銀髪の狂った天才――問題児たちが異世界から来るそうですよ?   作:我楼

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第二話『ウサギと世界のお勉強です!』

 俺達は濡れた服を乾かしつつ、仲良く談笑……だったら良かったのだが、全員が全員差こそあるが不安と苛立ちによってピリピリとした空気がこの場に出来ていた。

 仕方もないだろう、上空4000mから紐無しバンジーをやり、死ぬかもしれないような速度で湖に落下したのだ。そのせいで、生きてはいるが服は濡れるわ、服が張り付いて気持ち悪いわ、と散々な目に遭っているのだ。しかも、俺達を召喚した野郎も現れないのだ。

 

「で、呼び出されたはいいけど何で誰もいねえんだよ。この状況だと、招待状に書かれていた箱庭というものの説明をする人間が現れるんじゃねえのか?」

「そうね。なんの説明もないままじゃ動きようがないもの」

「いっそのこと上空で見えた幕のような方向へ進むのもアリだと思うが?」

「……それは賭け要素が多すぎるよ。まあ、この状況に対して落ち着きすぎてるのもどうかと思うけど」

(全くです)

 

 十六夜が口を開き、ついに文句を言う。それに同調して飛鳥が会話を続ける。

 この空気を打開するには、はやくウサ耳少女が出ればいいだけの話なのだが、それを望むのは止めた方が良いだろう。こんな空気の中のそのそと出てこられる奴がいたら、それは英雄か馬鹿のどちらかだ。

 

「……仕方がねえな。こうなったら、()()()()()()()()()()()()話を聞くか?」

 

 十六夜が溜息混じりに放った言葉に、ウサ耳少女は飛び跳ねて萎縮する。俺らはある一点に視線を寄せる。

 

「なんだ、貴方も気づいていたの?」

「当然。かくれんぼじゃ負け無しだぜ?そっちの二人もわかっていたんだろ?」

「風上に立たれたら嫌でもわかる」

「まあ、生き物の匂いには敏感でな」

「……へえ、面白いなお前ら」

 

 全員、気がついていたようである。まあ、あんな物陰でずっとこちらを見ているのだから、それも当たり前のことだろうか。

 

「や、やだなぁ御四人様。そんな狼みたいな怖い顔で見られると黒ウサギは死んじゃいますよ?ええ、ええ、古来より孤独と狼は兎の天敵でございます。そんな黒ウサギの脆弱な心臓に免じてここは一つ穏便に御話を聞いていただけたら嬉しいですヨ?」

「断る」

「却下」

「お断りします」

「……そこの貴方様は……?」

「ごめんね、黒ウサギ……さん?()()()

「あっは、とりつくシマもないですね♪」

 

 バンザイと両手を挙げる少女。黒ウサギと言うらしい。四人とも初対面とは思えないコミュニケーション力である。この人間というかウサギというか、ともかく黒ウサギは有能であろう。

 いつのまにか、耀は黒ウサギの横まで移動していた。一度、もふもふそうな黒ウサギの耳を見る。見るというよりかは、獲物を見定めているようであったが。

 

「えい」

「フギャ!」

 

 やはり、耀は耳を力一杯引っ張った。

 急なことだったせいか、黒ウサギはへんてこな悲鳴を上げる。が、直ぐに止めに入った。

 

「ちょ、ちょっとお待ちを!触るだけなら黙って受け入れますが、まさか初対面で遠慮無用に黒ウサギの素敵耳を引き抜きにかかるとは、どういう了見ですか!?」

「好奇心の為せる業」

「自由にもほどがあります!」

 

 怒鳴りつける黒ウサギ。初対面の人にここまで怒ることができるのも凄いとは思わないのか。ましてや、さっきまで待たせ、理不尽な呼び出し方をした相手なのだ。

 それにしても、ウサギって触ったことないんだよなぁ……気持ちよさそう。

 

「へえ?このウサ耳って本物なのか?」

「……。じゃあ私も」

 

 問題児、見参!

 嫌がっている黒ウサギを余所に、耀の次に十六夜が右から、飛鳥が左から黒ウサギの(自称)素敵耳を躊躇なく引っ張り上げる。これこそ問題児、これこそが人間の在るべき姿だと思うんだ。いや、理性とか遠慮がなかったら文明の発展も平和な世界も存在しなかったんだろうけど。

 

「そこの貴方、助けてっ―――!!」

「え?やってほしいのか?仕方がないウサギちゃんだ」

 

 俺に本人からのご希望があったので、好都合だと思いながら、少々軽い足取りでその場に行く。場所は飛鳥に引いてもらうと、耳を全力で引っ張る。

 

 それからは、ここら一帯に数十分の間少女のへんてこな悲鳴が木霊したという。問題児四人組はそんなことはお構いなしに順番に引き抜きにかかり、黒ウサギが怒っても泣いても止めなかったという。鬼畜である。

 

※※※

 

 目の前で黒ウサギがシクシクと泣いている。30分くらいまでは怒っていたのだが、40分に到達すると怒る気配がなくなり、50分で諦めていた。うん、南無三。

 

「あ、有り得ない。有り得ないのですよ。まさか話を聞いてもらうだめに小1時間も消費してしまうとは。学級崩壊とはきっとこのような状況を言うに違いないのデス」

「いいからさっさと進めろ」

 

 酷い仕打ちが終われば、元気になるらしい。精神つよいなぁ。でも、こんな状態の黒ウサギに容赦なく追撃する十六夜も流石だな。いや、可哀想だから止めてやれよ。

 黒ウサギは、話を聞いてもらう状況を作るのに成功したのが嬉しいのか。涙を拭いて、両手を広げた。

 

「それではいいですか、御四人様。定例文で言いますよ?言いますよ?さあ、言います!ようこそ、”箱庭の世界゛へ!我々は御四人様にギフトを与えられた者達だけが参加できる『ギフトゲーム』への参加資格をプレゼンさせていただこうかと召喚いたしました!」

「ギフトゲーム?」

 

 俺も思った。なんだ、ギフトゲームって。なんとなくギフトってものが俺達が持っている能力(?)的なのと関係があるのはわかったが……いまいち理解がな。

 

「そうです!既に気づいていらっしゃるでしょうが、御四人様は普通の人間ではございません!その特異な力は、様々な修羅神仏から、悪魔から、精霊から、星から与えられた恩恵でございます。ギフトゲームはその”恩恵(ギフト)゛を用いて競い合うためのゲーム。そしてこの箱庭の世界は強大な力を持つギフト保持者が、オモシロオカシク生活できるために造られたステージなのでございますよ!」

 

 ああ、うーん、わからねえな。後で詳しく解説してもらうとしよう。呼び出されたんだから、あちらが答える義務くらいはあってもいいはずだ。

 

「まず、初歩的な質問からしていい?貴女のいう我々とは貴女を含めた誰かなの?」

「YES!異世界から呼び出されたギフト保持者は箱庭で生活するに当たって、数多とあるコミュニティに属していただきます♪」

「嫌だね」

「属していただきます!」

 

 なんていうコント。というかそろそろ俺にかみ砕いて説明してくれ。コミュニティって何だよ。え、えいごでいいのか?おい、そこの猫教えろ。

 

「そしてギフトゲームの勝者はゲームの”主催者(ホスト)゛が提示した商品をゲットできるというとってもシンプルな構造となっております」

「……主催者って誰?」

「様々ですね。暇を持て余した人を試すための試練と称して開催されるゲームもあれば、コミュニティ力を誇示するために独自開催するグループもございます。特徴として、前者は自由参加が多いですが、“主催者゛が修羅神仏なだけあって凶悪かつ難解なものが多く、命の危険もあるでしょう。しかし、見返りは大きいです。“主催者”次第ですが、新たな“恩恵”を手にすることも夢ではありません。後者は参加のためにチップを用意する必要があります。参加者が敗退すれば、それらは全て“主催者”のコミュニティに寄贈されるシステムです」

「後者は結構俗物ね……チップには何を?」

「それも様々ですね。金品・土地・利権・名誉・人間……そしてギフトを賭けあうことも可能です。新たな才能を他人から奪えば、より高度なギフトゲームに挑むことも可能でしょう。ただし、ギフトを賭けた勝負に負ければ当然―――ご自身の才能も失われるので悪しからず」

「ちょ、ちょっと待て。それって両者同意の真剣勝負ってことだろ?」

「そうとも言えますね」

「じゃあどうやったら始められるんだ?ギフトゲームってやつは」

 

 今まで口を開かなかった……否、開けなかった俺もついに口を開く。この世界の根本はギフトゲームってやつで構成されているとみた。だからこそ、聞かなければいけない。強制参加のものがあったらヤバイからな。

 

「コミュニティ同士のゲームを除けば、それぞれの期間内に登録していただければOK!商店街でも商店が小規模のゲームを開催しているので、よかったら参加していってくださいな」

「……つまり、ギフトゲームとはこの世界の法そのもの、と考えてもいいのかしら?」

 

 飛鳥の発言に、少し感心した黒ウサギ。さっきからあざと過ぎる。

 

「ふふん?なかなか鋭いですね。しかしそれは八割正解の二割間違いです。我々の世界でも強盗や窃盗は禁止ですし、金品による物々交換も存在します。ギフトを用いた犯罪なんてもってのほか!そんな不逞な輩は悉く処罰します―――が、しかし!『ギフトゲーム』の本質は全く逆!一方の勝者だけが全てを手にするシステムです。店頭に置かれている商品も、店側が提示したゲームをクリアすればタダで手にすることも可能だということですね」

「そう。中々、野蛮ね」

「しかし、“主催者”は全て自己責任でゲームを開催しております。つまり奪われるのが嫌な腰抜けは初めからゲームに参加しなければいいだけの話でございます」

「さて、皆さんの召喚を依頼した黒ウサギには、箱庭の世界における全ての質問に答える義務がございます。が、それら全てを語るには少々お時間がかかるでしょう。新たな同士候補である皆さんを何時までも野外に出しておくのは忍びない。ここから先は我らのコミュニティでお話させていただきたのですが……よろしいですか?」

 

 黒ウサギは一枚の封書を取り出す。たぶん、一通り説明を終えたのだろう。俺の質問は黒ウサギのコミュニティとやらに行ってからでいいだろう。まだ、入るとは決めてはいないがそれだけで突っぱねる様な状態でもない。それよりか、箱庭内で募集すればいいメンバーをわざわざ外界から呼び出す意味ってなんだ?

 

「待てよ。まだ俺が質問してないだろ」

 

 今まで、静聴していた十六夜が声をあげて立ち上がる。ここまでの間ずっとふざけた様子がなかったな。

 

「どういった質問です?ルールですか?ゲームそのものですか?」

「そんなものは()()()()()()。腹の底からどうでもいいぜ、黒ウサギ。ここでオマエに向かってルールを問いただしたところで何かが変わるわけじゃねえんだ。世界のルールを変えようとするのは革命家の仕事であって、プレイヤーの仕事じゃねぇ。俺が聞きたいのはたった一つ、手紙に書かれていたことだけだ」

 

 十六夜はこの場の全員……否、一人を除いた四人を見て、先に広がっている大きな天幕を見上げる。そして、十六夜は全てを見下した表情で一言、

 

「この世界は……面白いか?」

 

 十六夜が何を経験したかはわからない。しかし、修羅神仏などから与えられた“恩恵(ギフト)”によってツマラナイ人生を送ってきた三人も黙る。

 

 黒ウサギは、真剣に、そして茶目っ気を存分に入れて、

 

「―――YES。ギフトゲームは人を超えた者達だけが参加できる神魔の遊技。箱庭の世界は外界より格段に面白いと黒ウサギは保証します♪」

 

 その言葉を、肯定した。




無事、二話を出せました。(書き溜めたヤツ←)
こんにちは、我楼です。

まだまだ、話は準備段階ですね。紅夜についても、ウサギのことにもあまり触れずにごく普通の説明回。
少しずつ、話のテンポを上げていきたいですね。(希望)

まあ、まだわからないけど応援してやるぜ!or次も見てやるぜ!という心優しいお方がいたら、お気に入り、コメント等お願いします。

それでは、次回も読んでくれたのなら)
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