どんな人生でも好きなことして生きられれば最高さ   作:はないちもんめ

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唐突に意欲が湧いたので久しぶりの投稿です!


21 最低な出会い

「しっつこいな、執務官!」

 

「じゃあ、いい加減に諦めなさい!」

 

突如として勃発したティアナ・ランスターとの闘争劇だが、その最中でも一つだった。

 

やってられない。

 

レインの心情を表現するとしたらその一言に尽きた。

 

 

依頼人の話より標的の数が多かったのは、まあ、良い。

 

その結果として管理局が来る前に逃げられなかったのも腹は立つが許そう。

 

しかし、それがよりによって「あの」ティアナ・ランスターというのは流石に俺が可哀想過ぎるのではないだろうか。

 

「あー、もう、鬱陶しい!」

 

レインは何度目になるか分からない自身に向かって放たれる魔力弾をデバイス刀で相殺する。

 

素の身体能力ではレインの方が上のようだが、このように嫌らしいタイミングで計ったように撃ち込まれるティアナの誘導弾がそれを帳消しにしているせいで逃げ切ることが困難になっている。

 

自分の運の悪さに舌打ちをしたくなる。日頃の行いが悪いのが原因だと思われる。

 

「大体さー、何で俺が狙われなきゃならないんですかねぇ!?俺が一体何をした!」

 

「器物破損、傷害罪、公務執行妨害、他にもまだ必要ですか!」

 

「依頼なんだから仕方ねぇだろ!俺にも生活がかかってんだよ!そもそも、殺されて当然のクズどもをお前らの代わりに潰してやったんだから見逃してくれても良いだろ!」

 

「貴方にそんな権限はありません!権限がない人がそんなことをすればそれは暴力と変わりません!」

 

「いいじゃねぇか別に!お前らだって多少の裏取引とかするだろ!?それと同じだよ!」

 

「同じじゃありません!それは司法取引の話ですよ!そんなに取引がしたいのならば大人しく捕まりなさい!」

 

「ふざけんな、こっちは捕まりたくないから取引だって言ってんだよ!大体それで取引して俺に何の得があんだよ!」

 

「情報によってはある程度融通が効くと思いますよ!このまま犯罪者として逃げ回るよりオススメしますが!」

 

ティアナの言葉を聞いてレインは突然ピタリと停止した。不審に思ったティアナだが、そのまま距離を詰めるようなことはせず自らに有利な距離を保つ。しかし、そんなことはお構いなしにレインは恐る恐る尋ねる。

 

「…ある程度ってどのくらい?」

 

「…情報によりますので一概には言えませんが、重要な情報であればそれなりの譲歩はしますよ」

 

まさか賞金首がこんなことで捕まるとは思わないが、万が一の可能性を考えて一般的な回答を答える。戦わずにすむのであればそれが一番良いからだ。

 

まあ、とは言え

 

「もしかして、ランスターさんの身体を一日好きにして良いとかそんなことも可能になるとかあります?」

 

「あるわけないでしょ、この変態!譲歩って言うのは執行猶予とかそういう話よ!」

 

一番良いとは言ったが、そのための条件が余りにも論外であれば当然断る。ティアナは顔を真っ赤にしながらレインの提案を完全に否定する。

 

しかし、懲りないと言うべきかレインは続けて提案する。

 

「まあ、ですよね…じゃあ、代わりといっちゃなんですけどランスターさんのパンツでも良いんですけど」

 

「代わりになるわけないでしょうが!?馬鹿なの!?」

 

「できれば脱ぎたてのやつが良いんですけど、ダメですかね?」

 

「話を聞け!何なのアンタ!?捕まれば死ぬかもしれないのよ!?パンツのために死んでいいわけ!?」

 

「ぶっちゃけ、メッチャタイプな女性のパンツと引き換えなら別に…」

 

「全く嬉しくない褒め言葉をどうも!」 

 

レインにとってティアナは原作キャラで一番タイプであった。どうでも良い話だが。

 

馬鹿みたいな会話に緊張感が無くなっていくティアナだが、どんな馬鹿な変態でも賞金首には変わらない。

 

もしかしたらこれも自分を騙すための擬態なのではないかと考え、思考を切り替える。

 

なお、全くの誤解であり全てレインの素なのだがティアナにとっては知らない方が幸せである。

 

顔つきを完全に切り替えたティアナはクロスミラージュから魔力弾を発射する。ふざけてはいながらも、レインとてティアナの動作は見ていたので危なげもなく回避しようとするが誘導弾であったそれは磁石に吸い寄せられるかのように向きを変えてレインの方向へ襲い掛かる。

 

回避できないことを悟ったレインは迎え撃つことを選択して誘導弾を叩き落とすが、その間にティアナは誘導弾でレインの周囲を囲い込み回避不可能な状況へと追い込む。

 

それを確認すると、舌打ちをしながらもレインは即座に地面へと腕を突っ込む。

 

怪訝な表情を浮かべるティアナにも地鳴りの振動が伝わり、コンクリートに刺さっているレインの腕の筋肉は膨張し、先ほどよりも太くなっており青筋が浮かび上がっていた。

 

びしり、と亀裂が走り、自身の目の前に映し出される光景にティアナは思わず頬を引き攣らせる。

 

「嘘でしょ…?」

 

驚愕にティアナは思わず言葉を溢す。レインが唯の力技で自らの身体の10倍は軽く超えるコンクリートの岩盤を片手で抉り出したのだから当然と言えば当然だ。近接型には力自慢が多いがここまでの奴には中々お目にかかれない。

 

「くらっとけ」

 

その持ち上げたコンクリートを自身を包囲する誘導弾目掛けて思いっきり振り下ろす。

 

轟音が鳴り響くと同時に破壊の衝撃によって発生した砂煙がレインとティアナの視界を遮断する。

 

視界はゼロだが先ほどのティアナの位置を把握していたレインは即座に駆け出し、薄らと見えたティアナのシルエットに踵を振り下ろすがその攻撃は空を切る。幻影だったのだ。

 

「お返しよ!」

 

その攻撃を少し離れた所から確認していた本物のティアナは魔力弾をその周囲へと叩き込む。その衝撃とコンクリートの破片が無差別に周囲を襲う。

 

まともに受けたら痛いでは済まないであろう衝撃をレインは空中へと飛ぶことで回避するがその瞬間に狙いを定めていたティアナに狙い撃ちされる。

 

「バレット…シュート!」

 

「っ、カートリッジロード!」

 

回避は不可能と判断したレインは切り札を切る覚悟を決める。

 

迫り来る魔力の塊に対してカートリッジを炸裂させて増強させた魔力刀で迎え撃つ。

 

凄まじい音が響き渡り、衝撃でティアナにも暴風が飛来する。

 

(手応えはあった…けど)

 

暴風が収まり、その場に目を向けると無傷で立っているレインがいた。

 

衝撃でデバイスが吹き飛ばされ、痺れたのか腕を振っているがその程度だ。

 

その事実にティアナは顔を顰める。

 

これだけ戦って自分も無傷とはいえ、ノーダメージなのだ。別にプライドが傷ついたとかそんな話ではないが、多少のショックはあった。

 

やはり賞金首というのは伊達ではないようだ。

 

お互い大技を繰り出し、お互いの攻撃が少し止んだ所で今までの戦いをティアナは振り返っていたが、一つ気になることがあった。レインが攻撃を受けなさすぎであることだ。

 

勿論、回避能力が優れているということはあるのだろうがこれだけ攻撃を全て相殺するか避けるというのは少々異常と言えた。先程の石礫の攻撃もそうだが避けずに受け止めていれば反撃を受けないこともままあった。

 

状況判断能力が鈍いのか?それは否だ。これだけ戦い慣れていてそれは有り得ない。

 

だとすると答えは一つ。恐らくだが、防御力がとてつもなく低い。だからこそ、回避か迎撃をせざるを得ないのだ。

 

そう判断したティアナは攻撃方法を質から量へと切り替える。手数重視の攻撃では一発一発が軽くなってしまうものの、相手の防御力が低いのであれば十分な威力になるだろう。

 

ティアナの様子から自分の耐久力に問題があるとバレたとレインは気付いたがさして驚きはしなかった。自分の防御力が低いことなど少し戦えばティアナレベルの頭脳があれば瞬時にバレてしまうことなど明白だからだ。

 

ティアナの予想は当たっていた。レインの耐久力は弱いどころではなく紙防御と言って差し支えないほど酷いものだ。前衛としては頭がおかしいのではないかと疑いたくなるほどに最低限の防御以外は攻撃に割り振っている。

 

そのような割り振りにしたのにはそれなりに最もな理由があるし、何より前世では攻撃を受けてダメージを負うということは至極当然のことであったのでレインにとってはこれが普通だったのである。

 

とは言え、現状が不利になったことは変わりない。攻撃に備えるためにある程度遠くに落ちた自分のデバイスを取りにいきたいのだがどうやら予想されているようでティアナからの視線をヒシヒシと感じる。

 

それ以外にもデバイスは持っているが、あまりポンポン使ってしまうのも好ましくないと考えたレインは魔道具を使用することにした。

この魔道具は一定範囲以内のもので自分が望むものと魔道具の位置を入れ替えるというかなりレアな物なのだが、こうなったからには使うしかない。

 

とんだ出費だと思いながら自身のデバイスを脳裏に思い浮かべ、魔道具を発動させる。瞬時に魔道具は発動したようで手元から消え去ったが代わりに感じる感触が何故か非常に柔らかい。どう考えてもデバイスではないので不思議に思い手元へと目をやる。

 

予想外の物があった。いちごパンツだった。

 

意味が分からなかった。何故、ここに、いちごパンツがある?

 

何やら生暖かいので誰かが履いていたようだが一体誰が履いていたのだ?

 

そこまで考えて気が付いた。あの魔道具は一定範囲のものとしか交換できないのだ。つまり、一定範囲以内の誰かが履いていたということになる。自分は勿論履いていない。そうなると消去法で一人しか考えられない。

 

全身からダラダラと冷や汗を流しながらレインは前を向いた。すると、そこには顔を真っ赤にさせて何やらバリアジャケットの下を心なしか抑えながらぷるぷると震えるティアナの姿があった。噴火寸前の火山を見ている気分だった。

 

真実に気付いたレインは更に汗を吹き出しながら、この状態で武器よりもパンツを心中で欲していた自分の業とか魔道具に秘められた未知の可能性とかティアナっていちごパンツ履いてるんだとか色々考えたがとりあえず何かを言わなければならないとは思っていた。

 

(どうする!?悪気は無かったって言って謝るか!?それともこのパンツについて触れた方が良いのか!?何が正解なんだ!?)

 

どの回答を選んでも地獄行きの気はするが、何とか天国へと繋がる道を探してレインは脳内をフル回転させる。

 

「え…と…ありがとうございました」

 

ペコリと誠心誠意御礼を言うことにした。悪気は無かったとは言え、美人のパンツが手に入って嬉しくないはずがないからだ。そして、その結果火山は噴火した。

 

「くたばれ、このドスケベがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

顔を更に真っ赤にさせて目に涙を浮かべたティアナから集中砲火の返答をいただく。実質、ギルティ宣言だ。当然の反応だが。

 

「ギャァァァァァ!!!ちょ、マジごめん!悪気は無かったんだって!!今度代わりのパンツやるからそれで許してください!」

 

「許すかぁぁぁぁぁぁぁぁ!!変態!スケベ!くたばれ!」

 

「仮にも執務官がくたばれなんて言ってんじゃねぇぇぇぇぇぇ!!」

 

レインは悲鳴を上げながらひたすら逃げる。圧倒的な恐怖から逃げると言う選択肢しか頭に浮かんで来ない。勿論、その間もしっかりとパンツは握りしめている。それが益々ティアナの怒りを煽っていた。

 

暫く、そのようにひたすらに逃げ回っていたが冷静に見れるようになるとティアナの攻撃が最初よりも粗くなっていることに気が付いた。

 

魔力のコントロールはかなりの集中を必要とするものであり今のように冷静さを失うことがあれば精密さが落ちるのは必然と言える。このような予想外の事態への対応訓練が足りなかったのだ。戦闘中にパンツを奪われても焦らない訓練などやっていたらそれはそれで頭がおかしいと思うが。

 

ティアナが冷静になる前に決めるしかないと考えたレインは爪のデバイスを装備し、クラウチングスタートのような体勢になったかと思うと、地面を沿うような格好を取りながら本日最速のスピードでティアナへと迫った。

 

ティアナは一つだけ見誤っていた。元々、ティアナを倒すのではなく逃げようと考えていたレインは全力で戦っていなかったのだ。にも関わらず、ティアナはそれをレインの全力だと勝手に判断してしまっていた。

 

普段であれば、その可能性も考えて更に慎重に事を進めようと考えていただろうがパンツを盗まれた怒りで思考に隙が生じていた。

 

その隙を突かれたと理解したティアナは先ほどの怒りを凌駕する焦りを覚えて即座に距離を取ろうとする。

 

だが、不規則な動きを取りながらも確実に距離を詰めていくレインから距離を離せない。それどころか確実に縮められている。

 

悔しそうな顔をしながらも、相手が距離を詰めている事を逆手に取り迎撃を試みるために魔力を練る。

 

しかし、それが致命的に失敗だった。

 

その隙にレインは更に接近し、迎撃で放たれた魔力弾も多少威力が大きいものや急所に当たりそうなものだけを的確に防がれて進行を止めるに至らない。幾ら紙防御とは言え、非殺傷の魔法である。食らうと分かっていれば耐えられないものではない。

 

獲物に迫る肉食獣のような獰猛な笑みを浮かべながら空中へと飛んだレインは身体を回転させ、そのスピードを活かして攻撃を試みる。

 

体勢を低くすることで何とか躱したティアナだが今の状況が最悪なことは分かっていた。

 

この間合いは既にレインの間合いだ。

 

「カートリッジロード!!」

 

この好機を逃せないレインは確実に決めるべく、カートリッジを炸裂させ魔力を瞬間的に増大させる。必殺の一撃が来る事を悟ったティアナはクロスミラージュをダガーモードに切り替え攻撃を防ぐべく防御の体勢に入る。

 

その防御ごと打ち砕かんとレインの右ストレートは敢えてその防御のど真ん中へと突き込まれるが、苦渋の表情を浮かべながらもその一撃をティアナは耐え凌いだ。

 

後衛のティアナがレインの一撃をギリギリとは言え防いだことにレインは感嘆の声を上げる。これを防がれるとは予想外だった。

 

しかし、予想外ではあったが想定外では無かった。それをティアナも分かっていた。レインの右手をティアナは両手で防いでいる。つまり、まだレインの方には左手が残っているのだ。

 

レインは残された左手にも魔力を込める。既に手が空いていないティアナは<プロテクション>の膜を張るが急拵えのそれは豆腐のようにレインの左手に砕かれていく。そして遂にレインの左手はティアナの腹部へと突き刺さった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「後遺症とかないよな?」

 

自分でやっておきながらティアナに重傷を負わせたくないレインは慌てて様子を見るが気絶しているだけのようなので安心して息を吐く。

 

本当はもっと軽めの打撃に抑えるつもりだったのだが、実力が拮抗していたため手加減が出来なかったのだ。

 

「さて、どうするか…」

 

ティアナをこのまま放置しておくのは好ましくないのではとも考えたが、良く考えればティアナの仲間がここにはそこらじゅうにいるのだ。場所さえ教えれば後はそいつらが治療してくれるだろう。体力的にも余裕があるのでティアナ等のイレギュラーが居なければ十分に可能だ。今、考えているのはこんな極上の美人がノーパンでいるのに何もしないのは失礼なのではないかと言う事だった。

 

端的に言って最低だった。

 

しかし、仮にも紳士だ。気を失っている女性に何かをするのは流石に躊躇いがあった。クズにも最低限の礼節はあったらしい。

 

「もったいないけど…帰るか」

 

そう言うとレインは少し、いや、かなり、惜しいと思いながらもこの場から去って行った。

 

当然、パンツは持ったままである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




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