母神様の云うことにゃ。 作:ふま
あぁ・・・、視線を感じる___
それは俺の、とても苦手とするトコロでもあり、ちょっと心地良くもある感覚。
テーブルにフッ潰し、狸寝入りをしたところで彼女の視線からは逃げられないと云うのに。俺は___アレ以来、君を少し意識し始めてると自覚しているのだ。
子供じみた、まさかのテレ隠しの類だとは彼女の知る所ではない。
「カカシ殿・・・。そろそろ諦めてベッドに行ってはどうか」
諦めて・・・とは、この状態で報告書を纏めていた俺に云った労わりであろう。
控えめな力加減でゆっさゆっさ、肩を揺らしてくる
俺は両腕をあげ、白々しく起きたトコロを演じ始めた
「すまん・・・アー・・・そうだねぇ、この際諦めるとするか・・・。」
「そうなさいませ・・・。ああ、アシタは何時起きで?」
「朝6時には出ようと思うんだけど___
八香《ヤコウ》、君も明日シゴトじゃない?ムリはやめて?」
ベッドに横たわった俺を見下ろし、彼女は表情筋を一切緩めない何時もながらの、
微笑んだかに見える眼差しで首を少し傾げるのだ。
「明日は予約も少ないので心配いりませぬよ。」
「そっか、じゃーお言葉に甘えるよ・・・オヤスミ。」
「よい夢を」
まるで母が子供にフトンを被せる様に、あくまで優しく
俺は不覚にも、まだ少女である筈の彼女にちょっとしたトキメキを覚える事もあり
そんなキモチを振り払い、心の中で自分を諌める場面も日増しに増えた様に思う。
灯りを消された瞬間、俺は壁側に向いて瞳を閉じた。
彼女の気配が離れたのが解ると、まだ解き掛けの八香の心中を想う。
あの時___抵抗する君の動きを、写輪眼で封じた俺を卑怯だと思うかい?
君はもう忘れたかに振舞っているが、俺はまた君の傷を1つ増やしてしまったと
人には”必要だった”と云われ、自分にもそうだと云い聞かせながらも
後ろめたさを感じずにはいられないんだ・・・。
同居すること、二月になるのかな
けれど俺はまだ何も彼女を知ってはいない。
俺はね__今になってから思うんだ。何億分の一の確率で・・・
君は此処(木ノ葉)に来る様に仕向けられたヒトではなかったのかと___運命とか云うヤツ?
ま___俺と出会う、って事だけではなくてさ・・・:
事の始まり、あれは___とある捜索で海岸を歩いていた時だった。
( 人・・・? 溺れたのか?)
遠くに見える波打ち際に、投げ出されたかの様な女性の姿に駆け寄った。まだ少女である。
キラキラ光る栗梅の髪。どこかで見た様な、チャイナ服に似た感じの衣装を纏っている。
左手の薬指と中指に2本づつリングを嵌めているが、素材と飾り細工は初めて見る物だ。
どうやら他国の者らしい・・・俺は彼女の頬を軽く叩く。
「しっかりしろ・・・・、おい・・・!」
気を失っているだけか幸い息があり、水を飲んでいる様子もなかった。
病院に運んでしばらく、医者が緊張した様子で廊下にいる俺に声を掛けてくる。
まだ意識が戻らない彼女のところまで連れて来られると
医者は人払いをし、何を思ったか彼女の着ているローブを解き始めたのだ。
「えッ!?センセイ?ちょ・・・!!」
「これを・・・。」
「・・・・・!?」
慌てる俺をよそに医者の、ツバを飲む音が聞こえた。
指の間から見た、美しい体のその左半分に一瞬ゾクリとする様な紅・・・!
ツタと、
紅いザクロの実をデザインしたような模様が左肩から鎖骨あたりまで延びている
ゆっくりその体を起こさせると、模様が後ろ腰にまで続いている事が確認された。
「これは、刺青ではない。病後のアザの様ですな。」
「聞いたことないね・・・そんな病気・・・。感染の恐れが?」
「調べた所、完治はしているんですが___」
資料はないが、不治の病だとウワサには聞いたことがあると彼は言った。
治っているなら別にいいんじゃないの?と、俺は医者の顔をじっと見る。
「その子か」
その声、振り向くともう隣で彼女を覗き込んで見ていたのは三代目である。
よそ者を、俺が拾ってきたというので医者が報告を入れたらしい。
彼女が目覚めないのをイイコトに目を細めながらに裏までちゃんと確認していった。
「う・・・・・・・!」
元の状態に戻ったとたん、彼女が声を発し3人ともが注目をする。
目蓋がゆっくりと開く。
その瞳は浅い紫、菖蒲色というか・・・この辺りではあまり見ない色だ。
「目が覚めたかい・・・具合はどうかな?」
なぜか医者の顔が赤らみ、
声まで上ずってる不自然さに俺たちは彼をジロリと見てしまう。
彼女は胸が動くぐらい大きな呼吸をしながら辺りを見回している。
「心配はいらん、ここは安全じゃ。」
「それより・・・どこか辛いところはない?」
見知らぬオッサンたちに囲まれ怯えさせてはいけない。
他はどう思ったか知らないが、俺はその少女を”初めて見る生き物”の様に感じていた。
甘栗みたいな色のサラサラした長い髪は小さな頭を強調してるし、この瞳の色である。
俺はまず言語が通じるのかも疑問だったので、彼女の声を引き出そうとした。
ふくよかな唇がピクリと動く。そしてそれは、トツゼンだった。
「!!?」
彼女は何故か俺の手に手を伸ばし、ぎゅ!と握り締めたのだ。
あからさま医者はムッとして、俺に疑いの視線をぶつけ出した。
「ほー・・・さては、連れてくる前に人工呼吸を!?」
「ま・・・!さか!!!」
「お陰で助かりました・・・ありがとう・・・。」
「ええええ!? いや、そんな・・・!?」
「やはりそうなのですな!!」
覚えのないコトで礼をされても困る。俺は両手の平をブンブン、
否定はするがアノ目つき・・・三代目だってアレ絶対疑ってる顔だ。
「ともかく!この子の調書はお前に任せる!明日中に持って来る様に!」
「・・・了解。」
なぜ、こうなった・・・。俺は顔を片手で抱える。完全に誤解された。
パッと手を戻した彼女にはっとなる。
表情は一切変えず、俺の方を流しみて云うのだ。
「・・・すまない、何でも答えるので許しては貰えないか」
「や、アハハ・・・ごめんね、気を使わせちゃったかな;」
俺は敢えてメモは取らずに置いた。不安にさせたくない気持ちからだ。
年の頃はそう、せいぜいいっていても18ぐらいか・・・。
そんなコに気を使わせるとは俺もまだまだなのである。
此処からは医者に「外」を指差し、俺は彼に2度小さく頷く。
「まず名前を聞いておこうか、俺ははたけカカシ。キミは?」
「...オダワラヤコウ」
「御国はどこ?」
「自の国___」
「何故、あんなコトになったのか・・・覚えてる?」
彼女は天井を見つめる。左肩を手で摩りながらため息を隠した。
そしてクン・・・!と、自分に着いた潮の香りに鼻をならす。
考えを纏めようとしたのか、また目を瞑っている。
「私を、ショウカンしたと云われた・・・。」
「誰に・・・!?」
「解らない・・・メガネをかけた、・・・陰気な感じの青年」
思い当るフシはある
メガネ、そういうセリフを言いそうな若僧・・・カブトか?
「ハッキリ思い出せない事が多い・・・ともかく、スキを見て逃げてきた。」
「・・・なんで君なんだ?まさか・・・」
「・・・死んではいないぞ、そして私はバケモノでもない」
彼女が云うには、山で薬草を採ってる時突然引き寄せられたらしい。
「一体ここは何処・・・きっと今頃、患者が困っている;」
「木の葉の里なんだけど・・・ん、患者?」
「私は鍼医者だ」
もう仕事で生計を立てていると言う事だ。
天井から俺へと視線を移す。本当に綺麗な瞳の色に見入ってて、つい油断した。
寝ながら手を伸ばし、俺の目蓋を閉じさせる・・・普段じゃ有り得ないがね。
目を隠す額あてに気を使ってか、そこにはあまり手を触れない。
お陰で彼女のその手をねじ伏せずにすんでホっとしたトコだ。
「眼の疲労が激しいようだが」
「へー・・・解るの?」
「目を閉じて。これはひどい・・・」
顔を見もせず、まるで手で探るかに何点かのツボを押さえ出した
心地いい、適度な力加減・・だが何か違和感を覚えている。
そうだ、硬い。硬すぎる・・・・!
その柔らかな手から想像もつかない硬い指をしているのだ。
「もしや・・・キミも忍だったりする?」
「・・・・・・・・シノビ?」
「いや・・・今のは聞き流してくれていいよ。」
忍自体、存在せぬ国だってある。
ふぅ・・・と溜息を隠して吐けばある事に気がついた。
ココ何日かの目蓋の重みがスッキリしている事に。
(いい腕だ・・・!)
だが、俺はザンネンな事を彼女に伝えなければいけない役目も持っている。
「キミさえ体の状態が落ち着けば、元いた故郷へ送ってあげる準備はできるよ。」
「・・・・いえ、大丈夫。元々、故郷にはいなかったのです。
ご迷惑がかかるといけない。私は明日にでもココを出て行きます。」
「・・・ソイツは医者の判断にもよるね。」
出て行くと云う辺りスパイって事でも無さそうだ。そして何か訳アリなのも解った。
だが、うら若き。。。んー・・・云いたくないけど、これほどの美少女が
ヒトリで帰路を辿るのは危険だろう。まー、俺が志願して送るとするか・・・。
「ヤコウさん、取りあえずまた明日様子を見に来るよ。安静にね、じゃ。」
「お手数をお掛けしました。」
そういって俺は火影のもとに戻った。
明日中といわれたが、
俺が来るだろうと踏んでか、やはり三代目はそこで待っていた。
カブトの話が出たところで興味が沸いたようだ。
「そうですねぇ・・・? 忍でもあるような、ないような・・・。」
「ふむ」
「俺のカンが正しければ、報告書の期日を延ばして頂くと有難いんですがね;」
「・・・・、対処しようじゃないか。」