密疎の狩人とシュレーディンガーの吸血鬼   作:Haganed

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№1-2 追憶の神父

-翌日-

 

「ふあ……あわわわぅ」

 

 

 如何にも特殊すぎる欠伸をする明密。少し思い瞼を擦りながらベッドから出て冷蔵庫に向かう。冷蔵庫を開け、昨晩コンビニで買ったキウイジュースとサラダ、冷凍していた御飯にレンジでチンできる鯖の塩焼きを朝食とする。

 

 箸や茶碗、皿を取りだし準備する。ちょうどその頃アーカードも明密の影から出てきて血液パックを飲んでいた。

 

 食品が温まるまで着替え、洗顔、荷物の最終チェックを行う。終わる頃には丁度終わっているので、レンジの中身を取りだし皿や茶碗に盛る。それらをテーブルへと持っていき両手を合わせた後、朝食を取る。

 

 朝食が終わると直ぐに台所で洗い物をする。それを終え次第、今度は歯磨きをする。一通りの行程を終えたあと、アーカードと共にアパートを出る。学校への通り道で天哉と遭遇し一緒に登校する。

 

 雄英の正門前まで来ると、緑谷と麗日が合流する。そのまま他愛のない雑談をしながら学校へと入っていくが、アーカードは何故かは分からぬが根津に呼ばれているので根津の居る校長室へと向かっていった。

 

 教室へと入ると、まだ新鮮味の残る光景として明密たちの目に映る。

 

 新しいクラスメイト、新しい場所。何れを取っても素晴らしく思えてくる。明密はぶれずに皆に挨拶を交わしていく。勿論爆豪にも挨拶を交わしたが、先日の事も相まって機嫌がよろしくなかったそうな。しかし明密はというと。

 

 

「昨日の件は御迷惑を御掛けしました、爆豪さん。しかしながら共に暮らしていく者同士、険悪な雰囲気で過ごされるのは貴方にとっても我々にとっても不利益が生じてしまう。ならば互いに先日の件は水に流し、また一からスタートしていきましょう」

 

 

 こういうのを仏の御心というべきか。本当に後光が照らされている様な明密に論され調子の出ない爆豪。この時生徒の殆どが「(仏や……仏がいらっしゃる……)」等と考えていたそうな。

 

 HRを終え午前の授業。プレゼントマイクの英語の授業では皆、普通の授業だったので少し拍子抜けしたが今度はおちゃらけた雰囲気を出していた。その雰囲気に乗った明密は生徒全員から注目されたが「楽しみながら授業を受けるのも大事ですよね」と笑顔でプレゼントマイクに言う。

 

 

「(いやコイツ……本当に吸血鬼狩りしてる奴か?どう見ても、そんな風に見えねぇんだけど?寧ろ良い子)」

 

 

 当のプレゼントマイク本人は内心そんな事を思っていた。吸血鬼狩りの隠蔽条件として来ている事は知っているが、こうも性格面と政府からの情報とのギャップ差がありすぎて混乱している様子であった。それを心配する明密は相変わらず仏と思われていたそうな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 午前の授業が終了し大食堂へと向かう明密。その際、天哉と出久とお茶子と共に向かう。その大食堂では安価で一流料理がいただけるので内心楽しみにしていた。何故か途中でアーカードと合流し大食堂に着く。

 

 その際全注目がアーカードと明密たちに向けられていたのは周知の事実でもあった。

 

 昼食を終えてクラス内に戻る。まだ少し騒々しい所もあるが、仲良くやれている様子。その際、上鳴や切島、峰田からは今朝の事を色々と言われていた。峰田に関しては時折「明密が女だったら……くそっ!」という感じで静かに嘆いていたという。

 

 そして午後の授業。

 

 

「わーたーしーがー!!」

 

 

 クラスの扉前に響く声。聞き覚えのある声に皆扉に注目が走るが、明密とアーカードは疑問の状態で扉に注目する。

 

 

「普通にドアから来た!!!」

 

 

 少し前に反ってはいるが入室していくアメリカンコスチュームを着た男。アーカードは明密に耳打ちし誰かと尋ねる。約550年生きていても興味の無い情報は全く耳にしないというので情報を教える明密。

 

 №1ヒーロー『オールマイト』。数年前の大厄災の時に救助活動の成果は多数のメディアに取り上げられている程の人気ぶりで、ヒーローに興味がなかった明密でもある程度は知っているということ。しかし如何せんヒーローに興味がないためか、周囲の喧騒とした雰囲気に呑み込まれつつあった。

 

 そんな感じで居るとオールマイトは【BATTLE】と書かれたプレートを生徒全員に見せる。

 

 

「早速だが、今日はコレ!戦闘訓練!!」

 

 

 戦闘と聞いてアーカードは興味を示したが、明密にとって戦闘とは吸血鬼と殺しあいする事で訓練と聞いたので少し安堵していた。

 

 

「そして、こいつに伴って……こちら!」

 

 

 後ろの棚が自動的に飛びだす。その飛び出された棚の中には番号が書いてある袋に衣装が入っていた。

 

 

「入学前に送ってもらった個性届と要望に沿ってあつらえたコスチューム!!」

 

 

 多くの生徒が歓喜の声を挙げる。

 

 

「女子は教室で、男子は今から案内する部屋で着替えてくれ!着替えたら順次グラウンドβに集合!!」

 

『はーい!!!』

 

 

 

 

 

 

 

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「アケミツ、何を悩んでいる?」

 

「アーカードさん。いえ、ヒーローが使うコスチュームをと……」

 

 

 これは明密とアーカードがまだ雄英に入学する前の事。雄英では個性届の他に身体情報を元に個人の要望に沿って作られる戦闘服/コスチュームが製作され使用できるというシステムが存在する。

 

 実際に活躍するヒーローはコスチュームによって活動をしている様なものでもある為、コスチュームの要望は必須事項なのだ。しかし明密は生身の、しかもコスチューム無しで吸血鬼やグールと対峙してきた為コスチュームの存在意義が見出だせないのだ。悩むのは必然的である。

 

 

「お前はあっても無くても然程変わらんだろ」

 

「まぁそうなんですけど……学校の必須事項ですし……う~ん……」

 

 

 悩みに悩んだ明密は一度コスチュームの事を忘れ床に寝そべる。そのまま瞼を閉じ意識を闇の中へと誘う。

 

 そして明密は夢を見た。とある服装に身を包んだ誰かを。首に小さな十字架を掛けた誰かの服装を。

 

 それを見終えたと思いきや意識が覚醒し瞼が開かれる。起き上がりコスチュームの欄に服装の要望を書いていく。

 

 漸く目覚めた明密を見に行ったアーカードはコスチュームを見る。そのコスチュームを見たアーカードは目を見開き少しだけ瞳が潤んでいた。

 

 

 

 

 

 

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 明密はコスチュームを着てグラウンドβに集合する。

 

 

「ん?おぉ!明……密君?」

 

 

 天哉が明密に振り向く。明密は着用に戸惑い最後に来てしまう結果になっていたが、天哉は明密の姿を見て戸惑いが生じてしまう。

 

 裏面の生地が青く表面が灰色のコートに青のラインが入った黒のシャツ、無地の黒のズボンを着用している。手には十字架が描かれている白の手袋、首に小さな十字架を掛け伊達眼鏡を掛けた明密の姿。

 

 その姿、正しく神父の様な姿であった。アーカードはこの衣装を見る度に少しだけ悲しそうな、そして何処と無く嬉しそうな笑みを浮かべるばかりだった。

 

 

「さぁ始めようか有精卵ども!!戦闘訓練のお時間だ!!」

 

 

 明密とアーカードが周囲を見回すと各々個性的な服装が目立つ。目の前にいる天哉はインゲニウムをモチーフとした外見をしており、切島は上半身をほぼ露出している服装。出久を見ると緑色の服装でマスクを装着している。頭に耳の様なものが付いているが、それを見たオールマイトが笑っていた。お茶子の服装は体にピッタリと張り付いている為、窮屈そうだが峰田の「ヒーロー科最高」の後にサムズアップという一連の行動を見て苦笑いを浮かべる明密。

 

 

「明……密君、だよね?」

 

 

 出久は明密を指差し尋ねる。神父の様な服装を着ている明密が笑顔で肯定すると、出久と天哉が安堵する。

 

 

「良かった~、別人かと思ったからつい……」

 

「それはぼ……俺も同感だ。明密君のコスチューム姿が変わりすぎて誰が誰だか分からなくなってしまっていたよ」

 

「そういう緑谷君も飯田君も、とても似合っていますよ」

 

 

 明密がコスチュームと本人の事を褒めると二人とも照れ臭そうにしていた。

 

 

「明密君って……仏で妖精で神父様なんだね!」

 

「何れもアダ名の様なものですがね」

 

 

 こんな感じでお茶子とも話をしていく。何時の間にか移動していた天哉がオールマイトに質問をするとオールマイトは質問に答えたが、その後続々と質問の嵐が飛び交う事になるのをオールマイトは知らない。

 

 

「先生!ここは入試の演習場ですが、また市街地訓練を行うのでしょうか!?」

 

「いや!もう2歩先に進む!!君らにはこれから【敵《ヴィラン》組】と【ヒーロー組】に別れて2対2の屋内戦をやってもらう!!」

 

「基礎訓練もなしに?」

 

 

 梅雨の言葉もごもっともである。基礎あってこその応用訓練だが、オールマイトは“その基礎を知るための訓練”と言ったので明密は納得する。

 

 

「勝敗のシステムはどうなります?」

 

「ブッ飛ばしてもいいんすか?」

 

「また相澤先生みたいな除籍とかあるんですか?」

 

「分かれるとはどの様な分かれ方をすればよろしいですか!?」

 

「このマントヤバくなーい?」

 

「んん~!!聖徳太子ィ!!」

 

 

 最後だけどうでも良いと感じる明密とアーカードだが、あまり質問攻めにしてはオールマイトも混乱するので出来る限り余裕を持たせてあげようと明密は質問した生徒たちに言う。

 

 

「(確かあの子は……ヴァンパイアハンターだっけか?校長からのお話で政府があの子とあの大男の活動を隠蔽する条件を理由に入学している……けど優しいから良いか!)」

 

 

 オールマイトには好評という形で内心褒めてもらった明密であった。やはりアメリカン、そこら辺はアバウトな所がある。

 

 オールマイトは小さな紙切れのカンペを見ながら訓練の説明をしていく。内容を簡単に纏めるとこの様な感じ。

 

・【敵】がアジトに核兵器を隠しており、【ヒーロー】がそれを処理しようとする設定

・ヒーローの勝利条件

 『【敵】を二人とも捕縛』又は『核兵器の回収』

・敵の勝利条件

 『【ヒーロー】を二人とも捕縛』又は『制限時間の15分まで核兵器を守る』

・捕縛には配布される確保テープを用いること

 

 なんともアメリカン設定だが、分かりやすくて良いと感じる明密とアーカード。本来は籤を全員引く筈だが、オールマイトによって明密とアーカードは何故か固定ペアという事になっており、明密とアーカードのペアは敵組だったペアと訓練するらしい。

 

 そして始まっていく訓練。第1回目から熾烈を極めた内容だったが、これはヒーロー組である出久とお茶子の勝利。しかし戦況判断的には天哉が一番であった事を『八百万 百』が指摘すると天哉は感激し、オールマイトはふるふると震えていた。

 

 そして、それぞれのペアが訓練を終えていくと最後は明密とアーカードのペア。これには天哉と切島が手伝ってくれるそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 先に潜んでいる明密とアーカード。作戦は核は5階に、アーカードは核の護衛をする。明密は階段に全ての階段の細工をしつつ1階で二人を迎え撃つ作戦。もしアーカードが前に出れば色々とヤバくなりそうだと考えた結果である。

 

 アーカードはその作戦に従い核のある部屋に護衛として着く。明密は階段や壁を密度操作した手で砕き、その残骸を密度操作して五重の壁を作る。これを全部の階段に。

 

 そして明密は1階で待ち構え、密度操作の準備をする。

 

 アラームが鳴りヒーローが潜入する。足音が内部に響いた事を確認すると、地面の密度を操作し液体に近い密度にさせ閉じ込めさせていく。

 

 

「うおっ!?何だこれ!?」

 

「くっ!明密君の個性か!!切島君!両手を硬化してくれ!」

 

「お、おう!!」

 

 

 言われるがままに切島は両手を硬化させる。天哉は切島を肩車し、個性を上向きに発動させる。理解した切島は天井に両手を突き刺す。まだ液体に近いコンクリートがコスチュームから垂れている。

 

 明密は地面の密度を戻したあと二人の前に現れる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「我は神の代理人 神罰の地上代行者」

 

「「!?」」

 

 

 急な台詞。普段の明密からは想像も出来ない程の低い声で台詞を続ける。

 

 

「我の使命は 我が神に逆らう愚者を その肉の一片までも残さず 絶滅すること」

 

 

 右腕を下から上へ、左腕を左から右へと移動させ左腕の真ん中辺りに右手首を当て打ち鳴らしながら言い放つ。

 

 

 

 

 

 

 

       「Amen!!!」

 

 

 

 

 

 

 

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