母神様の云うことにゃ。   作:ふま

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13、愛しさと歯痒さと

___まぁ、俺も聞いて貰えるとは思っちゃいない。云うだけタダである。

 

「何か誤解がある様だ___」

 

腕の中で盛大な溜息が吐かれた。肩の力を抜き、落ち着いた声になる。

 

「カカシ殿から何かお聞きの様だが__

復讐するなら里を去る前にまず殺っておくべきでは?

私がそうしなかったのは・・・潔く、負けを認めたからです。」

 

如何にもな、八香らしい答えである。

確かに彼女の口から、復讐や暗殺などと云った物騒な言葉が出た試しは無い。

俺たちは八香の脳内を覗き見、紫紺の言葉、内に秘める思いを混ぜてそう思い込んでる。

何か知ってるのか?と疑われたのでは、全てが台無しになってしまう。

俺たちは彼女のプライバシーに首を突っ込み過ぎてる___傷付けたくはないのだ。

 

「____そうですか・・・俺の勘違いなら、今のは忘れて下さい。」

 

此処は一旦引く事にした。これは難しい・・・、

八香の場合、例え拷問に掛けたって口を割らないだろうから

この3日間で”種”を探して取り上げた方が良さそうだな・・・。

 

「それより、ゲンマ殿」

「・・・・何です?」

「・・・ありがとう、生きて居てくれて___」

「・・・・・・・!」

 

思わず手を緩めた瞬間、彼女がコチラに向きを変えて___息が詰まりそうになった。

 

「本当に・・・救われた・・・・。」

 

そう云って控えめに俺を見上げた瞳は、潤い過ぎて薄紫の色がより綺麗に映ってた。

聞いた事があるんだ、紫の瞳ってのは___誰もが魅了される色なんだってな。

・・・駄目だ、ふるふると震える唇も見てはいけない。俺は焦って彼女を胸に押し込んだ。

 

「全部、嘘だ___俺がその証拠になったでしょう。」

「嘘・・・・?」

「貴方は誰かに”毒がある”と、そう信じ込まされてるだけだったんですよ____」

「__________バカだな・・・。」

 

全てを悟った、絞り出す様なくぐもった声に俺は背中を摩ってやる事しかできない。

世間から隔離され間違った教育を受け続けた結果だ。

彼女の場合、基本とても純粋に出来ていたのだから尚更である。

 

「俺は好きですよ、貴方のそんな___ちょっと”浮世離れした”所がね・・・。」

「___ゲンマ殿は・・・慰め上手でおられる・・・。」

 

違う____本心だ。彼女に気付かれない様、頭にそっと唇を寄せた。

俺は我慢した溜息が体中に溜まって行く気がしてる。

ベッドの中、服を着たままの男女がそれぞれ別の熱を篭らせてるなんて

返って不自然で、不健全な絵面かもしれないが

八香は何だかんだ云ってもまだ子供で__俺はそんな彼女を守る立場にある。

カカシは___同じ屋根の下で彼女にどんな気持ちを抱いているのだろうか。

こんな風に・・・抱きしめてやるのは俺だけのお役目にして貰いたいもんだ・・・。

 

「八香さん、代わりの望みがあるんですが___」

 

 

 

 

 

 

「_____オカエリー・・・遅かったじゃなーい。」

「すみませんね、彼女に朝食を食べさせていたもんで。」

 

玄関先までゲンマが八香を送って来た。日曜だから良いものの___

心配はしてないツモリだったが、

あまり眠れずに朝早く起きたモンだから待ち侘びてた気がするのか。

 

「只今、戻りました」

 

ん・・・?心なしか彼女が沈んでる様に見える。

 

「お?___何それ、どうしたの・・・!」

 

彼女の着ている服が変わっているのに気が付いた。良く似合うサックスブルーで目を引く。

ゲンマの方が先に声を発したので俺はそっちを見た、何故、目を反らしてツンとテレてる?

 

「何って・・・着替えですよ。俺が用意したんです。背中が随分破れていましたからね。」

「ふ~ん・・・いいアオザイだねェ・・・。」

 

傷が出来たのは昨日聞いた。だけど新しい服を用意してたってのは聞いてなかったな!

俺はシナリオ上、後はゲンマに任せた方が良さそうだと判断しあの場を去ったが

今、玄関に立つ八香の様子が・・・”パパの顔~さえもー見れなかーった♪”って云う、

イケナイ事を覚えた朝帰りの少女の様に見えて仕方ないんだが;

いやいやいやいや!云っとくけど俺、ゲンマより年下だからね!?

 

「ゲンマど、・・・・今日は有難う。」

「気にすんな___じゃ、またな。」

「____!?」

 

ナニがあった・・・!? 今、八香が”ゲンマ殿”と云い掛けて、呼び捨てを___!?

しかも、アイツが”気にすんな”と・・・フレンドリーになってるではないか・・・!?

 

「あ、カカシさん。これ、頼まれてたヤツです。」

「え?ぁー、アレ。ありがとね。」

「失礼しますよ」

 

俺にメモ書きを渡すと静かにドアを閉めて行った。

ばたん_____即、俺は八香の肩を掴んで此方を向かせてしまう。

 

「・・・彼と、何かあった___?」

「賭けに負けてしまいました。」

「条件は・・・何だったんだい」

「最終的には・・・”もう此処の住人になるんだから、お互い硬い話し方は止めませんか”って」

 

 

『___”殿”ってのもナシかな。いっそ、”ゲンマ”と呼んで貰う方がマシですよ___』

 

 

「呼び方ヒトツで・・・彼を嫌がらせていたのなら、反省もする・・・。」

「君が気にするコトじゃないよ、軽く落ち込まないの;」

 

最終的には・・・って事は、他にも候補があったと思われ。でも少しほっとした。

に、してもアイツめ。私的な条件じゃなく、もっと他に無かった訳!?

靴を脱いで中に上がった後ろ姿を確認すると直ぐにメモを開いて見る。

俺は愕然となった___

 

 

『ブラはカカシさんの方でお願いします。(いい加減、目のやり場に困るので早急に)

___あと、作戦は失敗しました。』て______。

 

_____ェエエエエ!? 

 

何!?アイツ、ずっと気づいてたってコト!?てか、やらしい!ドコ見てんのよ!?

まさか昨日、背中だけじゃなくて表まで見たって事?コレ!! 

じゃずっと、八香ってばお椀の様なアレ、野放しで育てちゃってた!?放牧!?

あのプリンプリ・・いや、重量を自前の筋肉で支えてたなんて・・・若さである___。

 

「カカシ殿・・・、目眩でも・・・!?」

「ぁッ、いや、何でもないでござるよ↑?」

 

メモを握り締めたまま俺はイスによろけていた。ガタンと音を聞いて

八香が戻ってきたのだ。顔を見るや否や額に手を当て出した・・・赤いからか;

いかん、落ち着くんだ俺___ハッ・・・・!

ソウいえば最初彼女を拾った時___ローブの下、何も着けてなかったか・・・。

俺とした事が迂闊だった・・・ゲンマの他にも気付いてた男が居たかもしれないな。

それにこの成長期にちゃんと着けないとタブン・・・アレだ。イロイロと良ろしくない。

というか・・・このメモ・・・、作戦の報告よりブラの事の方が先ってどうなのアイツ;

 

「風邪でしょうか___?」

「いやホント大丈夫だから・・・。」

 

座らされて、氷嚢まで当てられちゃった俺・・・そんな心配そうな目で見つめなさんな。

団扇で扇いでくれたりして__こうしてると夕べの君が嘘だったかに思えるよ・・・。

もう____何人殺して来たんだ?まだ___足りないのかい・・・?

俺が思うに___俺はたぶん、俺の様にはならないで欲しいんだと感じてる・・・。

 

「____カカシ殿?」

 

俺はそう思うと、傾げた彼女の首を片手で軽く引寄せた。何でこんな切なくなる___?

仲間のくの一には___そんな事、思わないクセにさ・・・何、このエコヒイキ。

 

 

「八香___?この後、ちょっと付き合ってくんない・・・?」

 

 

俺がリンの死に囚われていた様に、彼女もまた左門の死に囚われてる。

君はまだマシさ・・・、左門は他の誰かに、殺されたんだから____

 

 

 

 

 

 

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