不死の英雄伝〜不屈の体現者〜 リメイク   作:ACS

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ユーノ視点2。


不屈の体現者R 8

第八話 鼠の帝国

 

 

灰原は開けていた蓋を一旦閉めた後、僕に結界を張るように促した。

 

確かに内部は兎も角、侵入する瞬間を一般人に見られたら下のネズミ達が済し崩し的にバレる、ソレに侵入の際も態々行進してるネズミに悟られる必要は無いだろう、僕は結界を縦長に伸ばして侵入経路を確保した。

 

「この数だ、内部で二人組に分かれてジュエルシードを捜索するつもりだったんだけど、アテにしてた門崎が来れないから三人で回ろうと思うんだが、如何だろうかユーノ」

 

「灰原はデバイスを持ってないんだっけ? 見つけても封印出来ないのか……」

 

「この間見たいに破壊して良いのなら一人で回るんだけどね、それはダメなんだろ?」

 

「管理局に届けなきゃいけないから遠慮して欲しいかな……」

 

灰原なら簡単に破壊出来るだろうけど、管理局へ届け出る途中の物だから出来る限り回収して持ってかなきゃいけない。

 

その事を考えて頭数に門崎を入れてたんだろう、デバイス無しで魔法が使えるのは彼だけだし頭も回る。

 

「えっと、それならアリサちゃんとすずかちゃんは? デバイスもあるし、合わせたら五人になるけど……」

 

「ダメってほどでも無いけど相手の数が違い過ぎる、できる事なら単独行動を避けて俺やユーノが相方の状態で回りたい」

 

「うん、それに統率された動きだったからきっと彼らには指揮系統が出来てる、僕も灰原も身を守りながら群体と戦うとなると二人同時には守り切れそうに無い」

 

 

相手は軍隊と言うより群体、統率されきってない分兵士を死兵にして使い潰してくる可能性があるからだ。

 

いくら灰原が強くても数の暴力だけはどうしようもない、しかも死兵は文字通り死に物狂いだから命を捨てる気で突っ込んで来るから、数に押し切られる可能性を考えるとやり門崎を加えた状態でツーマンセルが望ましかった。

 

「そっか、じゃあ三人で回るの?」

 

「俺とユーノなら役割分担が可能だし、最悪俺が囮になった状態で兵隊を引きつけるからその間に頭を叩いて貰いたい」

 

「頭? ネズミさんがジュエルシードの魔力で暴走してるんだよね?」

 

「そうだけど……多分ジュエルシードを取り込んだのはこの場所の王様だろうね」

 

 

ジュエルシードの魔力で纏めて暴走したにしては群体から感じる魔力は小さい、どちらかと言えば一つの魔力を分散させた感じだ。

 

だから恐らくアレは王が暴走体になった後、魔力を使って支配した群れだと感じた。

 

「さてと、話を切り上げてそろそろ突入するとしようか」

 

 

そう言って灰原は何処から取り出したのか、刀を手にしながらマンホールを開けて内部へと飛び降りて行った。

 

 

 

僕となのはが飛行魔法を使いながらゆっくりと下に降りると、既に灰原は抜き身の刀をだらりと下げながら僕等を待っていた。

 

刀を抜いた彼は、口の悪い言いかただけど無気力無関心の人形の様な普段とは違い、近づけば切れる様な独特な雰囲気が纏われていた。

 

目付きも鋭くて、周囲への警戒を怠らない姿は味方と思えば非常に頼もしかった。

 

今はネズミを弾いて結界を張ってるのでそれを打ち切らなきゃ捜索は出来ない、張り直すにしても張り替える時に結界は消える。

 

そもそも地下だし、ネズミの繁殖が騒ぎになってないからまだ此処に人は居ない、それなら結界の維持の事を考えると解除してしまった方が楽だ、魔法の傷跡が残らない様にカバーする必要はあるけどね。

 

「結界の切れ側に気を付けろよ?」

 

「うん、分かってる。なのはは僕らの間に」

 

「う、うん」

 

 

なのはの左右を二人で挟む様にしながら結界を解除すると、その瞬間異常な腐敗臭が鼻を突いた。

下水道にしても異様な匂い、なのはがその匂いに顔を青くし、それを見た灰原がハンカチを差し出していた。

 

「––––死臭が混ざってるな」

 

 

小さく灰原が呟くと同時に巨大な影とそれに見合った足音が聴こえて来た、それに反応した灰原が足音を殺しながら僕らの手を引き、物陰に隠れて足音の主を覗き見る。

 

先の丁字路を横切る様に僕ら位なら丸呑み出来そうなサイズのネズミがゆったりとした足取りで歩いて行く、なのはが目を見開いて小声で驚く。

 

その声に巨大ネズミが反応し、素早く僕らの方へと走ってくる。

 

バインドで足元を固定しようかと魔法を構築し始めた瞬間、灰原が飛び出して行った。

 

音も無く物陰から飛び出し、鞘をブーメランの様にネズミの顔面へと投げ付けながら身を低くして間合いを詰める。

 

一歩、二歩と数える間も無くネズミの真下へと潜り込んだ彼は、そのまま躊躇無く首を一刀両断、刎ねられた首が回転しながら弧を描き、僕達の目の前に落ちた。

 

咄嗟になのはの目を手の平で遮ったけど、灰原は淡々とした様子で今斬り捨てたネズミを解体し、ジュエルシードを探していたけど、空振りだったらしく顔色一つ変えずにそのまま死体をバラバラにして水路の中へと放り込んで行った。

 

血痕に下水を掛けて証拠を消す灰原に呆れながら、なのはの目の前から手を下ろす。

 

「えっと、ユーノくん? 前が見えなかったのですが……」

 

「女の子が見る光景じゃ無いから……」

 

流石にショッキングな映像だったから、普通の神経してる女の子に見せるのは男の子としては……ね?

 

問答無用で斬殺とか殺意高いなぁ、なんて思ってると灰原が帰って来たのでそのまま合流し、探索を初めて行った。

 

 

 

道中は予想に反して比較的楽だった。

 

理由は灰原がネズミを見つけ次第一匹残らず皆殺しにして行っているからだ。

 

容赦は全くなかったけど、100匹殺してもネズミは尽きず、王が僕らに気が付いたのか徐々に彼らの攻撃も苛烈になって来た。

 

刺し違える覚悟で襲い掛かるネズミ達は首を斬られても動き回り、僕達に噛み付くほどだった。

 

先頭に立つ灰原もその猛攻に流石に生傷が目立ち始め、疲れも見えて来たのか、額に玉のような汗が浮かんでいる。

 

なのはが心配そうな顔で何度も彼の事を気遣い、僕も回復魔法を掛けているのだけど、疲労までは取れない。

 

「ゆーくん大丈夫? 今も少し身体が揺れたよ?」

 

「……平気だよ、この位で根を上げる俺じゃない」

 

「けど灰原、君はさっきからずっと戦ってばっかりだろ? 少しは休んだ方が……」

 

「……必要無い、それに休むなら地上の方が嬉しいさ」

 

 

痩せ我慢に聞こえるけど彼は本気でそう言ってる、疲労や痛みが増すごとに雰囲気が張り詰めて行くので僕らは何も言えなくなった。

 

そして、一時間ほど慎重に捜索していると灰原が何かを発見した。

 

 

その時点で何度も戦闘を挟んでいて、喋るのも億劫になったのかジェスチャーでその発見した物を指差した。

 

壁を背にしながら覗き込むようにしてる彼を真似て覗くと、貢物らしきものが積まれた廃材で作られた玉座があった、アレが王の居場所なのだろう。

 

そしてその周辺には壁や天井にまでびっしりとネズミが張り付いて居て、思わず顔が引き攣る。

 

ジュエルシードの反応を探そうにも此処のネズミは満遍なく反応を示すので、それに頼った索敵は無理だ。

「なに、あれ?」

 

「ネズミさん、だね……」

 

「……王が居るみたいだけど、あの数じゃ分かりにくいな」

 

 

僕らが絶句してる中、灰原はその鋭い眼差しでネズミを観察していたけど、突如としてゆっくりと彼の身体が下にずり落ちて行った。

 

「ど、どうしたのさ!?」

 

「いや、毒が回りきってしまったみたいだ、なるほどだから身体が重いのか……」

 

「毒!? あのネズミは毒ネズミだったのか!!」

 

「ユーノくん!! ネズミさん達がコッチに気がついたよ!?」

 

 

思わず取り乱した僕の声で潜伏してたのがバレたらしい、自分の迂闊さに腹が立つ。

 

考えてみれば幾ら戦闘を繰り返していたとしても休憩を挟んでたんだ、肩で息をする程の疲れが継続するはずが無い。

 

解毒魔法を掛けずに傷を塞いでしまった事で毒抜きが出来ずに身体を蝕んで行ったのだろう、彼の強さに無条件の信頼を寄せてしまった僕のミスだ。

 

「……俺が囮になるさ、その際に二人は逃げる個体を追ってくれ」

 

「逃げる個体? ……なるほど、そう言う事か」

 

 

王が先陣切って戦う訳は無い、積極的に暴れまわってれば必ず安全圏へと逃げる筈だ、ただそれを行おうとするならばそれ相応の火力が必要になる。

 

大丈夫なのか? と声を掛けたけど彼は『任せろ』と言ってそのまま飛び出して行った。

 

僕となのははそんな彼を無下に出来ず、言われた通りに王を探し出す為に空を飛んだ。

 

四方から飛び掛かって来るネズミ達、黒い津波の様なその群れを灰原はひと凪で消し飛ばした。

 

刀を持っていたはずの彼の手には燃え盛る炎を纏ったハルバードが握られていて、一振りで紙屑の様にネズミを焼き尽くした。

 

くるくるとバトンの如くハルバードを自由自在に操る彼は、一振り一振りで確実にネズミを灰へと変えて行く。

 

一度戦闘を開始すると人間とは思えない苛烈さで暴れる灰原、身体の毒など物ともせずに敵の注目を集め、その度に敵を消し飛ばす。

 

床の炎が燃え広がって熱気が立ち込める中、たてがみが立派なネズミがこっそりと逃げ出すのが見えた。

 

「見つけた!!」

 

「うん!! レイジングハート!!」

 

 

発見した王に向かってなのはがシューターを放つが、王は他のネズミの倍素早く、後ろも見ずにシューターを避けて行く、バインドを試みるも上手くジュエルシードの力を引き出してバインドをブレイクして拘束する事が出来ない。

 

「ッ!? 当たらない!?」

 

「こうなったら当たる距離になるまで接近するしか無い!!」

 

「でもそれじゃゆーくんが一人に!!」

 

「あんなハルバードを振り回してるんだ、寧ろ僕らが居た方が邪魔になる!! それに彼の援護をするより頭を叩いた方が早く終わる!!」

 

「ユーノの言う通りだ、俺に構うなッ!! 行けッ!!」

 

「……ッ!! ごめんなさいゆーくん!! 直ぐに封印して来るから!!」

 

僕らが後ろ髪を引かれる思いで王の追跡に向かったのを確認したのか、彼は腐敗ガスが噴き出す場所でハルバードを振って自爆する様に範囲攻撃を繰り返し、僕らの心配を振り切った。

 

 

 

 

ネズミとは思えない動きで逃げ回る王様ネズミ、あまりの素早さに僕らは翻弄され続けていた。

 

早く捉えなければと言う焦りによって僕は結界封鎖と言う単純な捕獲方法が頭から抜け落ち、馬鹿正直に鬼ごっこへと持ち込まれたのが原因だ。

 

 

「クソッ、息が上がって来たッ!!」

 

「ユーノくん!! 王様が逃げた先はあっちと繋がってるから!!」

 

「挟み撃ち、だね!!」

 

「うん!!」

 

 

その言葉と共に僕らは分かれて王を挟撃する事になったのだけど、追い立てる為に加速した瞬間、水路の中から一番初めに灰原が倒した巨大ネズミと同じくらいの奴がが顔を出して大口を開いて僕に襲い掛かって来た。

 

「嘘だろッ!?」

 

 

思わぬ伏兵に驚いたけど、下手にスピードを落とせばそれこそ万力の様な顎の力で粉砕されるだろう、なので僕は速度は落とさずに障壁を展開して突撃し、丁度つっかえ棒の要領で口を開かせる。

 

そしてチェーンバインドを上顎と下顎にそれぞれ結び付けて顎の関節を外した後、ストラグルバインドでネズミに掛かってる強化魔法を強引に解除する。

 

なのはの方も無事に撃破したらしく、勢い余った砲撃が僕の真横を掠めて行った。

 

僕となのはに挟まれた王様ネズミはそれでも尚天井の通気口から逃げようとしたけど、そこでやっと結界で封鎖する事を思い付いてネズミを捉える事が出来た。

 

正規の形じゃない結界だから簡単に破壊される可能性があるものの、王様ネズミがそれを突破するよりも早く、なのはの砲撃が的確に王を撃ち抜き、ジュエルシードを無事回収する事が出来たのだった。




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