あの日俺は、会社に行く途中で寄ったコンビニで交通事故に巻き込まれた。
前の晩に飯を食べずに寝たため、その日の朝は空腹で目が覚めた。いつもなら時間に余裕を持って起きるのだが、自分にしては珍しく寝坊してしまい家で朝飯を食べる時間がなかったため、仕方なくコンビニに寄ったのだ。
レジで会計を済ませて外に出た瞬間俺に車が突っ込んできた。
最近良く聞くアクセルとブレーキの踏み間違いだった。ぶつかった衝撃で店内へと吹っ飛ばされた俺は、頭を床に強打し即死。………したはずだった。
*
「………と、云うわけで、あんたは本来死ぬ運命じゃないのに無理矢理殺されてしまったんだよ。」
気づいたら俺はだだっ広い真っ白な空間で突っ立っていた。
自分に起きたことを覚えているが、どうも現実味がなくて頭も心もどこかフワフワしていたんだ。
気がついてから何時間経ったか…、いやもしかしたら何日間、下手したら何年、何十年の時が経ったかもしれない、それほど時間の感覚が曖昧で、何もない白い空間のせいかもしれないが、ありとあらゆる感覚がひどく麻痺したような―――――――
しばらくすると…―時間の感覚が曖昧なため正確には分からないが、自分という存在が希薄になりこの空間に溶け出していくような奇妙な感覚を覚え始めたとき、自分を呼ぶ声が聞こえた。
あたりを見回してみるが、謎の声は頭の中…というより自分―俺の存在自体に語りかけるような、声は声として聞こえているが耳からではなく自身の内側からその声は響いているようだった。
*
「……い、…ぉい…………おい!」
はっとして沈みこんでいた意識を浮上させる。
内から聞こえる謎の声にあらためて耳を傾ける。
「大丈夫か?」
あぁ、大丈夫だ…すまない話しを続けてくれ。
「…まぁ無理もないがな、こんな状況下で冷静になるなんて…。」
いや、…それで、なんだったか……あぁ、俺がまぁ言うなれば手違い?で死んだために、異世界に転生させてくれるとかっつー話しだったか?
「……手違いというか、殺されてしまったんだがな?…ただ、説明しづらい上に死んだって事実は変わらねーから、どっちでもいいけどなその辺の認識は。」
そっか…、それで俺はどんな世界に転生するんだ?
「…いやいや、その前に色々聞くこととかあんじゃねーの!?フツー!」
…たとえば?
「お前なんでか平然と受け入れてるけど、お前は誰だ!?…とか、転生ってなんだ!?…とか、他にも色々よぉ。」
あぁ、そんなことか…
「いや、そんなことか…って……。」
何で俺が驚いたり疑問に思ったりしねーかっつうとな、生前ラノベやネット小説で散々知識を得てんだよ。
それこそ様々なパターンを網羅してる!
…あとは、俺自身いまだに他人事みたいに感じてるから…かな?笑
「…流石日本人は違うな、そういう方面に免疫特化したやつ多すぎだろ。」
俺がそう言うと謎の声はどこか呆れたような感心したような溜め息を交えて言葉を漏らした。
さっきはあぁ言ったが内心小躍りせんばかりに気分が高揚している自分がいる。
ただ、俺は昔から心の内を外に出すのが苦手だっただけだ。
そのせいであらぬ誤解や勘違いをされたこともあったがいまではいい思い出だ。
それで、特典とかあるのか?
「…ん?、あるぞ?…容姿は基本的に自由に決めれるし、何か具体的なイメージがあればそれをそのまま引用することもできるしな。」
「能力とか身体的なこともある程度は自由だぞ。…ただ、あまりにもやり過ぎだと思うものはお前が転生する世界を崩壊させたりとかに繋がるから、止めさせてもらうがな。」
あぁ、わかった。
「じゃあ、早速決めてくか?」
待て、…そういえば俺が転生する世界ってどんな世界なんだ?アニメとか漫画の世界か?
「お!忘れてたぜ笑 お前が転生するのはドラクエの世界だ。…といってもナンバリングとかすでに存在する世界じゃなくて、あくまでもドラクエの要素を持った世界だがな。」
ドラクエ―ドラゴンクエストは俺が大好きなゲームのひとつだ。俺が最初にやったのはⅢからだったが、あとからⅠとⅡもやりこみナンバリング以外の外伝やゲームもやりつくしたほどだ。
残念ながらⅩはプレイしたことがないがⅨまでなら廃人レベルまでプレイしている。
「嬉しそうだな?」
そりゃあ、好きなゲームの世界に行けるとなればな
「まぁ、お前の記憶の中から読み取った最も印象的な事柄を反映してるから、喜ぶのは当然か…。」
「……さて、まずは容姿外見だな、何か希望はあるか?」
外見は……Ⅳのラスボスのデスピサロにしてくれ。
あ、人間形態のほうな。
「OK、容姿はそれでいいとして次は能力だな、……悪い、言い忘れてたが転生する魂の容量とかの兼ね合いで選択できる能力には制限がかかるからそのつもりで頼むわ。」
具体的には?
「そうだな…たとえばドラクエの呪文全部使えるようにしてくれとか、『王の財宝』とか『時間停止能力』とか、かな?…まあだいたいわかんだろ?」
「あぁ、でもデスピサロ、魔剣士ピサロの装備品だとか、呪いの防具を装備しても呪いにかからないとか、本来ピサロが覚えたり使える呪文とか特技とかは全部使えるようにしとくわ、まぁサービスってことでな!」
おぉ!ありがたい!
「まぁいいって、あとはどうする?」
…モンスターズの要素で特性とかはどうなってる?
「あー、特性はDQMJ3Pのやつでいいか?」
それでいい、あとはつねにマホカンタと、自動HP、MP回復もつけてくれ。
「ん、…よし!あとひとつくらいで限界だな、どうする?」
あとひとつか、……配下の魔物を召喚できるような能力とかできるか?
「…!?……ん~むずかしいな、制限かけてもいいなら出来ないことはないが…」
どんな制限だ?
「…そうだなぁ、召喚というか、魔界の扉を開けるようにして…扉から出てくる魔物の数とかを強さや位階によって制限かけて……なおかつ、出てくる魔物は自力で従わせるとかなら……いけるか?」
わかった、それでいい。
「よし!そんじゃあ決めるもん決めたことだし、心の準備はいいか?いよいよ転生させるぞ!?」
あぁ、やってくれ。
「おう!そんじゃあ行くぜ、最後にあんたの二度目の人生に幸運があることを祈っておくぜ!」
色々ありがとな、二度目の人生思う存分楽しんでやるぜ―――――――
*
こうして俺はドラクエの世界に転生をしたのだった。
しかし謎の声の主の祈りも虚しく、俺は後にとんでもない出来事に巻き込まれることになるのだった。