母神様の云うことにゃ。   作:ふま

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12、同期な二人、困惑するヒトリ。

 

 

「毒なんかあってたまるかよ・・・。・・・・安心しな。」

 

過呼吸の末、意識を手放した彼女を俺ん家のベッドで寝かせてる。

ベッド脇にしゃがみ込み、目尻に滲む涙の跡を指で拭ったトコだった。

また誰かに騙されてる彼女が何だか不憫に思うやら、愛おしいやらで____

ついウッカリ、大人の女扱いしてしまった。

言い訳するなら片手に軟膏、もう1つはソレでベタベタだったせいもあるが;

あんなに取り乱した彼女に後悔もする。

俺は・・・”殺して”と訴え苦しむ八香の姿が当分は忘れられないだろう。

 

(あんな事__二度云いやがったら承知しねぇぞ・・・?)

 

_______コンコンッ!

 

「___!」

 

ドアをノックした音に俺は腹を括る。勿論、最悪な状況を見越した上でだ。

 

 

 

 

 

 

「俺もさ___失敗したと思ってる。まさか、あの坊主が一枚噛んでたとはねぇ・・・。」

 

”こんな事”になった顛末を説明し、真摯に詫びて頭を下げたゲンマの肩を俺は軽く叩いた。

初めてアレを見たんだ、しかも彼女自身の誤解付き・・・彼もそりゃ困惑した事だろう。

 

ゲンマが正直に云ったもんで、俺も告白せずにはいられなかった。

八香が抱えるデリケートな過去をアオバに知られてしまった事だ。

彼が見た後半のビジョンに____紫紺が語った、アノ場面が映るとは。

吹き矢に使われたのは阿片芥子、俗に云うモルヒネで・・・それを撃ったのはヤツだった。

 

 

_____『これで目覚めても当分は動けない。可愛がるのも良いが毒に当たらぬ様に・・・。』

右京と思われる男から金を受け取った下弦は下衆な笑いでそう云った。___

 

 

「彼らしからぬ感情移入でさ; いい加減、勘弁して下さいって逃げられちゃった。」

「___あのクソ坊主は八香を利用するだけ利用して最後には売ったのか・・・。」

「・・・・だね。」

 

同期だけあって時々、敬語を忘れる。俺はゼンゼン気にしないが普段のゲンマなら謝るトコだ。

けど今は違う。

寄せ集めた情報のパーツが揃いつつある・・・冷静な彼も憤りを隠しきれていない。

 

「で____賭けに勝った訳だけど、何を云うツモリなの。」

 

時計はもう1時を回ってる。俺はイスを引寄せ、ゲンマと同じ様にベッドの彼女を見つめ出す。

彼には聞こえている筈だが眉1つ動かさない_____さては。

 

「まだ決めかねてますよ。」

「・・・・・やっぱり;」

 

先に、痣に毒があると信じ込まされている彼女を何とかしてやりたかったんだろうな。

「ああ、そうだ、これ」と不意に手を伸ばして来たかと思えば摘めるサイズの小瓶を俺に見せた。

 

「ポケットに入ってましたよ___例の種に使う気でしょう。」

 

3日間、水に浸してから皮を剥いて使うとか・・・。どうやらシズネに調べて貰ったらしい。

肝心の種もまだ見つからない。家には置いてないとパックンがそう断言してた。

今これを取り上げてもイミがない。どうせまた買って来るだろうし。

歯痒いな、作らせるのを待つなんて。いや・・・その前に何とか説得して出させるとか___

最悪、強引に取り上げてしまうか・・・?それともコッソリと奪っておくか・・・?

出来る事なら情報をくれた紫紺の顔も潰したくないし・・・。

 

「____さっきの八香も・・・あわよくば、殺す気だった・・・。」

 

俺がアレコレ悩んでいる最中、ゲンマが呟き出した。

逆に座ってるイスの背もたれに腕を組み、その上に乗せた怪訝な顔で彼女を見てる。

”私なりの、情けだった”

そう云ったらしい八香に彼も色々憶測を立てて考えてたんだろう。

 

「忍でもない八香が__くの一にありがちな一秒にも満たない迷いを

一切持っていない事が恐ろしいって思う俺は・・・まだまだ甘ちゃんですかね。」

「いや___俺も同じだよ、だけどさ・・・解ってあげないとな。

八香は巫女になるまで”ソレ”しか教わってないんだ、”殺し”でしか答えが出せないのさ。」

 

感情が残ってるんだ、まだマシな現状だよ?と付け足しておいた。

俺だって複雑な気分だった・・・あの八香が、目の前で人を殺め様としている事に。

スイッチが入ると、あそこまで別人になれるとはね____。

 

「だが、今回は___ヤツに自決をさせた」

「____死んだ!?」

「あぁ・・・。アオバが逃げちゃった後スグにさ。

どうやって毒を飲んだのか・・・。血を噴出して死んでしまったよ。」

 

最終的には自ら手を掛けず、老いた師匠に屈辱を与えるだけに留めた。

”弟子に情けを掛けられて、生き恥を晒せ”と云うことだ。

付き合いが長い分、ヤツの事を知ってる___

それが「持てばいいが」と云う言葉に表れたのだと後で悟った。

そしてもう1つ・・・情けを掛けられる様にまでなった、自分を見せつけたかったのではないか。

お前の感締めは不完全だったと知らしめる為・・・、柔いショールをワザワザ使用したのだろう。

 

「しかし___彼女は暗殺を諦めちゃいない」

 

寧ろ、下弦を金で雇って遣したのだろうと復讐心を煽られたかもしれない。

俺は徐に口寄せでパックンを呼び、ベッドの上に置く。

くまなく匂いを嗅ぎまわった後、また彼は首を横に振った。持ち歩いてもいないのか。

 

「さて____王子、後は君に任せるとして俺は帰るよ。」

「王子ィ・・・!?」

「解ってると思うけど、ソレ以上の手出しはナシだからね!___できれば彼女に、

ウンと甘~くして”タネ”を出させるよう仕向けてくれると上出来なんだケドー・・・。ニシシ」

「俺にそんな芸ができるワケネーでしょうが・・・!」

 

素っ頓狂な声をあげた後、横顔がイラっと口元の千本が揺れる揺れる。

ゲンマは俺にとってはちょっと不思議なキャラで__時に詩人、時にリアリストでもあり

クールで飄々としていながらも女性には気が利き、町の娘や、くの一のハァトを掴んでる。

何より、マジメで分別は俺よりある良識人だ。

 

「ま・・・、期待はソコソコにしておいてだ。これにてドロン・・・!」

 

去り際、”プレッシャーかけんな;”って本音が聞こえたけど____いや、掛けてんのよ?

 

 

 

 

 

 

______・・・・・・・・・。

気だるい・・・朝が来たのか。なんだろうな・・・まだ苦しい。

 

「・・・・・ぁ」

 

苦しい・・・腰の辺りにぼんやり意識をやった。

手・・・?いや腕・・・・!?

 

「クー・・・・・・」

「!?」

 

何者かの腕に巻き込まれてる事態に気がついた・・・!今のは寝息か??

横抱きされてる体制から、ゆっくりソーッと髪に伝わる熱い息を止めない様に顔をずらす。

 

「・・・・・・・・・!」

(ゲンマ殿・・・・!?)

 

長い睫、ピクリともしない目蓋・・・完全に生きて____熟睡の寝息を立ている。

何より・・・ぴったりくっついた背中で感じる鼓動に嘗て無い気持ちに困惑する。

気がつけば____ポロ、と目から何か零れ落ちていた。

 

(賭けに負けたのだな____)

 

ソウ思いながら目蓋を閉じ、指で大粒のそれを掬い取った。

 

(凄い御仁がいた物だ___私の”毒”をものともしないなんて・・・。)

 

いけない・・・このままではこの里を出るのに支障が出る。

この里が、人が愛おしい、故に平和なままでいて欲しいのだ・・・。

 

「俺の勝ち、ですね__」

「・・・・・!」

 

起こさぬ様に緩々と彼の腕から脱しようとしてた所、更に締め付けられてしまう。

髪越し、耳に伝わる言葉と熱い吐息が体を震わせた。

 

「おや・・・護衛の俺を置いてドコへ行くオツモリで_____?」

 

完全に弱点を見抜かれている・・・、この”良過ぎる耳”だ。

更に耳へと近づく吐息にただジタバタと巻きつく腕から逃れ様とするのだが。

 

「疑問だ___こんな護衛とは聞いたことがない・・・・!」

「木の葉の忍を舐めて貰っちゃ困る__例え火の中、褥の中、お守り致したく候、だ。」

「推しが酷いぞ・・・・!」

 

ゲンマ殿はもしや寝ぼけているのではないか?

片手が離れたかと思いきや、背け出した私の顔を抱え出したのだ。

逃すまいと余計食い込む腕と、密着する体、囁き声と熱い息に体が固くなる。

 

「ナニが望みか____!?」

 

賭けに負けたんだ、どうせ何か要求する気であろう。

そう耳に、想い深気な言葉を吐かれ続けられたのでは身が持たない。

苦し紛れにそう云えば、ゲンマ殿の動きがピタリと止まった。

 

「復讐を__忘れては頂けませんか。」

「_____・・・!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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