どんな人生でも好きなことして生きられれば最高さ 作:はないちもんめ
「ビーフorフィッシュ?」
「両方で」
「いや、お客様orって聞いてますよね?誰もand何て言ってませんよね?」
「何だよケチケチすんなよ儲かってんだろ?誰もどっかのナッツ姫みたく飛行機を戻せなんて言ってないだろ?それに比べたらビーフとフィッシュの両方出すなんて些細なことだよ。宇宙から見た人間の大きさくらい些細なことだよ」
「無茶苦茶言わないで下さい。摘み出しますよ」
「分かったよ。じゃあ、eggで」
「第三の選択肢を出さないで下さい」
全く融通が利かない職員だ。このままではこの世界は危ないかもしれない。
もっと様々な性格の人が生きやすい世界にできるように社会の仕組みを変えるべき時にきているのだ。
だというのに、このCAは俺の意見を無視して勝手にビーフを持ってきた。
まあいい、黙って食べるか。
何と言っても俺はビジネスクラスで旅行できる選ばれし人間だから。デジヴ〇イス持ってるから。毎年8月1日には選ばれる可能性を考えてスタンバってるから。
だからこそ、こんな小さなことで心を乱しはしないのだ。
これは俺の優しさが実を結んだ結果だから。いやあ、やはり良いことはしておくものだ。
~今から一週間前~
「ギャーーーーーーーーーーー!!!」
ドカーンという大きな音と共に小柄な男がアイテム屋から弾き出される。
全く醜い男だ。まるで優雅じゃない。見ていて悲しくなる。
「いや、お前が蹴飛ばしたんだろ。それとウチの店のドア後でちゃんと直しておけよな」
汚いアイテム屋の親父が何か言ってるが俺には何も聞こえない。
全ての責任はこいつにある。今の地球温暖化も少子高齢化も俺が貧乏なのも全部コイツのせいだ。
俺はソイツに責任を取らせるべく胸倉を掴み上げる。
「おい、お前よお。依頼通りキリちゃんのライブのチケットを徹夜で並んで手に入れてやったのに、テメエ依頼料が払えねえとはどういう了見だ、この野郎。指いっとくか?ああん?」
「ま、待ってくれアニキ!!しょうがなかったんだ!!あんなかわいい顔で今夜どお?何て言われたら男として断るわけには、ごふう!!」
くだらんことをほざく男の顎を蹴り上げる。
「ようするにアレか。お前俺に払うはずの依頼料を使って女の子とイチャイチャしてた訳か。つまり、殺されても良いんだな?」
スラリと剣を抜く。そこそこ長い付き合いだがまるで迷いはない。
金の切れ目が縁の切れ目とは良く言ったものだ。今から俺がこのことわざが正しかったことを証明してやろう。
「本当に待ってえ!!お願いだから!!損とかさせないから!!いや、マジで!!!」
「なら聞くだけ聞いてやる。2秒で言え。1、2はい終了さようなら」
「待ってないっすから!!俺に答える時間なんて欠片もなかったじゃないっすか!!!」
チッ、うるさい野郎だ。これから死を迎えるのだから、喋っても喋らなくても同じだろう。
「問題ない。お前が死ぬのは決定事項だ。俺がデスノ〇トに名前を書いた。死因は・・・まあいいか、適当で。心臓麻痺で良いだろ」
「せめて死因は書いて!!心臓麻痺って名前だけしか書いてないじゃないっすか!!もうちょっと手間暇かけて下さいよ!!!」
「いや、お前ツッコむ所はそれで良いのか?自分が死ぬことはスルーなのか?」
「分かった。間をとって心臓抉り出してやる。それで良いだろ?」
「わーい、やったぁ。ってなると思ってんすか!?いやー、死にたくないーーー!!!ちょ、ちょっとタジルさん!!あんたツッコんでないで助けて下さいよ!!店前で殺人事件が起きますよ!?じっちゃんの名にかけて、こんなこと許して良いんすか!?」
「そうだな。おい、レイン。殺すなら離れた所でやれ。他の客に迷惑だ」
「おっと、すまねえ、おっさん。俺らしくもなく焦っちまったよ」
「らしくもねえ。昔から言ってんだろ?殺すときは落ち着けってよお」
「はは。まだまだ半人前だな。それじゃ、そこの路地で殺してくるわ。じっちゃんの名にかけてな」
「何臭いコントやってんの!?ほのぼの感出してるけど内容とマッチしてないんすけど!!それだと、じっちゃん殺人者になっちゃうんすけど!!助けてくれえ、姉御ーーーー!!!この殺人者を止められるのはもう姉御しかいませんーーー!!!」
「あいつが来てもお前を助けてはくれねぇよ。嫌われてんだよ。察しろ」
「いや、そんなことはありません!俺と姉御は確かな絆で結ばれてるはずです!」
「その絆で結ばれてる相手にお前こないだ踏みつけられてたの?」
「あれは親愛表現です。俺には分かります。あの虫ケラを見るような視線…ああ、今思い出しても快感が」
「相変わらずのドMっぷりだな。そんなに好きなら告白でもしてこいよ。結果は見えてるけど」
「何言ってんすか、兄貴!分かってないっすねぇ。俺にとって姉御はご主人様なんですよ。キリちゃんと同じく手の届かない至高の存在なんですよ。だから、告白とかそういうことをする対象じゃないんです!分かりますか!」
「分かんねぇよ。お前がもう色々手遅れなことしか分かんねぇよ」
「兄貴だって、その内分かりますよ!俺以上に姉御にボコボコにされてる兄貴なら、いずれ俺の境地に至ります!」
「よし、死ね」
「何でですか!?そんなに嫌ですか!?」
「お前助かりたいのか?それとも挑発してるのか?どっちなんだ?」
俺を勝手に変態の仲間にさせようとしてくるド変態に粛清を加えるべく、抜いていた刀を降り下ろす体制になる。
「長い付き合いだったな。あばよ」
「あばよするのにはまだ早いです!!落ち着いて!!まず、これを見て下さい!」
いよいよ、俺が本気だと伝わってたのか慌てて何かの紙を懐から取り出す変態。
「何だよ、この紙」
「飛行機のチケットです」
「んなもん見たら分かる。これがどうしたってんだよ。まさか、お前こんなんが依頼料の代わりになると思ってんじゃねぇだろうな?」
だとしたら、やはり処刑するしかない。金がない俺が旅行に行ったって意味がない。宿も取れない。遊びにも行けない旅行などストレスが溜まるばかりだ。売るにしても見た限り出発日も近いから大した金にはならんだろう。
「いや、凄いんすよ、この飛行機のチケット!見て下さい!ビジネスクラスです!」
ピクッと眉が動く。ビジネスクラスとは、まさかエコノミーの上位互換と噂されるあれか?
俺の反応から勝機を見出だしたのか、変態は畳み掛ける。
「ビジネスクラスの空の旅は快適ですよ!まるで疲れません!自分が偉くなったような爽快感を味わえます!加えて今なら目的地に自分の知り合いがいるっすから、格安で泊まることが可能です!どうっすか!?お得でしょ!?」
「営業マンかお前は」
「タジルさんは黙ってて下さいよ!更に極めつけは、宿屋の近くには○○店があります!兄貴の好みのさやかちゃん似の女の子もいますから、その子とあーんなことや、こーんなこともできますよ!」
俺は無言で手を伸ばす。笑いながら、その手を変態が取る。交渉成立だ。
「分かってたよ、お前は唯の変態じゃないって。最高の変態だってな」
「へへ。当たり前だろ兄貴。俺は兄貴が信じる最高の変態になるって誓ったんだ。これぐらい朝飯前さ」
「分かってると思うからツッコミたくないんだが、お前全く凄くないからな。最高の変態になったって、最低の人間になるだけだからな」
うるさい親父を無視して俺と変態は肩を組んで歌い出す。俺の伝説はここから始まるのだ。
「さやかちゃん似の女の子と○○○○するために、ヨーロッパに行こう!」
「目的地はヨーロッパじゃねぇだろ」
いやー、本当に良いことはしておくものだ。
椅子は快適。食事は旨い。頼めばビールだろうが、ワインだろうが好きなだけ持ってきてくれる。
エコノミークラスで旅行をしてる人が愚民に見えてくる。ふはははは、人がゴミのようだという名言はこういう時に使うのだろう。
そんな良い気分を味わっていたら急に機体が揺れた気がする。いかんな、少し酔い過ぎたか。
「なあ、お姉さん。ちょっと機体が揺れてると錯覚するぐらい酔っちゃったからさぁ、水くれる?麦茶があれば更に良いけど」
「何を仰ってるんですか、お客様!?本当に揺れてるんですよ!現実見て下さい‼」
「え?お姉さん揺れてるの?参ったなぁ。まあ、揺らしちゃった俺にも責任あるし、お姉さん可愛いから付き合うのも良いかなと思うけど」
「ぶっ飛ばしますよ!?私の心が揺れてるんじゃないんですよ!!機体が揺れてるんですよ!!貴方以外のお客様は皆パニック状態ですよ!!」
「あー、どーりで騒がしいと思ったわ。何で揺れてんの?悪天候?それともハイジャック?まあ、どっちにしても大丈夫だよ。ブルー○ウィルスが助けてくれるから。俺好きなんだよねー、ダ○・ハード。皆1が良いって言うんだけどさー、俺は2が良いと思うんだよ。お姉さんはどう思う?」
「これは映画じゃないんですよ!トラブルの原因は分からないですけど現実なんですよ!ブルー○ウィルスは来ないんですよ!そして、私は3派です!」
「なるほど、3派ね。良いと思うよ俺は。あの黒人のおっさん格好良かったもんな。名前知らないけど凄い印象に残ってるわ」
「そんな話してる場合じゃないんですよぉーーー!!原因不明で機体が揺れまくってるんですよ!何で映画の話なんてしてられるんですか!!」
「涙目のお姉さん可愛いけどさぁ、俺の肩を掴んで揺らしまくるの止めてくんない?酔ってる上に機体も俺も揺れてたら吐きそうになるんですけど」
「安心していいよ人間たち。ブルー○ウィルスじゃないけど私が来た。危害を加える気はない」
俺とお姉さんが喋っていると、前の機長席から白髪の男が出てきた。何か見覚えあるような。てか、あいつがハイジャック犯なんじゃないの?
「なあ、お姉さん。あいつ機長席から出てきたけどハイジャック犯なんじゃないの?捕まえなくていいの?」
「ええ!!?私にハイジャック犯を捕まえろって言うんですか!?無理ですよ‼お客様男なんですから代わりに行ってください‼」
「は?何で俺がそんな面倒なことしなきゃいけないんだよ。俺は客だよ?しかもビジネスクラスだよ?エコノミーに行かせれば良いじゃん。あいつら金ないんだし」
「最低ですね、お客様!!!?」
こんな風に俺とお姉さんの話が盛り上がってるにも関わらず、前の白髪の男は喋ることを続ける。
「この飛行機が揺れてる原因は私がウドで飛行機の指揮権を奪い取ったからだよ。人間のセキュリティーを破ることくらい異界から来た私には簡単だった。今日は、この場にいる人間を特別にその異界へと連れて行ってあげようと思ってるんだ」
「何か言ってることが電波なんだけど。中二病なの?」
「静かにして下さい!刺激しちゃ駄目です!思っていても口に出しちゃいけないことがあるんですよ!」
「私は電波でもなければ、中二病でもない。私の名前はこの次元の言語で言うと」
その男は腕を広げて告げる。
「ザキュニナだ。人間たちよ。私と一緒に正解を選択しようじゃないか」
注 異邦の方とは一切関りがありません