BLEACH✖ヴァンガードのクロス。
やってしまった感が満載であることをお許しください。
ハジマリ
『きったねえな。オマエ』
学校の帰り道、突然後ろから声を掛けられた僕は俯いていた顔を上げながら背後を振り返って見るとそこには亜麻色の髪の男の子が立っていた。
『・・・・だれ?』
『俺は櫂トシキ!なぁ、オマエ名前は?』
男の子、櫂くんはまるで太陽のような笑顔を浮かべて僕の名前を訊いてきた。僕にはその笑顔があまりにも眩しくて、俯きながら僕は名前を教えた。
『・・・・先導アイチ、です』
『ふーん、アイチねえ・・・・』と、呟きながら櫂くんは僕の姿を眺める。そして、さっき僕に声を掛けたときと同じ言葉を投げ掛けた。
『なぁ、アイチ。何でそんなにボロボロなんだ?誰かとケンカでもしたのか?』
『・・・・ケンカなんて、してま・・せん。これは、その・・・・さっきそこで転んじゃって・・・・・』
それは嘘だ。僕は転んでなんかいないし、ケンカもしていない。
僕は俯きながら今の自分の姿を見下ろした。
全身アザだらけ、手足には所々擦り傷をつくり、顔は見えないけど多分アザがあるだろう。服もランドセルも全部泥だらけで櫂くんが『汚い』と言うのも無理はないだろう。
『"転んだ"ねぇ・・・・・。それにしちゃあ、全身怪我だらけすぎねえ?転び過ぎだろ』
『・・・・・』
『何だよ。無視すんなよ。・・・・ったく、そんなんだから、アイチ。お前、いろんなヤツから嘗められんだよ』
『・・・・・ごめん、なさい』
『そんなことで一々謝んなよ。調子狂うな・・・・・。どうせなら、言い返すくらいの度胸はないのか?』
『そんなの、無理です』
言い返すような度胸も勇気も、僕にはない。そんなことしたら、生意気だって言われてボロボロになるまで虐められるに決まっている。
もっと、僕に言い返すぐらいの自信や強さがあれば・・・・・。
そう考えていると、櫂くんは手に持っていたカードケースから一枚のカードを取り出して、僕の目の前に差し出した。
『ホラ、これやるよ』
『・・・・これは?』
顔を上げて見ててみると、裏面に英語で"Vanguard"と書かれ表面には白い鎧兜を身に付けた剣士のイラストが描かれていた。
ヴァンガード、名前だけは僕も知っている。今大人気のカードゲームで、いつかやってみたいなって思っていた。こんなカッコいいユニットのカード、何で僕なんかに櫂くんはくれるんだろう?
『こいつはブラスターブレード。すげー強い剣士だ。お前もコイツみたいに強くなれ』
櫂くんは言った。強くなれ、このユニット・・・・ブラスターブレードのように強くなれって。カードを受け取り、僕は改めてブラスターブレードを見る。
白い剣を突き立てながら立つ白い剣士。強さと自信に満ちたその姿に、僕は何だか惹かれた。
ーー僕も、このユニットみたいに・・・・・強くなれるのかな?
櫂くんは、まじまじとカードを見つめる僕の姿を眺めながら拳を握りしめ、
『いいか?イメージするんだ!この強い剣士になった自分の姿を』
『イメージ・・・・?』
『ああ。イメージはお前の力になる!だから、強くなれ!』
目をキラキラと輝かせながら告げる櫂くんの言葉が、僕の中で広がっていくのを感じる。
『このカード、本当に僕なんかがもらっていいの?』
『ああ。おれ、最近ロイヤルパラディンからかげろうのクランに変えたから、もう使わねえし。だから、お前にやる』
結構レアカードなんだぞー、と言葉を付け加えながら櫂くんは急に突然、走り出した。
『あっ・・・・あの』
『そのブラスターブレード、大事にしろよな!』
その言葉を最後に櫂くんは走り去っていった。ブラスターブレードのカードだけ残して。
『ありがとうって、言ってない・・・・・』
いきなりのことだったので、お礼も言うのを忘れてしまった僕は、カードを握りしめながら茫然と櫂くんが走り去っていった方を眺める。
そして、再び視線をカードに戻して心の中で櫂くんが言っていた言葉を思い出す。
ーーイメージはお前の力になる!
あの時の櫂くん、すごくキラキラしてて、まるでブラスターブレードみたいだったな。
僕の中で、ブラスターブレードと櫂くんの姿が重なって見えた。あんな風に僕もなれるのかな?
僕はブラスターブレードになった僕自身の姿をイメージしてみた。イメージを通して、カードの中からブラスターブレードが「勇気を持て」って語りかけてくる。
家へ帰る道を歩きながら僕はカードをじっと見つめ、静かに微笑んだ。
『もし、僕がヴァンガードを始めたら・・・・櫂くん、一緒にやってくれるかな・・・・』
このブラスターブレードを使って、自分のデッキを作ったら櫂くんとファイトする。僕の中で、小さな夢ができた瞬間だった。
遠くから、車の走る音が聞こえてきた。
今、僕は歩道がない少し狭い道路を歩いている。車を避けるため道の端っこに移動して、車が過ぎ去るのを待つことにした。
家までもう少し。別に帰りを急ぐ必要はないし、今日は宿題をやる以外やることがないので、宿題が終わったら貯めたお小遣いでヴァンガードのカードを買おうかな。
ーーゴオオォォ
視界の端で大きなトラックがすごいスピードでこっちに近づいてくるのが見えた。小学生の僕でもわかるほど、明らかにこんな狭い道で出すようなスピードではないし、時々、塀や電信柱に車体を擦らせて何だかおかしい。
トラックはどんどん近づいてきて、僕はブラスターブレードをギュッと握りしめながら近くの電信柱の影に隠れる。
怖いけど、ブラスターブレードが一緒なら大丈夫。
ブラスターブレードが、僕を守ってくれる。
そう思いながら、轟音に近いトラックのエンジン音に僕は顔を上げた。
『え・・・・・』
視界いっぱいに映るトラックが、僕の目に飛び込んできた。
それが、僕が最期に見た光景だった。
僕の体の何倍もの大きさのトラックが、僕が隠れていた電信柱に真っ直ぐと突っ込んできた。
痛みと衝撃を一身に受け、僕の意識は途切れた。
◇◆◇◆◇◆◇◆
尸魂界 街外れにある森の中ーーーー
その日の晩は、見事な満月が出ていて辺りの木々を青白く照らしていた。
「おい、松本。本当にこっちで合ってんだろうな」
「だぁいじょうぶですよ~、とうしろ・・・・じゃなかった、たいちょ~。確かに、この辺りから異様な霊圧を感じたんですから~。冬獅郎だって、感じたでしょ?」
「冬獅郎じゃねえ、日番谷隊長だ。お前、何回俺を呼び捨てにすれば気がするんだ」
「だってぇ、ついこないだまで三席だったんだし、今すぐ隊長って呼べったって、無理ですよ~」
木々の間をすばやく移動する二つの影。少年のものと思われる声と女性の声がそれぞれ言い合いをしながら森の奥へと進んでいた。
二つとも真っ黒な着物を着てて、一見闇の中に溶け込んでいるように見えるが枝の隙間から溢れる月の光で銀色の髪と橙色の長髪が彼らの存在を際立たせる。
それだけではない。少年と女性の背中と腰それぞれにに鞘に収まってある一振りの刀と、少年の黒い着物の上から羽織った背中に漢字で"十"と書かれた白い袖無しの羽織り。女性の方は着物の懐から溢れんばかりの豊満すぎる胸は世の中にいる全ての男性を悩殺するのに十分すぎる。
橙色の長髪の女性は、護廷十三隊十番隊副隊長松本乱菊。
銀髪の少年は護廷十三隊十番隊隊長日番谷冬獅郎。
二人はこの尸魂界を守る死神である。
冬獅郎と乱菊はこの地に虚が出現したとの連絡を受け、任務のため十番隊を引き連れてこの地に来ていた。本来、虚の討伐は隊長クラスが赴く任務ではない。普通なら平の隊員だけに任せるべきものだが、その数があまりにも多いのでこうして十番隊総出で任務にあたることになった。
虚の討伐はそんなに時間もかからず無事終えることができた。数は確かに多かったが、一体一体の力は弱かったので冬獅郎としては少し物足りない感じもしたが。
任務を終えたので、いざ静霊廷に戻ろうとした時、冬獅郎と乱菊は森のさらに奥から、微かだが霊圧を感じた。
それは虚のものではない、今まで感じたことのない霊力で冬獅郎は乱菊以外の他の隊員は静霊廷に戻るよう命じ、自分たちはこの霊力の正体を探るべく森の奥へ向かっていた。
気配を探りながら駆けていた冬獅郎と乱菊だったが、森の中に進んで行っても一向に霊力の持ち主が現れず、立ち止まって辺りを見回す。
「あれ~?おかしいわね~、確かにこの辺りから霊力を感じたんだけどな~」
やっぱ気のせいだったのかしら、と呟く副隊長を横に冬獅郎はこの地に残る霊力の残滓を探った。確かに、この場所に誰かがいた。それは確かだ。
だけど、いくら自分達が探しても人どころか獣一匹すらも見つからない。
おかしい、この森、何かがおかしい。
「ったく、何がどうなってんだ?」
この森に現れた虚は全て退治したはずなのに、何でこんなにも静かなんだ?
「チッ」と舌打ちしながら冬獅郎は、先に戻った隊員たちのこともあるので乱菊も戻るよう指示しようとした時、
ーーグオオオォォ・・・・・
「「・・・・っ!」」
森の奥から聞こえてきた声に、冬獅郎と乱菊はハッと顔を上げる。それと同時に伝令神機がけたたましく鳴り響き、虚が現れたことを二人に伝えた。
「隊長、この霊圧・・・・・」
「ああ、間違いねえ。虚だ。しかも、こっからそう遠くねえ場所に現れたようだな」
「そんな、この森に現れた虚は全て倒したはずなのに・・・・何故?」
乱菊が疑問を口にしてる間も、伝令神機は鳴り止む様子はみられない。座標を確認してみると、確かにここからそう遠くない場所を示していた。瞬歩で移動すれば、十分間に合う。
「今は兎や角言ってる暇はねえ。松本、行くぞ」
と言い残すと、冬獅郎は姿を消すように瞬歩で虚が現れた場所まで移動する。
「ちょ、待ってくださいよ!隊長!?」
乱菊も慌てて瞬歩で冬獅郎の後を追った。
◇◆◇◆◇◆◇◆
ーアイチ サイド
ーーグオオオォォ・・・・・
「ハァ、ハァ、ハァ・・・・・!」
背中から聞こえてくる化け物の声に止まりそうになる足を叱咤しながら、僕は全力で森の中を駆け抜ける。
足元は裸足、身につけた着物もそれぞれ草や木の枝で引っ掛けてしまいボロボロで傷だらけだった。
ーーこわい、こわい、こわい、こわい・・・・・!
恐怖で目から涙が溢れでてきて、このままいっそのこと足を止めることができたらどれだけ楽か。
「あっ!」
木の根っこに躓いてしまい、僕はつんのめるように顔から転んでしまった。
ひざが痛い。どうやら、転んだ拍子に擦りむいてしまったみたいだ。
「うっ・・・うっ・・・・ふえぇぇ・・・・・」
地面に踞り、胸の奥に溜まっていたものを吐き出すように僕は声を上げ、泣き出した。
こんなことをしてる暇なんてないのに、逃げないといけないのに。足が思うように動いてくれない。目から、涙がどんどん溢れ出てくる。
何で僕がこんな怖い目に合わなければいけないのか?
それは時を遡って、冬獅郎たち十番隊が虚討伐をする少し前のことになる・・・・
「ふぇ・・・・?」
肌に感じるヒンヤリとした空気の冷たさに僕は目が覚めた。目を開けてみると、飛び込んできたのは真っ暗な闇だった。
「ここは・・・・・?」
目を凝らしてよく見ると、僕が今、森の中にいることに漸く気がついた。辺りが真っ暗なのは今の時間が夜であることを示していて、どうやら僕は夜の森の中で眠っていたみたいだ。
何で僕はこんな場所で眠っていたんだろう?
そう考えながらこうなった経緯を思いだそうとする僕だった。けど、
「あれ?何で僕、ここにいるの?」
この森に来て、眠る前のことがどうしても思い出せないのだ。それだけではない。僕はどこで生まれて、何をしていたのか、名前以外の記憶が全て失われていた。
「ぅえ・・・・こ、こわいよ・・・・・。まっくらで、何にも見えないよ・・・・・」
周りは暗い夜の森の中、助けを呼ぶにも人の姿は全く見当たらない。あまりの恐怖に僕は目に涙を浮かべて、側にあった大木の根本に蹲った。
そして、このまま眠ってしまえって、ギュッと目を閉じてみるがさっきまで眠っていたためか、目が冴えてしまって眠くなる様子がない。
空を見上げようと顔を上げるが、木の枝が邪魔で空も星も全く見えない。唯一わかることと言えば、枝の隙間から月の光が溢れているので月が出ていることが分かるくらいだった。
グゥゥゥ~・・・・・
「お腹、すいた・・・・・」
お腹を抑えて、僕は必死に空腹を堪える。
グゥゥゥ~・・・・・
しかし、堪えども堪えどもお腹の虫は鳴り止まない。それどころか、益々空腹はひどくなる一方。
「食べ物・・・・探さないと」
とうとう、僕は我慢できず食べ物を見つけるため、勇気を振り絞って立ち上がると森の中を歩き出した。
一体、どれくらい森の中をさ迷っていたのだろうか?
歩けども歩けども、森を抜け出すどころか、どんどん奥へと行ってる感じがする。
食べ物も木の実どころか、水さえ見つからない始末。
裸足でずっと歩いていたので足の裏がすごく痛い。
僕は近くにあった岩に凭れながら地面に座り込んで、休むことにした。
両腕で膝を抱え込みながら膝の間に顔を埋めていると、歩き通しで疲れていたためか眠気が僕を襲ってきた。
お腹すいてても、眠くなるんだな・・・・・。
ボンヤリと思いながら僕は迫ってくる微睡みに委ねて静かに寝息を立てて眠った。
少年の着物の懐から一枚のカードが、まるでアイチを守るかのように輝きを放っているけど当の本人は体力を消耗していたこともあり、それに気づくことなく眠り続ける。
アイチが眠るその森に大量の虚が出現し、十番隊の死神たちが討伐してるとも知らず・・・・・・・・・
設定
先導アイチ・・・・原作どおり、櫂くんからブラスターブレードを貰ったがその直後交通事故に遭ってしまい命を落とすが、尸魂界に導かれる。
その直後、虚に遭遇し襲われていたところを十番隊隊長の日番谷冬獅郎と松本乱菊に助けられる。
後に、潜在霊力が並外れて高いことが判明し、日番谷らの勧めもあって死神となることを決意する。