母神様の云うことにゃ。   作:ふま

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18、炎祈の舞い

 

その日の夕方___俺が夕飯の支度をし始めた時を見計らってか、

八香は物騒なものを抱えて「ちょっと、稽古に」と、靴を履き始めたのだ。

 

「ちょーっと待ちなさーい!___ソレどこで・・・」

「ああ、演舞用の模造品なのでご安心を」

 

この前、紫紺が持ち込んだ物らしい。2刀のソレは、俗に云う柳葉刀でおよそ70cmはある。

案外軽いようで重い、演舞用にしてはやや厚めに思える。

降魔祭では現・巫女が演舞を披露するらしくそれの練習だとか。

7時までに帰ると云う約束で仕方なく行かせた。

まー、どうせ誰かが見張ってるんで無茶もしないだろうけど・・・。

 

(演舞・・・ねぇ・・・・・・・・・。)

 

正直な俺は超高速で料理に取り掛かるのであった。

 

 

 

 

 

此処は普段、忍達が使うと云う練習場・・・夕暮れの中、もう誰もいない。

そう云えば私は自の国を去った後、剣どころか体術で闘った事もなかった。

下弦との一戦はまさに一年のブランクを持って望んだ云わば賭けの様なものであった。

 

思えば__12になるまで、世の中が案外平和だった事を知り愕然としたものだ;

相手が獣であれ、人であれ・・・常に険しい日々を過ごしていたから___

 

スゥ・・・と息を吸い、吐く。

構えるのは降魔祭で演じなけれればいけない”炎祈の舞い”の最初の型。

体が覚えている___サ、ササ!と型を変え、二刀を振り、地を蹴り舞う。

あぁ・・・気持ちが晴れるのを感じる。私はまだこんなにも動けると云うのにな。

 

「____・・・。」

 

一通り、確認し終った演舞の後。吐く息を途中で抑える。

刀を、納める寸前___

塩素系の匂いが風に押し流されて来たと同時に

キィン!二刀をクロスさせとその刃を受け止めるハメになった。

 

(いい度胸だ)

 

暗部でもなさそうだ、頭を布で覆い、梟の面を被っているが忍には違いない。

右手の柳葉刀を持ち手に勢い良くグルグルと回し、左手にて薙ごうとした。

猫だましな手に僅かな焦りを相手に感じ取る、忍刀の一刀にて防御をし、一旦キョリを取った。

右手の柳葉刀を捨て一刀に構えてみる。

空いた右手で”来い”と掌を返せばイラっとしたか即、飛び込んで来た。

 

キンキン!キン!キキン!

 

__推して来るな・・・防御しながらソウ思うが、これでは効かぬ。

私はその力を受け流してはいるし__読める程度の実力とあってはな。

私の様に基本は介者剣法ではないのか?と、少々疑問に思う。

 

「______!」

 

体を半回転して、相手の持ち手を弾いた。揺るぐ、力___。

キ!と、音がする。思惑通りその手から忍刀を弾き飛ばした。

スィと一時、間合いを詰め喉元に刃先を向けた。

 

本気にさせてやろうじゃないか。ス・・・とその手を降ろし、棒立ちに待つ。

地に落ちた刀を取らせた。物足りないのだ。もっと本気で掛かって良いのに。

しかし馬鹿にしている。忍術を使えば私などイチコロであろう。

それを剣術で挑んでくるとは___

試すつもりだろうがこの程度でフザケルなと言いたい。

模造刀とは云え、寸止めであるなら勿論コロスつもりで行く。

 

ブンブンブン!

キンキンキン、キン、キキン!

 

左右に柳葉刀を振り回し空き無く激しく打ち進む___耳に立つ、息が切れ始めているな。

忍術に頼り過ぎているのだ、こう云った剣の応酬には慣れていないのだろう。

「時間がない」

勝機が見えた一瞬、輩のエモノをまた空に飛ばしそう云った。

僅かなスキで膝裏を蹴飛ばすと相手がガクリと体勢を崩す。確実に首根を刃筋で捕らえた。

面は敢えて剥がさずにおいた。「ツギは殺す」と吐き、突き放した。

もうすぐ約束の7時になる___刃を納めてその場を後にしようとした。

カカシ殿をあまり心配させてはならん。

 

「やるね___流石裏方の長はダテじゃない___」

「!?」

 

来たか___足元にでかいヘビが絡みついて来た・・・。

 

(懲りぬ男だ)

 

ゴオッ!!と絡み着く蛇に一点集中、火を纏わせてから跳び、対峙のカタチとなる。

自の国にに帰ろうとする、この次期に___陰気メガネであったか。名は知らぬ。

まだ潜伏しておったのだろう、遠方に出向く手間は無い方が良いという事だ。

 

「覚悟せよ__その鬱陶しい頭、涼やかなズル剥けにしてくれる__毛根ごと、死ね。」

「かわいい顔してヤクザな事を云うね、君・・・;」

「黙りゃ。」

「な・・・・!なんだ!?」

 

唯一、下弦が私に教えたあの同じ術で耳を塞がせる。

忍でもなく、まして表情筋を殆ど動かす事ができない私である。

この術を覚えるのに唇の筋肉を鍛え動かす事から始まったから習得には苦労した。

その苦労も報われるというものだ、丁度良かったではないか。

 

「!」

 

小さな竜巻を二つこしらえ様と__両手の平を開いた途端の事である。

突然現れた影が私の気をそらせた・・・ひとつは最近、嗅ぎ慣れた匂いと声___

 

「ったく・・・、怖いもの知らずか____お前さんは。」

 

そして、対峙した方にも聞き慣れた声がした。

 

「さぞ悔しかったんだろ?薬師カブト・・・!」

「ぐぁああッッ・・・・!」

 

私に背を向けてクナイを構えるゲンマの向こう側でバチバチバチ!と閃光が光ったのが解る。

苦痛の悲鳴と一緒に・・・。気が着けば、テンゾウと言う男が私の手をそっと降ろさせていた。

 

「・・・・逃げられたな・・・だが、あれで暫くは動けないだろう。」

 

気がそれた一瞬、私が術を緩めたのだろう。だが__その場には結構な量の血が落ちてた。

そして地面から伸びていた木、あれが陰気メガネを捕らえた為、致命傷を負わせられたのか。

 

「まったく___無謀にも程がある・・・!君ねぇ・・・、」

「ま・・・!結果オーライかな。自の国に辿り着くまで一人敵が減った。」

「カカシ先輩___甘やかし過ぎですよ・・・;」

 

ニコリと笑うカカシ殿に、引きつった顔で横目で睨み見るテンゾウ、

そしてゲンマはニヤリと口角と千本を上げ、耳打ちしてくる。

「誘われても暗部にだけは行くなよ?」と___?

 

 

 

 

ったく____! 相手は大蛇丸の右腕だぞ・・・。

忍術もロクに使えない者が太刀打ちしようなんて___どこからあの自信が出るんだ。

 

『・・・キレッキレに舞うな___』

 

演舞の時、僕と同じ場所でゲンマさんは見惚れて云った。

黒いシルクと白いパンツが、機敏な動きではためく様が___そう云わせたのだろう。

 

確かに剣術は見事だった。思わず、「暗部に来ないかな・・・。」と呟いてしまった程に。

よく見ていると解る。彼女の、ヤツの打ち込みを受ける際の手元の角度や、足運びだ。

力のダメージを完全といって良い程、殺している。そして背のあまり高くない彼女には

不利に思える介者剣法の様な攻撃も、信じがたい身体能力でモノにしているから驚く・・・。

 

(実践に・・・恐ろしく長けている)

 

あの、演舞用の刃で___殺してしまう勢いに感じられた。

もっと恐ろしい事に八香は見たところ、半分も本気を見せていない____

 

(まぁまず、ダンゾウ様は他国の者を信用しないから無理な話しではあるケドね・・・。)

 

「お・・・!」

「越後屋だ」

「 「 エ・・・、越後屋___!? 」 」

 

暗くなり始めた空を旋回する影が見えた。ピー・・・! と声がする。

「ご苦労」そう云うと、鷲が彼女の肩に羽をばたつかせ停まった。

脚に伝達か・・・、八香はそれを開いた。

 

「___降魔祭に間に合う様にと、だ。シズネ殿にも報せないとな・・・。」

 

 

 

 

 

 

 

 

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