第九話 模擬戦
スノーホワイトと命名した私のデバイスはアリサちゃんの様にデバイス自体を使って戦う物とは違い、後方支援に特化したデバイスなので不具合が起きやすいそうです。
なので門崎くんはこまめにデバイスとコミニュケーションを取ったり、魔法の練習を行う事が必要だと言ってました。
そして今日は私もアリサちゃんも習い事が無い休日なので、調整の一環として魔法の実践を兼ねた3対3の模擬戦が近くの山で結界を張って行われました。
ただその際にアリサちゃんが『折角なんだし男女別で模擬戦しましょ?」なんて言い出し、その結果私達はトンデモナイ目に合う事になりました……。
「私が前衛で、なのはが中衛、すずかが後衛ね? 無謀なのは分かってるけど、アイツらから学べる事は多いと思うのよ」
「……うん、そうだね」
先日あった地下での戦闘でなのはちゃんは灰原くんに戦闘を頼り切ってしまって、その結果彼はジュエルシードの封印が終わると同時に倒れてしまったそうです。
夕方には回復したそうですけど、そんな事もあって今回の模擬戦は灰原くんに頼りきりにならない様にと張り切るなのはちゃん。
でも今回その灰原くんは敵なんだよね、と内心で思ってると事前に合わせていた携帯のアラームが鳴って模擬戦が開始されました。
「じゃあ私が灰原を抑えるから、二人掛かりでお願い!! あのメンツだとアイツが一番だし、速攻で落とすわよ!!」
「「うん!!」」
気合いを入れた後、私は索敵魔法で男子組の位置を特定しようとスノーホワイトに指示を出したのだけど、山全域に索敵妨害がされていて思う様にいかなかった。
……流石に簡単にはいかないよね。
私達はまだ魔法に関わって日が浅い、だから彼らからすれば私達のレベルはまだまだ低い、先手を易々と取らせてはくれないか。
そう考えて、魔力消費を抑える為に索敵魔法を打ち切り、アリサちゃんとなのはちゃんに強化魔法を使った所で急に木々の合間から暴風が吹き荒れて空を制圧されました。
門崎くんの風の魔法……私側からしたら位置の割り出しが出来なかったのに、彼は既に私達の居場所を割り出してる。
私は簡単なシューターを自分の変換資質を利用して氷柱にして空中に待機させ、アリサちゃんとなのはちゃんに見つかってる事を念話を使って伝え、周辺の警戒を厳密にする。
大型の台風の様に空を制圧する風は私達だけでなく彼らにも不利に働くはず、だから警戒するなら下だ。
そう考えて居た私達の裏をかく様に、空から接近する反応があった。
「––––甘いッ!!」
嵐の中から風に押されるように術者の門崎くんが落下してくる、飛行魔法とは違い物理的に追い風を利用して飛んで来たのだと思う、意表を突かれた上に飛行魔法を使わない移動方だったから索敵を抜けられたから完全に対応が遅れてしまいました。
私達の丁度ど真ん中に着地した門崎くんは力任せに魔力を解き放つと、そのまま私達全員をその場から風で吹き飛ばしました。
アリサちゃんは門崎くんの横の木にアンカーを打ち込んで何とかそれに耐え切りましたが、私となのはちゃんはそのまま分散してしまいました。
それを見た門崎くんは、アンカーを巻き込む事で接近してくるアリサちゃんの斬撃を躱し、慣性のついたアリサちゃんを踏んで私の方へと跳んで来ました。
『アタシを踏み台にしたぁ!?』と叫ぶアリサちゃんには悪いけど、助ける暇が無いので私は空中に待機させていた氷柱を門崎くんへ射出する。
鋭く尖らせてあるので風に流れない様に貫通力を強化したから真っ直ぐ走る。
風で流せないと察した門崎くんは足を止めて障壁を展開して氷柱を受け止めた。
その隙を突いた私は一気に彼へと接近し、左手の盾で彼の障壁を殴り付ける。
スノーホワイトの性能だと物理攻撃で障壁を突破する事は出来ない、その事を作った本人の門崎くんが分からないはずは無く、不審な顔を浮かべて彼は障壁を持続している。
盾と障壁が接触した瞬間、私は盾の上に角錐状の分厚い障壁を展開してそのまま彼の障壁を破壊する。
障壁を小さく、分厚く、強度を重視して角錐にする事で相手の障壁を貫通させる事を目的とした攻撃に主眼を置いた障壁、盾で殴ると言う門崎くんの発言から閃いた魔法だ。
「ッ!? バリアブレイク!? いや、システム介入はされてない、物理的に貫通させたのか!!」
驚愕した門崎くんだったけど、私のこの障壁はまだ維持されているので、それをそのままナイフの様に振り抜いた。
けど風を切る音と共に振り抜いた盾は彼の前髪を数本切断するだけで、彼に後ろっ跳びされて回避されてしまう。
苦笑いする彼でしたが、体勢を立て直した二人に囲まれて逃げ場は無くなったからまずは一人、と考えながら彼の両足を地面ごと凍結させようとしたところ、彼が指を鳴らした。
その音と共にアリサちゃんの背後に灰原くん、なのはちゃんの背後にユーノくんが現れ、二人が蹴り飛ばされた。
あっと驚く間に門崎くんに懐まで飛び込まれ、そのまま左手を捻り上げられると同時に背負い投げられました。
宙を舞う間に見えたのは、目に見えない速さでスポーツチャンバラ用のスポンジの剣で斬り捨てられたアリサちゃんと、砲撃を撃とうとした状態で木にバインドで固定されたなのはちゃん。
奇襲されて一瞬だったなぁ、なんて遠い目をした私も次の瞬間にはバインドで縛られて捕まりました。
こうして、初めての模擬戦は完封負けと言う悲しい結果になるのでした……。
▽
アレから何度か模擬戦を繰り返して、漸く一勝を拾えたところで門崎くんのお家にお呼ばれしてみんなのデバイスをメンテナンスして貰いました。
「しっかし、良くあんな障壁で殴るなんて考え付いたなぁ」
デバイスのメンテナンスをしてる門崎くんの手元を覗いてたら、彼からそんな質問が飛んで来た。
「前に盾で殴るしか火力出せないって門崎くんが言ってたから……」
「それでその発想出して術式を作るなんてのはやっぱ頭良いな、マイスターの才能もあると思うぜ?」
デバイスマイスター、たしかデバイスの製作・管理が出来る資格だったっけ?
門崎君のお父さんが元・デバイスマイスターだった筈、その関係で彼もマイスターを目指して小さな頃から勉強中なんだとか。
その事を踏まえながら、メンテナンスルームからみんなの待つ彼の部屋へと戻って改めて中を見回すと、漫画やゲームの中に混じってデバイス用の工具箱と山の様なパッチワークの没設計図、後は魔法技術の参考書が数点並んでいた。
普段は色々と三枚目な部分があるのですが、綺麗に片付けられた部屋からも分かる様に根が真面目なので私も安心して友人でいられる様な気がします。
……ただ、門崎くんは男性だからアリサちゃん程砕けた態度にはなれないかなぁ。
チラッと彼の部屋のベッドに視線を向けると、ベッドの上を完全に占領した挙句、彼の漫画を堪能してるアリサちゃんが目に映る。
流石に男性の寝具の上で寛ぐのは……と少し窘めてみたけど、帰って来たのは『別に友達だしコレくらい良いでしょ?』と言う返事だった。
『アイツも人の匂い嗅ぐような真似はしないでしょうし?』と、遂には『それに干したて見たいなのよねー』との言葉と共にベッドの上に寝転んでしまった。
なのはちゃんは魔法の指南書を食い入る様に見ながらユーノくんに内容の解説と、灰原くんに効果的な使い方の説明を受けて真面目に勉強している。
気が付けばみんながみんな思い思いに寛いでるので、私は一人黙々と作業をしてる門崎くんが気の毒になり、メンテナンスルームへと戻って簡単なお手伝いしようと思い、その事を彼に告げました。
すると彼は少し驚いた顔をした後に、嬉しそうにフッと笑って『少し待ってな、俺が昔使ってたマイスター用の教科書を譲ってやるから』と言い残して、自分の部屋に向かいました。
…………少ししてからアリサちゃんと門崎くんの低レベルの言い合いが聞こえて来た事に、スノーホワイトと共に呆れるのでした。
すずかが使った障壁殴りを見た門崎くんの内心でのコメント。
『ブラインド・マーカーかよ!? 何処の宇宙海賊だよ!!』