S.T.A.L.K.E.R.: F.E.A.R. of approaching Nightcrawler   作:DAY

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Interval 07 武装

 穴の空いた屋根から直接太陽の光が差し込んできて、フィアーは目覚めた。

 眠気まなこを擦りながら、自分がどうしてこの廃屋で眠っていたのかを思い出す。

 昨夜は全く騒がしい夜だった。

 あの後ブルーに他のストーカー達に紹介されたフィアーは、ブルーの武勇伝を酒の肴にした宴会に巻き込まれた。

 その際、フィアーがブラットサッカーを倒した事や、人面犬が率いる群れを壊滅させた事が随分と脚色されて伝えられ、彼は宴会の主賓とされた。

 好奇心旺盛な他のストーカー達の質問を適当にあしらい、村の廃屋の古びたベットで眠りに付くことが出来た時は既に明け方。

 

 時計を確認すると時刻は既に正午を回っている。

 この分では今から出発しても、BARに着く前に夜になってしまいそうだ。

 ベットから身を起こし凝り固まった筋肉をほぐすと、フィアーはミネラルウォーターを一本開封し、半分ほど飲んで、昨日の宴会の残り物のダイエットソーセージをかじる。

 その後、共用の水場に行って顔を洗う。

 なんでもこの水場の井戸は奥底に価値の低い放射能除去と化学物質除去のアーティファクトが放り込んであるらしく、飲用はできないが生活用水程度には出来る程度には浄化されているらしい。

 こういった『井戸』はストーカー達の拠点ではよくあるようだ。

 顔を洗い目を覚ました彼は、その足をシドロビッチのシェルターに向ける。

 まずは装備を受け取らなければならない。

 

 

 

 ◆  ◆  ◆

 

 

 

 シェルターの中のシドロビッチは昨夜と全く変わらぬ様子だった。安っぽい白熱球に照らされるくたびれた服も、無精髭のヒゲの伸び具合もそのままだ。

 いつ彼は寝ているのだろうと、どうでもいい疑問を抱きながら装備の事を聞く。

 

「よく来たなフィアー。装備は大体揃ってるぜ。確認してくれ」

 

 カウンターの上には登山用と思わしき空のバックパックが用意され、その隣には様々な物資が山積みになっている。

 

「……こちらの注文より少し品物が多いようだが?」

 

「あんたは金払いがいいからな。多少色をつけておいた。それとその腕を見込んで道中でちょっとした仕事を頼みたいんだ。その報酬の前払いだと思ってくれ」

 

「まだ受けるとも言ってないんだが」

 

「いや、あんたは受けるさ。これはそういう仕事だ。さて、まずは品物のほうを改めてくれ」

 

 そう促されて、取り敢えずフィアーは品物を確認しはじめた。

 まずは拳銃と短機関銃で共用する9mmパラベラム弾が箱入りで300発。同じ口径の9mmの徹甲弾が30発。それと拳銃弾用のクイックローダーとMP5用のクリーニングキット。

 次は散弾銃用のバックショットが20発。スラッグ弾が4発。そして見たことのないタイプのショットシェルが4発。その側面にはダイナマイトのマークがある。

 そのショットシェルを手に取り、しげしげと眺めているとシドロビッチが説明してきた。

 

「それはショットガン用の榴弾だ。それは正規品じゃなくてZONEの職人の手作りの物だから、信管にセイフティなんて上等なものはついてない。至近距離で撃っても炸裂するから撃つ時は気をつけろよ」

 

「……なんでそんなもの作ったんだ?」

 

「そいつは強化外骨格やミュータント用さ。RPG7でもあればどんな奴もイチコロなんだが、あれは重いしでかいから使い勝手が悪い。そこでZONEのメカニック達が苦心して作り上げたのがそれだ。口径が口径だから直撃させないと効果は落ちる。しっかり狙って当てろ」

 

「ソードオフショットガンでか? ……難しい注文だが、ないよりはマシか。お守り代わりにはなるかもしれんな。他の弾薬も手製か?」

 

「いいや、他のトレーダーならともかく俺の所で扱ってるのはリサイクルのリロード弾じゃねえ。ピカピカの新品だ。もし不発があったら文句はメーカーに言うんだな」

 

「安心したよ。だが他のトレーダーならともかくと言ったな? 他のトレーダーはリロード弾も使ってるのか?」

 

「物資の流通が難しいZONEの奥地じゃ当然リロード弾も使ってる。後はチンピラやバンディットみたいな連中が使ってる弾は大体がそうだ。奥に行けば行くほど物の値段は高くなっていく。その内お前さんはシドロビッチはなんて良心的なトレーダーだったんだ、と考えを改めることになるぜ」

 

「今世紀最高のジョークだ」

 

 言葉とは裏腹に全く楽しくなさそうな無感動な声で返す。

 その反応にシドロビッチは悲しげになったが、それを無視して次は医薬品の点検に移る。

 睡眠薬、頭痛薬、下痢止め、精神高揚剤と言った各種錠剤。どれも少量で嵩張らないが、薬屋でも開けそうな様々な種類の薬の錠剤があった。

 それらの大半は既存の製品でフィアーを安心させたが、問題はメディキットだった。

 用意されたメディキットはZONEで流通している物のようで、初めて見るタイプの物だった。

 モルヒネ等はともかく、パッケージに何も書かれていない怪しげな軟膏や包帯はむしろ不安を掻き立てる。

 

「……これもZONEの自家製か?」

 

「ああ、そりゃZONEに出入りしてる科学者や企業が特別にこちらに卸してくれる特製のメディキットで、軍の連中も使ってる。薬物としての正式な許可はまだ降りてないから、表の世界には流通してねえ。

 だが効果は抜群だぜ。これらは人体を再生させるアーティファクトを研究して作られた薬品だ。表で出回ってるブツとは桁が違う。これがなければZONEのストーカーの半分はもう死んでる」

 

「で、副作用は?」

 

「わからん。だが今の所こいつを使いすぎてミュータントになったって話は聞いたことがないな」

 

「頼もしい限りだ」

 

 そういえばブルーもZONEには、特製のメディキットが出回っていると言っていた。思ったよりZONEには様々な勢力が手を伸ばしているらしい。

 

「実際の所、連中が格安でこいつを卸してくれるのはストーカーを使った臨床試験って面も否定できんな。だがそもそも、これの原料になるアーティファクトもストーカーがいなければ入手する事はできない。まあWin-Winの関係って奴だな」

 

 そのシドロビッチの説明に彼はトリュフを探す豚とその飼い主を連想したが、あえてそれは言わないでおいた。

 代わりにメディキットの隣にある複数の小さなアンプルの内、一つを手に取る。

 そのアンプルのラベルには『Anti-radiation drugs』とだけ書いてある。

 

「……これは?」

 

「ラベルに書いてある通りさ。そいつは人体から放射能を一瞬で取り除く薬さ。そいつ無しでZONEを歩くのは自殺行為だ」

 

 勿論ラベルに書いてある言葉の意味は分かっていた。しかしそれでも尚、聞かずにはいられなかったのだ。

 人体を蝕む放射能を除去する。それも一瞬で。もしそんなものが実用化されているとしたらそれは、

 

「ノーベル賞ものの代物じゃないか……」

 

 半ば呆然として呟く。

 その言葉にシドロビッチは楽しげに笑う。それはどこか誇らしげでもあった。曲がりなりにもZONEの住民としてZONE産の品物に対して誇りを持っているのかもしれない。

 

「それもメディキットと同じくアーティファクト研究の副産物と言われている。だが表の世界はともかくこのZONEじゃその程度じゃノーベル賞は取れないぜ。元になったアーティファクトは身につけていれば、チェルノブイリの石棺の中を鼻歌歌いながら、スキップできるほどのもんだったらしいからな」

 

 入れば即死と言われている程の放射能で満たされているチェルノブイリ発電所の石棺の内部で自由に行動できるアーティファクト。

 それらを解析し、量産することが出来るようになれば確かにノーベル賞どころではない。

 うまく使えば処分する方法が無い、とまで言われている核廃棄物を無害化させることも出来るかもしれない。

 

 それらを考えると、アーティファクトの持つ科学と経済に及ぼす可能性は凄まじいものがある。

 一攫千金を狙うストーカーの気持ちもわかるというものだ。

 だが生憎と宝探しに興じる時間は彼にはなかった。

 ナイトクローラーが持ちだした代物も、ある意味アーティファクトに匹敵する厄介な物なのだから。

 

 一旦アーティファクトのことを頭から追い払うと、残った品物を検分する。

 次に並べているのは電子製品用のバッテリーや電池と言った小物類だ。

 その他にもポケットティッシュサイズの使い捨てレインコートや、パラコードの束、ビニールテープといった雑貨品もある。ステンレスのマグカップといった日用品や、気を利かせたのかトイレットペーパーまであった。

 

 様々な化学物質や放射性物質に汚染されたZONEの雨が体にいいとは思えない。確かにレインコートは必要だろう。

 パラコードはつなげてロープの代わりにできるし拘束具代わりにも出来る。

 ビニールテープは現場であらゆるものを作り出す魔法のアイテムだ。できればダクトテープが良かったのだがそれは仕方あるまい。

 トイレットペーパーに至ってはあるのとないのでは精神衛生的には大違いだ。

 

 電池は封が開けられてない新品であることを確認し、バッテリーは自前のPDAに繋いで残量を確認する。

 最先端の装備と訓練を受けたF.E.A.R.隊員である彼にとって電子兵装は必需品だ。

 無論無くても支障無く行動出来るように訓練は受けているが、利便さと効率という点では欠かせない。

 人間というものは一度良い環境や道具に慣れると、それのグレードを下げるのが難しくなるものなのだ。

 

「ストーカーはバッテリーの充電はどうやってやってる?」

 

「拠点のトレーダーが頼みだな。大概の拠点には発電機の一つは置いてあるから、頼めば充電ぐらいできる。金はかかるが、ZONEじゃPDA無しじゃやっていけねえからな」

 

 その言葉に満足した彼は、食料と水の確認に移る。その分量はおおよそ3日分程で、次の拠点に行くまでなら多過ぎると言ってもいいぐらいだ。

 水は500mlペットボトルが数本、食料は大半が昨日の騒ぎで食べた缶詰かソーセージだったが、その中に見慣れた物を見つけて彼はフェイスガードの下で顔を顰めた。

 

「米軍のレーションか……」

 

「嫌いなのか? なんならウクライナ軍のレーションと交換してやるが」

 

「そうしてくれ。これは正直食べ飽きた」

 

「わかったわかった。……後で後悔するなよ?」

 

 その言葉に何か不穏なものを感じ取ったが、もう既にレーションは交換された後だった。

 新しく出てきたロシア語が書かれたレーションは、米軍のレーションより更にくたびれており、この時点で彼は交換した事を後悔し始めていたがもう遅い。

 食料の事は頭の隅に追いやって最後に武器の事をシドロビッチに尋ねた。

 

「旧式だが一応整備しといたぜ。ソードオフのホルスターはサービスでつけてやる。試射したいならシェルターの裏でやれ。マンターゲットがある。」

 

 そう言ってトレーダーが出してきた銃は二丁。

 

 上下二連の銃身を限界まで切り詰めた黒塗りのソードオフショットガン。

 そして短機関銃のベストセラーとも言えるH&K社のH&K MP5。その初期型だ。

 ……初期型でまだ現役のものがあるとは恐れ入る。どちらの銃も年齢は間違いなくフィアーより上だ。

 

 MP5を手に取り、ボルトを動かして動作を確かめる。……手入れはされているが、あまり状態はいいとは言えない。過酷な環境でも動作するように設計されたAKシリーズやオープンボルトの短機関銃と違って、MP5は作りが精密なのだ。

 MP5はその精密さによって命中精度を上げており、短機関銃としては破格の命中精度を持っていたのだが、この状態ではそれも期待できそうにない。

 元々F.E.A.R.でも最新型のMP5のカスタムモデル、Sumak RPL短機関銃を採用していたため、MP5自体の扱いには慣れているのだが、最新型を知っているからこそ逆に落差を感じてしまう。

 

「マガジンは?」

 

「これだ。悪いが全部で4つしか用意できなかった。」

 

 その言葉とともに4つのMP5用のマガジンがカウンターの上に並ぶ。

 

「構わんよ。この状態じゃフルオートで撃つと調子が悪くなりそうだ。……騙し騙し使っていくさ」

 

 言葉の途中で、彼は顔を顰めた。銃にマガジンを嵌めこんだ所、微かにグラついたからだ。下手したら撃ってる最中にマガジンが脱落しかねない。もっともマガジン自体はさほど状態は悪くないのがせめてもの慰めだ。

 この分では、ハンドガンとソードオフショットガンに頼ることも多くなりそうだ。

 一旦MP5をカウンターの上に置くと、ソードオフショットガンを手に取る。

 こちらはMP5より更に古いようだが、皮肉なことにMP5とは対照的に状態は良かった。

 通常のソードオフショットガンよりも更に銃身が切り詰められているため、これなら片手でも扱える。サイドアームとしても文句のない出来だ。

 

「とりあえずはこんな所か……。それで俺に頼みたい仕事ってのはなんだ?」

 

「そんなに構えなくてもお互いにとって利益のある話だ。BARに行くにはここを北上して、『Garbage』(ゴミ捨て場)って放射能まみれの文字通りのゴミの山がある所を更に北に進まないと行けないんだが、その辺りにバンディットの集団が居着いて、通りがかるストーカー達から通行税を巻き上げている。俺の商売にも差し支えるようになってきたから、掃除してきてくれねえか?」

 

 まるでゴミでも片付けるような気楽さで殺人の依頼をしてくる。だがそれはともかく得心はいった。

 

「なるほどな。俺がGarbageを通るのなら、依頼を断ろうが引き受けようがそいつらをどうにかしないといけないってわけか」

 

「そういうことだ。得意なんだろそういうの?」

 

 そう言ってシドロビッチはウインクした。脂ぎった太い中年男性のウインクは控えめに言って気分が悪くなったが、同時に妙な愛嬌もあった。

 

「そいつらの装備は?」

 

 もしスナイパーライフルを持った相手がいたらこの装備では手も足も出ないが、シドロビッチは気にした様子もなく答えた。

 

「あんたと大して変わらんよ。もしかしたらAKぐらい持ってる奴がいるかもしれんが、あんたにとってはそっちのほうが都合がいいんじゃないか?」

 

 言外に殺して奪い取れと言っている訳だが、これがZONEの倫理観なのだろう。どの道言われずともそうするつもりだったので、フィアーはその依頼を引き受けることにした。

 となればここにもう用はない。

 さしたる時間を掛けずに彼は荷物を整理し、バックパックの中に詰め込むと彼は出口に向かった。

 

「Good Hunting Stalker!」

 

 シドロビッチの言葉を背に受けながら。




 ショットガン用の榴弾はMODから。
 リアルでもあるようだし気にしない気にしない。

 ZONEの日常生活はどうなってるのかとか、
 武器は高いのに(それでも外基準では安いが)、
 医薬品とかは安くて優れているのはなぜかなのかとか、
 そういうの想像するのは楽しいです。


 ZONE観光案内。今回は小物編。
 ソードオフショットガン。
 初めてZONEにやってきたルーキーが必ず持つことになるクソ銃その2。
 バンディット戦なら当たれば至近距離で当てれば一撃だが、その一撃当てるのが至難である。
 後半の頑丈な敵に対しては当てても倒せず、反撃で殺される素敵な銃。

 因みにその1はマカロフ拳銃。
 これとマカロフで同じ様な装備のバンディットとパンパン撃ちあいやってると子供の頃遊んだ銀玉鉄砲での撃ち合いを思い出します。


 MP5。
 マカロフとソードオフでうんざりしたプレイヤーが、これを持つと新しい世界が開ける銃。
 フルオート万歳。
 AKを取るまでの繋ぎでも、弾薬が手に入れやすく思う存分連射できる。
 最初からこれをフィアーにやったのは甘やかし過ぎたかもしれない。
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