに首を突っ込んだ結果、その尻拭いを友人にやらせちまった、全身の痛みよりもその事に気が重かった。
灰原は生き物を殺したにも関わらず特に何も無かった、普通なら死体に視線を向けるなり、殺すしか無かった事を謝るなり、或いは俺たちの躊躇いを叱咤するなり、何かあるはずなのに、さも当たり前の様に何の反応も無かった。
殺した死体に一瞥もくれず、殺した事になにも言わず、戦えずに蹂躙されていた俺達を叱る訳でも無く、返り血すらも拭わずにただ当たり前の様に元凶のジュエルシードを破壊した。
その異様さに誰も何も言えず、公園に到着するまで俺たちは重い空気のままだった。
水道を使って刀の血を洗い流している灰原を他所にユーノが軽い自己紹介の後に魔法の事、ジュエルシードの事、そして運搬中の事故の事を語っていく。
大体原作通りの内容だったけど、だからと言ってこの事件が原作通りになるとは限らない、最悪管理局が来るまで見て見ぬフリをするのだって一つの手だと正直思う。
情けない話、身体の痛みにビビってしまったのだ。
比喩抜きで死に掛けた所為で未だに手が震える、自分の意識が混濁しながら流れ出していく様な感覚が妙に生々しく残っている、そんな怖い思いをするくらいなら……と考える自分が卑怯者の様に思えた。
「すみません、皆さんを巻き込んでしまって……。傷が治ったら直ぐになんとかしますから」
申し訳無さそうに謝るユーノの声にネガティヴな方向へ沈んでいた思考が浮上し、思わず口を開いていた。
「なんとかって……こんな管理外世界でなんとかするアテがあるのかよ……」
「そ、それは……」
「出来ないだろ? 土地勘は無い、住む拠点も無い、デバイスもなのはの方が相性が良い、またさっき見たいな奴に襲われても勝つ自信があるのかよ?」
「…………」
「あ、あの、門崎くん。 ユーノ君だって責任を感じてるんだから、そんな言い方は良く無いと思うよ?」
思った事を口にしていたらすずかにやんわりと窘められた、バツが悪くなったけど俺が言いたいのは嫌味なんかじゃないんだよなぁ……。
「あー、だから、なんだ? ほれ、都合良く此処に一人居るだろ、なのは見たいな即席じゃない魔道士が」
「えっ?」
「聞き返して来んなよ恥ずかしい、要は手伝ってやるって言ってんだ、一人より二人ってな」
見捨てる事を真剣に検討していた男が言うセリフじゃ無いけどな、と心の中で毒づきながらそう言った。
ユーノ一人でどうにか出来る可能性ははっきり言って0に近いだろう、超絶的な奇跡が連発しまくって暴走したジュエルシードもフェイトの介入も無けりゃワンチャンあるだろうけど、紙のように薄い確率だ。
だから首を突っ込んだら足先までどっぷり関わった方が安心できる、問題は寧ろ俺たちの方だ。
「アンタ、普段ナンパとかしまくってる癖に偶には良い事言うじゃない、ちょっと見直したわ」
「うん、少し意外だったかな」
「にゃはは、しん君はちゃらんぽらんに見えて根は真面目で優しいから……」
なのはや俺はデバイスがあるから問題は無い、けどアリサとすずかにはそれが無く、無いからと言ってハイそうですかと他人任せに出来るような性格をしていない。
新規に二つ作ろうにも金がかかるし、パーツ探しに時間が要る、チラッと二人を見るとヤル気に満ち溢れているのでこのまま関わり続ける気だろう。
俺の脳裏に浮かぶのは暴走体への恐怖、彼女達はその恐怖よりも正義感が勝つ人種らしい。
「じゃあ私達で海鳴を守るわよ!!」
『おー!!』と拳を上げる三人娘だけど、若干手が震えているのが見える、怖さがあるのに無理矢理飲み込んで虚勢を張っている、俺は思わず溜息を零す。
「はぁ……デバイスも無しにどうやって役に立つ気だよ……」
「うっ、そ、それは……」
言葉に詰まったアリサに呆れながら、此処まで我関せずと言った風に立っている灰原へと視線を向けた。
「お前はどうするんだよ灰原」
「どうって?」
「ジュエルシード回収だよ」
「手伝えと言われれば手伝うし、何も無ければ何もしないさ、自主的に何かしようと思えないからな」
「なら手伝え、俺たちの中でお前は文句無しの最高戦力だ」
自主的に何かしようと思えないのはこの件に対してなのか、あいつの精神的な物の所為なのかは気になりはしたが、後で聞けば良いだけだ。
『分かった』と短い返事をした灰原はコレで良い、問題はアリサとすずかのデバイスになるんだが……。
「明日までに、俺がお前ら二人分のデバイスを組み立ててやる、突貫で作るから性能に期待はすんなよ、ユーノも手伝ってくれ」
足りないパーツは俺のデバイスを解体すればいい、一応家にはスペアパーツが残ってるからそれを使い切ってユーノが持っているレイジングハートの応急処置用のスペアをいくつか使えば辛うじて二つは出来る計算だ、俺自身の戦闘能力はダダ落ちするだろうけど一応デバイス無しで魔法を扱う事はできるから現時点なら経験の差で灰原の次くらいには行けるはず。
誰も死なない事を目指す、その為には生存確率に直結する魔法障壁とバリアジャケットが無くてはならない、特に魔法の素人の三人には必須だ、攻撃を受けても無傷ないし軽傷で済ませられるから是が非でも使える様にしなきゃならない。
こりゃ徹夜コースだな、と内心で凹みながら俺達は一旦解散した。
帰ったら両親の説教のお陰で予定以上に時間がずれて結局徹夜コースだった、ユーノが俺を弁護してくれた事と両親は魔法関係を知っているお陰で何とか納得して貰えなけりゃどうなってた事やら……。
二人のデバイスは将来性に期待して一応インテリジェントデバイスに仕上げたんだが……バリアジャケットや魔法障壁はユーノの手伝いもあってか平均以上なんだけど、それ以外が平均値以下な所為で安物のストレージデバイスに若干劣る性能だ。
理由はやはりパーツや設備の不足に加えて圧倒的に時間が足りなかった事だ、管理外世界でも手に入る代用パーツ、親が昔の記念に残した程度の設備、学校の時間まで後12時間しかない状態、どれか一つでも満足行く物だったなら前世代機かそれより少し下のインテリジェントデバイスが作れたんだけどな……。
AIも赤子同然の状態なので後でレイジングハートから個性と人格が似ない程度の経験値を共有させなきゃダメだし、デバイスのフレームなんかもコッチの物を使って作った物だから、耐久性の問題で戦闘の度にメンテナンスしなきゃならないだろう。
生命維持や生存率に直結するような不具合こそ修正しきったけど、正直これを使うぐらいなら金属バットを持って殴り掛かった方が手間が掛からない分マシな気がして来た、防御方面を度外視したらの話だけど。
そんな有様だったからこの二機の機種名を『パッチワーク』にしてやった、手芸のソレからそのまま持ってきたけど、廃品や間に合わせのものばかりを使ってるから丁度いいだろう、固有名はあの二人に任せる。
俺は前世なら当たり前だった徹夜明け特有の倦怠感を懐かしく思いながら、二人にデバイスを渡すために学校に向かうのだった。
【パッチワークI 】
門崎の持っていたデバイス(未完成)現在は解体されてアリサ、すずかのデバイスの材料となった。
元々名前は無かったが二人のデバイスに機種名を付けた事で此方もつけられた。
AIの非搭載や時間を掛けた制作のお陰で性能はⅡよりは上、でも結局は寄せ集めデバイス。
【パッチワークⅡ】
アリサ・すずかに渡る予定のデバイス、寄せ集め・間に合わせのパーツで構成されたデバイスな為性能は低く、細かい部分で二機の性能にばらつきが存在する。
AIを搭載しているので将来性は十分存在するが、門崎曰く『火力が貧弱すぎて金属バットで殴った方が修理や調整の手間が掛からない分マシ』との事。
製作を手伝ったユーノは『あんな材料で我慢すれば使えない事もないデバイスを仕上げられたのは奇跡に近い』と評価している。