謎理論ですがスルーしてください。
くすくす。
え?何がおかしいかって?
このカケラよ。
滑稽だったわ。
何が滑稽かって?そうね……
例えばこの罪滅し編のカケラ。一見するとただのカケラだけれども、ほら、ここをご覧なさいな。
もっと小さな、細かいカケラがたくさん付いているでしょ?
これはいわばカケラのカケラ。
この空間に存在する、古手梨花が辿ってきた幾通りもの記憶のカケラは、実はそれぞれ決して静止せずに漂っているのよ。
ほら、このカケラも、微妙に動いているのが分かるでしょ?
なぜ動いているか分かる?
他のカケラに出逢うためよ。
平行世界の記憶同士が結びつくことで、古手梨花はより上位の存在に昇格するの。
……けれどそれは、幾星霜もの歳月がかかる。
その過程で、ごく稀にカケラ同士がぶつかって、欠けた小さなカケラが生まれることもあるのよ。
普通は、ごく微細なカケラが大きなカケラに付着するだけ。
こうして別の世界のほんの一瞬だけ、断片的な記憶があたかもその世界でも体験したように感じられる。俗に言う、デジャヴというやつね。
普通に暮らしていてもそういう体験は得てしてあるものだけれど、罪滅し編のカケラみたいに、これほどたくさんの小さなカケラがついていると、それは普通じゃない。
多くの偶然の要素が重なり合った、奇跡的なケース。
これによって罪滅し編の世界では、前原圭一が「思い出す」ことができた。そしてひとまずの惨劇は「回避」された。
でも、こっちのカケラはそんな高尚なものじゃない。一見してさっきの罪滅し編のカケラとよく似ているけれども。
おそらくAとBというカケラ同士が、非常に大きく衝突して、それによって生まれたBの世界のカケラのカケラが、Aの世界のカケラに突き刺さったようなもの。
だから、このAの世界のレナは、Bの世界のレナの記憶をかなり多く保持しているのよ。
でもこれはおそらく、自然に生まれたんじゃない。
より上位の存在が、戯れか何かでこの精神世界に干渉してきた結果じゃないかって思うのよ。
もしそうだとしたら、その存在は何をしたかったのかしら?
この存在によってレナは二度の死を経験せざるを得なくなった。
一つの人格が、二回も終わりを迎えるなんて矛盾してるでしょ。
ああ、古手梨花は何度も死んでいるけど、死の直前の記憶をいつも保持していないから除くけれど。
だから、このカケラは無意味。
出来の悪い、いびつな代物。
この存在はこれだけ強引にカケラを動かしたのに、結局惨劇は止められないだなんて、滑稽じゃないかしら?
くすくす。
え?……なに?
ここを見ろって?
……あら。
もう少しで見落とすところだったわ。
もう一つ、Bの世界のカケラにも、小さなカケラが刺さっていたのね。あまりにも小さすぎて見えなかったわ。
どうやら、もう少しだけ続くみたい。
どうせ何も変わらないのでしょうけど。
……何も変わらないかはわからないって?
……そうかもね。
じゃあ、覗いてみましょうか。
どうせこの世界にいても、私たち「古手梨花」には退屈なだけだし、ね?
さてカケラって言葉何回出たでしょうか←
一応次で最後の予定です。