とある凡人の転移模様   作:accelorder

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 俺ツエーなオリジナル主人公は正直嫌だ。
 作品を愛してるがゆえに、キャラクターも好きだから
 基本パワーバランスが崩れる感じはいやだ。

 そんな感じで、凡人クラスのふっつーの何の役にも立たないかもしれないオリ主も
 たまにはありなんじゃないかと。

 オリジナルキャラを出すのははじめてなので
 分かりづらいところがあったらごめんなさい。

 そしてこれが処女作です。
 よかったら暇潰し程度に見ていってください。


プロローグ 1

 誰でも一回はあるはずだ。

 自分の考えたチョーサイキョーのキャラが、好きな作品でアホみたいに活躍する妄想をすることが。

 作品内で最強なキャラとか無敵なキャラとかをバッタバッタと薙ぎ倒し、終いには主人公達に「あいつがいれば……!」みたいな、まさにその世界の神に等しい存在に君臨しちゃうような、そんな妄想。

 

 そして、雛目 裕太も自分のキャラを作り上げ好きな作品で活躍させる妄想に、日々勤しんでいた。

 

 裕太の専らのブームは魔術と科学が交錯して物語が始まっちゃう某ラノベで、その世界観の中で大暴れするのを時間があればついつい妄想してしまうのだった。

 そして、時々これは! という発想を閃いてはノートにメモを取るのを欠かさなかった。そんな中二心の詰まったノートは、勉強用のノートより進むのが早かったりする。

 

 

「なんつーかさぁ、」

 

 友人の一人がその中二病まみれのノートを適当に眺めて、そうして少し呆れた顔で裕太に言う。

 

「イタイを通り越して、サムイ」

「あ? 冷房キツいか?」

「そーじゃねーよ。お前の妄想が、だよ!」

 

 友人は、裕太の家に遊びに来ていた。

 夏真っ盛りの今、冷房無しの生活など考えられない。

 裕太は少し冷房の風を弱めるようにリモコンをいじる。

 

「俺はよく世界観わかんねーけど、こういうチートな設定って読む側からしたらすげえ萎えると思うんだよ」

「えーそうかぁ?」

「現に俺は全く面白くない」

「えー……そんなはっきり言うのかよ」

 

 友人は真顔だった。冗談で言ってるような空気は全くない。

 いつも裕太の妄想話に付き合っているからだろうか。

 毎日のように、こうすればあんなキャラにも勝てる、こうすればヒロインを無傷で助けられる、……毎日毎日そんなことを聞かされていれば、文句の一つや二つ言いたくなるものだ。

 

「大体、クッソ強くて世界で一番でさ、そんなヤツが問題解決していくってなったら、」

「うん」

「敵側も絶対怯むし、つーかストーリーが成り立たねーと思うわけよ」

「えー……」

「だって、この世界観は何でもねー無能力な主人公が力無いながらに解決してくんだろ? そこに力があったらなんか……分かる?」

 

 裕太は黙り込んだ。別に妄想の範疇なので、そんな大真面目な意見は欲しくなかった。

 ただ一言、すげーなと言ってもらうだけで実は満足なのだ。

 

「そういうもんかぁ」

「そういうもんだよ。とりあえず常時バリア貼ってるってのは無しにしろよ」

「えー……」

 

 バリアがなくなったら遠距離の攻撃に対応できないではないか。

 そんなことを思いつつ、裕太はその妄想の詰まったノートを閉じた。

 

 

 

 

 その日の夜、唐突にそれは起こった。

 

 コンビニに夜食を買いにいった裕太は、少し薄暗い駐車場で女の子が、五、六人の不良に囲まれているのを目撃する。

 大人しそうな女の子だった。鞄を両手に抱えて、俯いている。

 裕太は、助けたかった。足を止めて、一瞬考える。

 だが、すぐに結論はでた。無理だ。どう考えても無理だった。

 不良達は全員ラグビー部みたいな体格の良さで、あんな筋肉まみれの体にタックルを食らえば、肋骨という肋骨が粉々になる自信があった。

 無理だ。

 絶賛帰宅部の裕太には、到底人助けなどできない。

 足だって特別早いわけではないし、殴り合いの喧嘩なんてしたこともない。

 裕太は唇を噛み締めて、駐車場に背を向ける。

 こんなとき、自分にサイキョーな力があれば、なんて思うけど、馬鹿馬鹿しくて鼻で笑った。

 そんなこと、思ったところで何もならない。

 何の役にも、立たない。

 

「いやっ、やめて!」

 

 悲鳴に近い叫び声だった。女の子が叫んでいる。

 夜だからか、人通りが少なく、そして女の子の存在に気づいてるのは、明らかに裕太だけだった。

 

 いいのか、このまま逃げても。

 

 できることはない。そうわかっていても、裕太の中の良心が叫ぶ。

 まだお前にだってなにかできるだろう、と。

 

 

 裕太は気がつけば、不良達に話しかけていた。

 

「おい、何やってんだよ!」

「あ?」

「んだよお前」

 

 一斉に振り替える不良。その眼光を見ただけで、裕太はチビりそうだった。

 こわい、怖すぎる。いやつかこれ死んだ。

 だが声をかけた以上、後には戻れない。

 今更警察とか呼べばよかったんじゃね? など体を張る必要性がなかったことに気がついても、もう後の祭り。

 裕太はとりあえず、女の子を逃がすことだけを考えていた。

 

「その子、泣いてるじゃん。離れろよ」

「は?」

 

 ぐん、と視界が揺れた。胸ぐらを掴まれ、締め上げられているのに気がついたのは、2秒ほど経った時だった。

 

「何お前? 死にてぇの?」

 

 がくがくと頭を揺らされる。ああ、死ぬ。死んだ。そう確信した。

 ふと視界に入った女の子は、呆然と裕太を見上げている。

 いや逃げろよこのクソアマ、と心の中で毒づくも、彼女に届くはずもない。

 

 女の子はふとしゃがんで、何かを掴んだ。

 僅かな街頭に照らされて光るそれは、見慣れているようでそうでもない棒状のもの。

 鉄パイプ。

 助けようとした女の子は鉄パイプを持っていた。

 裕太に不良が集中した一瞬の隙に、彼女はかなり有能な武器を手に入れていた。

 

 女の子は大きく、振りかぶった。鉄パイプが危なげに光る。

 そしてそれはまっすぐ振り下ろされる。

 裕太を掴みあげている男に向かって……、いや微妙に軌道がずれている。

 世界がスローモーションになった。

 裕太は理解が追い付かない、どういうことだ、彼女はいったい何を……。

 明らかに、女の子の握る鉄パイプは裕太を狙っていた。

 

 

 

 ごん、と頭蓋骨に響く凄まじい音と振動に、裕太はあっさり失神した。

 

 

 ……いや、何でだよ。

 

 裕太が暗闇に落ちるその前に、そんなことを心の中で呟いたのは必然とも言える。

 

 

 

 

 

 

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