硝煙の軌跡   作:暁学園前

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第一章 第三部

 クロスベルの町並みには硝煙が立ち上っている。

 

 

 銃声と兵士の叫び声が聞こえる。あれは断末魔か敵を殺す雄叫びだろう。銃が上げる叫び声だ。

 

 と、それは終わっていた。前線が進んだのだろうか、それは味方の前線か敵の前線か、それは分からない。

 

 

 俺は被弾して横転したまま動かなくなった戦車の残骸から這い出てくる。血だまりを這うこととなっているので、進む度にぴちゃぴちゃと音がするのだ。

 

 

 立てるような場所に着いた時に目に止まったのは他の乗員の肉片や体のパーツだった。

 

 

 ある者は砲弾の爆発に巻き込まれて、顔の半分が吹き飛んでいる。またある者は俺と同じように生き残って這い出るまでは良かったが、敵の突撃と重なったのだろうか、全身が銃弾でずたずたにされており、内臓が外からも見えている。

 

 

「ダレル」

どうしようかと周りを見渡している時、後ろから声が聞こえて振り向くと、そこには先程の顔が半分無い兵士が直立してこちらの名前を呼んでいて、俺は不思議と驚きも喜びもしなかった。「生きてたんだ」という感じだ。

 

 

 彼を見てると、いつか自分もこうなるのか、と考えてしまう。しかし今は遊撃士もどきをやっている以上、砲弾で吹き飛ばされることは滅多に無いだろう。

 

 

 すると民間用の導力車から昔の知り合い、《クラレンス・ハンゲイト》が手を振って乗れ、という催促をして来る。俺は顔が半分無い兵士に別れを告げて導力車に乗り込む。

 

 

 ドアを閉めると外界からは完全に遮断された気分になる。

 

 

 

 

「教官、起きてください」

 青年に声で目が覚める。どうやら教室で眠っていたようだ。それも教壇で。

 俺は謝ってから腕時計を見てみるともう帰宅前の時間である。起こしてくれたリィン以外の生徒は席に着いて、彼らの顔は夕日で朱色で染まっている。

 事務連絡をしながら早急に下校させるが、部活のある生徒はまだ残るだろう。この帝国の状況下でこんなに平和な生活ができるのは羨ましい。

 俺と言ったらクロスベルと帝国を何回も往復するような状況で、自分の家にも長らく帰れてない。

 しかし、教官達にも怪しまれないように各部活を回って興味があるように見せる。

 そこで、部活ではないが生徒会の存在が気になった。トールズの生徒会長は通商会議でも見かけたからかなり有能なのだろう。

 あの通商会議では遊撃士として警備に当たっていたが、やはり俺は警察や軍にも他の遊撃士以上に嫌われているようだ。突然現れた遊撃士、正確には水面下での話になるのだが、そんな奴が自分達の手柄を取っていき、挙げ句には猟兵と組んで抗争を起こす。好かれる訳が無い。

 しかしそれに反してあの生徒会長は期待されていた。俺が随分惨めに見えるもんだな。

 別に嫉妬なんかはしていないし、この仕事だって自分で選んで始めたものだ。むしろあの年齢でここまで有能なら尊敬もしている。

 俺は学生会館に階段を上って、二階に着くと廊下の突き当たりにある生徒会室を発見する。ドアを三回ノックして、

「失礼する。新任のトカレフだ」

 つい人が居るのかと思って入ったが返事が無い。

 訂正しよう。人は居た。しかも生徒会長が、だが会長はぐっすり寝ていて起こすのも可哀相になったため、生徒会室をそっと出ていくことにした。

 生徒会室のドアを静かに閉めると、すぐ近くにある怪しい雰囲気の部屋が目に止まる。しかしろくな部室ではなさそうだ。俺はあえて無視することにし、学生会館を出て行った。

 

 

「それで、今日一日働いてみてどうだったかしら。これが所謂カタギの仕事よ」

「カタギって言っても元猟兵や俺みたいな遊撃士がいる職場だぞ。大変だったのは認めるがカタギの仕事ってのは間違いだと思う」

 サラは笑ってごまかすように笑うと部屋にある酒瓶を手に取りそのまま飲んでいる。

 俺はだらしなさを注意しながら床にシーツを敷いて寝る準備をする。東方の布団というものだ。これが意外と寝心地が良いのだ。すぐ横にサラが寝ていることを除けば、な。

 サラはスタイルや顔で言えばトップクラスの女だが、性格を知れば知るほど、良い女とは言えなくなる。そんな彼女は元猟兵団に所属しており、それなりの過去があるということだ。

 正規軍だった頃ならその猟兵団とやり合った事もある。《北の猟兵》だったか。

 その時が大規模な戦いにはならなかったが、そこそこの死傷者が出た。

 俺がその話題に触れてしまったからか静寂が部屋を包むが、責任をとるという事も含めて明るい声で話す。

「まあ、お前の過去がどうだろうとそれさえ認めてくれる渋いオジサマってのが現れるだろう」

「あら、私の好み分かってるじゃない」

「この腐れ縁も何年続いてるんだと思ってんだよ」

 俺はその一言を言ってから完全に寝る態勢を取った。

 そして意識が朦朧としてきたくらいに、突然目が覚める。異常な気配がする。恐らく俺を狙っている奴らだろう。

 サラは既に熟睡していたため、起こさないように静かに荷物から武器と実弾を取り出して寮を出ていく。

 寮を出れば人気はなく、見つかれば一発でトカレフだ、と気付かれるだろう。ここで戦闘になるのはまずい。

 恐らくもう列車は出てないし、街道からの侵入か昼間から居たか、だ。

 周りを目で探るが人影は見当たらない。ならばこちらから安全な場所に誘い込んで一人ずつ仕留めてやる。

 と、質屋の前で四人の男を見つけた。あいつらは前に会ったことがある。昔、マフィアの一員を尋問したからその恨みだろう。

 腰に入れてる拳銃の感触、胸ポケットのナイフの感触、その二つを確かめて四人に接近する。足音を立てずにゆっくり、素早く、こちらの位置は分かっていない。もっと言えば宿泊先も知らないだろう。何せ今回に襲撃は予想していた事態だ。

 拳銃の銃口にサプレッサーを装着する。これなら外に出てる人間がいない限り、銃声を聞くことはなくなるだろう。例え聞いたとしても、わざわざ現場に来て俺の顔を見ていく物好きでも無いだろう。

 四人の後ろを三アージュ程の距離で歩き、段々近づいていく。今履いているブーツは《黒の工房》で特注した物で、まるで幽霊にでもなった気分を味わえる。

 因みに他の銃やナイフ、今は使わないがバトルガントレットも《黒の工房》に作ってもらった。中々値を張るが、それに応じた働きをしてくれるのが頼る理由だ。だから、並の武器じゃ俺には通じない。

 そして遂に最後尾の男の真後ろに来た。あと数リジュといったものだろう。

 俺はナイフを取り出し、男が気配に気づいたと同時に喉を切って、心臓に刃を突き立てる。その音で振り向く二人、先頭の奴は随分呑気だ。

 ちょうど男達が左右に展開したので、銃を構えようとした右の若者の拳銃のスライド部分を掴んで、トリガーに指を絡ませて折ってその拳銃を川に投げ捨て、男を盾にしたまま左の男を自分の拳銃で撃つ。

 すると、流石にもう気づいたのか先頭の男が怒りの形相で拳銃を引き抜こうとしている。ここでこいつの頭を撃ち抜こうとしたが、何物かに羽交い締めにされる。指を折られた若者だ。

 俺は必死で抵抗するが、彼は離そうとしてくれない。目の前に突きつけられた死に絶望する。

 だが、突然俺を羽交い締めにしていた若者の力が抜け、解放されると、目前の男も脱力したように倒れる。

 余りに不可解な出来事に困惑するが、男の頭が指している逆の方向を見ると、凶悪な大きさのスナイパーライフルを持っている男が、質屋の窓ごしに立っていた。

 夜ということもあり、顔が見えなかった。せめて礼を言うべきだろう。

 俺は死体を川に流してから、釣り場の近くから質屋まで歩いて行くと、ドアは開いていて、まるで俺が来ることが予想できていたようだ。

 助けてくれた、ということは敵である可能性は低そうだし、そうでなくとも「敵の敵は」の考えで話す。

 一応挨拶をしてから質屋に入ると、二人の男が居た。

 一人は白髪の男、情報屋の「ミヒュト」だ。この類いの仕事をしていれば、名前を聞くことは珍しくない。

 そして、もう一人の男は先程のスナイパーライフルを持っていて、俺と同じ三十代前半辺りに見える。この男が助けてくれたのだろう。

 「とりあえず礼を言おう。命の恩人の名前を知りたい」

 俺がそう伝えると、中年男性が「お前は本名は答えないだろう。ダレル中尉」。

 思わず身構えるが、ミヒュトが安心しろ、と言うので恐らく大丈夫だろう。

「長く離れてたから顔も忘れちまったか。俺はクラレンス・ハンゲイトだ。同じ鉄道憲兵隊に居た」

 思い出した。いつも不謹慎なジョークばかり言っていた俺の戦友であり、プライベートでの友人だ。

「随分変わっちまったな。俺は遊撃士になった。お前は」

「俺は・・・・・・色んな経緯があって《結社》の一員になった。それも計数されない極秘の一員だ」

「そんなこと喋って大丈夫なのか」

 俺がそう言うと、「《結社》のメンバーは“ある程度自由が利く“んだ。お前も知っているだろう」と返してきたので、何となく納得してしまった。それもクラレンスの手腕を知っているからだろう。こいつが暗殺をしたら誰にもばれない。完全犯罪も可能な程だ。むしろそうでなければ入れないだろう。

「まあ、お前の保護が俺に与えられた任務だ。余計なことは考えずに、教官をやっていたらどうだ。もうすぐ日が昇るような時間だぞ。寮に戻れ」

 腕時計を見ると、既に四時を回っていて下手をすれば人に見られる。こんな早朝に銃を持ち歩く教官がいても怪しまれないなら話は別だが。

 少々寝不足気味だが、担任として就いてるため朝早くから学院に行かなければならない。

 重い足を動かして質屋から出ていくと、少しだが日が出ていて明るくなっていた。

 

 

 

 寮から荷物を取って来ると、仮眠も合わせて行ったこともあり、七時に学校に着く形になってしまった。

 グラウンドを二時限目に借りられるか教頭に話すと、渋々といった様子で許可を貰える。どうしてもこのように見るからに人から好かれなさそうな人間は、組織の中に一人はいる。だが、これも必要悪なのだろう。

 それにしても今回の授業では何を教えようか。実戦的な訓練といっても、そこそこ心得はあるようだったし、訓練ではなく実戦が必要なのだと思う。ならばゲリラ戦術への対応とやり方を教えようか。

 そうこう考えている内に、教室の目の前に着いていたので、ゲリラ戦にした。

 ドアを開けると、まだ立っている生徒がいるので座るように促してホームルームを開始する。まあ、事務連絡も特に無いからさっさと終わらせられるのだが、授業が終わった後が暇なのだ。

 昨日終わらせた書類は四日分の物を渡したつもりだったらしく、本当にやることが無いのだ。授業も三時限目にあり、時間を持て余すとはこのことだろう。

 ホームルームが終わると、教室を出る。

 どうせ暇なら施設を回った方が有意義だ。

 まず最初に気になるのは「ギナジウム」という訓練施設だ。自分の出身の士官学院にあった訓練施設はボロい上に剣術の訓練しかできなかったため、最新の戦術を取り入れ続けるトールズではどうなのか。

 ギナジウムの中に入ると、そこには見たことが無い設備が多かった。射撃訓練ができる部屋なんて俺の学院にはなかった。特に部屋の数なんて多いから、流石、名門校といった感じだ。

 だが観光名所でもないため、すぐ飽きる。

 俺は他の施設を見にギナジウムを後にした。

 

 

「なんだ、お前もサボりか」

 屋上で、髭を薄く生やした青い髪の男が話しかけて来る。

「四日間《Ⅶ組》に戦術を教えるだけなので仕事が少ないんですよ」

 俺は遊撃士らしい社交的な感じを醸し出す。これをするのが毎回面倒でもあるが、鉄道憲兵隊の時の上下関係よりずっと良いだろう。

「そうか。すまなかったな」

「こんな時間に仕事してないんで誤解されても、仕方ないですよ。謝ることじゃありません」

 そう返すと、男は「そうか」と言って、煙草を吸いはじめる。するとライターが点きづらいらしく、気を遣って俺のライターを差し出す。男は遠慮をしないが、礼は言って受けとる。割と接しやすいタイプである。

「そういえば、あんたの名前教えてくれないか」

「アレクサンダー・トカレフです」

「トカレフか・・・、俺はマカロフだ。名前としてはあんたの方が年上だな」

 俺の年齢は今は二十五歳だ。恐らくそれを信じきってるのだろう。

 意外と騙せるもんだな、と俺は思う。

「まあどちらにせよ昔の物ですけどね」

「そうだな。それはそうと《Ⅶ組》の連中だと誰が有力なんだ」

「それでしたら、まずフィーが挙がりますね。猟兵での経験で一番実戦的な動きをしています。

次にラウラ、彼女が使う大剣は防ぐのも避けるのも難しいでしょう。

他にもコンビで言えば、マキアスとユーシス、リィンとアリサのように二人ずついるようで、これは少数での作戦に向いています。

ですが、個人単位の話であればリィンが最強でしょう。本人は隠しているようですが、『ある力』が眠っています。恐らくかなり強力なものでしょう」

 するとマカロフは「楽しそうで何よりだ」と言って去る。

 俺の教官としての生活はを楽しんでるように見えるらしい。俺としては楽しくないと言ったら嘘になるが、早く終わってほしいのも真実だ。

 

 

 俺はゲリラ戦の訓練をする準備を終えると、ちょうど《Ⅶ組》のメンバーが全員集まる。

 都合が良いので、今回の訓練を説明する。

 

 今回の訓練はゲリラ戦の訓練だ。敵の戦力が、自分達より圧倒的な場合に有効だ。

 待ち伏せや罠を利用したものだから、並の軍隊なら相手にできるくらいのは仕込もうとは思うが、今回与えられた時間は今日を入れて三日間だ。

 技術としては難しいだろうが、知識として身につけておくと戦闘に役立つだろうから頑張ってくれ。

 

 元気の良い、若い返事を受けとると、早速訓練に移る。

 今回教えるのはブービートラップだ。

 屋内で使用するものであり、まずドアノブに丈夫な糸を巻付ける。解けないようにするのが重要だ。

 そして伸びている糸を壁に貼付けている手榴弾のピンに巻く。こうして部屋に入った途端に爆発するトラップの完成だ。

 それのピンが抜けるまでの光景を、壁が殆ど無い訓練用のドアを使って、見せる。勿論、手榴弾の火薬は抜いてあるため爆発はしない。

 すると生徒達は呆然としていて、その中からマキアスに質問してみる。

「どうした。この程度が出来ないで軍に進んでも弾よけにしかならないぞ」

「いえ・・・そういう訳では無いのですが、遊撃士はこういう戦術を使うイメージが無かったので・・・」

 俺はそれにどう答えるかほんの少し迷ったが、適当にごまかすことにした。

「それに関しては俺の経歴が関係してるな。まあそれについてはいつか話す」

 そしてそれをエリオットにさせてみる。器用そうな生徒を選んだ。普段から楽器を使い、それを整備、点検することもあるだろう。だから選んだ。本人は戸惑うように出てきて、説明通りにトラップを作成する。

 

 エリオットの作業が終わると、初めて作るにしては上出来と言える物が完成していた。

 糸がドアノブから外れるような様子もなく、作動もする。

「上出来だ。これくらい出来るなら実戦で使うことも可能だろう。

次は―――――」

 

 

 最後にクロウの作業が終わると、全員の上出来に驚く。これを新兵が行うと大体失敗する。

 だが、新兵でなくとも、実戦の時は、死と隣り合わせであるため、焦りで失敗することもあるのだ。俺は、そうした奴を、何回か見たことがある。

 それでも俺は失敗しなかった。

 強運なのか、才能があるのか、自分でこう言うのは自画自賛のような気もするが、恐らく後者だろう。昔から悪戯や、士官学院での訓練が、それを証明していた。射撃でも、格闘でも、大して努力をしていないのに、かなり上位に食い込んでいた。詳しく言えば五位以内くらいには必ず入っていた。だが、そんな才能を妬む奴も居て、俺には仲の良い友人も居れば、こちらが何もしていないのに、俺を避ける人間も居た。

 それらは然程気にならなかった。

 だが、俺は《Ⅶ組》を羨ましくも思う。

 仲間と共に成長するクラスだからだろうか、昔から、一人か二人で過ごしていた俺にとっては、眩しい存在だ。

 まあ、今の自分の状況も嫌いじゃない。一人で行動するのは気が楽だ。

 

 切りが良いところで、授業の終わりのチャイムが鳴る。

 すると裏口の方で、クラレンスが立っていて、こちらを見ていたので生徒達がグラウンドから去るのを見守ると、我が友人の元へ近づく。

「昨日の連中か」と聞くと首を横に振り、「《Ⅶ組》が狙いの猟兵らしき奴らが近くに来てる。まだ街道の辺りだが、到着も時間の問題だ」と告げる。

「俺は銃を取って来る。ダレル、お前は東の街道で待機してろ」

「東から来てるのか」

「そうだ。だが、少数過ぎる。たった四人で、十一人の精鋭を暗殺しようとするのは疑問だ」

「単純な話で、その四人が強いのか、全員殺すつもりはないのか、それとももっと別の秘策でもあるのか、どれだろうな。四人編成の部隊なら、それなりの訓練は受けている筈だし、何にせよ厄介なのは間違い無いな」

 猟兵だとしても、精鋭ならば《西風の旅団》か《北の猟兵》、そうじゃなければ、《帝国解放戦線》だろう。

 裏口から東街道へと移動する。人に見られないように、獣道を通る。戦闘用に工夫したジャケットのお陰で、かなりのスピードで進める。

 森林を抜けると、街道が見えてきた。そして二十セルジュ程先に、ゆっくり進む導力車があり、双眼鏡を通して見ると、情報通りの四人が乗っていて、後部座席には銃の一部がちらちらと見えている。それを隠しきれないところを見ると、精鋭の部隊である可能性は、極めて薄くなる。

 皆殺しではなく、個人の暗殺だろうか、精鋭でもない四人で《Ⅶ組》を相手にするのは難しいだろう。見えている銃も、恐らく企業で作られた物の流出品だろう。戦場に置いていかれた銃を、闇商人が拾って、それを低ランクの猟兵団に売る。高ランクの猟兵団なら特注の銃を、直接作るように工場に頼むだろう。それこそ《黒の工房》、とまではいかずとも、裏の奴らが経営している工場だ。

 俺は導力車が到着する前に、ちょうど死角になる場所に移動し、待伏せる。

 そして、導力車のエンジン音がはっきり聞こえるくらいに近づいて来ると、拳銃をタイヤの通りそうな位置に構える。トリスタからはかなり離れているし、発砲しても街には聞こえないだろうから安心だ。

 

 遂にタイヤが見え、引き金を絞る。

 乾いた破裂音と、ほぼ同時にタイヤがパンクし、導力車はスリップする。それの行く先は川だったので、早急な脱出が求められるが、俺は容赦なく発砲し続ける。

 窓に穴が開き、車体はへこみ、この銃の恐ろしさを改めて実感する。だが、俺は弾が切れようとも、リロードして撃ち続ける。中にいる四人を確実に殺したかどうかを確認できるまで油断は出来ない。

 そして地面に、三つ目の空マガジンが転がった頃に撃つのを止め、導力車に近づく。

 中では、ずたずたになった内蔵を抱えるように前屈みになっている、若者や、まだあどけなさが残っているような少女の腕が失くなっていて、探すと、後部座席に転がりこんでいた。恐らく家族にでも見せるために連れてきたのだろう。

 後部座席には傷だらけではあるが、大量の銃が置いてあり、こいつらがクロなのは確実だろう。

 すると、導力車に積んであった通信機が喚きだす。

 

『アーチャー1、そろそろ街に到着する時刻だが、何かトラブルが発生したのか』

「ああ、エンジンの故障があってな。これから徒歩で街に向かう」

 俺が運転手を装い、返すと相手は面白いほど信用してくれた。

『了解、出来るだけ急いでくれ。通信終了』

 

 無線からの声が途絶えると、車体から放り出された男が、うめき声を上げて気がつく。

 俺は即座に男の喉をナイフで切り、心臓に追撃を加えて仕留める。切られた部分から血が噴き出し、足に少しかかってしまった。だが、それ以上に奴らには仲間がいる。それに、恐らくトリスタに入り込んでいる。

 俺は足に付いた血を、水辺で洗い流して、トリスタに向かった。

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