S.T.A.L.K.E.R.: F.E.A.R. of approaching Nightcrawler   作:DAY

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Interval 12 廃工場

 ナイトクローラーエリートを追い、出入口へと飛び込んだフィアーは目を見張った。

 出入口の先は長細い通路になっていた。それはいい。

 問題は追っていたはずのナイトクローラーエリートが通路の中心部で悠然と構えていたことだ。

 地下道は狭く、おまけに崩落が起きており、瓦礫が一部を塞いでいた。

 故に待ち受けるには絶好のポイントだ。にも関わらずわざわざ姿を晒す理由が分からない。

 その明らかに不審な態度にフィアーは、攻撃を躊躇せざるをえなかった。

 動きを止めたフィアーに対して、ナイトクローラーエリートはマスク越しに小さく笑った。

 

 「……良い判断だ。それ以上近づいていたら死んでいたところだ」

 

 その言葉でフィアーは気がつく。この地下通路全体が小さく帯電していることに。

 これは鉄橋の近くのトンネルでも見かけた電撃のアノーマリーだ。

 迂闊に動けば黒焦げということか。これでは戦闘どころではない。

 

 改めてナイトクローラーエリートを観察する。

 前作戦の時は黒い軽装のボディアーマーに頭部はゴーグルのみという機動力を重視した出で立ちだったが、今回は甲冑じみた装甲服に、前掛けのように腰から下をカバーする防弾布、頭部も装甲服と揃いの兜じみたフルフェイスマスクに覆われており、まるで漆黒の騎士か処刑人と言った趣だ。腰の後ろに引っ掛けてあるカービンライフルは宛ら処刑剣と言った所か。

 これがナイトクローラーエリートのZONE用の局地戦装備なのだろう。これほどの重装備ならアノーマリーに対しても高い耐性があるはずだ。

 

 全く装備が違うのにも関わらずナイトクローラーエリートと判断できたのは、彼らが共通して放つ、異常なまでのプレッシャーだ。

 前回の作戦に置いてもフィアーは複数のナイトクローラーエリートと交戦し、何人も仕留めている。だからこそ油断はしない。

 スローモーを用いて人間離れした身体能力で、空間を立体的に動く彼らの力を知っているが故に。

 

 こちらの機先を制するようにナイトクローラーエリートが電子的に変換された無機質な音声で問いを放った。

 

「一応聞いておくが、わざわざ所まで何のようだ? まさか本当にあの遺伝子データを追ってここまで来たのか?」

 

「そのまさかだ。殴られたらどこまでも追いかけて殴り返さなければ気が済まない質でな。俺からも聞くが、お前達は本当にアレを売り物にするつもりか? オーバーンが今どうなってるのか知らないわけじゃないだろう?」

 

 現在第二のZONEとなりつつあるオーバーンは米軍の手によって、物理的にも情報的にも封鎖されているが、完全ではない。

 それなりに伝手があるのなら、現状を把握するぐらいはさほど難しくはない。

 まともな人間ならあんな惨事を引き起こす危険物で商売するわけはないが、眼前の兵士と彼が所属する一団がまともではない事はフィアーは薄々感じていた。

 

「勿論知っているとも。素晴らしい……実に素晴らしい力だったな、あれは。」

 

 だがナイトクローラーエリートの返答は、更にその予想を超えていた。

 その言葉からは変声機越しにも理解できるほどの陶酔が含まれていた。

 

「俺は……自分自身を徹底的に鍛え上げ、時には薬物を使って肉体を強化し、人知を超えた力を手に入れたと思っていた。お前もわかるだろう? 俺達と同じ力を持っているお前なら」

 

 スローモーのことだろう。ナイトクローラーは組織レベルで兵士を強化し、スローモー能力を与える技術を有している。

 ……では自分は? 一体いつから、どこでこの能力を手に入れたのだ?

 小さな違和感と疑問が一瞬脳裏を掠めるが、すぐに消える。

 今はそんなことを考えている場合ではない。

 そんなフィアーの一瞬の逡巡にも気づかなかったように、ナイトクローラーエリートは言葉を続ける。

 ―――普段なら絶対にあり得ないことだ。あのナイトクローラーエリートが敵の僅かな隙を見逃すなど。

 

「ZONEでも俺達は無敵だったし、オーバーンでは亡霊だって蹴散らせた。どんな化け物が相手でも俺達は止められない。そう思っていた。―――あの力を見るまでな」

 

 そういって彼は自嘲気味に笑った。

 

「あのアルマの力を見た後じゃ、俺達の能力なんてものは安っぽいデリンジャーに過ぎないってことがよくわかったのさ。……俺はあの力が是が非でも欲しい。

 前のスポンサーは臆病者でな。俺達を切り捨てる気でいたんだ。だからデータを奪い取った。アノーマリー。ミュータント。このZONEのスポンサーは貪欲だ。実にいい。俺好みだ。」

 

 彼の語る言葉は狂気に満ちていた。

 信徒が神を語るかのようなその姿勢に、フィアーは薄気味悪さを感じた。

 兵士なら誰でも力を求めるものだが、アルマの力は力と言うには余りにも異質で禍々しい。

 他者を呪い、殺し、焼きつくす。

 奪うことすらしない、炎のように燃え上がり焼きつくすだけの憎悪の力。

 そんなものを人が制御できるとはとてもではないが思えなかった。

 だが、フィアーはアルマとは別のことを聞いた。

 

「……まるで、このZONEも人に作られたような言い方をするな?」

 

 その言葉に対してナイトクローラーエリートは、マスク越しにもわかるほど一瞬呆気に取られたような反応を示した。

 

「面白いことを言うじゃないか。こんな世界を人間以外の誰が作るっていうんだ? それよりも本題に入ろう」

 

「本題?」

 

 思わぬ言葉にフィアーは顔を顰めた。最早自分と彼らはどちらかが全滅するまで殺しあうしか無い。そういう関係だと思っていたのだが。

 

「こんな場所に逃げ込んだのもこうしてお前と話をするためだ。正直に認めなければならない。我々はお前に対して敬意と……恐怖すら抱いている。何しろお前達……いや実質お前一人に部隊は半壊させられ、ボスも殺された。これ以上の損害は御免だ。そこで提案だ。我々の仲間にならないか?」

 

「なに……?」

 

 余りの言葉に咄嗟に返すことも出来ずにいたが、ナイトクローラーエリートは気にせず続けてきた。

 

「スカウトさ、これは。お前は仲間を大勢殺しているし、それどころか前のボスまで殺っているが逆にそれがいい。ナイトクローラーは強さが全てだ。誰も文句は言えない」

 

 どうやら彼は本気のようだった。

 

「具体的な対価は?」

 

 とりあえずこう聞いてみた。それに対して返答はあっさりしたものだった。

 

「金。そして力だ。あの遺伝子データの研究によって得られる力を我々の肉体にフィードバックさせる予定だ」

 

「化物の仲間入りはお断りだ」

 

 それを聞いてナイトクローラーエリートは吹き出した。

 

「面白い冗談だ。俺から言わせればお前も立派な化物だよ。……さてそろそろお別れの時間のようだ」

 

 その言葉に不穏なものを感じ取ったフィアーは周囲の違和感に気がついた。

 彼の周りで無数の静電気が次々と弾けていくのだ。いやその現象は彼の周りだけでなく通路全体に起こっていた。

 

 ―――電撃のアノーマリー発動の前兆だ。

 

「……貴様、最初からこれが狙いか?」

 

「時間稼ぎのお喋りに付き合ってくれて感謝するよ。ZONEのアーティファクトには電撃を無効化するものもある。俺は装備しているが、お前はどうかな?」

 

 言っている間にも通路を走る紫電の輝きが強くなっていく。電撃が撒き散らされるまで後数秒か。

 その前にこの通路を出なければならない。

 一方ナイトクローラーエリートは帯電する雷撃など気にした様子もなく、悠然とした足取りで通路の奥へと向かっていく。しかしこちらは膨れ上がる雷に阻まれて、追撃は不可能だ。

 

 彼は首だけこちらを向けると最後にこう言い放った。

 

「仲間になるという事に付いてはいつでも受け付けているぞF.E.A.R.。俺はワーム。ナイトクローラーの今のボスだ」

 

 その言葉が終わると同時に、通路内を無数の雷が埋め尽くす。

 雷撃の奔流に巻き込まれるより先にフィアーは出口へと飛び込んだ。 

 

 

 

 

 

 ……その後実に5分近く雷撃をまき散らした後、通路内の電気のアノーマリーは沈静化した。

 当然、フィアーは沈静化と当時に通路内に再突入したものの、ナイトクローラーエリート……いやワームの姿はどこにもない。

 それどころか彼は自分だけでなく部下の始末まで行っていった。

 

 ここに来るまでに始末したナイトクローラー隊員の死体。それらがフィアーがアノーマリーの沈静化を待っている数分の間に全て焼却されていたのだ。

 ワームの痕跡を求めて地下施設を彷徨って判ったことだが、あの通路は最初にフィアーがナイトクローラー隊員と接敵した場所へと繋がっていたのだ。

 

 ワームはあの通路を使い、短時間でフィアーとナイトクローラー隊員との戦闘した場所へ向かい、焼夷手榴弾か何かで放置されたナイトクローラー隊員の死体を全て焼き払ったのだ。

 勿論骨まで全て焼きつくされたという訳ではないが、ナイトクローラー隊員の個人情報を示す痕跡―――所持品や隊員の身体的特徴等は全く判別出来ないほどには死体は損壊していた。 

 ご丁寧な事に、最初にワームの手榴弾の攻撃に巻き込まれて死亡したナイトクローラー隊員の死体も、徹底的に焼却されていた。

 

 あの時点で既に敵の始末よりも、部下の死体の始末を優先すること決めていなければ出来ない行為だ。

 その気になれば電撃のアノーマリーで離脱した後、回りこんでこちらが移動してきた経路を逆に辿って奇襲もできたはずだが、それをしなかったのが良い証拠だ。

 最初にわざわざ喋りかけてきたのは、マンホールに放り込んだ手榴弾で爆死した部下の死体に焼夷手榴弾を仕掛ける時間が欲しかったからに違いあるまい。

 

 戦闘の結果自体ではこちらの圧勝と言ってもいいかもしれないが、彼らから奪えた物はフィアーがナイトクローラー隊員から奪いとったアサルトライフルのみ。

 勝負に勝って試合に負けたようなものだ。

 そして彼らもF.E.A.R.が本格的に追撃していることを知った。

 次の戦闘はこう容易くは行かないだろう。

 だが、彼らの存在と目的に対して確証が持てたということは大きい。

 ZONEは広いようで狭い。このままZONEの奥地へと移動しつづければ、必ずまたナイトクローラーに出くわすことになるだろう。

 

 あのナイトクローラーエリートの戯言を信じるわけではないが、ナイトクローラーが核爆弾よりも危険な代物を持ち、それを使おうとしているのははっきり理解できた。

 最早フィアーにとっては、追跡している遺伝子データだけでなく、あのワームという男も抹消リストに入れるべき人物だ。

 暗い殺意を胸にフィアーは、最後にナイトクローラー隊員が逃げようとしていたマンホールから、地上に出た。

 

 ZONEの空は相変わらず陰鬱に曇っていた。

 

 

 

 

 

 

 マンホールから這い出た先は森の中だった。

 視界も悪く、頭上に張り出した枝が天然の天蓋になっているので唯でさえ、薄暗いZONEが更に薄暗くなっている。

 しかしそんな森の中からでも確認出来る大きめの建造物が東にあった。

 日は既に夕暮れに差し掛かっており、ひとまずそちらへと進むことにする。

 あれがどんな建物でも一夜を凌ぐことぐらいはできるだろうと期待して。

 この辺りはナイトクローラー達が立ち寄った土地だ。ZONEでは地雷の類は厳禁されているというが、彼らはそんな暗黙の了解など構うまい。念の為トラップを警戒しながら慎重に森の中を歩きはじめる。

 

 ―――あった。

 

 予想通りというかすぐにそれは見つかった。

 あの建物への道のりはマンホールを出れば、そこから走る森の外まで続く一直線の獣道を使うのが一番早い。

 故にその獣道に何か仕掛けているかもと警戒していたのだが、落葉した木の葉を被せて誤魔化している地雷らしき痕跡をフィアーは見つけた。

 慎重に葉っぱを散らし地面を掘り返すと、ナイトクローラーが採用しているアーマカム製の最新の円盤型地雷がそこにあった。

 

 この地雷はセンサー範囲内に入ると内蔵したスプリングで一気に頭上へと飛び上がり、起爆。爆風と破片を撒き散らすのだが、これも他のアーマカム製兵器の例に漏れず至近距離での破壊力を重視したもので、対人戦というよりは対機甲戦に使うような代物だ。

 この地雷の取り扱い方や無力化する訓練もF.E.A.R.で一通り習ったため、フィアーはこの地雷を無視するのではなく、無力化してそのまま頂くことにした。

 

 

 

 その後、念の為更に周りをクリアリングし、二つの地雷を発見したのでやはりそれも頂く。

 地雷を探していて気がついたが、どうも仕掛け方が大雑把だった。

 どれも罠としては二流以下で牽制か、これに気がついて敵の腰が引ければよし、といった程度の効果でしかない。

 ナイトクローラー自体、自分達存在そのものの痕跡を残さないような戦い方をするので、彼らの使うトラップもすぐに処分できる簡単な物か、雑な物になるのだろう。この地雷も本来なら回収していた所だが人手が足りず、止む無く放置したといった所だろう。

  それ自体はフィアーにとってはありがたいことではある。唯でさえアノーマリーには四苦八苦しているのに厄介な要素には増えてもらいたくはない。

 或いはワームというナイトクローラーエリートの、自分に対する嫌がらせという可能性もあるが。

 

 先ほど手に入れた地雷にしても、フィアーがこれを地雷として使うのはリスクが伴う。

 例えば他のストーカーと行動を共にしている時に、ストーカー達が毛嫌いする地雷を見られたら彼らのコミュニティから、爪弾きにされる恐れがあるからだ。

 そうなると、パワードアーマーや大型のミュータントが現れたら、そのまま投げつけて起爆させるという使い方がベターだろう。

 実際オーバーンの戦いではそういったやり方で、複数のパワードアーマーを撃破した経験がある。

 起爆ボタンを押して、その場に置くだけで使用可能という簡易な方法で運用できるため、パワードアーマーに追い掛け回された時にも随分と役に立ったものだ。

 

 そんな思考をしながら歩いていると森を抜けだし、目的の建築物の近くまで来ていた。

 森の内側からではよくわからなかったが、どうやらこの建築物は大規模な工場だったらしい。

 森から見えていたのはその工場を取り囲む塀と工場の一部の壁だったのだ。

 規模としては先の研究所に匹敵するだろう。

 ここまで大きければどこかの勢力が拠点して使っていてもおかしくはない。

 

 最初に考えられるのはナイトクローラーだが、彼らはもうこの辺りからは撤退しているだろう。

 次に厄介なのがバンディットか軍隊が屯していた場合だが、ナイトクローラーが脱出孔として使用しようとしていたマンホールの付近の施設にそんな連中がいたとして、ナイトクローラーが放置するはずがない。

 研究所を襲撃する下準備として、この工場の掃除も済ませているはずだ。

 となると無人の可能性が高いはずだ。

 ここに来るまでに日が完全に暮れて、辺りは闇に包まれている。

 にも関わらず、工場の窓からは灯りは見えず、人の気配もない。

 

 だが、どこに何がいるかわからないのがZONEでもある。ミュータントと鉢合わせる覚悟ぐらいはしておいたほうがいいだろう。

 そう思いながら入り口を探して、工場の塀を回りこんでいく。

 塀をよじ登ろうにも塀の高さが3メートル近くある上、上部には有刺鉄線が貼られているので大人しく入り口から入るべきだと判断したのだ。

 ―――と、数十メートルほど歩いたところで堀が一部崩れている部分を発見した。これなら中に入っていけそうだ。

 念の為、アサルトライフルを構えながら堀を乗り越えて辺りを伺う。段々夜の闇に慣れてきたため、ライトは付けない。

 星や月の光も届かぬ森の中だった場合、いくら夜目が効くフィアーでも明かりは必要だ。しかし上空には僅かだが月が出ており、その光は木々に遮られること無く廃工場を照らしている為、明かりがなくとも問題なく行動できた。

 

 廃工場は静かだった。

 一人、夜に火を落とした高炉を思わせる工場を彷徨っていると、悪夢に彷徨いこんだような非現実感に囚われそうになる。

 この敷地の中心には4メートルを超える巨大な大扉を備えた大きな工場があり、その東に三階建の建物が西には高めの2階建ての建物が建ってる。

 手始めに建物の形状と位置の把握のために、この工場の周りを一周することにした。

 西側の建物は入り口がなく、中央の工場から伸びる二階の通路からしか入れないようだ。籠城するには持ってこいの場所だ。

 

 中央の工場を見た所、正面の大扉は開けっ放しになっていて、もう二度と閉まることはなさそうだ。外側から内部を伺った所、放置された機械の影はあれど、生き物がいる気配はない。

 最後に東側の建物に近づいた所、アノーマリー探知機が小さく鳴り始めたため、近づくのをやめた。こんなに静かでもやはりここはZONEなのだ、とフィアーは少し安心した。

 

 工場の北側には線路があった。

 そこには放置された列車と、小さな駅がある。この列車の線路は、もしかすると『ゴミ捨て場』のバンディット達がいた車両基地に、繋がっているのかもしれない。

 線路がある部分には塀がないので侵入者を警戒するならここだろう。

 

 一通り見て回ってフィアーがこの建物に抱いた感想は、ZONEの不動産としては破格の物件ということだ。

 元工場ということもあって発電機等の設備もある。建物も内部が広い上にコンクリート製で頑丈だ。恐らくはブロウアウトにも耐えられる。

 施設を囲む塀も一部崩れている所があるが、この高さならZONEのミュータントと言えどおいそれと飛び越えて襲撃してくることは難しい。

 

 ナイトクローラーという厄介者がウロウロしていなければ、今頃ストーカー達の溜まり場として賑わっていたかもしれない。

 最もその内、彼らがここから去ったという情報も広まるだろうから、また誰かがやってくるかもしれないが……。

 しかし今はこの広い空間を一人で楽しむことにしよう。

 

 そう考えると、フィアーは工場内部の探索を開始した。

 外からは見た限りでは気配がないが、万が一ということもある。ここで一夜を過ごすなら、内部のクリアリングもしておくべきだ。

 ちなみにアノーマリーがあるらしき、東側の建物はクリアリングの対象外だ。

 アノーマリーがあるような所を巣にしているミュータントは居ないだろうし、西側の建物と違って工場から完全に独立しているため、もし『何か』が居てもあそこから工場内に侵入する場合一旦外に出てから、工場の大扉から入り直すという過程を踏まねばならない。

 工場の入り口にワイヤーを使った簡単な鳴子でも仕掛けておけば済むことだ。

 

 工場内部を調べた所、やはり取り立てて異常はなかった。

 強いて言うなら、そこら中に古い弾痕と血の跡があったのと、古い食料のカスがところどころに散らばっている事が、この廃工場が常に無人ではないということを物語っていた。

 

 

 続いて工場から西側の建物も探索するが、1階から2階まで空の木箱とロッカーと鉄パイプぐらいしか置いていなかった。

 こちらも誰かが生活した形跡があったため、ライトを使ってトラップがありそうな所も念入りに調べるが特に何もなかった。

 最後に2階の隅に屋上へと続く鉄ハシゴを見つけた為、フィアーは屋上へ登ることにした。

 

 いつの間にか頭上の雲は晴れ、月が大きくその身を輝かせていた。

 屋上にも例によって何もないが、この建物はこの辺り一帯では高さがある建物なので見通しがいい。

 フィアーが這い出たマンホールのあった森も上から見るとマンホールの位置すら丸見えだ。

 塀の向こう側も見ることが出来るため、見張りには絶好の場所だ。それでいて高さの関係で身を伏せれば下からは手出しが出来ない。

 

 外に入り口も無い為、ここに来るには工場に入って連結通路を通り、屋上へ続く梯子を登らなければならない。屋上側としては罠も待ちぶせもし放題だ。

 おまけに屋上に来てわかったことだが、屋上には二階の中ばで折れて用をなさない梯子が外壁に付けられていた。

 下からではこの梯子は意味をなさないが、屋上からなら脱出するのに役に立つ。フィアーの身体能力なら二階程度の高さから飛び降りる程度のことなら造作も無いからだ。

 

 幸いにも雨が降る気配はない。

 今日はここで月を見ながら寝よう。

 フィアーはそう決めた。

 

 その後、フィアーは来た道を戻り、工場に入り口、工場からこの西側の建物へ続く連結通路、最後に屋上へ続く梯子に、簡単な警報装置を付ける。

 ワイヤーと工場に落ちていたステンレスのガラクタを組み合わせたもので、これに引っかかると派手な音が鳴り響くようになっている。

 

 動物やミュータントが迷い込んだなら工場の入り口だけで、警報はそれ以上鳴らないはずだ。

 ただその後、この建物に続く通路や梯子に仕掛けた警報が鳴れば、それは人間が侵入してきたと考えるべきだろう。

 そうなったら荷物を纏めて、迎え撃つか外壁に取り付けられた梯子を使って逃げるか考えなければならない。

 

 だがこんなに静かな夜だ。そうそう不躾な来訪者は居ないだろう。

 根拠もなくそう思いながら、屋上に身を休め、荷物を枕に横になろうとした時だった。

 不躾な来訪者がやってきたのは。

 




 具体的なボスキャラが欲しいということで、ワームというオリキャラが登場。
 F.E.A.R. Perseus Mandateのラストでナイトクローラーの指揮官は倒してしまったのですが、Perseus MandateのEDの後に上院議員と黒幕っぽく話してる別の指揮官がいたので、そいつをワームと名づけて今の指揮官ということしました。

 そしてZONE観光案内。
 地上に出た後の廃工場はS.T.A.L.K.E.R.二作目のClear Skyでストーカー達の拠点になっていた廃工場。
 えらく広い上によくバンディットに襲われたり、ミュータントの襲撃を受けて近くを通っただけで救助要請が来たりします。
 一作目では軍がここに屯するストーカー達に、ヘリで強襲をかけてきたりして、実に賑やかな所でしたが今は無人の廃墟です。

 次回はワクワク動物園。
 批評感想、よろしければお待ちしております。

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