S.T.A.L.K.E.R.: F.E.A.R. of approaching Nightcrawler   作:DAY

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Interval 31 Army warehouses

 未だに寝ぼけたシェパードを適当に誤魔化してフィアーは出発の準備を整えた。

 あれから二人の間の火力を均等にする為にフィアーはシェパードと話し合い、10mm HV Penetratorはシェパードのメインアームにすることにした。

 此処から先に現れるであろう強力な装備の兵士やミュータント相手ではとてもではないが、彼の無改造のAK47(本命の武器は戦闘で破損して、これはバンディットから強奪したものらしい)だけでは心許ないだろう。

 もっとも彼から言わせれば、隠れ家に行けばより強力な武器があるということだが。

 

 ペネトレーターの強化外骨格すら撃ち抜ける火力は確かに魅力的だが、今回BarkeepにカスタムしてもらったVES アドバンスドライフルでも充分に代替が効くので、シェパードに渡しても問題はない。特にこのライフルの弾薬は徹甲弾ということもあり威力も申し分ない。

 むしろ狙撃から、室内戦闘までこなせる汎用性という点ではこちらのほうが勝るだろう。

 銃身下部にグレネードランチャーが装備されているので、大型のミュータントや強化外骨格にも対応できる。

 

 強いて欠点を上げるならアタッチメントをつけすぎてやや重たいのが難点だが、それは重力軽減のアーティファクトのお陰でさほど苦にならない。ようやくZONEでまともな武器を手に入れた気分である。スコープと銃身の調整もされており、かつて拾って使っていた時よりも精度が良くなっていた。

 

 試射の為に、BARのGarbage方面の検問所に行き、首吊り死体と適当にそこらをうろついていたメクラ犬をターゲットにして数発撃った時は、予想以上の命中精度にZONEに入ってから初めて武器の性能に感動したものだ。

 帰る際、通りすがりのストーカー達などはこの銃に熱い視線を向けていた。

 このZONEでは高性能なライフルは高価なアーティファクトよりも貴重と聞く。

 注目を引かない為に適当な布切れで包むべきだろうかと思いながら、酒場の客室に戻るとBarkeepに修理に出していたアーマーが戻ってきていた。

 

 まず自分のアーマーは被弾して、防御力が心許なくなった部分のセラミックプレートを新品に交換してある。そして別に注文した通り、ホルスターやポケットの位置もアーティファクトスロットに干渉にないように位置を調整されていた。

 ついでにアーマーにレーザーが被弾して焼き焦げた場所はケプラー繊維のパッチが当てられており、意外と細かい職人芸も小さく感心した。

 それに気を良くしたのかBarkeepが笑いかけてきた。

 

「どうだうちの職人の腕は大したもんだろう?」

 

「ああ。見えない所にひよこのアップリケでも縫いつけてないだろうな?」

 

「それについては保証できねえ。もしかしたら襟首にブラッドサッカーの刺繍がしてあるかもな」

 

「そこは否定しろよ……。シェパード、そっちはどうだ?」

 

 ついでに相方にも話を振る。

 彼も戻ってきた髪の色と同じくすんだ砂色のアーマーを検分していたが、不満はないようだった。

 彼のアーマーは色合いのせいでボロボロのアーマーに見えるが、実際はケプラー製のアンダーシャツとセラミックプレートの鎧を組み合わせ、更に毒ガス地帯でも行動できるように独立式循環装置を装備した特注品らしい。

 本来はこれに加えてタンクキャップを思わせる特注のヘルメットが付くとのことだが、ヘルメットはX-18での死闘で落としてしまったため、隠れ家まで戻らないとないということだ。

 

「悪くないな。被弾した場所は全て修復されている。酸素循環装置も問題ない。ガスマスクとゴーグルは用意してあるか?」

 

「おう、これよ。規格が合うのは確認済みだ。それと頼まれてた武器の弾薬も持ってきた。杭打ち機の弾の在庫はこれで終わりだ。大事に使えよ」

 

 そういってBarkeepが客室のテーブルの上に乗せたのは銃弾や飲料水、缶詰の食料品だ。中には先日食べそこねたウクライナ軍のレーションもあってフィアーは目ざとくそれを自分のバックパックに放り込んだ。

 他にも日本のインスタントラーメンやアメリカのTVディナーのレトルトパックもある。

 どれも安いジャンクフードだが、意外とバリエーションも多くしばらくは食事に飽きることはないだろう。

 不足する栄養を補うためかサプリメントの瓶もあった。これなら少なくともビタミン不足になることもない。

 

 整理も兼ねて一度荷物を取り出して再びバックパックの中に詰め込んでいく。

 フィアーの武装のメインアームはVES アドバンスドライフルだ。サブアームのウィンチェスターショットガンは、スリングとここで材料を貰って自作したホルスターを使って、左腰に固定する。そして右の太もものホルスターには自動拳銃AT-14と予備弾倉を装備。

 流石にこれ以上ごちゃごちゃつけると動きに支障が出るので、M10イングラム短機関銃は予備の武器として再びバックパックの中に押し込む。

 大型の銃器であるType-7は布切れに包んだ上でバックパックの上部に括りつけた。

 どのみち弾がないので、Freedomの基地に行っても弾薬の都合が突かなければ、そのまま売り払うことになるだろう。

 

 アーティファクトも改めて付け直した。まず基本装備として先日X-18でナイトクローラーの死体から手に入れた放射能除去アーティファクト『bubble』を装備する。

 ZONEは奥に行けば行くほどホットスポットの密度が高くなっているため、耐放射能装備は必需品だ。その点このbubbleは数ある放射能除去アーティファクトでも最上級のもので、専用のスーツがなくともホットスポットの中でも長時間行動できる。

 奥地に潜るストーカーの大半は耐放射能スーツを装備しているが、それは高価かつ希少で今回はBarkeepの店にも在庫がなく、この放射能除去アーティファクトをスーツの代替品とする。

 これともう一つの放射能除去アーティファクトであるFireballを併用すれば、石棺の奥にも入れるだろう。

 

 更にこれに加えて重量軽減アーティファクトGraviもつける。

 ある意味もっとも恩恵を実感し易いのがこの重量軽減のアーティファクトだ。

 兵隊は常に敵以上に自分の荷物の重さに苦しめられているわけだが、このアーティファクトはその重さを消し去ってくれる画期的なアイテムだった。

 これがなければX-18の探索で、軽機関銃やショットガンにペネトレーター、果ては粒子砲を抱えて大暴れするなどという真似はできなかっただろう。Gravi無しでは精々武器は三つ持つのが限界だったはずだ。

 

 そして状況に応じて化学的な汚染を無毒化するmeetchunkや、雷撃を無効化するFlash、X-18βであの巨大な脳みその内部から手に入れたMoonlightを付け替える。

 Moonlightと呼ばれるアーティファクトは二種類あり、一つはいくら走っても体力が尽きない効果があるものと、精神汚染波を無効化するものの二つがあるとのことだ。

 今回フィアーが手に入れたのは後者のほうだった。

 ZONEの奥地は放射能汚染に加えて、ブレインスコーチャーと呼ばれる正体不明のシステムが絶えず精神汚染波をまき散らしているので、これから探索する場所にはぴったりなアーティファクトだった。

 

 ちなみに全部つければいいのではないかとも思ったが、これらのアーティファクトの大半はそれぞれが放射線を出しているので、まとめてつけるとbubbleの放射能除去能力の限界を超えてしまうらしい。

 故に必要に応じて、それぞれのアーティファクトを付け替えなければならないという助言をシェパードから貰った。

 

 その為、基本はbubbleとGravityのみ。後は状況によって右の腰に取り付けた大型ウエストバック(これもBarkeepの店で新調した)に入れているアーティファクトを取り出して装備することにした。このウエストバックは弾薬入れにもなっており、予備のマガジンやグレネード弾、手榴弾などを迅速に取り出すことができる。

 なぜこれを購入したかというと、単純に胸や腰のベルトはアーティファクトスロットに占拠されて、予備のマガジンを入れる場所がなくなってきたからだ。

 少々重いが、前述のGravityの効果と左腰にショットガンを下げているのもあって重量バランス自体は取れている。激しい動きができるのも確認済みだ。

 

 予備のアーティファクトスロットも幾つか購入したため、いざとなったら汚染覚悟で、全てのアーティファクトを装備するという方法もあるが、放射能除去剤の量は限られている。

 これは本当に最後の手段になるだろう。

 

 因みにシェパードも古参なだけあって似たようなアーティファクトは既に持っているらしい。それどころか貴重な回復型アーティファクトも有しているとのことだ。

 これがなければX-18でも3回は死んでいたと笑っていた。

 それ以外にも彼はGravi以上に高性能な重力軽減アーティファクトを所持しているようで、かなり大型のバックパックを苦もなく背負っている。

 彼はペネトレーターをメインアームに据えて、AK47は売り払うことにしたらしい。

 もともとバンディットから奪い取った品物の為、状態がかなり悪くBarkeepに格安で買い叩かれていた。

 

 それ以外の武器はあるのかと聞くと、シェパードは武器屋に得意気に特注で作らせたという奇妙なソードオフショットガンを取り出してきた。

 それはかつてフィアーが使っていたのと同じ上下二連のソードオフショットガンだったが、銃身が二つではなく計四つあった。

 早い話が二つの上下二連ショットガンをそのまま並べてくっつけてグリップを一つだけにした、いわば四連装ソードオフショットガンともいうべき代物だった。

 

「そんな四つも銃身抱えた重たそうな銃に何か利点があるのか?」

 

 思わずそうフィアーが尋ねると彼は得意気に鼻を鳴らすと、

 

「ああ、弾薬の装填や切り替えがあっという間にできる。何よりも全弾発射すれば大型のミュータントもイチコロさ」

 

 と答えた。

 確かにチューブマガジンのポンプアクション式のショットガンは弾薬を切り替える時、一度チューブマガジンの中の残弾を出さなければいけないので手間がかかる。

 アサルトライフルのようなマガジン式のショットガンなら弾倉ごと交換すればいいのだが、それだと荷物が増える。

 最新のショットガンは複数のチューブマガジンを有し、状況に応じてそれぞれのマガジンの弾薬を打ち分けられるモデルもあるが、そんな最新の武器はZONEにはなかなか入荷しないので自作することにしたということだ。

 

 もともと彼は戦闘に特化したストーカーではないようだし、火力よりもこういった汎用性を重視したということなのだろう。

 更にこれは同時に、それぞれの銃身に装弾された四発全て発射することも可能で、瞬間火力だけならちょっとした大砲並の威力になるらしい。

 ネックとなる重量もアーティファクトで軽減できる。

 

 そして護身用拳銃はフルオートでの発射可能な自動拳銃、APS―――スチェッキン・マシンピストル。

 使用する銃弾はZONEに腐るほどある9x18mmマカロフ弾。その為、弾の調達が容易だということだ。

 単発の威力はやや心許ないが、それは徹甲弾とホローポイント弾を交互に装填することでカバー。加えてマシンピストルというだけあって使うときは、近距離で全弾撃ち尽くすような使い方をするので問題ないらしい。

 これも改造されており、消音器が付けられるようになっているので、隠密行動にも役に立つ。

 

 そして彼の最後の武器は小ぶりのシャベルだ。これも特注品らしくこのシャベルの刃は通常のそれのよりも肉厚で、しかも縁を研いである。ちょっとした斧のようなものだ。

 シェパード曰く、こいつがあればクソの処理もできるし、塹壕を掘ることもできる。ついでにゾンビの頭を叩き割ることもできるとのことだ。実際武器として使えば、下手な刃物より強力だろう。

 

 こうして彼の装備や立ち回りを改めて見るとシェパードという男は、戦闘者というよりは探索者よりのストーカーらしい。

 武装は取り回しやすく、あくまで身を守るためのもので利便性を犠牲にしてまで火力を求めたりはしない。それでもいざという時の為に瞬間的に火力を出せる武装はしているが。

 そして目立たないように立ち回り、重量軽減のアーティファクトで人並み以上の獲物を抱えて帰還する。そんなスタイルのようだ。

 

 下手に血気盛んな人間だと無駄に死地に飛び込んでいくことになるため、フィアーとしては好ましいタイプの案内人だった。

 

 更に食料や各種消耗品などを確認した二人は早速、BARを出発することにした。

 もう昼すぎだが、夕方までにはFreedomの基地であるArmy warehousesに到達することができるとのことだ。

 シェパードはDuty本部に用があると言って一足先に出て行ったので、フィアーは出発前に酒場によって簡単な昼食を取る。

 例によって酒場で出たのは調理が簡単なインスタント食品。―――今回は日本のインスタントヌードルにたっぷりの乾燥野菜と干し肉を入れたものだったが、ここではかなりの人気メニューらしい。

 ヌードルの類はアメリカでフィアーもよく食べたが、日本のこれは味に深みがあり、食べている内に飽きてくるアメリカのヌードルよりもフィアーの好みで、あっという間に平らげて、彼にしては珍しくおかわりもした。

 

「Good Hunting Stalker!」

 

 食事を取り、酒場を立ち去ろうとしたフィアーにBarkeepがおなじみの言葉を投げてくる。果たしてこの言葉をこのZONEに来て何度聞いただろうか。

 そんなことを考えながら酒場を出て、Duty本部の前に来るとシェパードの用事は既に終わっていたのか彼はそこでフィアーを待っていた。

 

「用事ってのはすんだのか?」

 

「ああ、Dutyの大将に例のアーマカムの私設部隊やナイトクローラーの情報を流してきた。そうすればいざという時はあいつらも動かざるを得なくなる。ま、ちょっとした保険さ。それじゃ行くとするか」

 

 そう言うとシェパードはゴミ捨て場―――Garbage方面ではなく、Wildterritoryの方への検問所に向かう。

 Army warehouses方面はこちらから進むらしい。

 Dutyが守る検問所は相変わらず、蟻の子一匹通さぬと言わんばかりの物々しい警戒体制だったが、シェパードが一言リーダー格のDuty隊員に挨拶するとあっさりと通してくれた。

 道すがらシェパードはArmy warehousesがどういった所か簡単に説明してくれた。

 

「まあ、一言で言えば最前線ってところかな」

 

「何に対する前線なんだ?」

 

「そりゃミュータントとMonolith兵さ。Army warehousesはこのZONEで最も危険な場所と言われているRedforest(レッドフォレスト)に隣接してる。

 ここはアーティファクトの鉱脈だが、同時にアノーマリーとミュータントの巣になってる。おまけにここを乗り越えるとチェルノブイリ発電所に続く街、Pripyat(プリシャチ)やそこに続くLimansk(リマンスク)へと繋がってる。

 そこから時々Monolith兵が遠征に来るんだよ」

 

「そいつらの遠征は何が目的なんだ?」

 

「さあな。支配領域を増やして偉大なるMonolith様が鎮座しましてる発電所へのルートを封鎖したいのか……。或いはMonolith兵の補充に来てるって話もある」

 

「補充?」

 

「奴ら大抵は敵は皆殺しにしちまうんだが、たまに捕虜をとる時もある。奴らに連れて行かれて帰ってきた奴はいねえ。Monolithへの生贄にされたとか、洗脳されてMonolith兵にされちまうとかそんな噂があるのさ。

 それでFreedomの連中はMonolith兵やRedforestからあぶれてきたミュータント達が南下しないようにArmy warehousesで防衛線を張ってるんだ」

 

「俺の聞いた限りじゃ、Freedomって連中はそんなこと気にせずに金儲けに執着してるようなイメージだったんだがな」

 

「確かにそういう一面もある。が、だからといって本当に好き勝手に生きれる程、このZONEは甘くはない。あいつらもZONEの住民として必要最低限の治安を維持するという責任感は持っている。

 そうやってZONEの安全を確保した上で、そこら中にアーティファクトを売りさばいて金を稼いでいるんだ。ストイックすぎるDutyからすれば、その辺が気に入らないんだろう。

 おまけにFreedomは外国の資本がバックについてるから、この国の軍隊がベースのDutyからすれば余計に癇に障るはずだ。

 なによりDutyの最終目標はZONEの殲滅だが、FreedomはZONEを生かさず殺さずアーティファクトの鉱脈として利用するのが目的だからな」

 

「狭い土地だってのにいろいろとあるんだな」

 

「まあな、狭いからこそ一度いがみ合うと大変だ。どちらの言い分もわからんでもないから譲歩もできない」

 

 そんなことを言いながら歩いているといつしかWildterritoryの工場地帯を抜けて、再び自然豊かな土地へと景色が変わっていた。もうここがArmy warehousesと呼ばれる地域のようだ。

 高低差の多い土地で道路を挟むように丘が続いている。丘の上には思い出したように廃屋がポツポツと建っていた。

 二人はその丘の隙間を縫うような道をゆっくりと歩いて行った。

 ふと、思い出したようにシェパードが言った。

 

「この辺から気をつけろよ。ここもRedforestほどじゃないが、強力なミュータントが時々うろついてる。ブラッドサッカーも時々でてくるんだ」

 

「それを先に言え」

 

 フィアーは肩に回していたVESアドバンスドライフルを構えた。

 今日のZONEは珍しく晴天だが、ブラッドサッカーは吸血鬼ではない。

 太陽が出ていても襲ってくるときは襲ってくるだろう。

 

「まあ、そう神経質になる必要はないさ。この辺りじゃFreedomの縄張りだから、強力なミュータントが出ても奴らが始末しているはずだ。今ん所ミュータントの気配は俺の勘にも引っかからねえ」

 

 彼がそう言ったその瞬間だった。

 道路を挟む丘の左側から銃声が鳴り響いたのは。

 更にその後、二人の無線機がオープンチャンネルのSOSを拾う。

 

『こちらFreedomのケイン! Army warehousesのポイントF-10の廃屋でブラッドサッカーの群れに襲われている! 俺達の分隊は全滅寸前だ! 誰かこの無線を聞いた奴は救助にきてくれ! 頼む、一刻の猶予もないんだ、奴ら扉とバリケードを力ずくで破ろうと……』

 

 そこまで言った辺りで唐突に無線が途切れる。

 相手の無線機が壊れたのか或いは、持ち主が死亡したのか。

 フィアーは暫し無線機を見つめた後、ゆっくりとシェパードを見た。

 彼はバツが悪そうに右目の眼帯を撫でながら、

 

「……うん。まあこの周囲にはいないだろってだけで、そりゃ全くミュータントが居ないってわけじゃないんだ。Freedomの戦力も限界はあるだろうしな」

 

 そう言い訳をした。

 フィアーは何も言わず、ライフルを構えてみせた。そして訊ねる。

 

「で、どうする?」

 

「……とりあえず、様子だけ見に行くか。Freedomの連中とは付き合いがあるしな。あんたも最前線に行くなら奴らに恩を売っといて損はないぜ」

 

「まあいいさ。ライフルの試し撃ちにはちょうどいい」

 

 フィアーはそう答えると二人して銃声が聞こえてきた方角にある丘を登っていった。

 

 

◆   ◆   ◆

 

 

 丘の向こう側には廃村が広がっていた。

 無線で聞いたポイントと地図を照らし合わせるとFreedomの分隊が篭っている廃屋はすぐに特定できた。

 それは村の端に位置する廃屋だったが、マップと照らし合わせるまでもなく、その廃屋の窓からマズルフラッシュの光と銃声が時折吐出されるので一目瞭然だった。

 どうやらまだ立て籠もったFreedomの連中は生きているようだ。

 

「うーん、ブラッドサッカーの群れってのは本当のようだな。だが消えたり現れたりしてるから正確な数が把握できねえ。10匹以上いるようにも見えるし、5匹にも満たないようにも見える」

 

 丘の上から双眼鏡でその廃屋付近を観察していたシェパードが呟く。

 彼の言うとおり、廃屋を取り囲んだブラッドサッカー達は光学迷彩を使い不定期で姿を消したり現れたりしているため、正確な数がわからない。これもブラッドサッカーなりの撹乱戦法なのだろう。

 そして姿を表した個体が廃屋の中の敵の注意をひきつけ、その隙に姿を消した個体が封鎖された扉や窓に打撃を与えてぶち破って突入口を作ろうとしているようだ。

 なんとかブラッドサッカーの数を数えようと苦戦しているシェパードに、フィアーは答えを教えてやった。

 

「6匹だ」

 

「あん?」

 

「ブラッドサッカーの総数だ。奴らは全部で6匹いる。5匹が地上で走り回ってる。こいつらは全部囮だな。最後の1匹は屋根の上にいる。煙突から内部に侵入するつもりのようだ」

 

「お前なんで……ああ、そのライフルのスコープか」

 

「そういうことだ」

 

 VES アドバンスドライフルのスコープで廃屋を観察していたフィアーは頷いた。

 このライフルのスコープは赤外線探知機能も付いている。

 その為、ブラッドサッカーが姿を消していても熱源でその存在を感知できるのだ。

 そしてこのスコープ越しに見たところ、地上で走り回るブラッドサッカー達以外に更に一匹のブラッドサッカーが、今まさに廃屋の煙突に入ろうとしているのが見えたのだ。

 唯でさえ小さな廃屋である。おまけに内部のFreedom隊員達は全員が外のブラッドサッカーに気を向けている。あのブラッドサッカーが侵入に成功すれば彼らは奇襲をうけて全滅するだろう。

 この丘の上から廃屋まで約300メートルと言った所か。充分ライフルの射程距離内だ。

 

「撃つぞ」

 

 そう言うと、フィアーは煙突に登ろうとしているブラッドサッカーの頭部をレティクルに捉えて発砲した。サプレッサーが付いているため、銃声は意外と小さかったがそれでも結構な音がした。サプレッサー用の亜音速弾ではないため仕方あるまい。

 フィアーの狙いは正確だった。ライフル弾がブラッドサッカーのこめかみに突き刺さる。

 しかし流石はミュータントというべきか。ブラッドサッカーは殴られたように態勢を乱したものの、倒れはしなかった。

 だが無意味だった。続く二発目三発目が態勢を崩したブラッドサッカーの頭部に連続して命中する。

 四発目を撃ち込んだ時、ブラッドサッカーの頭部そのものが着弾の衝撃に耐え切れず、トマトのようにはじけ飛んだ。

 

 頭部を失ったブラッドサッカーの体が屋根の上から転がり落ちる。

 狙撃を受けたことに気がついたのか、姿を明滅させていたブラッドサッカー達が完全に姿を消す。

 だが赤外線スコープの前では無意味だった。

 フィアーは姿を消したつもりのブラッドサッカー達に次々と遠距離からライフル弾を撃ちこんでいく。

 ブラッドサッカーは簡易な作戦をする知性はあっても、銃撃から逃れるため障害物に隠れるという思考はできないらしい。姿を消しているにも関わらず、正確に着弾させてくる狙撃に完全に混乱をきたしていた。

 流石は6.8×43mmの大口径と言うべきか。頑丈な体を持つブラッドサッカーと言えど急所に着弾させれば僅か数発で倒す事ができた。

 

 しかしミュータントの嗅覚も侮れない。2体目を倒した辺りでブラッドサッカー達もこちらが丘の上から狙撃していることに気がついたようだ。

 彼らは雄叫びを上げると一丸となってまっしぐらにこちらに走ってくる。

 ミュータントの脚力を持ってすれば30秒もあればこの丘の上に到着するだろう。

 

「おいおい。バレちまったみたいだぞ。まずくねえかこれ?」

 

 見えなくても、ブラッドサッカーがこちらに向かっていることに感づいたシェパードは顔を引きつらせながらペネトレーターを構えた。

 それを横目に見ながらフィアーは、ライフルの下部に装着されたグレネードランチャーに榴弾を装填しながら答えた。

 

「問題ない。むしろ廃屋から離れてくれた分、好都合だ」

 

 そう言って彼はグレネードランチャーの引き金を引いた。

 爆音が次々と廃村に鳴り響き、ブラッドサッカー達の悲鳴をかき消した。

 

 

 

 

 




 ZONE観光案内

 Army warehousesの廃村
 通称さっちゃん村
 特産物 ブラッドサッカー
 村の中を歩いてるだけでそこらじゅうからさっちゃんが飛び出してくる素敵な村です。
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