東方脛擦怪   作:月影音紅

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1話

『幻想郷』、妖怪達の最後の楽園と呼ばれるこの世界に私は生まれた。生まれたと言ってもそれ程前ではない。10年やそこら辺だったと思う。

 私は妖怪と言っても人間より非力な妖怪。妖怪としての種族はすねこすりだ。雨の日に人間の脛を擦って動きにくくしたり、転ばせたりするあのすねこすりだ。

 生まれた時は雨の日だった。碌に動けない生まれた直後の私は動けず、他の妖怪の餌になるのを待つだけだった。しかし、心優しい人が私を家に連れてってくれ、自立出来るまで育ててくれた。そして自立できるようになってその人の元を離れ、そこから少し遠い山の麓に家を建て、自由気ままに過ごしている。

 

 

 

 

 

 簾の隙間から朝日が射し込む。眠い目を擦って体を起こして布団から出る。簾を畳み、空を見ると雲一つ無い快晴。台所に行くと昨日貯めた雨水を濾過した。生活水で水を木製のコップに注ぐと眠気覚ましに一気飲み干す。空になったコップを元に戻すとドアの下に挟まっている紙束を引っ張って手に取った……その時、勢いよく開かれる。

「おはようございます!こすりさん!ようやく手に取ってくれましたね!今日はs……」バタンッ!

私は勢いよく開かれたドアと同じ勢いで閉じる。面倒臭い……彼女の第一印象がそれである。射命丸文―――彼女の名前で私の住んでいる山―――妖怪の山を縄張りにしてる天狗で新聞記者である。出会ったのはこの土地に家を建てた時であって、出会った時にもこの様に新聞を定期購読をさせようと迫って来た。その時に新聞の素晴らしさを小1時間説明された。と言っても購読は拒否したが……

「あの、何度来られても困るんですけど……」

「えー、何でですか!?新聞取ってくれてもいいじゃないですか?私達の仲じゃないですか!?」

「私、貴女と仲良しだと思ったこと一度たりともないんですが……申し訳ないんですが帰って下さい……これから行く所があるんで……」

「わかりました、今日"は"大人しく引き下がります。でも諦めないですから!」

そう言うと射命丸さんは帰っていった。遊びに来てくれるのなら来てくれても構わないんだが、もう2度と購読の誘いでは来て欲しくはないんだけど……文字あんまり読めないし……私は射命丸さんがいなくなったのを確認すると家の戸締りをして目的地へと駆け出した。

 

 

 

 

 

 家からおよそ30分、この幻想郷唯一の人間がする人里へと着いた。妖怪の私が人間の里へ入っても大丈夫ではないのではないかと思われるが、そこら辺はばっちりだ。なぜなら、

 「お、こすりちゃんだ、今日はどうしたんだい?」

「今日は慧音に会いに来たの、入っても良いかな?」

「そうか、少し残念な様な気がするけどどうぞ、楽しんでいってね?」

この通りである。私は自立するまではこの人里で過ごしてたのである。最初は害ではないか?と思われていたが、共に過ごしている内に和解?と言うのだろうか、大抵の人間とは仲がいい。と言ってもそのほとんどが今は大人になっているけどね。

「こんにちわ〜」

「お?こすりじゃないか?久し振りだな?」

中から出てきたのは慧音の友達の妹紅さん。彼女は私とよく遊んでくれたとても良い人、でも人間であって人間じゃないみたい。なぜ、そう思うのかはすねこすりは人間の脛を擦ることで空腹を満たすのだけど、妹紅さんの脛を擦った時、他の人間よりお腹が満たされなかったからと言うだけ。それだけで人間かそうでもないかわかるのは良いことなのかは正直わからない。でも、良い人であることは確かだ。

「おーい、慧音〜こすりが遊びに来たぞ〜」

妹紅さんが慧音の名を呼ぶとすぐこちらへ来た。

 彼女は上白沢慧音、人里の寺子屋の先生であって人里の守護神と呼ばれている。私にとっては命の恩人、彼女がいなかったら私は今は生きていない。自立した今でさえ里の人達に定期的に食べ物を運んで貰ってる。過保護と言っても可能なくらいに…ちなみに慧音は人間であって妖怪でもある所謂半人半妖と言う存在である。

「こすり、久々だな、どうだ?元気にしてたか?」

「うん、慧音のお陰で快適に暮らしてるよ!天狗だけ除いては……」

慧音はホッとしたような顔をして私を娘として見てるような目で見てるのに気付くと、心配性だなぁと失笑しながら返す。

「で、今日は何の用だ?」

「あ、そうそう。今日ね、久々に脛を擦りに来たんだ〜良いかな?」

「別に良いけど、私達以外にするなら前もって確認しろよ?」

そう、今日はすねこすりとしての本能、人間の脛を擦ることを満たしに来たのだ。でも、程々にしないと私自身でも止められなくなる。

「大丈夫、慧音と妹紅さんの脛で終わりにしとくから。」

「あのさぁ、こすり……いい加減私のことをさんづけするのやめてくれないか?それなりに付き合い長いんだからさ……」

妹紅さんは小っ恥ずかしいのか、頬を赤くして掻いていた。可愛い…でも、どうしようかな〜さん付けの方が呼びやすいし……

「うーん、考えておくよ。さん付けの方が呼びやすいってのもあるし。」

「そっか、まぁ、私としては出来るだけタメで話したいから考えといてくれ。」

私は頷くと人型から本来のすねこすりの姿になると慧音達の脛をたくさん擦って帰った。




新作です。見切り発車ではないので安心してください。
3週間に1話日曜日に投稿して行きます。ストックが溜まりすぎたら消化で投稿するかも?

次回投稿 7月9日
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